昔話『かくれ里のふしぎ』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『かくれ里さとのふしぎ』は、隠かくれ里さとという人知じんちを越こえた幻想げんそう的てきな異界いかいと人間にんげん界かいの交錯こうさくを描えがいた悲哀ひあいな物語ものがたりです。異界いかいとの接触せっしょくと喪失そうしつの背景はいけいには、舞台ぶたいである岩手県いわてけんの赤沢山あかざわやまに根ねざした伝承でんしょうと自然しぜん信仰しんこうが色いろ濃こく反映はんえいされています。

 今回こんかいは、『かくれ里さとのふしぎ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

かくれ里のふしぎ まんが日本昔ばなし 矢沢則夫 沖島勲 内田好之 岩手県 岩手県和賀郡 赤沢山 乱世に生きる 日本の民話 辺見じゅん 清水真弓 松谷みよ子 瀬川拓男 角川書店 KADOKAWA 岩手県いわてけんに伝つたわる昔むかし話ばなし『かくれ里さとのふしぎ』は、長年ながねんにわたって地元じもとで語かたり継つがれてきた民話みんわの一ひとつです。

 舞台ぶたいとなるのは、陸奥国むつのくに和賀わが(現在げんざいの岩手県いわてけん和賀郡わがぐん)の赤沢山あかざわやま周辺しゅうへんで、この地域ちいきは古ふるくから「黄金おうごんが埋うまっている」としても知しられてきました。

 『かくれ里さとのふしぎ』の中なかには、「不思議ふしぎな里さと」「黄金おうごん」「山やまの中なかに隠かくされた世界せかい」など、好奇こうき心しんをかきたてる要素ようそが数かず多おおく登場とうじょうします。

 一見いっけんすると、山奥やまおくでの不思議ふしぎな体験たいけんを描えがいた単純たんじゅんなお話はなしのように思おもえますが、その背景はいけいには地域ちいきの歴史れきしや人々ひとびとの暮くらし、自然しぜんへの畏敬いけいの念ねんなどが込こめられており、日本にっぽんの民俗みんぞく学がくや異い世界せかい観かんが色いろ濃こく反映はんえいされています。

 子こどもたちにとっては冒険ぼうけん心しんや想像そうぞう力りょくを育そだむきっかけとなり、大人おとなにとっても郷土きょうど文化ぶんかを知しる手てがかりとなります。

 また、「異い世界せかいへの迷まよい込こみ」や「約束やくそくを破やぶった結果けっかどうなるか」という普遍ふへん的てきな教訓きょうくんが含ふくまれているため、何なにかを深ふかく考かんがえさせられることから、教育きょういく的てきな価値かちも高たかいといえます。

 そして、読よみ終おわる頃ころには、きっとあなたも『かくれ里さとのふしぎ』の奥おく深ぶかさに魅了みりょうされていることでしょう。

 この記事きじを通つうじて、単たんなる「昔むかし話ばなしの紹介しょうかい」ではなく、家庭かてい・学校がっこう・地域ちいきをつなぐ文化ぶんか資源しげんとして、きっと『かくれ里さとのふしぎ』を活用かつようできるヒントを得えられるはずです。

 さあ、岩手県いわてけんの山奥やまおくに伝つたわる豊ゆたかな民話みんわ文化ぶんかに触ふれながら、次じ世代せだいへと引ひき継つぐための一歩いっぽとして、『かくれ里さとのふしぎ』の不思議ふしぎな世界せかいを一緒いっしょに探さぐってみましょう!

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。「かくれ里さとのふしぎ」のお話はなしは『まんが日本にっぽん昔むかしばなし 第だい28巻かん』の中なかに収録しゅうろくされています。

