昔話『子育て幽霊』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 母ははの愛あいは死しをも超こえる……切せつなくも温あたたかい母性ぼせい怪談かいだん
 毎晩まいばん、一文いちもんの飴あめを買かいに来くる女おんなの人ひとの正体しょうたいは幽霊ゆうれいでした。そして、その女の人のお墓はかには、亡なくなってから産うみ落おとされた赤あかん坊ぼうが生いきていたのでした。怖こわいというより、わが子こへの愛情あいじょうに心こころが震ふるえるお話はなしが『子育こそだて幽霊ゆうれい』です。

 今回こんかいは、『子育こそだて幽霊ゆうれい』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

子そだてゆうれい 幼児みんわ絵本 桜井信夫 若山憲 ほるぷ出版 『子育こそだて幽霊ゆうれい』は『飴あめ買かい幽霊ゆうれい』とも呼よばれ、落語らくごでも『幽霊ゆうれい飴あめ』という噺はなしで取とり上あげられている有名ゆうめいな怪談かいだん話ばなしです。

 筋立すじだて、結末けつまつなどに細こまかな異同いどうはありますが、似にたようなお話はなしが日本にっぽん各地かくちに広ひろく伝つたえられています。

 『子育こそだて幽霊ゆうれい』は、中国ちゅうごく・南宋なんそう時代じだいの儒学じゅがく者しゃである洪邁こうまいが編纂へんさんした志怪しかい小説しょうせつ集しゅう『夷堅志いけんし』に載のっている怪談かいだん「飴あめを買かう女おんな」と内容ないようが酷似こくじしているため、もともとは中国ちゅうごくの怪談かいだんの翻案ほうあんであったのではないかと考かんがえられています。

 また、親おやの恩おんを説とく内容ないようから、多おおくの僧侶そうりょに説経せっきょうの素材そざいとしても用もちいられてきました。

 絵本えほん『子こそだてゆうれい (幼児ようじみんわ絵本えほん 4)』は、ほるぷ出版しゅっぱんから出版しゅっぱんされています。幽霊ゆうれいのお話はなしですが、怖こわいというより胸むねが締しめ付つけられ、心こころが震ふるえる内容ないようです。桜井信夫さくらいのぶおさんの優やさしい文ぶんが雰囲気ふんいきをぐっと盛もり上あげ、若山憲わかやまけんさんの淡あわい叙情的じょじょうてきな絵えの演出えんしゅつによって、子こを想おもう母親ははおやの愛情あいじょうがひしひしと伝つたわる絵本えほんになっています。

 絵本えほん『こそだてゆうれい (日本にっぽんの民話みんわえほん)』は、教育画劇きょういくがげきから出版しゅっぱんされています。墨絵すみえのような暗くらい淡色たんしょくで忍しのび寄よる井上洋介いのうえようすけさんの絵えは、なにか恐おそろしいことが起おこる予感よかんを抱いだかせますが、さねとうあきらさんの優やさしい文ぶんにより、読よみ終おわった後あとには心こころに温ぬくもりが生うまれます。人間にんげんの温ぬくもり、子こを想おもう母ははの温ぬくもりを感かんじる絵本えほんです。

 『兵庫ひょうごの民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 25)』は、未來みらい社しゃから出版しゅっぱんされています。兵庫ひょうご県けんは、北きたは日本にほん海かいに面めんし、南みなみは瀬戸せと内海ないかいから淡路あわじ島しまを介かいして太平たいへい洋ようへと続つづいています。さらに、中央部ちゅうおうぶには中国ちゅうごく山地さんちが横断おうだんするため、“日本にっぽんの縮図しゅくず”といわれるほど、地質ちしつ、地形ちけい、気候きこうなどの自然しぜん条件じょうけんが地域ちいきによって大おおきく異ことなります。美うつくしい自然しぜんや多様たような風土ふうどに恵めぐまれ、広大こうだいな地域ちいきに生いきた祖先そせんが、苦悩くのうしつつも、くらしの中なかの努力どりょくにより築きずかれ、積つみ重かさねてきた、「蛙かえるの恩おん返がえし」「子こ育そだてゆうれん」などの楽たのしい民話みんわ83篇ぺんと郷土きょうどのわらべうたが収録しゅうろくされています。

