昔話『大沼池の黒竜』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 あなたは、愛あいする人ひとを守まもるため空そらへと飛とべますか
 『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』は、美うつくしき黒姫くろひめと、彼女かのじょに恋こいした黒龍こくりゅうの悲恋ひれん伝説でんせつであり、長野県ながのけん・黒姫山くろひめやまに今いまも残のこる、切せつなくも美うつくしい永遠えいえんの愛あいの物語ものがたりです。

 今回こんかいは、『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

黒姫ものがたり 黒姫物語 くろひめものがたり 黒姫伝説 いぶき彰吾 北原志乃 鬼灯書籍 長野県 黒姫山 黒姫 黒龍 長野県ながのけん上水内郡かみみのちぐん信濃町しなのまちにある黒姫山くろひめやまには、その名称めいしょうの由来ゆらいとなる“日本にっぽんで最もっとも切せつない赦ゆるしの物語ものがたり”が伝つたわります。

 美うつくしい黒姫くろひめと若わか侍ざむらいに化身けしんした黒龍こくりゅうが主役しゅやくの悲恋ひれんの物語ものがたりは、『黒姫くろひめ伝説でんせつ』と呼よばれ、その悲かなしい物語ものがたりから山やまには「黒姫くろひめ」の名なが付つけられ、古ふるくから信仰しんこうの対象たいしょうとされてきました。

 その長野県ながのけん北部ほくぶに伝つたわる『黒姫くろひめ伝説でんせつ』を基もとに、再話さいわした物語ものがたりが『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』です。

 標高ひょうこう2,053mの黒姫山くろひめやまは成層せいそう火山かざんで、その麓ふもとにはコバルトブルーの水面すいめんが神秘しんぴ的てきな火口かこう湖この大沼池おおぬまいけがあります。

 『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』は、黒姫山くろひめやまの名称めいしょうの由来ゆらいとなった黒姫くろひめと、彼女かのじょに恋こいした大沼池おおぬまいけの主ぬしである黒龍こくりゅうの悲哀ひあいの物語ものがたりを軸じくに、悲かなしい結末けつまつながらも、約束やくそくの重要じゅうよう性せい、永遠えいえんの絆きずな、そして自然しぜん災害さいがいを示唆しさしています。

 それでは、これから黒姫山くろひめやまを体感たいかんする旅たびに出でましょう。

 物語ものがたりから感かんじる風かぜは、あの時ときの黒姫くろひめの吐息といきのように、きっと私わたしたちの頬ほおを冷つめたく優やさしく撫なでることでしょう。

 絵本えほん『黒姫くろひめものがたり』は、鬼灯ほおずき書籍しょせきから出版しゅっぱんされています。信濃国しなののくに(現在げんざいの長野県ながのけん)の北部ほくぶに伝つたわる民話みんわを基もとに、姫ひめと龍りゅうの恋こいの物語ものがたりを、いぶき彰吾しょうごさんが文ぶんを担当たんとうし、北原きたはら志乃しのさんが美うつくしいイラストで描えがいています。幼おさない姫ひめが白蛇しろへびと出会であい、結婚けっこんの約束やくそくを交かわすところから物語ものがたりが始はじまります。愛あいと戦たたかいのテーマを、いぶきさんが民話みんわを基もとに優やさしさや戦たたかいの激はげしさを生いき生いきとした文ぶんで紡つむぎ、北原きたはらさんが繊細せんさいさと色彩しきさい豊ゆたかな絵えで表現ひょうげんしたことで、物語ものがたりが心こころに深ふかく染しみ入いります。それと同時どうじに、民話みんわの伝統でんとうを現代げんだい的てきに再さい解釈かいしゃくした点てんが、読よみ手てに新鮮しんせんな感動かんどうを与あたえます。また、巻末かんまつの資料しりょう編へんには、物語ものがたりの舞台ぶたいである長野県ながのけん・黒姫山くろひめやま周辺しゅうへんの歴史れきしや案内あんないが付ついているので、地域ちいきの魅力みりょくを深ふかく知しるきっかけにもなります。北きた信濃しなのに伝つたわる古ふるい民話みんわを、鮮あざやかに蘇よみがえらせる、切せつなくも美うつくしい心こころ温あたたまる絵本えほんです。

