昔話『ふとんの話』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 「あにさん、さむかろう」
 「おまえ、寒かろう」
 寒さにふるえ、どもらしいやりかたで、おたがいをいたわりいながらたずね合うおさない子どものこえが、部屋へやのどこからかこえてきたことで『ふとんのはなし』はまくけます。

 今回こんかいは、『ふとんの話』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『ふとんのはなし』は、明治めいじ時代じだい文豪ぶんごうであるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲こいずみやくも明治めいじ24ねん(1841年)のおぼん新婚しんこんつまのセツとともに、伯耆国ほうきのくに(現在げんざい鳥取県とっとりけん)にある浜村温泉はまむらおんせん(現在の鳥取県とっとりけん鳥取市とっとり気高町けたかちょう)の旅館りょかん宿泊しゅくはくしたさい、そこの女中じょちゅうからいたとされています。

 明治27年(1844年)に出版しゅっぱんされた『られぬ日本にっぽん面影おもかげ』のなかの「日本海にほんかいのほとりにて」のしょう挿入話そうにゅうわ鳥取とっとり蒲団ふとん」として紹介しょうかいされたことにより、『ふとんの話』は日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 大正たいしょう14年(1925年)に下村千秋しもむらちあきが、あかとりしゃ児童雑誌じどうざっしあかとり』に「神様かみさま布団ふとん」というだいで小泉八雲の「鳥取の蒲団」とおな内容ないよう作品さくひん発表はっぴょうしたことで、大人おとなだけではなくどもたちにも広く知られるようになりました。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『ふとんのはなし』のおはなしは『まんが日本昔ばなし だい17かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『みみなし芳一ほういち雪女ゆきおんな ([新装版しんそうばん]八雲やくも 怪談傑作集かいだんけっさくしゅう)』は講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。すこふる言葉遣ことばづかいですが、小学校しょうがっこう高学年こうがくねん以上いじょうならば十分じゅうぶんむことができます。表題ひょうだいのおはなしほかに「ふとんのはなし」など小泉八雲こいずみやくもの『怪談かいだん』20ぺんうつくしい文章ぶんしょうあたらしいどもたちにつたえています。

あらすじ

 むかしむかし、伯耆国ほうきのくにまちにとてもちいさな宿屋やどやがありました。

 そこはまだ開業かいぎょうしたばかりのあたらしい宿屋で、最初さいしょきゃくとして行商人ぎょうしょうにんれました。

 小さな宿屋に評判ひょうばんてようという主人しゅじんのぞみによって、行商人は普通ふつうより親切しんせつむかえられました。

 新しい宿ではありましたが、主人が貧乏びんぼうなため、家具かぐ調度品ちょうどひん古道具屋ふるどうぐやから購入こうにゅうしてそろえたものがほとんどでしたが、それでも、なにもかもが清潔せいけつ快適かいてきできれいでした。

 きゃくの行商人はおも存分ぞんぶん美味おいしい料理りょうりべ、ほどよくあたためられたさけを存分にんだあとやわらかいゆか用意よういされた布団ふとんよこになり、うとうとしはじめました。

 ところが、
 「あにさん、さむかろう」
 「おまえ、寒かろう」
部屋へやなかから、おさなどものこえこえてきたのでした。

 やれやれ、あやまって子どもが何人なんにんか部屋へまよんだにちがいないとおもった行商人は、
 「ここはおまえたちの部屋ではないよ。自分じぶんの部屋におもどり」
やさしく声をけました。

 すると、しばらくは子どもの声は聞こえなくなったのですが、やがてまた、
 「あにさん、寒かろう」
 「おまえ、寒かろう」
と優しくて、かぼそい、あわれな幼い子どもの声が耳元みみもとたずうのでした。

 行商人は布団からがり、行灯あんどんともし、部屋を見回みまわしました。

 しかし、部屋にはだれもいませんでした。障子しょうじすべてがまっていました。れをけてなかを見回しても、子どもの姿すがたなどありませんでした。

 あやしく思いながら、灯りをそのままけっぱなしにしてふたたよこになると、すぐに枕元まくらもとから、
 「あにさん、寒かろう」
 「おまえ、寒かろう」
と再びものがなしい子どもの声がしました。

 そのときはじめて客の行商人はよるみではない、しの寒気さむけ全身ぜんしんかんじました。そして、かえし聞こえてくる声は、布団の中からだとかったのでした。

 行商人はあわただしくすくない所持品しょじひんをかきあつめると、階段かいだんり、宿やどの主人をたたこし、部屋でこったこと顛末てんまつつたえました。

 すると主人はたいそうはらてて、
 「大事だいじなお客だからよろこんでもらおうともてなしたのに、本当ほんとうは大事なお客どころかたいした大酒おおざけみでわるゆめでもごらんになられたんでしょう」
かえしました。