 『長崎ながさきの民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 48)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。多おおくの島々しまじまや半島はんとう、湾わんから成なる長崎県ながさきけんは、海うみをとおして大陸やと接せっしてきました。古ふるくから中国ちゅうごくや西欧せいおうの文化ぶんかと接触せっしょくし、キリシタン殉教じゅんきょうの歴史れきしをもつ長崎ながさきの美うつくしい自然しぜんや特異とくいな歴史れきしと風土ふうどから生うまれた民話みんわ80篇ぺんとわらべ歌うたが収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、長崎ながさきの麹屋町こうじやまちという所ところに、一軒いっけんの飴屋あめやがありました。

 ある夏なつの夜よる、店みせの戸とをトントンと叩たたく者ものがいるので、飴屋の主人しゅじんが戸を開あけると、外そとにあまり見みかけない青白あおじろい顔かおをした若わかい女おんなの人ひとが立たっていました。

 「夜分、まことにすみません。これで飴あめをわけてください」
と女の人は言いって、一文いちもんを差さし出だしました。

 飴屋の主人は、
 「こんな夜よる遅おそくにどこの誰だれだろう。気味きみが悪わるい」
と思おもいながら飴を一ひとつ売うりました。

 飴屋の主人が飴を手渡てわたすと、女の人は無言むごんで立たち去さりました。

 それから毎晩まいばん、女の人は、決きまって夜遅くに飴を買かいに来きました。

 七日目なのかめの夜よるのことでした。

 「すみません。今夜こんやはお金かねがなくなってしまったので、飴を一つめぐんでもらえませんか」
と女の人が言うので、飴屋の主人は飴を一つめぐんであげました。

 毎晩、飴を買いに来る女の人を不思議ふしぎに思った飴屋の主人は、帰かえる女の人の後あとをそっとつけて行いきました。

 すると、女の人は麹屋町を抜ぬけて光源寺こうげんじのお墓はかまで来ると、いつの間まにか姿すがたを消けしてしまいました。

 飴屋の主人は辺あたりを見回みわたしましたが、女の人はどこにもいませんでした。

 飴屋が帰ろうとすると、突然とつぜん、赤あかん坊ぼうの泣なき声ごえが暗闇くらやみに響ひびきわたりました。

 驚おどろいた飴屋の主人は、お寺てらの本堂ほんどうに駆かけ込こみ、寝ねていた住職じゅうしょくを起おこしました。

 住職も赤ん坊の泣き声に気きが付つき、二人ふたりは泣き声のする方ほうへ向むかいました。

 すると、その泣き声は、数日前すうじつまえに亡なくなった女の人のお墓から聞きこえてきました。

 二人がそのお墓を掘ほりかえしてみると、あの女の人が生うまれて間まもない元気げんきそうな赤ん坊を抱だいていました。そして、飴屋の主人が女の人に売うった飴を赤ん坊がしゃぶっていたのでした。

 飴を買いに来ていた女の人は、この赤ん坊の母親ははおやの幽霊ゆうれいだったのでした。

 女の人は、お墓に入いれてもらった六文銭ろくもんせんを一文ずつ使つかい、赤ん坊に飴を買って食たべさせていたのでした。

 感心かんしんした住職は、赤ん坊を引ひきとると、亡くなってもなお赤ん坊を育そだてていた母親を供養くようしました。

 それから数日後、飴屋の主人の枕元まくらもとに、あの女の幽霊が現あらわれました。

 女の幽霊は飴屋の主人に深々ふかぶかと頭あたまを下さげると、
 「先日せんじつは、ありがとうございました。何なにかお礼れいをさせてください」
と言いました。

 そこで飴屋の主人は、
 「麹屋町は昔むかしから水不足みずぶそくで困こまっています」
と言いました。

 すると女の幽霊は、
 「明日あすの朝あさ、この櫛くしが落おちている場所ばしょを掘ってください」
と言い姿を消しました。

 翌朝よくあさ、飴屋の主人は店みせの近ちかくで一本いっぽんの櫛を拾ひろいました。

 早速さっそく、そこを掘ってみると冷つめたい水みずがこんこんと湧わき出だしてきました。その湧き水は、いつまでも尽つきることがなく、麹屋町の人ひとたちにとても喜よろこばれたそうです。