 絵本えほん『くろひめものがたり (チャイルド絵本えほん館かん 日本にっぽんの民話みんわ 10)』は、チャイルド本社ほんしゃから出版しゅっぱんされています。この物語ものがたりは、信越しんえつ国境こっきょうにそびえる黒姫山くろひめやまが、どうしてその名なで呼よばれるようになったかの由来ゆらいを語かたる、長野県ながのけんに伝つたわる伝説でんせつです。その伝説でんせつを、竹崎たけざき有斐ゆうひさんが平易へいいな言葉ことばで丁寧ていねいに再話さいわし、赤坂あかさか三好みよしさんが柔やわらかなタッチで風景ふうけいや人物じんぶつを描えがいたことで、子どもこどもたちの想像そうぞう力りょくを刺激しげきする絵本えほんとなっています。物語ものがたりは、黒姫くろひめが花見はなみの宴うたげで白しろい蛇へびに酒さけを注そそいだことから始はじまり、最後さいごは白蛇しろへびに化身けしんしていた黒龍こくりゅうによって起おこされた、洪水こうずいという大だい規模きぼな自然しぜん災害さいがいで幕まくを下おろします。とてもダイナミックで、スケールの大おおきい物語ものがたりなのに、赤坂あかさかさんが嵐あらしの迫力はくりょくと最後さいごの穏おだやかな山やまの風景ふうけいを対比たいひさせたことで、より情感じょうかんが増まし、胸むねが締しめつけられます。黒姫くろひめが、愛情あいじょうに基もとづく行動こうどうとして描えがかれている点てんが印象いんしょう的てきで、それと同時どうじに、約束やくそくの重おもさという教訓きょうくんを伝つたえています。伝統でんとう的てきな愛あいの物語ものがたりを、現代げんだいでも楽たのしめるよう工夫くふうがされていて、まるで絵え巻物まきものを見みているような一冊いっさつです。

 絵本えほん『黒姫くろひめ物語ものがたり (信州しんしゅう・読よみ聞きかせ民話みんわ絵本えほんシリーズ 11)』は、郷土きょうど出版しゅっぱん社しゃから出版しゅっぱんされています。長野ながの冬季とうきオリンピック開催かいさいを機きに、信州しんしゅうの伝説でんせつを世界せかいに届とどけたいという想おもいが込こめられた、信州しんしゅう・読よみ聞きかせ民話みんわ絵本えほんシリーズ全ぜん17巻かんの第だい11弾だんです。本書ほんしょの最大さいだいの特徴とくちょうは、日本語にほんごだけではなく、英語えいごとフランス語ごが併記へいきされている点てんで、国際こくさい的てきな視点してんで、信州しんしゅうの伝説でんせつを楽たのしめる貴重きちょうな絵本えほんです。長野県ながのけん北信ほくしん地方ちほうに伝つたわる、戦国せんごく時代じだいの北きた信濃しなの・高梨たかなし政盛まさもりの娘むすめ・黒姫くろひめが白蛇しろへびの姿すがたで現あらわれた黒龍こくりゅうに恋こいされ、力ちから比くらべや大だい洪水こうずいが起おきる『黒姫くろひめ伝説でんせつ』を基もとに、信州しんしゅう児童じどう文学ぶんがく会かいに所属しょぞくし児童じどう文学ぶんがくに携たずさわってきた羽生田はにゅうだ敏さとしさんが再話さいわし、丸山まるやま武彦たけひこさんが絵えを担当たんとうしました。丸山まるやまさんの絵えは、信州しんしゅうの山々やまやまや川かわを柔やわらかな色しき調ちょうで描えがき、龍りゅうの迫力はくりょくと人間にんげんの優やさしさが調和ちょうわした温あたたかみのあるタッチたっちが魅力みりょくです。表紙ひょうしの風景ふうけいからも伝つたわるように、自然しぜんの力ちから強づよさと人々ひとびとの絆きずなが視覚しかく的てきに心こころに響ひびきます。黒姫山くろひめやまの名称めいしょうの由来ゆらいや、大だい洪水こうずい伝説でんせつを通とおじて、自然しぜんとの共生きょうせいを静しずかに教おしえてくれる部分ぶぶんに、心こころが深ふかく触ふれます。信州しんしゅうの古ふるい伝説でんせつを温あたたかく蘇よみがえらせる一冊いっさつです。