 『乱世らんせに生いきる (日本にっぽんの民話みんわ 8)』は、角川かどかわ書店しょてんから出版しゅっぱんされています。日本にっぽんを代表だいひょうする児童じどう文学ぶんがく作家さっか・松谷まつたにみよ子こさんと民話みんわ研究けんきゅう家かの瀬川せがわ拓男たくおさん、そして作家さっか・辺見へんみじゅん(清水しみず真弓まゆみ)さんが編纂へんさんした、日本にっぽんの民話みんわシリーズ全ぜん12巻かんの第だい8弾だんです。第だい8巻かんでは、戦乱せんらんや動乱どうらんの時代じだいを背景はいけいに、勇気ゆうき、知恵ちえ、そして人間にんげんのたくましさで困難こんなんを乗のり越こえる民話みんわの数々かずかずが41篇ぺん収おさめられています。「うさぎとくま」「山姥やまんばと姉弟きょうだい」「わらしべ殿とのさま」など、乱世らんせいを背景はいけいにした物語ものがたりは、歴史れきしの荒あら波なみの中なかで生いきる人々ひとびとのたくましさを伝つたえ、過去かこと現在げんざいをつなつなぐ架かけ橋はしとなり、「生いきるか死しぬか」「かくれ里さとのふしぎ」といった物語ものがたりは、極限きょくげん状態じょうたいでの人間にんげんの選択せんたくや絆きずなを描えがいているため、現代げんだいを生いきる私わたしたちの心こころに強つよい印象いんしょうを残のこし、深ふかい共感きょうかんを呼よびます。270ページにわたり、乱世らんせいを生いき抜ぬいた先人せんじんたちの物語ものがたりを通つうじて、祖先そせんの智慧ちえと精神せいしんが現代げんだいに響ひびき、“生いきる力ちから”を教おしえてくれる一冊いっさつです。

 『岩手いわての民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 2)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。 『遠野物語とおのものがたり』に代表だいひょうされるように、日本にっぽんの中なかでも民話みんわが豊ゆたかに残のこる地方ちほうとして、古ふるくから関心かんしんをひいていたのが岩手県いわてけんです。 それは、岩手県いわてけんが京きょうの都みやこを中心ちゅうしんとした中央ちゅうおうの文化ぶんかから隔絶かくぜつされた厳きびしい地勢ちせいであるため、独自どくじの文化ぶんかを生うみ出だしてきことと大おおきく関係かんけいしています。その厳きびしくも美うつくしい自然しぜんと、長ながい歴史れきしの中なかで育はぐくまれた文化ぶんかと民話みんわは、まるで祖先そせんからの贈おくり物もののように、現代げんだいを生いきる私わたしたちの心こころにも深ふかく響ひびきます。岩手県いわてけんの山々やまやまや川かわ、集落しゅうらくの暮くらしの中なかで語かたり継つがれてきた、厳きびしくも美うつくしい自然しぜんが織おりななす「八郎はちろう太郎たろう」「カッパの淵ふち」「かくれ里さと」「オオカミ石いし」「山伏やまぶし石いし」など、懐なつかしさと新鮮しんせんさ、力強ちからづよさと温あたたかさが共存きょうそんする独特どくとくな民話みんわが39篇へん収録しゅうろくされています。

 『岩手県いわてけんの民話みんわ (県別けんべつふるさとの民話みんわ 26)』は、偕成社かいせいしゃより出版しゅっぱんされています。民俗みんぞく学者がくしゃの柳田やなぎた國男くにお先生せんせいが、岩手県いわてけん遠野とおの地方ちほうで収集しゅうしゅうした説話せつわや民話みんわなどを収録しゅうろくした作品さくひんが『遠野物語とおのものがたり』です。『遠野物語とおのものがたり』を生うんだ岩手県いわてけんは、鬼おにや妖怪ようかい、動物どうぶつたち、そして人々ひとびとの暮くらしが織おり交まぜられた、心こころ温あたたまる物語ものがたりや不思議ふしぎな伝説でんせつや民話みんわの宝庫ほうこです。「鬼おにの手形てがた」「大工だいくと鬼六おにろく」「こぶとりじい」「ちっちの木き」「山伏やまぶし石いし」「こんび太郎たろう」など、素朴そぼくで暖あたたかい手てざわりの選えらびぬいたお話はなしばかり36篇ぺん収録しゅうろくされています。山々やまやまや川かわ、里さとの風景ふうけいなど、ページをめくるたびに、物語ものがたりの情景じょうけいが鮮あざやかに浮うかび上あがり、まるで岩手県いわてけんの里山さとやまに足あしを踏ふみ入いれたかのような臨場りんじょう感かんを味あじわうことができる一いっ冊さつです。

