昔話『幽霊のさかもり』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 掛かけ軸じくから美女びじょ幽霊ゆうれいが出でてきて酒さか盛もり!?
 薄うす暗ぐらい骨董こっとう屋やの店先みせさき。一いち枚まいの古ふるい掛かけ軸じくに描えがかれた、儚はかなげで美うつくしい女おんなの幽霊ゆうれい。誰だれもが怖こわがって避さけるはずのその絵えが、ある夜よる、突然とつぜん「本物ほんもの」として動うごき出だす──『幽霊ゆうれいのさかもり』は、 ただの怪談かいだんじゃない!ユーモアと意外いがい性せい、ちょっとした人情にんじょう味みが詰つまった、心こころ温あたたまる(?)お話はなしです。

 今回こんかいは、『幽霊ゆうれいのさかもり』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

よっぱらったゆうれい 日本の民話えほん 岩崎京子 村上豊 教育画劇  『幽霊ゆうれいのさかもり』は、 女おんなの幽霊ゆうれいが夜よな夜よな現あらわれるという怪談かいだんを装よそおいつつ、女おんなの幽霊ゆうれいが酒さけを飲のんだり、騒さわいだりするコミカルな展開てんかいが中心ちゅうしんです。

 女おんなの幽霊ゆうれいが「絵えから出でてくる」という、非ひ日常にちじょう的てきな状況じょうきょうを笑わらいに変かえるお話はなしです。

 『幽霊ゆうれいのさかもり』の基もとになっているお話はなしは、「足あしのない幽霊ゆうれい」を初はじめて描えがいたことで知しられる、江戸えど時代じだい中期ちゅうきの画家がか・円山まるやま応挙おうきょの「幽霊図ゆうれいず(返魂香はんごんこう之の図ず)」を素材そざいとして扱あつかっています。

 そして、明治めいじ〜大正たいしょう時代じだいの新聞しんぶん記者きしゃで戯作げいさく者しゃの鶯亭おうてい金升きんしょうの原作げんさくとして伝つたわり、上方かみがた落語らくごの噺はなしとして落語らくごで取とり上あげられている『応挙おうきょの幽霊ゆうれい』を脚色きゃくしょくし、今日こんにちの昔むかし話ばなしの形かたちになったのではないかと指摘してきされています。

 それから、講談こうだんにも『応挙おうきょの幽霊ゆうれい』との題だいで、応挙おうきょが描えがいた幽霊ゆうれいを語かたるものがありますが、こちらは応挙おうきょが描えがいた幽霊ゆうれいのモデルとなった遊女ゆうじょの幽霊ゆうれいが現あらわれ、その悲かなしい物語ものがたりや 「幽霊図ゆうれいず(返魂香はんごんこう之の図ず)」が生うまれた経緯けいいを語かたる、怪談かいだん要素ようその強つよい物語ものがたりで、まったくの別べつなお話はなしです。

 絵本えほん『よっぱらったゆうれい (日本にっぽんの民話みんわえほん)』は、教育きょういく画劇がげきから出版しゅっぱんされています。村上むらかみ豊ゆたかさんの艶つやっぽい絵えで、女おんなの幽霊ゆうれいもなんだか色いろっぽいです。それなのに岩崎いわさき京子きょうこさんによる語かたり口調くちょうの文ぶんはまさに落語らくごで、幽霊ゆうれいということを忘わすれてしまうほど楽たのしい酒宴しゅえんが描えがかれています。

 雑誌ざっし『時空じくう旅人たびびと 2021年ねん9月がつ号ごう』は、三栄さんえい書房しょぼうから出版しゅっぱんされています。伝説でんせつのアニメ『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』から傑作けっさくと呼よばれる幽霊ゆうれいと怪談かいだんのお話はなしが、制作せいさく秘話ひわも紹介しょうかいしながら23篇ぺん収録しゅうろくされています。 同どう番組ばんぐみの持もつ、素朴そぼくさと先進せんしん性せいがにじみ出でてくる好こう企画きかくで、名作めいさくを振ふり返かえりながら物語ものがたりが伝つたえたかった“心こころ”に触ふれることができます。