 『信濃しなのの民話にんわ ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 1)』は、未來みらい社しゃから出版しゅっぱんされています。信濃しなのの古老こうろうや伝承でんしょう者しゃから収集しゅうしゅうした物語ものがたりを、民話みんわ研究けんきゅう家かの瀬川せがわ拓男たくおさんと児童じどう文学ぶんがく作家さっかの松谷まつたにみよ子こさんが丁寧ていねいに編纂へんさんしています。民俗学みんぞくがく的てきな視点してんと親したしみやすい語かたり口くちが融合ゆうごうしたことで、学術がくじゅつ的てきかつ親したしみやすい内容ないように仕し上あがっています。信濃しなのの神秘しんぴ的てきな風土ふうどと人々ひとびとの心こころを映うつし出だす、「でいだらぼっち・でいらんぼう」「黒姫くろひめ物語ものがたり」「おしになった娘むすめ」「野々海ののみの物語ものがたり」「鯨くじらの夫婦ふうふ」「きつねのお礼れい」「山鳥やまどりの尾お」「子供こどもの好すきな薬師やくしさまの話はなし」「百田ももたばなし」「狐きつね檀家だんか」「力ちからもち権兵衛ごんべえの話はなし」など、宝物たからもののような民話みんわ50篇ぺんと郷土きょうどのわらべうたが収録しゅうろくされています。

 『自然しぜんの精霊せいれい (日本にっぽんの民話みんわ 2)』は、角川かどかわ書店しょてんから出版しゅっぱんされています。日本にっぽんを代表だいひょうする児童じどう文学ぶんがく作家さっか・松谷まつたにみよ子こさんと民話みんわ研究けんきゅう家かの瀬川せがわ拓男たくおさん、そして作家さっか・清水しみず真弓まゆみ(辺見へんみじゅん)さんが編纂へんさんした、日本にっぽんの民話みんわシリーズ全ぜん12巻かんの第だい2弾だんです。丸木まるき位里いりさん・俊としさんのご夫婦ふうふによる幻想げんそう的てきな挿絵さしえが、物語ものがたりをより生いき生いきと彩いろどっています。第だい2巻かんは「自然しぜんの起源きげん」「精霊せいれい物語ものがたり」「自然しぜんの恩恵おんけい」「ふるさとの自然しぜん」の四よん部ぶに分わけられ、自然しぜん界かいの不思議ふしぎな存在そんざいが人々ひとびとの運命うんめいを優やさしく、時ときには厳きびしく揺ゆさぶる姿すがたを描えがき出だした民話みんわが66篇ぺん厳選げんせんして収録しゅうろくされています。269ページにわたる本書ほんしょは、昔むかしの日本人にっぽんじんが自然しぜんに寄よせた畏敬いけいの念ねんを、現代げんだいの私わたしたちに静しずかに伝つたえてくれます。例たとえば、「美作みまさかのあまんじゃく」「壱岐いきのあまんしゃぐめ」「月つきへ行いった子こ」は、自然しぜんの厳きびしさや敬うやまう心こころの大切たいせつさを語かたり、「蛇へびの目玉めだま」や「やろか水みず」は、禁断きんだんの愛あいや誘惑ゆうわくの恐おそろしさを警告けいこくします。「火ひの鳥とり」「宝たからのひょうたん」「鏡かがみ沼ぬま」は、信仰しんこうの奇跡きせきや誠実せいじつな努力どりょくの喜よろこび、超ちょう自然しぜんの絆きずなを浮うき彫ぼりにします。「大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう」は、すべてを超越ちょうえつした愛あいと絆きずなの美うつくしさを魅みせます。読よみ終おえると、精霊せいれいたちの息吹いぶきが心こころに蘇よみがえり、自然しぜんとの共生きょうせいを改あらためて考かんがえさせられます。自然しぜん好ずきな人ひとや環境かんきょう教育きょういくに関心かんしんのある人ひとには、普遍ふへん的てきな智慧ちえが詰つまった、心こころに優やさしい風かぜを呼よぶ一冊いっさつです。