あらすじ

 むかしむかし、陸奥国むつのくにの和賀わがの赤沢山あかざわやまは、「黄金おうごんが採とれる」という噂うわさがありました。

 その噂うわさを信しんじた赤沢山あかざわやまの麓ふもとに住すむ二ふた人りの男おとこが、黄金おうごんを掘ほり当あてたいと赤沢山あかざわやまに入はいって行いきました。

 二ふた人りの男おとこの内うち、一ひと人りは年配ねんぱいで女房にょうぼうと子こどもがいましたが、もう一ひと人りはまだ若わかく独ひとり身みでした。

 ある日ひ、いつものように二ふた人りの男おとこは、山やまに入はいって黄金おうごんを探さがしていました。

 作業さぎょう中ちゅう、若わかい男おとこは、急きゅうに腹はらが痛いたくなったので、山やま小屋ごやで横よこになり、休やすむことにしました。

 少すこし休やすみを取とったおかげで、体調たいちょうはとても良よくなり、若わかい男おとこは起おき上あがってお茶ちゃを飲のんでいました。

 すると、山やま小屋ごやの戸とを叩たたく音おとが聞きこえてきました。

 ドンドンドン
 ドンドンドン

 若わかい男おとこが戸とを開あけると、そこには美うつくしい若わかい女おんなが立たっていました。

 女おんなの髪かみは黒くろくて長ながく、まるで夜よるの川かわの流ながれのようでした。

 そして、目めには星ほしのような輝かがやきがありました。

 「お前まえは、こんな山奥やまおくで何なにをしているんだ」
と若わかい女おんなは若わかい男おとこに尋たずねました。

 若わかい男おとこは驚おどろきながらも、
 「この山やまには黄金おうごんが採とれるという噂うわさがあるので、山やまを掘ほり進すすめて黄金おうごんを探さがしている」
と若わかい女おんなに答こたえました。

 若わかい女おんなは微笑ほほえみ、若わかい男おとこの手てを取とって、
 「私わたし、黄金おうごんが採とれる場所ばしょを知しっているよ」
と言いいました。

 そして、若わかい女おんなは、
 「また明日あしたも来くるね」
と若わかい男おとこに言いって、その場ばを去さって行いきました。

 翌日よくじつ、若わかい男おとこは、
 「まだ具合ぐあいが良よくならないから、今日きょうも仕事しごとを休やすませて欲ほしい」
と年配ねんぱいの男おとこに伝つたえ、小屋こやで若わかい女おんなを待まつことにしました。

 年配ねんぱいの男おとこが作業さぎょうに出でかけ、しばらくすると、昨日きのうの若わかい女おんなが小屋こやに現あらわれました。

 若わかい女おんなは、酒さけや肴さかななどをたくさん持もってきていました。

 二ふた人りは酒さけを酌くみ交かわしながら、楽たのしい時間じかんを過すごしていました。

 そこに、作業さぎょうに必要ひつような道具どうぐを忘わすれて、小屋こやに取とりに戻もどってきた年配ねんぱいの男おとこが現あらわれました。

 「これは一体いったいどういうことだ」
と年配ねんぱいの男おとこが二ふた人りに問といただすと、
 「そんなに怒おこらないで。お前まえさんも一杯いっぱいどうですか」
と若わかい女おんなは酒さけを勧すすめ、年配ねんぱいの男おとこをなだめました。

 そして、
 「私わたし、黄金おうごんのある所ところを知しっているよ。そこを知しりたければ、私わたしのお願ねがいを聞きいて」
と若わかい女おんなは二ふた人りの男おとこに言いいました。

 二ふた人りの男おとこが頷うなずくと、
 「私わたしには、30歳さいになるが、いまだに独ひとり身みの伯母おばがいます。私わたしはこちらの若わかい男性だんせいと結婚けっこんするので、そちらの男性だんせいは私わたしの伯母おばと結婚けっこんしてください。そして、この地ちで私わたしたちと一緒いっしょに暮くらしてください」
と若わかい女おんなは二ふた人りの男おとこに伝つたえました。