 それでも客の行商人は、さっさと宿代やどだいはらって、
 「どこかべつの宿をさがす」
と言いってってしまいました。

 つぎ、ひと部屋へやまれないかとべつのお客がやってきました。

 夜更よふけになって、宿の主人はおなはなしまり客に叩き起こされました。そして、この泊まり客は、不思議ふしぎなことに全く酒を飲んでいませんでした。

 なにかのねたみから宿屋をつぶそうとたくらんでいるのかと主人はうたがい、
 「縁起えんぎでもない。この宿は手前てまえどものきるすべなんです。そんなありもしないことをおっしゃらないでください」
と主人は感情的かんじょうてきこたえました。

 これにはお客もおこってしまい、大声おおごえ文句もんくを言いながら宿を出て行ってしまいました。

 へんなことを言われてはたまらないと主人は憤慨ふんがいしましたが、お客がったあと奇妙きみょう出来事できごとつづいたことを不思議に思い、布団を調しらべるためにれいの部屋へとかいました。

 部屋にはいって、しばらくすると、
 「あにさん、寒かろう」
 「おまえ、寒かろう」
と子どものもの悲しい声が聞こえてきました。

 宿の主人は、その声を聞いて、お客が本当ほんとうことを言っていたとづきました。

 そう思いながら、よく声を聞いていると、どうやらけるのは、一枚いちまい掛布団かけぶとんであることがかりました。のこりの布団ふとんしずかでした。

 宿の主人はその掛布団を自分の部屋へはこび、それをけてることにしました。

 「あにさん、寒かろう」
 「おまえ、寒かろう」
その声は、一晩中ひとばんじゅう続き、主人は一睡いっすいもできませんでした。

 あさになり、この掛布団には、きっとなにわけがあるのだろうと思い、宿の主人は布団を購入した古道具屋へ行きました。

 古道具屋の店主てんしゅに布団の出所でどころたずねると、
 「布団はちいさいみせからったので自分には分からない」
と言われました。

 そこで、布団を仕入しいれたまえの店、そのまた前の店というように、宿の主人はつぎから次へと布団の出所を辿たどっていくうちに、ついに布団のもとぬしめることができました。

 その布団の持ち主は、まちのはずれにある一軒いっけんの小さな借家しゃくやらす家族かぞくでした。

 その家族は、大変たいへんまずしく、家賃やちんはらうのがやっとだったところに、父親ちちおや母親ははおやも死に、とうとう身寄みよりのない小さな兄弟きょうだいだけになってしまいました。

 兄弟は家財道具かざいどうぐ着物きものって暮らしていましたが、とうとう一枚の掛布団が残るだけになりました。

 さむさがきびしいふゆのある日、家賃が払えなくなった兄弟は最後さいごの掛布団を大家おおやげられ、いえからされてしまいました。

 何処どこにも行くあてのない兄弟は、大家がると、こっそり元の借家にもどり、そこで寒さによる眠気ねむけかんじ、おたがいにあたたまるようしっかりとってねむりました。

 「あにさん、寒かろう」
 「おまえ、寒かろう」

 眠りについた兄弟に、神様かみさまあたらしい掛布団を掛けてくれました。

 もはや寒さをかんじなくなった兄弟は、幾日いくにちもそこで眠り続けました。

 数日後すうじつご二人ふたり遺体いたい発見はっけんされると、兄弟を不憫ふびんに思った人々ひとびとが、千手観音せんじゅかんのんてら墓場はかばに二人の新しい寝床ねどこつくってあげました。

 この話を聞いた宿の主人は、掛布団を寺に運び、おきょうをあげてもらいました。

 それからは、もうこの掛布団がものを言うことはなくなったそうです。

解説

 明治時代めいじじだい文豪ぶんごうであるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲こいずみやくもが、帰化前きかまえ明治めいじ27ねん(1844年)に出版しゅっぱんした『られぬ日本にっぽん面影おもかげ』のなかの「日本海にほんかいのほとりにて」のしょう挿入話そうにゅうわとして、『ふとんのはなし』は「鳥取とっとり蒲団ふとん」というだい所載しょさいされています。

 『知られぬ日本の面影』はハーンが来日後らいにちごはじめてしるした作品集さくひんしゅうです。『怪談かいだん』『こころ』とならぶ小泉八雲の代表作だいひょうさくひとつで、島根県しまねけん出雲地方いずもちほうでの興味きょうみいおはなし中心ちゅうしんえがかれています。

 ハーンは明治23年(1840年)4がつ4日本にっぽん上陸します。神秘的しんぴてきなものにかれるハーンは、「日本にっぽん第一印象だいいちいんしょう出来できるだけはやのこしておきたい」という気持きもちから、明治24年(1841年)のなつに日本に上陸して最初さいしょ滞在たいざいした横浜よこはまから「神々かみがみくに」とばれる島根県しまねけん出雲いずも人力車じんりきしゃぎながら、新婚しんこんつまのセツとともに、四日間よっかかんたびをします。