あらすじ

 むかしむかし、信濃国しなののくにの北部ほくぶの中野鴨ヶ嶽なかのかもがたけに小館城こたてじょうという城しろがあり、城主じょうしゅの高梨摂津守政盛たかなしせっつのかみまさもりには黒姫くろひめというとても美うつくしい姫君ひめぎみがおりました。

 ある春はるの日ひのこと、政盛まさもりは黒姫と共ともに家臣かしんを連つれて花見はなみに出でかけました。政盛が黒姫の酌しゃくで盃さかずきを傾かたむけていると、どこからか一匹いっぴきの小ちいさな白蛇しろへびが姿すがたを現あらわしました。

 政盛から、
 「黒姫、白蛇も盃が欲ほしいようだ。酌をしてやるがよい」
と戯ざれた様子ようすで促うながされたので、黒姫は恐おそれることもなく白蛇の前まえに杯を差さし出だしました。

 白蛇は、盃の酒さけを飲のみ干ほすと、しばらく黒姫の顔かおをじっと見みつめた後あと、その場ばから姿を消けしました。

 その夜よ、黒姫のもとに狩衣かりぎぬを着きた小姓こしょうが現れ、
 「私わたしは昼間ひるまに姫君ひめぎみから盃をいただいた者ものです。どうか、あなた様さまを妻つまに迎むかえたい」
と言いいました。

 小姓の言葉ことばに黒姫は戸惑とまどいながらも、その気高きだかく美しい姿に、姫ひめも心こころを惹ひかれました。

 「そのようなことは、父ちちのところへお話はなしください」
と黒姫が答こたえると、
 「では、後日ごじつあらためて伺うかがいます」
と小姓は言い残のこし、そして自分じぶんがここに来きた証あかしとして鏡かがみを置おいて姿を消しました。

 数日後すうじつご、小姓は政盛のもとを訪たずね、黒姫を嫁よめにもらいたいと申もうし入いれました。

 小姓の物腰ものごしは柔やわらかく非ひの打うち所どころがありませんでした。

 政盛から見みても立派りっぱな青年せいねんだったので、小姓に政盛が身元みもとをたずねると、
 「私は志賀山しがやまの大沼池おおぬまいけの主ぬしの黒龍こくりゅうです。花見の宴うたげで姫君に盃をいただいてから、姫君のことがどうしても忘わすれられないのです」
 さらに小姓は続つづけて、
 「姫君をさらって行いくことはたやすいことですが、それは道理どうりに反はんするので、こうして伺いました。黒姫をぜひ妻としてお迎むかえしたい」
とお願ねがいしました。

 驚おどろいた政盛は、
 「人間にんげんではないものに黒姫を嫁とつがせるわけにはいかない」
と断ことわり小姓を追おい返かえしました。

 それから毎日まいにちのように小姓は城を訪ねて政盛に同おなじ願いを繰くり返しました。

 しかし、政盛も大事だいじな黒姫を龍りゅうの化身けしんに嫁がせるわけにはいかず、小姓の申し出でを断り続けました。

 小姓が訪れるようになってから百日ひゃくにち、政盛は一計いっけいを案あんじ、
 「私が馬うまに乗のり城の周まわりを二十一にじゅうい周しゅうするので、その後あとを遅おくれずについてくることができれば黒姫をやろう」
と小姓に試練しれんを課かすことにしました。

 翌日よくじつ、政盛が馬に乗り城の周りを走はしり始はじめると小姓は自みずからの脚あしで城の周りを走りました。しかし、さすがに人ひとの姿では追おいつくことができず、ついに黒龍の姿に戻もどって政盛の後を追いかけました。