 若わかい女おんなは、
 「また明日あしたもここに来くるので、それまでに考かんがえておいてね」
と二ふた人りの男おとこに伝つたえ、その場ばを去さって行いきました。

 その夜よる、二ふた人りの男おとこはよく話はなし合あいました。

 若わかい男おとこは、黄金おうごんが欲ほしかったので、この話はなしを受うけることにしました。

 しかし、年配ねんぱいの男おとこは、里さとに残のこした女房にょうぼうと子こどもがいたので、とても悩なやみました。

 でも、やはり黄金おうごんが欲ほしいので、年配ねんぱいの男おとこもこの話はなしを受うけることにしました。

 翌朝よくあさ、若わかい女おんなが小屋こやにやって来きました。

 「あなたたちと一緒いっしょにここで暮くらすので、黄金おうごんのありかを教おしえて欲ほしい」
と二ふた人りの男おとこは、若わかい女おんなに伝つたえました。

 若わかい女おんなは嬉うれしそうな顔かおをして頷うなずき、二ふた人りの男おとこを連つれて山やまの奥おくへと歩あるき始はじめました。

 しばらく歩あるくと、山やまの奥おくとは思おもえないほど立派りっぱな屋敷やしきが現あらわれました。

 屋敷やしきの門もんの前まえでは、若わかい女おんなの伯母おばが二ふた人りの男おとこを出で迎むかえてくれました。

 この日ひから、ここで四よ人にんは夢ゆめのような日々ひびを過すごしました。

 しかし、しばらくすると年配ねんぱいの男おとこは、里さとに残のこしてきた女房にょうぼうと子こどものことばかり気きに掛かかるようになりました。

 そこで、ある日ひ、年配ねんぱいの男おとこは、
 「里さとに残のこしてきた女房にょうぼうと子こどもが、きっとワシのことを心配しんぱいしている。女房にょうぼうと子こどもが困こまらないよう黄金おうごんを渡わたしたい。そうしたらまた山やまに戻もどって来くるから、里さとに一旦いったん帰かえらせてくれ」
と伯母おばに言いいました。

 すると、伯母おばは沢さわを指差ゆびさし、
 「沢さわを下くだった先さきに朴ほおの木きがある。黄金おうごんはその朴ほおの木きの根元ねもとに埋うまっている」
と年配ねんぱいの男おとこに言いいました。

 それを聞きいた二ふた人りの男おとこは、早速さっそく、黄金おうごんを掘ほりに沢さわへと向むかいました。

 二ふた人りの男おとこが沢さわを下くだり、朴ほおの木きを見みつけると、その木きの根元ねもとを掘ほり始はじめました。

 すると、伯母おばが言いっていた通とおり、たくさんの黄金おうごんが出でてきました。

 二ふた人りの男おとこは黄金おうごんを袋ふくろに詰つめ、それを背せ負おうと、大おお喜よろこびで山やまを下くだり始はじめました。

 山やまを下くだっている時とき、年配ねんぱいの男おとこが若わかい男おとこに向むかってこう言いいました。

 「黄金おうごんを手てに入いれたので、ワシはもうこの山やまに戻もどってくる気きはない。あの二ふた人りの女おんなは妖怪ようかいだ。男おとこを破滅はめつへと導みちびく魔性ましょうの女おんなだ。このままあそこにいたら、きっとワシらは喰くわれてしまう」

 それを聞きいた若わかい男おとこは、
 「それが本当ほんとうならば、オレも山やまには戻もどらない」
と言いいました。

 その瞬間しゅんかん、不思議ふしぎなことに二ふた人りの男おとこが背せ負おった黄金おうごんの袋ふくろが軽かるくなりました。

 二ふた人りの男おとこは、袋ふくろが軽かるくなったことを不思議ふしぎに思おもい、袋ふくろを開あけて中身なかみを確認かくにんしてみると、袋ふくろの中なかの黄金おうごんはただの土つちに変かわっていました。

 慌あわてて二ふた人りの男おとこは朴ほおの木きの根元ねもとにまで戻もどり、再ふたたびそこを掘ほってみましたが、もう黄金おうごんはありませんでした。

 そして、山奥やまおくを探さがしてみましたが、二ふた人りの男おとこが過すごした屋敷やしきもなければ、女おんなの姿すがたも見みあたりませんでした。

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解説

 『かくれ里さとのふしぎ』は、岩手県いわてけん和賀郡わがぐんの赤沢山あかざわやまを舞台ぶたいにした民話みんわで、地域ちいきの歴史れきしや文化ぶんかを色いろ濃こく反映はんえいしています。

