昔話『たにし長者』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
※当サイトのリンクには広告を含む場合があります

 『たにし長者ちょうじゃ』は、子こどものいない老夫婦ろうふうふが子どもを恵めぐんでくださるよう水神様すいじんさまに祈願きがんすると、老婆ろうばに子どもができました。しかし、生うまれてきた子どもは人間にんげんではなく“タニシ”でした。

 今回こんかいは、『たにし長者』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

たにし長者 日本の民話えほん 岩崎京子 長野ヒデ子 教育画劇 来歴らいれきは不明ふめいな『たにし長者ちょうじゃ』ですが、小ちいさなものが突然とつぜんに立派りっぱな若者わかものに変身へんしんし、幸福こうふくな結婚けっこんをするところに特色とくしょくがあります。

 そのような物語ものがたり形式けいしきの昔話むかしばなしは、『御伽草子おとぎぞうし』の「一寸法師いっすんぼうし」と共通きょうつうしています。

 実際じっさいに「たにし長者」でも打うち出での小槌こづちで打うつと一人前いちにんまえの若者わかものになったという類話るいわがあり、「たにし長者」と「一寸法師」とは、ただの混交こんこうとは思おもえない全体的ぜんたいてきな交錯こうさくがあります。

 日本にっぽんではタニシを水神様すいじんさまの使者ししゃとする信仰しんこうがあるため、この昔話は、そうした宗教的しゅうきょうてき観念かんねんを背景はいけいにして成なり立たったと考かんがえられます。

 絵本えほん『たにし長者ちょうじゃ (日本にっぽんの民話みんわえほん)』は教育画劇きょういくがげきから出版しゅっぱんされています。「信しんじるものは救すくわれる」という教訓きょうくんが含ふくまれる物語ものがたりですが、岩崎京子いわさききょうこさんの文ぶんはそれが前面ぜんめんに出でることなくとても楽たのしいです。そして長野ながのヒデ子こさんのほのぼのとした絵えは、今いまにも動うごきだしそうなほど可愛かわいいです。

 岩波文庫いわなみぶんこより出版されている『こぶとり爺さん・かちかち山やま』に「たにし長者ちょうじゃ」が収載しゅうさいされています。『こぶとり爺さん・かちかち山やま』は、じっくりと読よみ進すすめることで、多面性ためんせいと意外性いがいせい、そして物語ものがたりの魅力みりょくを味あじわうことができる大人おとなが読む昔むかしばなしです。

 『日本昔話百選にほんむかしばなしひゃくせん』は、挿絵さしえがほとんどないため、文字もじばかりの一見いっけん面白おもしろくなさそうな本ほんですが、読よみ始はじめるとすぐに昔むかしばなしの世界せかいへ引ひき込こまれます。方言ほうげん口調くちょうで書かかれた文章ぶんしょうですが、方言ほうげんの説明せつめいが書かれているなど、読よみやすい工夫くふうがされています。

 『遠野とおのむかしばなし (鈴木すずきサツ自選じせん50話わ)』は熊谷印刷出版部くまがいいんさつしゅっぱんぶから出版しゅっぱんされています。遠野とおのの民話みんわの語かたり部べとして知しられた岩手県遠野市いわてけんとおのしの鈴木すずきサツさんが語かたる昔話むかしばなしをまとめたものです。表記ひょうき方法ほうほうを工夫くふうすることで、鈴木サツさんの語り口調くちょうが極力きょくりょく再現さいげんできるよう努つとめている、素晴すばらしい内容ないようの本ほんです。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに貧まずしい老夫婦ろうふうふがいました。老夫婦には子こどもがなく、子どもを授さずかれるようにと水神様すいじんさまに毎日まいにちお詣まいりしていました。

 するとある日ひ、子どもが産うまれました。でもそれは人間にんげんではなく“タニシ”でした。それでも老夫婦は水神様からの授かりものだからと大切たいせつに育そだてました。そして二十年にじゅうねんの歳月さいげつが流ながれましたが、タニシはタニシのままでした。

 そんなある日、タニシが二人ふたりを楽らくにしたいと言いうので、タニシの言われるままに、長者ちょうじゃに納おさめる年貢ねんぐの米俵こめだわらの上うえにタニシを乗のせました。タニシは米俵を運はこぶ馬うまを上手じょうずに操あやつり、それを見みた長者はすっかり感心かんしんして、自分じぶんの娘むすめの婿むこにならないかと言いました。タニシも喜よろこんでそれを承知しょうちしました。長者は二人の娘に尋たずねると、姉娘あねむすめは怒おこって断ことわりますが、妹娘いもうとむすめは水神様の申もうし子ごであるならきっと良よいことがあるでしょうと言い、タニシの嫁よめになることにしました。

 長者の娘は、老夫婦によく仕つかえ、よく働はたらくので、暮くらしらし向むききもよくなりました。夫婦もこれも水神様のおかげだと一生懸命いっしょうけんめいに水神様を信仰しんこうしました。

 こうして一年いちねんが過すぎぎた頃ころ、タニシと嫁は薬師様やくしさまのお祭まつりに出かけました。嫁は願掛がんかけをするため、タニシを田たんぼのふちに置おき、その場ばを離はなれました。

 それを見ていた長者の姉娘はタニシの大好物だいこうぶつな餌えさをまき、田んぼからたくさんのタニシが出でてくるのを待まちました。そして、姉娘は次つぎにカラスに向むかって「タニシやるぞ」と言いうと、たくさんのカラスがやってきて口くちばしでタニシをつつき始はじめました。

