昔話『タヌキと彦市』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 一般的いっぱんてきには“彦一ひこいち”と表記ひょうきされる、熊本県八代地方くまもとけんやしろちほうつたわる『タヌキと彦市ひこいち』は、全国的ぜんこくてき有名ゆうめい民話みんわです。彦一は、日本にっぽんにおける著名ちょめい頓智話とんちばなし主役しゅあくで、「彦一ばなし」とばれる数多かずおおくの頓智話は、現在げんざい人々ひとびとあいされかたがれています。

 今回こんかいは、『タヌキと彦市』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 熊本県八代地方くまもとけんやしろちほうつたわる「彦一ひこいちばなし」の彦一ひこいちは、日本にっぽん代表だいひょうする頓智話とんちばなし主人公しゅじんこうですが、素性すじょうかんしてなぞ部分ぶぶんおおく、空想くうそう人物じんぶつではないかといわれています。

 ただ一方いっぽうでは、肥後国ひごのくに(現在げんざい熊本県くまもとけん)の熊本藩くまもとはん八代城やしろじょう城下町じょうかまち出町でまち居住きょじゅうしていた下級武士かきゅうぶしで、定職ていしょくたず、農作業のうさぎょう傘職人かさしょくにんなどをして生計せいけいてていたともいわれています。

 また、出町の光徳寺こうとくじには彦一のはかがあるとつたえられています。

 「彦一ばなし」の特徴とくちょうは、町人ちょうにんやお殿様とのさまなどのおはなしのみならず、タヌキやキツネなどの動物どうぶつから河童かっぱ天狗てんぐなどの妖怪ようかいまで、素材そざいがとても豊富ほうふだということです。

 そして、彦一がはたらかせる頓智とんちは、ズルいもの権力者けんりょくしゃらしめたりするのではなく、失敗しっぱいをして彦一があかぱじいたり、民衆みんしゅうわらいをりまいたりと、『タヌキと彦市ひこいち』に代表だいひょうされるように、陽気ようきな彦一の人物像じんぶつぞうえがかれています。

 『ひこいちばなし (むかしむかし絵本えほん 1)』はポプラしゃから出版しゅっぱんされています。彦一ひこいち知恵ちえ大胆だいたんさが、大川悦生おおかわえっせいさんによる肥後ひご方言ほうげんぶん箕田源二郎みたげんじろうさんによる繊細せんさいによって、とてもたのしい絵本えほんとなっています。「天狗てんぐかくみの」と「河童かっぱり」が収録しゅうろくされています。

 『彦一ひこいちさん (寺村輝夫てらむらてるおのとんちばなし)』はあかね書房しょぼうから出版しゅっぱんされています。寺村輝夫てらむらてるおさんよるぶんは、すこ文字数もじすうおおいですが、テンポがいためおさんが一人ひとりすすめることも可能かのう児童書じどうしょです。そして、ヒサクニヒコさんによる挿絵さしえ本当ほんとう可愛かわいいので、ちいさなおさんでもきることなく、かせにたのしく参加さんかすることでしょう。頓智話とんちばなしが11ぺん収録しゅうろくされています。

 『彦一ひこいちとんちばなし <じょう>』は偕成社かいせいしゃから出版しゅっぱんされています。権威けんいにおもねず、よわいものをたすける民衆みんしゅう英雄えいゆうともいえる彦一ひこいちが、小山勝清おやまかつきよさんのぶんによって愉快ゆかい痛快つうかいえがかれています。頓智話とんちばなし上巻じょうかんには52へん下巻げかんには47ぺん収録しゅうろくされています。

 『夕鶴ゆうづる彦一ひこいちばなし』には、「夕鶴ゆうづる」や「彦一ひこいちばなし」のほかに「三年寝太郎さんねんねたろう」や「こぶとり」など民話みんわからまれた名作めいさく7へん収録しゅうろくされています。ちなみに、「夕鶴」は劇作家げきさっかである木下順二きのしたじゅんじ最高傑作さいこうけっさくわれています。

あらすじ

 むかしむかし、あるむら彦市ひこいちという頓智とんちはたらおとこんでいました。彦市が住むいえ裏山うらやまには、いつもひとだましてはわるさをするタヌキが住んでいました。

 あるさむよる、タヌキが旅人たびびとけて彦市の家にやってきました。彦市は旅人がタヌキとかっていましたが、素知そしらぬかおで家にまねれ、さけなどをってあげました。

 するとタヌキが彦市に、
 「この一番いちばんこわいものはなにかね?」
たずねるので、
 「じつ饅頭まんじゅうると恐怖きょうふからだふるえるんだよ」
と彦市は真面目まじめかおをしてこたえました。