 すると、各所かくしょに逆植さかうえに刀かたなが備そなえられており、地ちを這はう黒龍はこの刀によって見るも無惨むざんに切きり裂さかれました。

 これは政盛の計略けいりゃくでした。

 それでも黒龍は怯ひるむことなく、死しに物もの狂くるいで約束やくそくの二十一周を走り終おえました。

 そこで、
 「約束どおり黒姫を」
と願う黒龍に対たいし、政盛はせせら笑わらって、
 「龍の化身が姫を嫁にするなど、身みの程ほどを知しれ」
と言って、手下てしたの者たちに斬きり掛かからせました。

 この仕打しうちに黒龍は激怒けきどし、
 「湯ゆの山やま四十八よんじゅうはち池いけの水みずを落おとそう」
と叫さけび、傷きずついた体からだで鴨ヶ嶽かもがたけの頂上ちょうじょうへと昇のぼっていきました。

 その途端とたん、辺あたり一面いちめんには激はげしい嵐あらしが訪おとずれました。

 容赦ようしゃなく大雨おおあめは続き、ついには洪水こうずいとなって村むらを襲おそいました。

 何なんの因果いんがもない村人むらびとたちが水みずに飲のまれる様子ようすを見て黒姫は、
 「黒龍は約束を守まもったではありませんか。これでは黒龍がかわいそうです」
と小姓に酷ひどい仕打ちをした政盛を責せめました。

 そして、黒龍に向むかって嵐を鎮しずめるよう叫び、いつかの日ひに黒龍が置おいていった鏡を高たかく投なげ上あげ黒龍の心こころを鎮めようとしました。

 すると黒龍が姿を現し、黒姫を背せに乗せると天てんに駆かけ上がりました。

 黒姫は洪水で荒あれ果はてた村を見て、
 「約束を破やぶったのは父ですが、なぜ罪つみもない民たみを」
と黒龍を責めました。

 黒姫の優やさしい心に触ふれた黒龍は、荒れ狂くるう自分の心を鎮め、
 「お許ゆるしください。人間に裏切うらぎられた時とき、我われを忘わすれて怒いかりに身を任まかせました」
と涙なみだを流ながしながら黒姫に許しを乞こいました。

 こうして黒龍は大沼池を捨すて、鏡に導みちびかれるままに新あたらしい山やまの池いけへと移うつり住すみ、黒姫と一緒いっしょに暮くらすことになりました。

 これより、その山は黒姫山くろひめやまと呼よばれるようになり、山の池には今いまでも黒龍と黒姫が幸しあわせに暮らしているといいます。

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解説

 『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』は、「黒姫伝説くろひめでんせつ」として日本中にっぽんじゅうで広ひろく知しられています。

 この物語ものがたりは他ほかにも、龍蛇りゅうじゃの化身けしんと結むすばれることに苦くるしむ黒姫くろひめが自害じがいする「大蛇だいじゃになった黒姫くろひめ」や、水害すいがいに苦しむ民たみを救すくうために黒姫が龍蛇を退治たいじする「黒姫物語くろひめものがたり」、さらには黒姫くろひめ自身じしんが龍蛇になってしまう「黒姫様くろひめさまと七ななつ池いけ」など、さまざまな内容ないようの物語が伝つたわりますが、すべてに共通きょうつうして、地元じもと領主りょうしゅの娘むすめが黒姫で、その姫ひめに恋こいをした龍蛇との悲恋ひれんに関かんしての物語となっています。

 それは、それだけ人々ひとびとが、この黒姫山くろひめやまに思おもいを馳はせてきたということの表あらわれではないでしょうか。脈々みゃくみゃくと続つづいてきた黒姫山と共ともにある里さとの暮くらしがあったからでしょう。

 つまり、数多かずおおくの伝説でんせつが生うまれたのは、人ひとと山やまとの密接みっせつな関係かんけいがあったからということです。

 それから、原作げんさく・脚本きゃくほん・監督かんとくが宮崎みやざき駿はやおで、平成へいせい13年ねん(2001年ねん)に劇場げきじょう公開こうかいされたスタジオジブリの長編ちょうへんアニメーション映画えいが『千せんと千尋ちひろの神かみ隠かくし』には、続編ぞくへんが存在そんざいするとの噂うわさがあり、それは『水みずの帰かえり道みち』という題名だいめいと言いわれていて、実じつは、そのお話はなしは「黒姫くろひめ伝説でんせつ」が基もとになっていると言いわれています。

