昔話『絵姿女房』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 『絵姿女房えすがたにょうぼ』は、女房にょうぼの美うつくしさに惚ほれ惚ぼれと見みとれ、仕事しごとをしない夫おっとに困こまった女房が絵姿えすがたを持もたせます。それによって女房は殿様とのさまに無理むりやりお城しろに連つれて行いかれます。しかし、女房は機知きちを働はたらかせて最後さいごは殿様と夫を入いれかえて安楽あんらくに暮くらします。

 今回こんかいは、『絵姿女房』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

絵姿女房 まんが日本昔ばなし デラックス版 講談社 『絵姿女房えすがたにょうぼ』は、主おもに西日本にしにほんに伝つたわる民話みんわです。

 昭和しょうわ2年ねん(1927年)に島根県教育会しまねけんきょういくかいより発行はっこうされた『島根県口碑伝説集しまねけんこうひでんせつしゅう』では島根県八束郡意東村しまねけんやつかぐんいとうむら(現在げんざいの島根県松江市東出雲町しまねけんまつえしひがしいずもちょう)に伝わる民話として「六日むいかの菖蒲あやめ」という題名だいめいで収録しゅうろくされています。

 昭和18年(1943年)に三省堂さんせいどうより発行された岩倉市郎いわくらいちろうの『南蒲原郡昔話集みなみかんばらぐんむかしばなししゅう』では新潟県南蒲原郡葛巻村にいがたけんみなみかんばらぐんくずまきまち(現在の新潟県見附市葛巻にいがたけんみつけしくずまき)に伝わる民話として「絵姿女房」という題名で収録されています。

 昭和40年(1965年)に未來社みらいしゃより発行された下野敏見しものとしみの『屋久島やくしまの民話みんわ 第二集だいにしゅう』では「みかん売うり 八兵衛はちべい」という題名で収録されています。

 類話るいわは西日本を中心ちゅうしんに日本中にっぽんじゅうに広ひろく分布ぶんぷし、女房にょうぼを奪いばわれた男おとこが物売ものうりに扮装ふんそうしてお城しろに入はいり、殿様とのさまをお城から追おい出だしてしまう「物売型ものうりがた」と、女房の力ちからで殿様からの難題なんだいを克服こくふくする「難題型なんだいがた」とに二分にぶんされます。

 また、日本にっぽんをはじめ、中国ちゅうごく、東南とうなんアジア、モンゴルなどにも類話が存在そんざいします。

 講談社こうだんしゃより出版しゅっぱんされた国民的こくみんてきアニメーション『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』の絵本えほん『絵姿女房えすがたにょうぼ』は、アニメーションの語かたり口くちを生いかしながら、「よみきかせ」しやすい文章ぶんしょうと、レイアウトのこだわりにより、豊ゆたかな昔むかしばなしの世界せかいを楽たのしむことができます。

 絵本『えすがたにょうぼう』は福音館書店ふくいんかんしょてんより出版されています。お話はなしの舞台ぶたいである鳥取県とっとりけんで語かたり手てのおばあちゃんから直接ちょくせつ聞きいたお話が、美うつくしい日本画にほんがで描えがかれています。

 未來社みらいしゃより出版されている『屋久島やくしまの民話みんわ 第二集だいにしゅう ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 38)』は、屋久島の庶民しょみんの間あいだに伝承でんしょうされた五四篇ごじゅうよんぺんの民話とわらべうたが、たんねんに収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに兵六ひょうろくというお人好ひとよししの百姓ひゃくしょうがおりました。兵六には美うつしくて気立きだててのいい女房にょうぼがいて、二人ふたりは仲良なかよく幸しあわせに暮くらしておりました。

 兵六は女房があまりにも美しいので、ちょっとの間あいだも離はなれることが出来できませんでした。仕事しごともせずに女房の顔かおばかりながめておりました。

 困こまった女房は、自分じぶんの絵えを兵六にもたせて仕事に行いかせることにしました。絵は、いまにも口くちでもきくかと思おもえるほどの生いき写うつしでした。

 兵六は喜よろこんで、女房の絵姿えすがたを板いたに貼はり付つけて、それを見みながらようやく畑仕事はたけしごとをしっかりするようになりました。

 ところがある日ひ、大事だいじな絵姿が風かぜで飛とばされてしまいました。

 慌あわてて兵六は追おいかけましたが、追いつくことができず、絵姿はお城しろの中なかへ飛とばされていきました。

 絵姿を見みた殿様は、絵の中の女性じょせいをひと目めで気きに入いり、自分の妻つまにしようと家来けらいにこの女性を探さがして連つれれてくるように言いいつけました。

 そうして、ついに兵六の女房が見みつかってしまい、女房はお城に連つれて行いかれることになりました。

 女房は桃ももの種たねを兵六に渡わたして、
 「三年さんねん経たったら実みがなりますので、必かならずお城に売うりに来きてください」
と泣なきながら言い残のこして連れて行かれました。

 兵六はしょんぼりとしていましたが、女房の言う通とおりに桃の種を植うえて大事だいじに三年間さんねんかん育そだて、桃の木きは立派りっぱに育ちました。そして、実みのった桃をお城へ売りに行くことにしました。