 翌日よくじつ、家のまえには饅頭がやまほどまれていてあったので、彦市はうれしくてたまりませんでしたが、
 「こんなおそろしいことをしたのはだれだ!」
と彦市は怖がるふりをして、はは二人ふたりで饅頭をおなかいっぱいべました。

 その様子ようすて、タヌキははじめて騙されたとづきました。

 おこったタヌキは、今度こんど一晩中ひとばんじゅうかけて、村中むらじゅういしころをあつめて、それを彦市のはたけみました。

 あくるあさ、彦市は畑を見てびっくりしましたが、すこしもがず、わざとおおきなこえで、
 「これは石肥三年いしごえさんねんって、とてもいことだ。これがもしうまくそだったら大変たいへんなことになっていた」
いました。

 それをいたタヌキは「しまった」とおもい、畑から石を全部ぜんぶはこすと、そのばんのうちに苦労くろうして馬の糞をあつめ、今度こんどは馬の糞を彦市の畑にまきました。

 つぎの日の朝、彦市が畑を見るとおもったとおりになっていたので、
 「これはまたこまったことをしてくれたな」
とにっこりしながら言いました。

 タヌキのおかげで、馬の糞がなくなり村がうつしくなり、そして、そのとしはタヌキがまいてくれた馬の糞のおかげで、彦市の畑は大豊作だいほうさくとなりました。

 彦市は騙せないとくやしがるタヌキに、大豊作のおれいにと彦市はタヌキにトウモロコシをあげました。

解説

 「彦一ひこいちばなし」とばれる彦一ひこいちにまつわる民話みんわは、八代地方やしろ中心ちゅうしんとした熊本県くまもとけんでは現在げんざいかたがれています。

 彦一は、熊本県民くまもとけんみんにはとてもしたしみのある人物じんぶつであると同時同時に、児童文学じどうぶんがく戯曲ぎきょくなどにもさかんにげられることもおおいため、日本にっぽん代表だいひょうする頓智者とんちものでもあります。

 物語ものがたりからられる彦一の人物像じんぶつぞうは、こころただしい善人ぜんにんであり、としころどもではなく老人ろうじんでもない、むしろはたらきざかりの青年せいねんといった印象いんしょうで、妻子さいしがいます。

 いえ長屋ながやみ、生活せいかつ程度ていどひくく、その日暮ひぐしとして語られることが多いですが、どんな職業しょくぎょうであったのかは、はっきりしません。

 おおきな体格たいかく紹介しょうかいされ、やすく、人々ひとびとこころなごませることにけた性格せいかくであったようです。

 神通力じんつうりきなどといったものはわせていなく、無学むがくであるが智恵ちえ才覚さいかくがあり、とにかく頓智とんち機知きち窮地きゅうちりぬけることが多いです。

 それらは、まさに庶民しょみん願望がんぼうです。彦一のあかるさは、いってみれば庶民の明るさです。だから頓智話が語りつがれ、現在もを和ませるわらいを提供ていきょうしてくれるのでしょう。

感想

 昔話むかしばなしには、時々ときどき 人間にんげんちからでは、とうていおよびもつかないことをやってのける英雄えいゆう特別とくべつちからもの登場とうじょうしますが、『タヌキと彦市ひこいち』の主人公しゅじんこうである彦一ひこいち(彦市ひこいち)は、頓智とんち相手あいてらしめたり、ぎゃふんといわせたりします。

 そして、おはなしえると、もみんな気持きもちがスカッとします。

 「彦一ひこいちばなし」と呼ばれる彦一にまつわる頓智話とんちばなしは、日本にっぽん伝統でんとう文化ぶんかなかそだてられた民衆みんしゅうの“智恵ちえ”だとおもいます。

 つまり、彦一は、民話みんわ世界せかいきる民衆の希望きぼう願望がんぼうであったといえるでしょう。

 彦一のように智恵をしぼれば、希望や願望はかなうという教訓きょうくんつたえているのでしょう。

まんが日本昔ばなし

タヌキと彦市ひこいち
放送日: 昭和51年(1976年)05月29日
放送回: 第0058話(第0034回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 水沢わたる
文芸: 沖島勲
美術: 山守正一
作画: 福田皖
典型: 頓智話とんちばなし彦一噺ひこいちばなし
地域: 九州地方(熊本県)


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最後に

 今回こんかいは、『タヌキと彦市ひこいち』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 一般的いっぱんてきには彦一ひこいち表記ひょうきされる、『タヌキと彦市』の主人公しゅじんこうである彦一にまつわる民話みんわの「彦一ばなし」は、権力者けんりょくしゃらしめるのではなく、民衆みんしゅうわらいをく、けっして英雄えいゆうではない彦一の姿すがたきとえがかれています。児童文学じどうぶんがくなどにもさかんにげられることもおおいおはなしなので、ぜひれてみてください!

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