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解説

 この『子育こそだて幽霊ゆうれい』の民話みんわが伝つたわるお寺てらは、長崎県ながさきけん長崎市ながさきし伊良林いらばやしにある浄土真宗じょうどしんしゅう本願寺派ほんがんじはの光源寺こうげんじです。

 光源寺こうげんじでは『産女うぶめの幽霊ゆうれい』として伝つたわり、境内けいだいにはこの伝承でんしょうを伝つたえる「赤子塚あかごづか民話みんわの碑いしぶみ」があるほか、幽霊像ゆうれいぞうと伝つたわる不思議ふしぎな「木像もくぞう」と藤原清永ふじわらのきよながの作さくと伝つたわる幽霊ゆうれいの「掛かけ軸じく」が奉まつられています。

 木像もくぞうと掛かけ軸じくは、毎年まいとし8月がつ16日にちに年ねんに一度いちど御開帳ごかいちょうされます。

 『子育こそだて幽霊ゆうれい』の類話るいわは日本にっぽん全国ぜんこくに分布ぶんぷします。その中なかでも特とくに有名ゆうめいなものが、京都府きょうとふ京都市きょうとし東山区ひがしやまくと島根県しまねけん松江市まつえし中原町なかばらちょうに伝つたわる民話みんわです。

 前者ぜんしゃは『飴あめかい幽霊ゆうれい』として伝つたわります。

 その昔むかし、京都市きょうとし東山通ひがしやまどおり松原まつばらの西にしの一帯いったいは風葬ふうそうの地ちであったため、あの世よとこの世よの境さかいの“六道ろくどうの辻つじ”と呼よばれたそうです。そのため、六波羅蜜寺ろくはらみつじや六皇珍皇寺ろくどうちんのうじなど多おおくのお寺てらがあります。

 その六道ろくどうの辻つじには、夜よな夜よな女おんなの幽霊ゆうれいが飴あめを買かいに来きたと伝つたわり、日本にっぽんでもっとも古ふるい飴屋あめやといわれる「みなとや幽霊ゆうれい子育こそだて飴あめ本舗ほんぽ」があります。

 漫画家まんがかの水木みずきしげるさんによる『ゲゲゲの鬼太郎きたろう』は、この飴屋あめやから着想ちゃくそうを得えたことでも有名ゆうめいです。

 後者こうしゃは、『日本にっぽんの面影おもかげ』に「水飴みずあめを買かう女おんな」という題だいで、明治時代めいじじだいの文豪ぶんごうのラフカディオ・ハーンこと小泉八雲こいずみやくもが明治めいじ27年ねん(1844年ねん)に紹介しょうかいしたことにより、一躍いちやく日本中にっぽんじゅうで広ひろく知しられるようになりました。

 舞台ぶたいとなったのは、松江市まつえし中原町なかばらちょうにある大雄寺だいおうじです。

 八雲やくもは物語ものがたりを、「母ははの愛あいは死しよりも強つよいのである」と結むすんでいます。これは「幼おさなくして母ははローザと生いき別わかれた自分じぶんの境遇きょうぐうへの思おもいから出でた言葉ことばであろう」と大雄寺だいおうじの山門さんもんには記しるされています。

 そういえば、小泉八雲こいずみやくもの『知しられぬ日本にっぽんの面影おもかげ』には「鳥取とっとりの蒲団ふとん」として紹介しょうかいされた『ふとんの話はなし』も載のっています。こちらも胸むねが締しめ付つけられる内容ないようです。

 ちなみに、落語らくごでは『幽霊飴ゆうれいあめ』という噺はなしで、舞台ぶたいは京都府きょうとふ京都市きょうとし東山区ひがしやまくにある高台寺こうだいじです。そして、最後さいごに幽霊ゆうれいが「子こが大事だいじ(高台寺こうだいじ)」というのがオチになっています。

