昔話『大歳の火』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 大晦日おおみそかばん、ある貧しい一軒の農家のうかとついできたよめのところに、新年しんねん幸運こううんいねゆたかなりをもたら年神様とししんさまあらわれ、福徳ふくとくあたえるというおはなしが『大歳おおどし』です。

 今回こんかいは、『大歳おおどし』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『大歳おおどし』は『大晦日おおみそか』ともばれ、ふるくから東北とうほく地方ちほう位置いちする秋田県あきたけん山形県やまがたけん中部ちゅうぶ地方ちほう位置いちする石川県いしかわけん長野県ながのけん中国ちゅうごく地方ちほう位置いちする島根県しまねけんなど日本にっぽん各地かくちかたがれている民話みんわひとつです。

 おな題名だいめいのおはなしでありながら、かたられる地域ちいきによって、いくつかの種類しゅるい存在そんざいします。しかし、としくれれにおとれる不思議ふしぎ来訪者らいほうしゃ正体しょうたい神様かみさま というてんと、その来訪者らいほうしゃによって最後さいごまずしかった家族かぞくゆたかになるというてんは、すべてのおはなし共通きょうつうしています。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『大歳おおどし』のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい14かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『どもにかた日本にっぽん昔話むかしばなし 3』は、こぐましゃから出版しゅっぱんされています。かずある日本にっぽん昔話むかしばなしなかから、「かちかちやま」をはじめ「ならなしとり」「桃太郎ももたろう」「おおみそかの」など、どもがよろこぶおはなし厳選げんせんされぜん26ぺん収録しゅうろくされています。方言ほうげんあじわいを適度てきどのこしながら、いていてもわかりやすい言葉ことばで、日本人にっぽんじんこころおくゆたかな世界せかいつむぎだします。

 『加賀かが能登のと民話みんわ だいしゅう ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 58)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。加賀かが能登のとふるくからつたわり、まちむら古老ころうによってなお命脈めいみゃくたもっている民話みんわを、みなみ加賀かがきた加賀かがくち能登のとおく能登のとよっつの地域ちいきけて、「おおどし」など79へん収録しゅうろくしています。

あらすじ

 むかしむかし、あるむらまずしい一軒いっけん農家のうかがありました。そのいえにはわか夫婦ふうふがおり、おっと母親ははおや三人さんにんらしておりました。

 あるふゆのこと、大歳おおどしばんともばれる大晦日おおみそかに、まだとついでからもないわかいおよめさんにおしゅうとめさんがいました。

 「これからは、おまえさんが囲炉裏いろりやさんようにいつけてくだされ。けつしてやしてはならん。囲炉裏いろりさずにまもるのは、おんな仕事しごとだ」
 「へえ」
返事へんじしましたしましたが、およめさんのこころ不安ふあんでいっぱいでした。

 こうして、このから、むらふるくからつたわる「火種ひだねやしてはならん」というならわしは、このいえのおよめさんのあずけられました。

 明日あす元日がんじつという大事だいじよるということもあり、わかいおよめさんは、囲炉裏いろり火種ひだねえてしまわないかと心配しんぱいで、つかれませんでした。そして、夜中よなか布団ふとんからし、囲炉裏いろりはいをかきけてみると、はとうにえていて、火種ひだねはもうありませんでした。

 「どうしよう」
こまったおよめさんは、どこか近所きんじょ火種ひだねをもらえないかと、そとてみましたが、となり近所きんじょしずまっていました。およめさんは、よいかんがえもかばず、かなしいおもいだけがげ、どこくあてもなく夜中よなかみちあるしました

 しばらく闇夜やみよなかすすんでいくと、かわのそばでだれかがをしているのがにとまりました。

 およめさんは、
 「だれかがいている。あのをもらおう」
おもい、闇夜やみよさかほのおのところにちかづいてきました。

 そこでは、おそろしげなおにめんみのをまとったおとこたちが、おおきなまわりでおどっていました。およめさんは、そのおとこたちにおそおそちかづき、こえをかけてみました。

 「火種ひだねけてもらえませんか」
たずねると、そのこえづいたおとこたちは、おどるのをやめ、一斉いっせいにおよめさんのほうきました。

 しばらく、沈黙ちんもく時間じかんつづきましたが、やがておとこたちは、およめさんのこまっている様子ようすて、
 「火種ひだねけてやろう。そのわり、われらのうことをいてくれないか」
条件じょうけんをつけてきました。

 「火種ひだねがいただけるなら、どんなことでもきます」
とおよめさんがこたえると、
 「じつ仲間なかま一人ひとりくなったので、その遺体いたい三日みっかかんだけあずかってくれないか」
おとこたちにわれました。

 覚悟かくごめたおよめさんは、
 「かりました。遺体いたいあずからせていただきます」
火種ひだねしさにそうこたえ、気味きみわる遺体いたいあずかることにしました。

 そして、おも遺体いたいきずりながら、くら夜道よみちかえってきました。

 いえかえったものの、遺体いたいかくすようなところはありません。仕方しかたがないので、およめさんはうし小屋ごやうえわらなか遺体いたいかくしました。

 おとこたちからもらいけた火種ひだねを、囲炉裏いろり用心ようじんぶかくいけると、およめさんはホッとしてとこにつきました。

 としけた翌朝よくあさ、みなで雑煮ぞうにべて正月しょうがついわっておりました。しかし、およめさんは、旦那だんなさんがしきりにうし小屋ごやほうにかけているので、雑煮ぞうにのどとおりませんでした。