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 長ちょう編へんアニメーション映画えいが『千せんと千尋ちひろの神かみ隠かくし』は、失うしなわれたアイデンティティを探さがす、謎なぞめいた色白いろじろの美び少年しょうねん・ハクの切せつない旅路たびじを描えがいた、幻想げんそう的てきな物語ものがたりです。平成へいせい13年ねん(2001年ねん)7月がつ20日かに劇場げきじょう公開こうかいされ、監督かんとく・脚本きゃくほん・原作げんさくは宮崎みやざき駿はやお氏しで、制作せいさくはスタジオジブリです。第だい75回かいアカデミー賞しょう長ちょう編へんアニメ映画えいが賞しょうを受賞じゅしょうしました。少女しょうじょ・千尋ちひろが迷まよい込こんだ湯屋ゆや「油あぶら屋や」で出で会あったハクは、自身じしんの名前なまえと正体しょうたいを忘わすれてしまい、経営けいえい者しゃである魔女まじょ・湯ゆ婆婆ばーばの弟子でしとして、厳きびしく振ふる舞まいながらも千尋ちひろを助たすけ続つづけます。失うしなわれた名前なまえと記憶きおく、そしてハクと千尋ちひろの絆きずなが交錯こうさくする中なか、特とくに白龍はくりゅうに化身けしんしたハクが、支配しはいから解放かいほうされ、千尋ちひろとの過去かこにつながるラストシーンは、空そらを舞まう白龍はくりゅうの優雅ゆうがさと、ハクの儚はかない表情ひょうじょうとのギャップが、アイデンティティの喪失そうしつと再生さいせいを象徴しょうちょうしているようで、胸むねに迫せまる美うつくしさです。何度なんど観みてもハクの微ほほ笑えみに胸むねが熱あつくなる作品さくひんです。

感想

 この黒姫くろひめと黒龍こくりゅうを題材だいざいとした『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』ほど、人々ひとびとを惹ひきつけ、その時代じだいの彩いろどりを帯おび、現在げんざいも生いき続つづける民話みんわは他たに存在そんざいしないと思おもいます。

 「黒姫伝説くろひめでんせつ」として日本中にっぽんじゅうで広ひろく知しられる物語ものがたりは、黒龍と表現ひょうげんされた自然災害しぜんさいがいと人々ひとびとの戦たたかいという確たしかな現実げんじつが、黒姫という悲劇ひげきの主人公しゅじんこうを得えることで、悲恋ひれん物語ものがたりとしての魅力みりょくもあわせ持もつ民話です。

 黒姫山は木々きぎの深ふかい緑みどりに包つつまれた山やまです。日本海にほんかいからの海風うみかぜを受うけて、すぐに霧きりに包まれる神秘的しんぴてきな山やまです。山を隠かくし流ながれる雲くもを見みていると、不思議ふしぎと龍りゅうを連想れんそうします。

 この自然しぜんと人々の物語への願ねがいがなくならないかぎり、『大沼池の黒竜』は、永遠えいえんに語かたり継つがれ、生いき続けることでしょう。

まんが日本昔ばなし

『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』
放送日: 昭和51年(1976年)05月22日
放送回: 第0057話(第0033回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 水沢わたる
文芸: 沖島勲
美術: 山守正一
作画: スタジオアロー
典型: 黒姫伝説くろひめでんせつ・異類婚姻譚いるいこんいんたん・龍蛇譚りゅうじゃたん・蛇聟入譚へびむこいりたん
地域: 中部地方(長野県)

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最後に

 今回こんかいは、『大沼池おおぬまいけの黒竜こくりゅう』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 「黒姫伝説くろひめでんせつ」としても知しられる『大沼池の黒竜』の主人公しゅじんこうの黒龍こくりゅうと黒姫くろひめは、今いまも黒姫山くろひめやまに遊あそび、暮くらします。そんな伝説でんせつの黒姫山を、これからも里さとの人々ひとびとは見上みあげて暮くらしていくことでしょう。ぜひ触ふれてみてください!

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