 和賀郡わがぐんの風土ふうどや黄金おうごん伝説でんせつの背景はいけいは、この物語ものがたりの神秘しんぴ性せいを深ふかめる重要じゅうような要素ようそです。

 ここでは、和賀郡わがぐんの歴史れきしと文化ぶんかを解説かいせつし、『かくれ里さとのふしぎ』が生うまれた背景はいけいを探さぐります。

 和賀郡わがぐんは、岩手県いわてけん西部せいぶに位置いちし、豊ゆたかな自然しぜんと歴史れきしを持もつ地域ちいきです。

 平安へいあん時代じだいから鎌倉かまくら時代じだいにかけて、和賀郡わがぐんは在地ざいち豪族ごうぞくや農民のうみんが暮くらしを営いとなむ場所ばしょでした。

 山間さんかん部ぶに位置いちするため、林業りんぎょうや農業のうぎょうが主おもな産業さんぎょうで、赤沢山あかざわやまを始はじめとする山々やまやまは、資源しげんだけでなく神秘しんぴ的てきな信仰しんこうの対象たいしょうでもありました。

 赤沢山あかざわやまには、黄金おうごんが眠ねむるという伝説でんせつが古ふるくから存在そんざいし、これが『かくれ里さとのふしぎ』の物語ものがたりの基盤きばんとなっています。

 黄金おうごん伝説でんせつは、和賀郡わがぐんの人々ひとびとが自然しぜんの恵めぐみや未知みちの力ちからに抱いだいた畏敬いけいの念ねんを象徴しょうちょうしています。

 『かくれ里さとのふしぎ』に登場とうじょうする「黄金おうごんの里さと」や「謎なぞの娘むすめ」は、和賀郡わがぐんの自然しぜん崇拝すうはいや精霊せいれい信仰しんこうと結むすびついています。

 日本にっぽんの民話みんわでは、山やまや森もりに神霊しんれいが宿やどるとされ、和賀郡わがぐんでもこうした信仰しんこうが根ね付づいていたと考かんがえられます。

 『かくれ里さとのふしぎ』は、約束やくそくや欲よくをテーマにしつつ、地域ちいきの価値かち観かんや暮くらしを反映はんえいしています。

 約束やくそくを守まもる大切たいせつさや、欲よくによる破滅はめつは、厳きびしい自然しぜん環境かんきょうの中なかで生いきる人々ひとびとの教訓きょうくんとして、これからも語かたり継つがれていくことでしょう。

 さて、『かくれ里さとのふしぎ』のような地域ちいきに根ねざした民話みんわは、単たんなる物語ものがたりにとどまらず、地域ちいきのアイデンティティを形成けいせいし、観光かんこうや教育きょういく、文化ぶんか振興しんこうに資しする“生いきた文化ぶんか資源しげん”として活用かつようすることができます。

 民話みんわは、地域ちいきごとの自然しぜん・風土ふうど・信仰しんこう・歴史れきしと密接みっせつに関かかわって形成けいせいされた、無名むめいの語かたり手てたちによる“共有きょうゆうの記憶きおく”であります。

 特とくに、岩手県いわてけんを含ふくむ東北とうほく地方ちほうでは、自然しぜんの厳きびしさや山岳さんがく信仰しんこう、神秘しんぴ性せいと結むすびついた伝承でんしょうが多おおく、民話みんわは単たんなる娯楽ごらくではなく「土地とちの哲学てつがく」として語かたり継つがれてきた。

 『かくれ里さとのふしぎ』もその例れいに漏もれず、赤沢山あかざわやまを始はじめとする和賀わが地方ちほうの地理ちり・信仰しんこう・生活せいかつ感覚かんかくが色濃いろこく反映はんえいされた物語ものがたりであり、地域ちいきそのものを象徴しょうちょうする文化ぶんか的てきテキストとして扱あつかうことができると考かんがえます。

