昔話『蛸八長者』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『蛸八長者たこはちちょうじゃ』は、蛸八たこはちばれるたこなわりのおとこが、金刀比羅宮ことひらぐう参詣さんけいかける途中とちゅうふねわせた長者ちょうじゃ旦那だんなさんとはなしをするうちに、長者さんのむすめ自分じぶん息子むすこよめにもらうことになるというおはなしです。

 今回こんかいは、『蛸八長者』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『蛸八たこはち長者ちょうじゃ』は、『たこ長者ちょうじゃ』や『北風きたかぜ長者ちょうじゃ』ともばれ、東北とうほく地方ちほう位置いちする青森県あおもりけん秋田県あきたけん中部ちゅうぶ地方ちほうに位置する新潟県にいがたけん佐渡島さどがしま中国ちゅうごく地方ちほうに位置する島根県しまねけん隠岐諸島おきしょとう四国しこく地方ちほうに位置する愛媛県えひめけん香川県かがわけん佐柳島さなぎしま徳島県とくしまけん九州きゅうしゅう地方ちほうに位置する長崎県ながさきけん対馬つしま鹿児島県かごしまけん種子島たねがしまなどに伝承でんしょうされており、日本にっぽん各地かくち類話るいわ点在てんざいしていますが、どれもすこしずつ内容ないようことなります。

 面白おもしろいことに、津軽つがる海峡かいきょう沿岸えんがんから日本海にほんかい沿岸えんがんにかけて類話が集中しゅうちゅうし、また瀬戸内海せとないかい周辺しゅうへんにも分布ぶんぷしていることから、『蛸八長者』は海岸部えんがんぶ中心ちゅうしんに伝承されたものとかんがえられます。

 紙芝居かみしばいたこやたこざえもん (紙芝居かみしばいベストセレクション だい3しゅう)』は童心社どうしんしゃから出版しゅっぱんされています。昔話むかしばなし蛸長者たこちょうじゃ』の紙芝居です。前半ぜんはん言葉ことばちがいや認識にんしき解釈かいしゃくちがいによって、物語ものがたり面白おもしろおかしくすすみますが、後半こうはんものてくる内容ないようなので、おはちょっぴりこわおもいをするかもしれませんが、きもわったおよめさんのおかげで、最後さいごみなしあわせになります。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『蛸八長者たこはちちょうじゃ』のおはなしは『まんが日本昔ばなし だい14かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『讃岐さぬき民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 5)』は未來社 みらいしゃから出版しゅっぱんされています。万葉まんよう歌人かじん柿本人麻呂かきのもとのひとまろ和歌わかうたわれるほど、ふる時代じだいから今日こんにちまで、「世界せかい宝石ほうせき」とたたえられる瀬戸内海せとないかいまもられ、四季折々しきおりおりみのりが約束やくそくされている讃岐さぬき平野へいやにより、温暖おんだんみやすい風土ふうどめぐまれた土地とち讃岐さぬきです。「さぬきのくにのはじまり」をはじめ「北風長者きたかぜちょうじゃ」など、おだやかでたのしい庶民しょみん生活せいかつつたわる民話みんわが63ぺんとわらべうたが収録しゅうろくされています。

 『屋久島やくしま民話みんわ だいしゅう (くれないまき)』は南方新社なんぽうしんしゃから出版しゅっぱんされています。南九州みなみきゅうしゅう代表だいひょうする民俗学者みんぞくがくしゃ下野敏見しものとしみさんが、屋久島やくしま古老ころうから収集しゅうしゅうしたしまつたわる数々かずかず民話みんわが54ぺん収録しゅうろくされています。みどりまきつづく、だいしゅうとなるくれないまきは、さらにパワーアップして、「蛸八長者たこはちちょうじゃ」のような面白おもしろいおはなしだけではなく、島内とうない各地かくちに伝わるわらべうたも楽譜がくふきで収録されています。

 角川書店かどかわしょてんより出版しゅっぱんされた『日本にっぽん民話みんわ<5> (長者ちょうじゃへのゆめ)』は、瀬川拓男せがわたくおさん・松谷まつたにみよさん・辺見へんみじゅんさんが編者へんしゃとなり、日本にっぽんむかしばなしから“長者ちょうじゃ栄華えいが没落ぼつらく” を主題しゅだいとした伝説でんせつが44ぺん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、播磨国はりまのくに海辺うみべむらに、たこなわりの親子おやこんでいました。毎日まいにちたこって、それをってらしをてていましたが、生活せいかつらくではありませんでした。

 あるとき息子むすこ二十一にじゅういっさいになったので、讚岐さぬき金刀比羅宮ことひらぐう参詣さんけいしようと、蛸縄捕りの親父おやじ四国しこくけて出発しゅっぱつしました。