 その過程かていでハーンは、やまあいのんぼ、すぎまつもり薄暗うすぐらかげとおくの藍色あいいろ山並やまなみ、藁葺わらぶき屋根やねつらなり、道端みちばたちいさなお地蔵様じぞうさまほこらなど、日本にっぽん独特どくとくふ田舎いなかのやさしい景色けしきにします。

 出雲大社いずもたいしゃでは、外国人がいこくじんとしてはじめてハーンは本殿ほんでんへの昇殿しょうでんゆるされ、宮司ぐうじ謁見えっけんしお話をうかが機会きかいちます。

 そのは、山陰地方さんいんちほう神秘的しんぴてき海辺うみべむらたびし、そこにつたわる伝説でんせつ宗教しゅうきょうなど興味深いお話を収集しゅうしゅうします。

 そうした日本の文化ぶんか生活せいかつつづった随想録ずいそうろくが『知られぬ日本の面影』です。

 本当ほんとうによくぞのこしてくださったとおもうほど、180年前ねんまえの日本を冷静れいせいでありながら情熱的じょうねつてきに日本の景色、風習ふうしゅう人柄ひとがらを書きくしています。

 日本人にっぽんじんでもらない日本をおしえてくれる外国人がいこくじん記録きろくが『知られぬ日本の面影』です。

 『日本にっぽん面影おもかげ ([新編しんぺん]角川かどかわソフィア文庫ぶんこ)』はKADOKAWAから出版しゅっぱんされています。わたしたち日本人にっぽんじんは、本当ほんとう日本にっぽんさをわかっているのだろうかとかんがえさせられる内容ないようです。そのくらい日本と日本人の評価ひょうか素晴すばらしいです。ラフカディオ・ハーン外国人がいこくじん視点してんつめた、明治時代めいじじだい初期しょきうつくしい日本へのおもいを色濃いろこつたえる11ぺん収録しゅうろくされています。

 講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされている『怪談かいだん奇談きだん (講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ)』は、いままでにおおくの翻訳ほんやく出回でまわっている『怪談かいだん』とは一線いっせんかくします。原拠げんきょてくるいまわしや表現ひょうげん活用かつようされているため、重厚じゅうこうかたぐちとなっているのが最大さいだい特徴とくちょうです。また、末尾まつびには小泉八雲こいずみやくもさんが実際じっさいんだと推定すいていされる原話げんわ本文ほんぶんがすべて翻刻ほんこくされています。

 『こころ (個人こじん完訳かんやく 小泉八雲コレクション)』は河出書房新社かわでしょぼうしんしゃから出版しゅっぱんされています。小泉八雲こいずみやくもさんは、日本にっぽんあい研究けんきゅうつづけた一人ひとり卓越たくえつした文学者ぶんがくしゃです。八雲やくもさんほど日本人にっぽんじんこころ神道しんどう仏教ぶっきょう理解りかいした外国人がいこくじんはいないといえるでしょう。平川祐弘ひらかわすけひろさんの翻訳ほんやくは、八雲さんのわんとしたエッセンスをたくみに抽出ちゅうしゅつしており、とても理解りかいしやすい名訳めいやくです。日本人にっぽんじんわすれてしまった日本人らしさが、このほんにはあります。

感想

 とてもせつないおはなしです。

 そして、こころと心のつながりといわれる兄弟きょうだいあいつよかんじる内容ないようです。

 兄弟きょうだいという特別とくべつ関係かんけいえらべるものではありません。

 は兄弟をむすびつけ、年齢ねんれい世代せだい時間じかんえるきずなつくします。

 血のつながりやともごした時間によって芽生めばえた絆は、兄弟を集結しゅうけつさせます。

 そして、どものころおもはずっと心にのこり、子どもの頃に芽生えた兄弟愛は大人おとなになってもつづきます。

 兄弟はずっと一緒いっしょにいる存在そんざいで、つねに繋がっているものです。

まんが日本昔ばなし

ふとんのはなし
放送日: 昭和51年(1976年)07月24日
放送回: 第0070話(第0042回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 藤本四郎
文芸: 沖島勲
美術: 藤本四郎
作画: 藤本四郎
典型: 怪異譚かいいたん
地域: 中国地方(鳥取県)


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 『ふとんのはなし』は「DVD-BOXだい7しゅう 第32かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『ふとんのはなし』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『ふとんの話』は、二人ふたりしかいない兄弟きょうだいあいだにかよいあう愛情あいじょうを、しずかにつづったこころにしみるおはなしです。ぜひれてみてください!

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