 CD『六代目ろくだいめ・蝶花楼ちょうかろう馬楽ばらく (応挙おうきょの幽霊ゆうれい・転宅てんたく)』は、ユニバーサルミュージックから発売はつばいされています。1974~1999年ねんの25年間ねんかんに渡わたり、東海とうかいラジオ放送ほうそうが名古屋なごやに演者えんじゃを招まねき公開こうかい録音ろくおんにて収録しゅうろくし放送ほうそうされた長寿ちょうじゅ番組ばんぐみ「なごやか寄席よせ」シリーズです。珍めずらしい噺はなしを好このんだ馬楽ばらく師匠ししょうの堅実けんじつで上手うまい落語らくごは、登場とうじょう人物じんぶつや情景じょうけいが目めに浮うかぶようです。落語らくごの面白おもしろさをたっぷりとご堪能たんのうください。

あらすじ

 むかしむかし、ある所ところに、一軒いっけんの骨董屋こっとうやがありました。

 そこへ一人ひとりのお客きゃくがふとやってきて、店内てんないの色々いろいろな掛かけ軸じくを手てに取とり始はじめました。

 そこで骨董屋は、訪たずねて来きたお客に幽霊ゆうれいの掛け軸を勧すすめました。

 「これは、そんじょそこらの女おんなの幽霊の絵えとはちょっと違ちがいます。枯柳かれやなぎなどはありませんが素晴すばらしいものですよ」
と骨董屋はお客の気きをそそるような勧め方かたをしました。
 さらに、
 「これは(円山まるやま)応挙おうきょの絵だと思おもうんですがね」
と骨董屋はお客に畳たたみ掛けました。
 お客は、
 「オウキョでもラッキョでもいい。気に入いった。これはいくらか」
と骨董屋に訊たずねました。

 この掛け軸は、ただ同然どうぜんで譲ゆずり受うけたガラクタのようなものだったので、骨董屋は二十文にじゅうもんという意味いみで二本にほんの指ゆびを見みせました。
 するとお客は、
 「なんと二十両にじゅうりょうか。それは安やすい」
と大喜おおよろこびして、明日あすに代金だいきんを持もってくるからと手付てつけの一両いちりょうを置おいて帰かえっていきました。

 その夜よ、骨董屋は思おもわぬ大金たいきんを手てにしてすっかり嬉うれしくなり、幽霊の掛け軸の前まえで一人で祝いわい酒ざけを始はじめました。

 「しかし、二十両だと思おもって見みると、お前まえさんはなかなかの美人びじんな幽霊だね」
 酔よっ払ぱらって快こころよい気分きぶんになった骨董屋は、掛け軸の中なかの女の幽霊に、
 「お前もちょっと出でてきて酌しゃくでもしてくれや」
と声こえをかけました。

 するとそのとたん、夏なつだというのに辺あたりがスウーっと冷つめたくなり、風かぜもないのに灯あかりがパッと消きえて、ふと気きづくと目めの前に見知みしらぬ女の人ひとが立たっていました。
 「ん?まさか、その顔かおは」
骨董屋が掛け軸を見ると、掛け軸はもぬけの空からで、真まっ白しろでした。
 「ぎゃあー!出たあー!」