 江戸えど時代じだい、金刀比羅宮の参詣には、金毘羅船こんぴらぶねばれるぶね利用りようすることが一般的いっぱんてきでした。

 蛸縄捕りの親父が金毘羅船にると、ふねなか参詣人さんけいにん大変たいへんにぎわいでした。

 おおはしゃぎの親父は、
 「さぁ旦那だんな、まぁ一杯いっぱいいきねぇ」
と船の中でった、大金おおがねちとして有名ゆうめい大坂おおさか鴻池こうのいけ長者ちょうじゃさんといをしながら、あれこれとはなしをしていました。

 鴻池の長者さんは、はたらめにはたら毎日まいにちだったが、このたび念願ねんがんかなってやっと金刀比羅宮の参詣にやってきたとのことでした。

 そうこうしているうちに、船は金刀比羅宮のうみ玄関口げんかんぐちである丸亀港まるがめこう到着とうちゃくしました。

 そして、蛸縄捕りの親父は、金毘羅船の中で知り合った鴻池の長者さんと一緒いっしょに、金刀比羅宮の参詣を無事ぶじませました。

 その宿やど二人ふたりかっていた時、長者さんが親父にたずねました。
 「わしの屋敷やしきせまいので、どうもむさぐるしくてかなわん。あなたさまところは、つぼはどれほどありますか」
 鴻池の長者さんは、「屋敷やしきひろさは何坪なんつぼあるか」といているのに、親父は蛸縄捕りなので、「蛸壺たこつぼかず」を聞いているのだと勘違かんちがいをして、
 「へえ、つぼなら、おそらくせんほど」
こたえました。
 ちょっとおどろいた長者さんは、さらに尋ねました。
 「ほお、せんとはひろいですな。わしのところ屋根やね瓦葺かわらぶきですが、おたくは」
と聞くので、
 「胡麻ごまはしらかや屋根やね月星つきほしながめる、といったところじゃろうか」
と親父は答えました。
 長者さんはいよいよ驚いて、
 「ほほう、五万本ごまんぼんはしらとは大変たいへんものですな。それに、つきほしながめられるとは、えらく風流ふうりゅうつくりですな」
と感心しきりでした。

 すると、今度こんどは蛸縄捕りの親父が、
 「二十一にじゅういちになる息子むすこいえにいるが、よめるにもったえんがなくてこまっています」
いました。

 親父は、「自分じぶんいえ貧乏びんぼうなので、てくれるよめがいない」と言ったのに、またまた長者さんは勘違いをしました。

 「それほどの家柄いえがらなら、なかなかものはいないでしょう。しかしさいわい、うちにはむすめ三人さんにんおるので、すえはどうじゃ、よろしければ、わしのむすめよめにもらってくださいな」
と長者さんからたのまれました。

 これには、蛸縄捕りの親父も驚き、をぱちくりしていると、
 「あとで、うちの番頭ばんとううかがわせるので、あなたさまのお名前なまえおしえてくだされ」
と鴻池の長者さんは、蛸縄捕りの親父に言いました。

 この時、蛸縄捕りの親父は、鴻池の長者さんが大変な勘違いをしていることにがつきましたが、いまさら自分じぶんまずしい蛸縄捕りの漁師りょうしとは言えなくて、くちからまかせに、
 「北風きたかぜじゃ」
と答えたのでした。

 こうして二人はわかれました。

 なにからなにまで勘違かんちがいした長者ちょうじゃさんは、大坂おおさか鴻池こうのいけかえると、早速さっそく
 「『北風きたかぜ』という網元あみもとてくれ」
番頭ばんとうめいじました。

 播磨国はりまのくにかけた番頭は、うみちかくのまち出会であったひとに、
 「北風きたかぜさんのおたくは、ごぞんじないでしょうか」
たずねました。
 すると、「北風きたかぜ?」と、一瞬いっしゅんかれた人はくびをかしげましたが、尋ねている場所ばしょ北風きたかぜれる漁師町りょうしまちのことだとおもい、
 「ああ、北風きたかぜなら漁師りょうし道具どうぐ一揃ひとそろしてあるから、すぐにわかるよ」
こたえました。

 それを番頭は、「まちひとでもっているくらいだから、これはよほどの網元あみもとだ」とおもい、「これなら、わざわざくこともあるまい」と大坂の鴻池にかえり、
 「北風きたかぜさんは、とてもおおきな網元あみもとでした」
と長者さんに報告ほうこくしました。
 それを聞いた長者さんは、
 「そうか。それならすぐによめりの支度したくをしないとだな」
いました。

 いよいよよめりの、長者さんのむすめは、嫁入り道具どうぐ荷馬車にばしゃやまほどんで、北風のいえかいました。

 そしていてみると、なるほど蛸壺たこつぼせんほどならべてありましたが、北風の家は、胡麻粒ごまつぶ胡麻ごまはしらに、むしろをいただけのあばらで、草葺くさぶきの屋根やねにはたくさんのあないているので、たしかに月星つきほしながめることが出来できる家でした。

