昔話『玉屋の椿』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
※当サイトのリンクには広告を含む場合があります
AdMax

 あさからばんまで、やすみなく何年なんねんはたらつづけて、やっとめた金銀きんぎんを、椿つばき根元ねもとめたことで、椿つばきがその金銀きんぎんってしまい、せっかくめた金銀きんぎんがすっかりなくなってしまうという、主人公しゅじんこう不思議ふしぎ現象げんしょう体験たいけんするおはなしが『玉屋たまや椿つばき』です。

 今回こんかいは、『玉屋たまや椿つばき』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

AdMax

概要

 『玉屋たまや椿つばき』は、むかしばなしなか数多かずおおくみられる「長者ちょうじゃ伝説でんせつ」のひとつで、越後国えちごのくに鯨波くじらなみ(現在げんざい新潟県にいがたけん柏崎市かしわざきし鯨波くじらなみ)がおはなし舞台ぶたいといわれています。

 日本にっぽんむかしばなしなか数多かずおおくみられる「長者ちょうじゃ伝説でんせつ」は、そのおおくが、最後さいご大金おおがねちになりしあわせにらすという幸福こうふく結末けつまつむかえますが、この『玉屋たまや椿つばき』は、皮肉ひにく哀愁あいしゅうちた不思議ふしぎであり意外いがい結末けつまつむかえます。

 さて、おはなし舞台ぶたいである鯨波くじらなみは、現在げんざい新潟県にいがたけん日本海にほんかいめんしたところにあり、鯨波くじらなみ海水浴かいすいよくじょうは「日本海にほんかいがわにおける海水浴かいすいよくじょう発祥はっしょう」といわれ、新潟県にいがたけん代表だいひょうする海水浴かいすいよくじょうで、「日本にっぽんなぎさ百選ひゃくせん」にも入選にゅうせんしています。

 地名ちめいである鯨波くじらなみは、かつてはくじらがたくさんれた場所ばしょであったことに由来ゆらいするとされます。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『玉屋たまや椿つばき』のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい25かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『松谷まつたにみよのむかしむかし じゅう (日本にっぽん伝説でんせつ 5)』は、講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。松谷まつたにみよさんのみやすくととのえられたぶんと、画家がか丸木まるき位里いりさんと丸木まるきとしさんの挿絵さしえ素晴すばらしいです。民話みんわへのあたたかいこころかんじられる一冊いっさつです。「玉屋たまや椿つばき」など22へん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、越後国えちごのくに鯨波くじらなみ玉屋たまや徳兵衛とくべいというおとこがおりました。

 徳兵衛とくべい大変たいへんはたらもので、あさからばんまでやすみなく何年なんねんはたらつづけて、おかねちの立派りっぱ長者ちょうじゃになりました。

 わかくてうつくしいおよめさんをもらい、たまのようなおとこにもめぐまれ、なにひとつ自由じゆうないらしで、人々ひとびとからうらやまれていましたが、財産ざいさんえればえるほど、「泥棒どろぼうはいられたりしないか」という心配しんぱいこり、よるねむれないほどでした。

 そこで、かんがえにかんがえたすえ
 「だれにもられないようにして、かぞれないほどの金銀きんぎんを、うら竹藪たけやぶなかにある一本いっぽん椿つばき根元ねもとめよう」
徳兵衛とくべいかんがえました。

 あるくらばん、こっそり夜中よなかきて、椿つばき根元ねもとふかあなって、だれにもからないように、金銀きんぎんめてしまいました。

 それで、ひと安心あんしんしたものの、つにつれて、
 「あのばんだれかに金銀きんぎんめているところを、こっそりられてはいないだろうか」
心配しんぱいして、よるねむれず、とうとう徳兵衛とくべい病気びょうきになってしまいました。

 いえものまわりのひとたちから、
 「らしに、温泉おんせんでもいってらっしゃい」
徳兵衛とくべいすすめられました。

 徳兵衛とくべいもそのになって、番頭ばんとう一人ひとりれて、加賀かが山中やまなか温泉おんせん湯治とうじにいきました。

 温泉おんせんにつかっているうちに、だんだんからだ具合ぐあいくなり、徳兵衛とくべいよろこんでいました。

 それから、幾日いくにちぎたあるのこと、徳兵衛とくべい温泉おんせんにつかりのんびりしていると、どこからか唄声ばいせいこえてきました。

 「越後えちご鯨波くじらなみ玉屋たまや椿つばきえだ白銀はくぎん黄金こがね

 その唄声ばいせいき、徳兵衛とくべいはギクリとしました。

 そして、心配しんぱいでたまらず、番頭ばんとうんで唄声ばいせいのことをはなすと、
 「玉屋たまや繁盛はんじょうたたえたうたなので、にすることはありません」
徳兵衛とくべい番頭ばんとうからわれました。

 しかし、おぼえがある徳兵衛とくべいにとっては一大事いちだいじです。早速さっそくかご用意よういさせて、るものもえず、鯨波くじらなみいえかえりました。

 帰宅きたくすると、おおあわてでうら竹藪たけやぶ椿つばきのところにかった徳兵衛とくべいは、
 「アッ」
大声おおごえげました。

 それもそのはずです。椿つばきは、夕日ゆうひびて、うた文句もんくとおり、えだ白銀はくぎんに輝き、黄金こがねはなざかりだったのでした。

 あまりのことにおどろいた徳兵衛とくべいは、そのにばったりとたおれてうしない、そのままんでしまいました。

 いえものまわりのひとたちは、突然とつぜん帰宅きたくといい、徳兵衛とくべい卒倒そっとうといい、なにがどうなっているのかさっぱりかりませんでした。

 およめさんが、
 「どうしたのですか」
徳兵衛とくべいたずねると、
 「椿つばき根元ねもとに、家中にある金銀きんぎんめたら、あの椿つばき金銀きんぎんいとってしまった」
徳兵衛とくべいさけびました。