 掛け軸の幽霊は美人と褒ほめられたのが嬉しくて、本当ほんとうに出てきてしまったそうです。

 そして、自分じぶんは円山まるやま応挙おうきょが書かいたものだというのでした。

 初はじめは怖こわがっていた骨董屋も、美人な幽霊のお酌にすっかりいい気分になりました。

 おまけにこの幽霊の女、お酒さけが強つよいこと。

 二人ふたりは夜通よどおし、飲のめや歌うたえやのどんちゃん騒さわぎをしました。

 骨董屋は酔いつぶれてしまいました。

 そのうちに幽霊の女も酔っ払って、掛け軸の中に戻もどり、手枕てまくらで向むこうを向いて眠ねむり込こんでしまいました。

 翌朝よくあさ、目を覚さました骨董屋の目の前には、女の幽霊が寝姿ねすがたになっている掛け軸がありました。

 早はやく女の幽霊に起おきてもらって、元もとの立たち姿すがたに戻ってもらわないと、せっかくの二十両がダメになってしまう、と骨董屋は大慌おおあわてになりました。

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解説

 江戸時代えどじだい中期ちゅうき~後期こうきの絵師えしで、近現代きんげんだいの京都きょうと画壇がだんにまでその系統けいとうが続つづく「円山派まるやまは」の祖そである円山応挙まるやまおうきょは、諸説しょせつありますが、“足あしのない幽霊ゆうれい”を描えがき始はじめた絵師といわれています。

 応挙おうきょの描く絵えは、写生しゃせいを重視じゅうしした山水さんすい、花鳥かちょう、人物じんぶつなど多彩たさいな題材だいざいを巧妙こうみょうに描き分わけ、親したしみやすい画風がふうが特色とくしょくです。

 日本一にっぽんいち有名ゆうめいな応挙の幽霊画ゆうれいがには、真筆しんぴつと確認かくにんされているものが二点にてん存在そんざいし、一点いってんはカリフォルニア大学だいがくバークレー校こう美術館びじゅつかん、もう一点いってんは青森県弘前市あおもりけんひろさきしの久遠寺くおんじが所蔵しょぞうします。

 久渡寺が所蔵する応挙による幽霊画「返魂香之図はんごんこうのず」は、一年いちねんに一度いちど、旧暦きゅうれきの5月がつ18日にちに当あたる日ひに12時じから1時間じかんだけ限定げんてい公開こうかいされ、毎年まいとし多おおくの人ひとが訪おとずれます。

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感想

 江戸時代えどじだいの人々ひとびとは、医療いりょうや科学かがくが発達はったつしていなかったため、命いのちがけのお産さんや病気びょうきなどたくさんの”恐おそれ”が存在そんざいし、死しが今いまより身近みじかな存在そんざいでした。

 そうした環境かんきょうのなかで、直感的ちょっかんてきに生いきていた彼かれらは、現代人げんだいじんよりもずっと感覚かんかくが鋭するどく、幽霊ゆうれいというものも身近な存在としてあったのではないでしょうか。

 子こどもから「幽霊って本当ほんとうにいるの?」と聞きかれると、私わたしは「いる!」と即答そくとうすることにしています。

 それは、幽霊が実際じっさいに存在するという意味いみでの「いる!」ではありません。見みる者ものの心情しんじょうが幽霊を見せるという意味での「いる!」です。

 つまり、幽霊とは人ひとの“想おもい”の産物さんぶつだということです。

 やましさや執念しゅうねん、罪つみの意識いしき、愛憎あいぞうなど、人間にんげんの様々さまざまな想いが人に幽霊を見せてきたのではないかと考かんがえるからです。

 そのような人間の想いを昔話むかしばなしや落語らくごで人々に伝つたえてきたのではないでしょうか。

まんが日本昔ばなし

『幽霊ゆうれいのさかもり』
放送日: 昭和51年(1976年)07月17日
放送回: 第0069話(第0041回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 高橋良輔
文芸: 沖島勲
美術: 西田稔
作画: 岩崎治彦
典型: 怪異譚かいいたん
地域: ある所

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最後に

 今回こんかいは、『幽霊ゆうれいのさかもり』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 幽霊ゆうれいというと、怨うらみや憎にくしみからくる恐おそろしい存在そんざいと思おもわれがちですが、『幽霊ゆうれいのさかもり』に描えがかれている幽霊ゆうれいは、そこに邪悪じゃあくな感情かんじょうはなく、とても楽たのしい幽霊ゆうれいの姿すがたが語かたられています。ぜひ触ふれてみてください!

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