 娘はかなしくなりましたが、
 「これもわたしまれったごえんでしょう」
と言って、北風の家に嫁入りしたのでした。

 そののちたこなわりの家は、嫁のってたおかね元手もとでおおきなふねい、船主ふなぬしになってりょうはじめました。そして、蛸縄捕りの親子おやこ一生懸命いっしょうけんめいはたらいて、持船もちぶねをどんどんやしていきました。

 それからというもの、なにもかもがトントン拍子びょうし上手うまくいって、やがて貧乏びんぼうだった蛸縄捕りの家は、あとには千石船せんごくぶね四十八よんじゅうはっせきつほどの、本当ほんとうの長者になりました。

解説

 日本にっぽん各地かくち点在てんざいする『蛸八長者たこはちちょうじゃ』の類話るいわは、まずしいおとこ結婚けっこんするむすめ出身しゅしんを「大坂おおさか鴻池こうのいけむすめ」と限定げんていし、“大坂おおさかふかかかわりがある”としているてん共通きょうつうしているのにたいして、長者ちょうじゃの娘と結婚する男の職業しょくぎょうは、「たこなわり」とは限定せず、「漁師りょうし」や「魚売うおうり」など“さかなかかわる職業しょくぎょう”としています。

 この点から、『蛸八長者』は漁民ぎょみんふか関係かんけいがある民話みんわかんがえられます。

 さて、江戸えど時代じだい寛文かんぶん12ねん(1672年)に、幕府ばくふめいけた河村瑞賢かわむらずいけんによって、日本海にほんかい沿岸えんがん西にしまわりに、酒田さかたから佐渡さど小木おぎ能登のと福浦ふくら関門かんもん海峡かいきょう瀬戸内海せとないかいとおって大坂おおさかいたり、さらに紀伊きい半島はんとう迂回うかいして、江戸えどに至る西廻り航路こうろ整備せいびされ、のちに航路が陸奥国むつのくに(現在げんざい福島県ふくしまけん宮城県みやぎけん岩手県いわてけん青森県あおもりけん)や蝦夷えぞ(現在げんざい北海道ほっかいどう)まで延長えんちょうされました。

 不思議ふしぎなことに『蛸八長者』の分布ぶんぷは、この西廻り航路とほぼかさなっているということです。

 つまり、西廻り航路をつうじて様々さまざま文化ぶんか交流こうりゅうがあったと考えられるので、西廻り航路のふなりたちによって、『蛸八長者』は日本各地にえられたのではないでしょうか。

感想

 人間にんげんにとってもっと大切たいせつなものはなんでしょうか?

 それは“感謝かんしゃ”ではないでしょうか。

 人間は、このでは一人ひとりではきていけない無力むりょくなものです。おおくのひとたちとのつながりによって、ささえられ、そだてられています。いだけではなく、生活せいかつささえている様々さまざま仕組しくみをつくうごかしている人たち、色々いろいろものを作り出している人たちにも支えられているのです。家族かぞく友達ともだち、ご近所きんじょまちくに、そして世界中せかいじゅうの人たちや組織そしきにも支えられています。

 そして、それ以上いじょうに、かみばれるおおいなる存在そんざいこそが人間のみなもとであり、人間を生かしている根本こんぽんなのです。

 その大いなる存在への感謝かんしゃ畏敬いけいねんわすれずに、つねに感謝することが大切です。

 すべてに感謝し、そのおもいをそのままいのると、そこには平和へいわやすらぎがもたらされます。

 だから、「ありがとう」という言葉ことばわすれないようにしましょう。

 だれかにお世話せわになったときには、「ありがとう」とこえに出していましょう。声に出さない場合ばあいでも、こころなかで「ありがとう」の言葉をとなえましょう。

 それこそが、日々ひび生活せいかつゆたかにしてくれる魔法まほう言霊ことだまなので。

まんが日本昔ばなし

蛸八長者たこはちちょうじゃ
放送日: 昭和51年(1976年)11月13日
放送回: 第0095話(第0058回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 小林三男
文芸: 沖島勲
美術: 下道一範(青木稔)
作画: 上口照人
典型: 致富譚ちふたん
地域: 近畿地方(兵庫県)/四国地方


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最後に

 今回こんかいは、『蛸八長者たこはちちょうじゃ』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 まずしい田舎いなからしのおとこが、大富豪だいふごう都会とかいおんなむすばれて、見事みごと出世しゅっせする物語ものがたりが『蛸八長者』です。そして、それと同時どうじに、陸上りくじょう海上かいじょう交通こうつう発達はったつにより、伊勢神宮いせじんぐうをはじめとする金刀比羅宮ことひらぐう善光寺ぜんこうじなどへの寺社じしゃ参詣さんけいひろがりという、江戸えど時代じだい社会しゃかい経済けいざい特徴とくちょう色濃いろこ投影とうえいした昔話むかしばなしでもあります。ぜひれてみてください!

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