 一方いっぽう、お城では無理やり結婚けっこんさせられた女房が、三年もの間あいだ、全まったく笑わらわないので殿様はほとほと困り果はてていました。

 そこへ兵六が桃を売りにやってきました。

 久ひさしぶりに兵六の声こえを聞きいた女房は嬉うれしそうに笑い出だしました。

 それを見た殿様は嬉しくなり、兵六をお城に招まねき入いれ、
 「もう一度いちど桃を売ってみなさい」
と言いました。

 女房は兵六の姿すがたを見てまた嬉しそうに笑い、殿様は嬉しくて嬉しくて今度こんどは自分が女房を笑わせようと思い、兵六に代かわって自分が桃売ももうりになると言い出しました。

 兵六と着物きものを交換こうかんし桃売りの姿になった殿様は、女房が笑ってくれるのを見ながらはしゃいでいるうちに、桃売りの格好かっこうでお城の外そとまで出ていってしまいました。

 そんなこととは知しらない門番もんばんは、桃売りが帰かえったのだと思いお城の門もんを閉しめしまいました。

 そして、再ふたたびお城の中に入はいろうとした桃売り姿の殿様に向むかって、
 「怪あやしい桃売りめ」
と言って取とり合あわず追い出してしまいました。

 こうして、兵六は美しい女房とともに殿様として、末長すえながく幸しあわせに暮くらしました。

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解説

 ヤーコプとヴィルヘルムのグリム兄弟きょうだいが編纂へんさんしたドイツの『グリム童話どうわ』では、家いえや時代じだい、社会しゃかいの落伍者らくごしゃが、その弱点じゃくてんをむしろ長所ちょうしょとして活いかし活躍かつやくすることで、一家いっかに繁栄はんえいをもたらしたり、王おうに就ついたりというお話はなしがあります。

 これは、引ひけ目めを感かんじて生いきている者ものには励はげましの出世物語しゅっせものがたりとなります。さらに、代かわり映ばえのしない家や時代、社会に別べつの価値観かちかんを持もち込こむことで、その家や時代、社会を活性化かっせいかし、改革かいかくするという面めんもあります。

 しかし、日本にっぽんでは、庶民しょみんが天皇てんのうや大名だいみょうなどの位くらいの高たかい地位ちいに就くというお話は皆無かいむです。

 そのため、この『絵姿女房えすがたにょうぼ』の様ような百姓ひゃくしょうが殿様とのさまになるという趣向しゅこうは、外国渡来がいこくとらいではないかとする説せつもありますが、一概いちがいにはそうとも言いい切きれません。

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感想

 『絵姿女房えすがたにょうぼ』は、男おとこの夢ゆめを描えがいた物語ものがたりと言いえます。

 結婚前けっこんまえの男性だんせいは、それと想おもう女性じょせいとの結婚けっこんを夢ゆめ見みる時とき、自分じぶんの価値かちを過小評価かしょうひょうかする傾向けいこうがあります。

 それは、男という生いき物ものが、自分の弱点じゃくてんを意識いしきしながら生きているからです。自分のことを完璧かんぺきだと思おもっている男性より、学歴がくれき、収入しゅうにゅう、外見がいけん、性格せいかく、才能さいのうなどに劣等感れっとうかんを持もっているという男性のなんと多おおいことでしょう。そして、男性は無意識むいしきの内うちに「自分が一家いっかの大黒柱だいこくばしらにならなければ」という考かんがえがあるため、昔むかしばなしの中なかの冴さえない男が、時代じだいを超こえて説得力せっとくりょくを持つのです。

 それに加くわえて、多くの男性は女性の価値を過大評価かだいひょうかする傾向があります。

 盲目もうもくの恋こいをしている間あいだは、女性は絶世ぜっせいの美女びじょに他ほかなりません。しかし、結婚をするとそれが間違まちがいだったことにすぐに気きがつきます。だから、このお話はなしの様ような、結婚後けっこんごも見惚みほれるような女性というのは、奇跡きせきに近ちかいと言いえましょう。

 『絵姿女房』の美人びじん女房にょうぼは、しがない平凡へいぼんな男の味方みかたです。男としてこれ以上いじょうの夢はありません。つまり、これはあくまで夢であって現実げんじつではないということです。

まんが日本昔ばなし

『絵姿女房えすがたにょうぼ』
放送日: 昭和51年(1976年)03月27日
放送回: 第0044話(第0025回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 光延博愛
文芸: 沖島勲
美術: 内田好之(青木稔)
作画: 高木三枝子
典型: 難題女房譚なんだいにょうぼたん
地域: 中国地方(鳥取県)

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 『絵姿女房』は「DVD-BOX第だい1集しゅう 第3巻かん」で観みることができます。

最後に

 今回こんかいは、『絵姿女房えすがたにょうぼ』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 「権力けんりょくは肉体にくたいの自由じゆうを奪うばうことができても、心こころの自由までは奪うことができない」ということを改あらためて教おしえてくれるお話はなしです。ぜひ触ふれてみてください!

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