 そして、
 「わしがんだら、椿つばき根元ねもとってみよ」
徳兵衛とくべいはおよめさんにのこすと、いきりました。

 およめさんは、徳兵衛とくべいいつけどおり、椿つばき根元ねもとってみましたが、るものはいしかわらかけばかりで、金銀きんぎんはすっかりなくなっていて、なにつかりませんでした。

 いまでは、玉屋たまやにわうみそことなり、どういうわけか、そのあたりのなみだけはキラキラとかがやき、そのむかしかたっているかのようです。

解説

 大正たいしょう9ねん(1920ねん)に出版しゅっぱんされた中野なかの城水じょうすいの『伝説でんせつ越後えちご』には、つぎのような記載きさいがあります。

 柏崎かしわざきはまつづ鯨波くじらなみへば北国きたぐにっての名所めいしょになった、こととう眺望ちょうぼういたってはにもゆかしいもの、明治めいじ天皇てんのう北越ほくせつ巡幸じゅんこうさいしばおんたまひてめずらしき風景ふうけいよとおおせたまひしとは、げにもっともよと首肯うなずかぬものとてあるまい。
 とうしたいま頭蓋づがいふちとかしょうしてそこさへえぬまでにみずふかくなってゐるが、そのむかしはあのへんまではりくつづきで其處そこには玉屋たまやといふ長者ちょうじゃ屋敷やしきがあったとつたひられてゐる。

 この場所ばしょは、現在げんざいでは、日本海にほんかいのぞ新潟県にいがたけん柏崎市かしわざきし鯨波くじらなみ高台たかだいにあり、風光ふうこう明媚めいび場所ばしょとしてられる御野立おのだち公園こうえんつたわります。

 つまり、『玉屋たまや椿つばき』のおはなしもとになった長者ちょうじゃ玉屋たまや実在じつざいしたということです。

 それから、『玉屋たまや椿つばき』には、そののおはなしがありまして、そのおはなしは、新潟県にいがたけんでは『しろツバキのゆめ』や『ゆめかい長者ちょうじゃ』としてられる『ゆめ』です。

 『越後えちご民話みんわ だい2しゅう ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 70)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。「しろツバキのゆめ」や「ゆめかい長者ちょうじゃ」など、すぐれた伝承でんしょうしゃたちから採集さいしゅうした越後えちごつたわる民話みんわのうち、世界せかいしょ民族みんぞく民間みんかん説話せつわ類似るいじ一致いっちするもの、またとお祖先そせんたちの信仰しんこう精神せいしん生活せいかつのきっかけとなるものを75へんとわらべうたが収録しゅうろくされています。

感想

 『玉屋たまや椿つばき』は、「おかねたいする執着しゅうちゃく」がテーマのおはなしです。

 不思議ふしぎなことに、おかね執着しゅうちゃくすればするほど、ぎゃくげていくといわれます。

 商売しょうばい失敗しっぱいしたり投資とうしそんをしたりすると、「おかねさえあれば」という“拝金はいきん主義しゅぎ”のかんがえにおちいり、こころのエネルギーに支配しはいされます。

 おかね物質ぶっしつです。のエネルギーに支配しはいされたこころあつめられたおかねは、のエネルギーにちているので、いつかは正体しょうたいあらわします。

 それがもっともわかりやすいれいが、東京とうきょう2020オリンピック・パラリンピックでの談合だんごう汚職おしょく事件じけんではないでしょうか。

 この事件じけんおもて沙汰ざたになったのは、のエネルギーにちたおかね正体しょうたいあらわし、こころのエネルギーに支配しはいされた拝金はいきん主義しゅぎしゃもとからはなれていった結果けっかといえます。

 ことわざにありますが、「悪銭あくせんかず」ということです。

 それから、拝金はいきん主義しゅぎしゃになってしまうと、大事だいじなものはおかねですから、「いかにしておかねかせぐか」という思考しこうになり、すべての物事ものごと損得そんとくかんがえるようになります。

 つまり、人間にんげん関係かんけい損得そんとく勘定かんじょうするようになるということです。

 ところが、人間にんげん関係かんけい損得そんとくでははかれません。

 そんな、かね亡者もうじゃした拝金はいきん主義しゅぎしゃからは、おかねだけではなく、ひとはなれていきます。

 おかねは、きていくうえ必要ひつようなものですが、執着しゅうちゃくつよすぎるといたにあうと、『玉屋たまや椿つばき』はいているということです。

まんが日本昔ばなし

玉屋たまや椿つばき
放送日: 昭和52年(1977年)03月05日
放送回: 第0121話(0074 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 『日本の伝説 5 (松谷みよ子のむかしむかし 10)』 松谷みよ子 (講談社)
演出: 漉田実
文芸: 漉田実
美術: 阿部幸次
作画: 高橋信也
典型: 長者ちょうじゃ伝説でんせつ
地域: 中部地方(新潟県)

 Amazonプライム・ビデオで、『まんが日本にっぽんむかしばなし』へ、ひとっび。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』のなかから傑作けっさく101厳選げんせんしました!

 国民こくみんてきアニメーション『まんが日本にっぽんむかしばなし』がDVDになりました!

最後に

 今回こんかいは、『玉屋たまや椿つばき』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 おかねは、きていくうえ必要ひつようなものですが、執着しゅうちゃくつよすぎるといたにあうと、『玉屋たまや椿つばき』はいています。ぜひれてみてください!

AdMax
おすすめの記事