 そこに嫁が戻もどってきて、慌あわててタニシの上から覆おおいかぶさってかばいました。すると嫁の帯おびの下したのタニシが大おおきくなり、立派りっぱな若者わかものの姿すがたになりました。二人は喜よろこんで一緒いっしょに家いえに帰かえり、それを見た老夫婦も、知しらせを聞きいた長者もたいそう喜びました。

 その後ご、若わかい夫婦は商あきないを始はじめます。商売しょうばいは大繁盛だいはんじょうし、タニシ長者と呼よばれるようになりました。

解説

 人間にんげんと違ちがった種類しゅるいの存在そんざいと人間とが結婚けっこんする異類婚姻いるいこんいんを題材だいざいにした民話みんわは、『鶴つるの恩返おんがえし』や『雪女ゆきおんな』などのように不幸ふこうな結末けつまつになるものが多おおいのに対たいして、『たにし長者ちょうじゃ』は幸福こうふくな結婚けっこんに至いたる結末けつまつです。

 それは、『たにし長者』が『桃太郎ももたろう』や『一寸法師いっすんぼうし』などに代表だいひょうされる異常誕生いじょうたんじょうを題材にした民話でもあることが関係かんけいしているのではないかと考かんがえられます。

 通常つうじょうの異類婚姻の場合ばあい、生うまれや出身しゅしんといった、その出自しゅつじは問題もんだいにされず、どこからかやって来きて男おとこや娘むすめに求婚きゅうこんし、結末では去さっていきます。しかし、『たにし長者』のように婚姻こんいん関係かんけいが続つづき幸福こうふくな結末が生しょうじるという通常の異類婚姻の民話とは異ことなる展開てんかい・結末が生じるためには、それなりの理由りゆうを必要ひつようとしたと考かんがえることができます。

 その理由となるのが、異常誕生ではないでしょうか。

 つまり、主人公しゅじんこうのタニシは誕生たんじょうの時ときから特別とくべつな存在そんざいであり、それゆえに普通ふつうでは起おきない出来事できごとが起きたと理解りかいすることができます。

 異類婚姻のお話はなしの場合、主人公は女性じょせいであることが多おおく、別べつの存在である異類いるいと結婚を通とおしていかに関係をとるかが、物語ものがたりの中心ちゅうしんとなります。

 ところが『たにし長者』では異類婚姻となるタニシの息子むすこが主人公となっています。

 まず、主人公が普通ではない誕生をしたことから物語は語られます。それゆえタニシという異常な誕生で生まれた主人公が、成長してどのようになっていくのかが物語の中心となります。

 『桃太郎』や『一寸法師』のような偉業いぎょうを成なし遂とげた英雄えいゆうの物語は、特別な存在であることを示しめすためにこのような異常誕生が語られることが多いのです。それゆえ、『たにし長者』が英雄の物語へと展開する可能性かのうせいがあります。

 つまり、異類婚姻という視点してんからみれば、『たにし長者』で異類が人間になることを可能かのうにした展開として、関係を切きるのでなく関係をつなぐ結婚となったことを挙あげることができます。

 すなわち、娘が父ちちのいうことを聞きいて結婚を受うけ入いれます。そして、タニシは人間となり二人の関係は結婚後けっこんごも末長すえながく続つづくという結末となります。

感想

 『たにし長者ちょうじゃ』は、初はじめから終おわりまで神様かみさまへの祈いのりと信仰しんこうを描えがいています。

 ここで信仰される神様は、人々ひとびとが暮くらしの中なかで水みずと関かかわることによりって生うみだし信しんじてきた水の神様である水神様すいじんさまです。

 さて、お話はなしで重要じゅうような役割やくわりを果はたすのが嫁よめとなる長者ちょうじゃの妹娘いもうとむすめです。

 先まず、タニシの嫁になろうと自みずから申もうし出でることは、消極的しょうきょくてきで犠牲的ぎせいてきな精神せいしんでなく、積極的せっきょくてきに受容じゅようする精神であると考かんがえます。

 この時点じてんで嫁は、タニシを人間にんげんに変かえようという意図いとはなく、タニシそのものをありのままに受うけ入いれて大切たいせつにする姿勢しせいです。

 嫁が薬師様やくしさまへお祈りしたことにより、タニシは人間にんげんの姿すがたとなりましたが、仮かりにタニシのままだとしても、嫁は変かわらずに、タニシである夫おっとを大切たいせつにし続つづけたと思おもわれます。

 嫁の受容じゅようは、何なにかを期待きたいしたり見返みかえりを求もとめたりするものではないということです。

 受容することの重要性じゅうようせい、そしてそこに神様の祝福しゅくふくがあることを『たにし長者』は教おしえています。

まんが日本昔ばなし

『たにし長者ちょうじゃ』
放送日: 昭和50年(1975年) 03月04日
放送回: 第0018話(第0009回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 藤本四郎
脚本: 平見修二
美術: 藤本四郎
作画: 樋口雅一
典型: 異常誕生譚いじょうたんじょうたん・異類婚姻譚いるいこんいんたん・致富譚ちふたん
地域: 東北地方(岩手県)

 Amazonプライム・ビデオで、『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』へ、ひとっ飛とび。

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』の中なかから傑作けっさく101話わを厳選げんせんしました!

 国民的こくみんてきアニメーション『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』がDVDになりました!

最後に

 今回こんかいは、『たにし長者ちょうじゃ』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 日本にっぽんではタニシを水神様すいじんさまの使者ししゃとする信仰しんこうがあり、この『たにし長者』は、そうした宗教的しゅうきょうてき観念かんねんを背景はいけいにして成なり立たったと考かんがえられます。ぜひ触ふれてみてください!

おすすめの記事