 その結末けつまつにひと安心あんしんしました。

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 漫画まんが『ゲゲゲの鬼太郎きたろう 第だい1巻かん』は、講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。昭和しょうわ40年ねん(1965年ねん)『週刊しゅうかん少年しょうねんマガジン』で「墓場はかばの鬼太郎きたろう」として連載れんさい開始かいしした、水木みずきしげるさんの代表作だいひょうさくが新書しんしょサイズで蘇よみがえりました。第だい1巻かんには、驚おどろくべき鬼太郎きたろう出生しゅっせいの秘密ひみつが明あかされた、「鬼太郎きたろうの誕生たんじょう」など、全ぜん7話わが収録しゅうろくされています。

 『日本にっぽんの面影おもかげ ([新編しんぺん]角川かどかわソフィア文庫ぶんこ)』はKADOKAWAから出版しゅっぱんされています。私わたしたち日本人にっぽんじんは、本当ほんとうに日本にっぽんの良よさをわかっているのだろうかと考かんがえさせられる内容ないようです。そのくらい日本にっぽんと日本人にっぽんじんの評価ひょうかが素晴すばらしいです。ラフカディオ・ハーン氏しが外国人がいこくじんの視点してんで見みつめた、明治時代めいじじだい初期しょきの美うつくしい日本にっぽんへの想おもいを色濃いろこく伝つたえる11篇ぺんが収録しゅうろくされています。

感想

 古来こらい、日本にっぽんでは、納棺のうかんの時とき、故人こじんと共ともに一文いちもん銭せんを六枚ろくまい入いれることが習ならわしとされています。

 これは六文ろくもん銭せんと呼よばれ、「三途さんずの川かわ」と呼ばれる「黄泉よみの国くに」に通つうじる渡わたし賃ちんと考かんがえられてきました。

 三途さんずの川かわをはじめ、黄泉よみの国くにと呼よばれる死後しごの世界せかいには六むっつの道みちがあり、生前せいぜんにどのような罪つみや罰ばつを犯おかしたかによって輪廻転生りんねてんしょうの道みちが変かわるといわれています。

 生前せいぜんの罪つみが裁さばかれ、罪つみがなく、きれいな人生じんせいを送おくってきたと審判しんぱんされると、お礼れいに持もっていた六文ろくもん銭せんから一文いちもんずつ道みちに置おいていくという風習ふうしゅうが仏教ぶっきょうではあります。

 さて、『子育こそだて幽霊ゆうれい』に登場とうじょうするお母かあさん幽霊ゆうれいは、三途さんずの川かわを渡わたる時ときに使つかう六文ろくもん銭せんを、赤あかん坊ぼうを育そだてるため、飴あめを買かうことに使つかいました。

 懸命けんめいに赤あかん坊ぼうを死しなせいよう守まもります。

 物語ものがたりの途中とちゅう、七日目なのかめの夜よるにお母かあさん幽霊ゆうれいが、「すみません。今夜こんやはお金かねがなくなってしまったので、飴あめを一ひとつめぐんでもらえませんか」というくだりがありますが、それは六文ろくもん銭せんを使つかい切きってしまったからです。

 亡なくなってもなお、子こどもを守まもろうとする母ははの愛あいは、どこまでも深ふかいですね。

 色々いろいろな愛あいのかたちがありますが、「慈愛じあい」という言葉ことばがあるように、親おやが子こどもを慈いつくしみ、可愛かわいがるような深ふかい愛あいは特別とくべつなものですね。

まんが日本昔ばなし

『子育こそだて幽霊ゆうれい』
放送日: 昭和51年(1976年)08月07日
放送回: 第0073話(第0044回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 矢沢則夫
文芸: 沖島勲
美術: 小関俊之
作画: 矢沢則夫
典型: 怪異譚かいいたん・異常誕生譚いじょうたんじょうたん
地域: 九州地方(長崎県)

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最後に

 今回こんかいは、『子育こそだて幽霊ゆうれい』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 日本にっぽんの昔話むかしばなしには、母性ぼせいや父性ふせいに訴うったえるものがとても多おおいですが、これほど人ひとの魂たましいを揺ゆさぶりる物語ものがたりは、『子育こそだて幽霊ゆうれい』だけでしょう。ぜひ触ふれてみてください!

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