 そして、旦那だんなさんが、
 「どうもあそこにおかしなものがある」
って、とうとううし小屋ごやうえるためがりました。

 「これはなんだ!」
うし小屋ごやから旦那だんなさんのおどろこえひびきました。

 およめさんはうつむきながら、
 「すいません。それは、わたし昨晩さくばん…」
わけはなそうとおもかおげると、旦那だんなさんがかかえていたものは、ひと背丈せたけほどあるおおきなきんかたまりでした。

 どういうわけか、一晩ひとばん遺体いたいきんかたまりわっていたのでした。

 そして、およめさんは、火種ひだねらしてしまったこと、かわのそばでいていたおとこたちから火種ひだねけてもらったこと、そして遺体いたいあずかってきたことまで、昨晩さくばん出来事できごと正直しょうじきはなしました。

 それをいたおしゅうとめさんは、
 「そのかたたちは、きっと七福神しちふくじんさんだろう。大晦日おおみそかばんに、七福神しちふくじんさんが年越しにやってきたんだ。おまえさんの真心まごころをめでて、ふくけてくれたのだろう」
うれしそうにいました。

 それから、そのいえ見違みちがえるようにゆたかになったそうです。

解説

 古来こらい日本にっぽんでは、囲炉裏いろり食事しょくじをとり、だんをとり、ほのおあかりとなっていたので、家族かぞく囲炉裏いろりあつまざるをませんでした。

 そのため、囲炉裏いろりから、一家いっか団欒だんらん家族かぞくきずなが、自然しぜんたもたれてきたとおもわれます。

 そして、身分制度しんぶんせいどきびしくさだめられた時代じだい日本にっぽんでは、囲炉裏いろりには統制とうせいを守るため、身分みぶんによりすわ位置いちめられていました。これは、囲炉裏いろりがあるところに存在そんざいした制度せいどなので、武家ぶけ公家くげだけにかぎらず、商家しょうか農家のうかでも同様どうようでした。

 上座かみざにあたる神棚かみだなとこ側近そっきんは「ヨコザ」とばれ、一家いっかあるじか、お坊様ぼうさまなど身分みぶんたか客人きゃくじんしかすわれませんでした。
 「キャクザ」とばれるせきには、外部がいぶ客人きゃくじんすわり、主人しゅじんとの関係かんけい明確めいかくしめされていました。
 台所だいどころちかがわにあたる「カカザ」には主婦しゅふすわりました。
 「キジリ」や「キジリザ」とばれる場所ばしょは、土間側どまがわ下座しもざになり、老婆ろうばむすめ使用人しようにんすわり、まき補給ほきゅう火加減ひかげん調整ちょうせいおこないました。

 家族かぞく囲炉裏いろりかれたなべかこむことで、食事しょくじだけではなく、ゆたかさもまずしさも全員ぜんいんかちってきたことでしょう。

 その役目やくめになってきたのが、じつはカカザにすわ主婦しゅふだったのではとおもいます。

 主婦しゅふがカカザからみな食事しょくじけたことで、その順序じゅんじょ分量ぶんりょうなどの絶妙ぜつみょうなさじ加減かげんまれ、そこから家長かちょうばれる一家いっかあるじ頂点ちょうてんとした身分みぶん制度せいど家族かぞく全員ぜんいん共有きょうゆうすることで、家族かぞくきずなたもってきたとかんがえられます。

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感想

 『大歳おおどし』をむと、「元日がんじつ遺体 いたいとは縁起えんぎでもない」とおもったかたもいらっしゃることでしょうが、これはふゆになりいねなど穀物こくもつしたあとあたらしいとしむか穀物こくもつあたらしいいのち宿やどる、穀物こくもつれい再生さいせい物語ものがたるおはなしです。

 さらに、あたらしいとしむかえるために、むしろ積極的せっきょくてきされるものものです。それが、よめしゅうとめによる「いえ管理者かんりしゃ交代こうたい」というかたち表現ひょうげんされています。

 つまり、新年しんねんからはあたらしいともされ、あたらしい「カカザ」が就任しゅうにんするという、“世代交代せだいこうたい”を象徴しょうちょうした物語ものがたりなのです。

まんが日本昔ばなし

大歳おおどし
放送日: 昭和52年(1977年)01月02日
放送回: 第0108話(正月特番 Bパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 漉田実
文芸: 漉田実
美術: サキスタジオ
作画: 上口照人
典型: 怪異譚かいいたん致富譚ちふたん
地域: ある所

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 『大歳おおどし』は「DVD-BOXだい6しゅう だい26かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『大歳おおどし』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 ひとは、日常にちじょう神様かみさまかおわせていることはできません。『大歳おおどし』でも暗闇くらやみなかひとつのほのお登場とうじょうし、かみ宿やど場所ばしょへといざなわれます。つまり、神様かみさま対面たいめんするには、つね日頃ひごろから心構こころがまえやふるまいいを意識いしきすることが大切たいせつ物語ものがたりいています。ぜひれてみてください!

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