 『かくれ里さとのふしぎ』は、物語ものがたりとしての完成かんせい度どだけでなく、地域ちいき文化ぶんかの象徴しょうちょう、教育きょういく資源しげん、観光かんこう資源しげん、そしてデジタル時代じだいの情報じょうほう発信はっしんツールとしても活用かつようできる、多面ためん的てき価値かちを持もった民話みんわです。

 『かくれ里さとのふしぎ』は、読よみ聞きかせや家庭かてい学習がくしゅうで活用かつようする伝承でんしょう話ばなしにとどまらず、教育きょういく現場げんばや地域ちいきの文化ぶんか活動かつどうでも活用かつようできる素材そざいです。

 つまり、『かくれ里さとのふしぎ』を地域ちいきの未来みらいを担になう文化ぶんか資産しさんとして位置いちづけ、物語ものがたりの持もつ教訓きょうくんや地域ちいき性せいを生いかせば、国語こくご・社会しゃかい・道徳どうとくの学習がくしゅうだけでなく、地域ちいき文化ぶんかの継承けいしょうや観光かんこう振興しんこうにもつなげることが期待きたいできます。

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感想

 「かくれ里さと」とは、日本にっぽん各地かくちの民話みんわや伝説でんせつに登場とうじょうする、不思議ふしぎな隠かくれた村むらや理想りそう郷きょうを指さします。

 そこは外界がいかいから隔絶かくぜつされ、豊ゆたかで平和へいわな生活せいかつが営いとなまれているとされます。

 しかし、多おおくの話はなしでは、訪おとずれた者ものが禁きんを破やぶったり、欲よくを出だしたりすると、再ふたたびその場所ばしょに行いくことはできなくなります。

 『かくれ里さとのふしぎ』もその典型てんけいで、欲望よくぼうと約束やくそく破やぶりが里さとの消滅しょうめつを招まねく結末けつまつとなっています。

 物語ものがたりの舞台ぶたいである赤沢山あかざわやまは、古ふるくから鉱山こうざん資源しげんが豊富ほうふな山やまとして知しられています。

 特とくに江戸えど時代じだいには金きんの採掘さいくつが行おこなわれた記録きろくも残のこり、「黄金おうごんが眠ねむる山やま」という言いい伝つたえが広ひろまりました。

 こうした実際じっさいの鉱山こうざん史しと民話みんわが融合ゆうごうし、「黄金おうごんが土つちに変かわった」という象徴しょうちょう的てきなモチーフが生うまれたと考かんがえられます。

 『かくれ里さとのふしぎ』は、岩手県いわてけん出身しゅっしんの民俗みんぞく学者がくしゃ・佐々木ささき喜善きぜんが収集しゅうしゅうした昔話むかしばなし群ぐんの中なかにも似にたような内容ないようのお話はなしが見みられます。

 佐々木ささきは、柳田やなぎた國男くにおや折口おりぐち信夫しのぶとも交流こうりゅうがあり、岩手県いわてけんの伝承でんしょうを精力せいりょく的てきに記録きろく・出版しゅっぱんしました。

 そのため、『かくれ里さとのふしぎ』のようなお話はなしは、地域ちいきの語かたり部べから直接ちょくせつ聞きき取とり、文字もじとして残のこされた可能かのう性せいが高たかいといえます。

 『かくれ里さとのふしぎ』の根底こんていには、「人ひとは欲よくに駆かられると大切たいせつなものを失うしなう」という普遍ふへん的てきな教訓きょうくんがあります。

 黄金おうごんが土つちに変かわってしまう結末けつまつは、物質ぶっしつ的てきな価値かちよりも約束やくそくや信義しんぎを守まもることの重要じゅうよう性せいを伝つたえています。

 また、「かくれ里さと」と呼よばれる理想りそう郷きょうが再ふたたび現あらわれない設定せっていは、失うしなわれた機会きかいの不ふ可逆かぎゃく性せいを象徴しょうちょうしています。

 「かくれ里さと」や「隠かくれ村むら」のお話はなしは、全国ぜんこく各地かくちに存在そんざいします。

 たとえば熊本県くまもとけんの「神かみ隠かくし村むら」や長野県ながのけんの「隠かくれ里さと伝説でんせつ」なども、外部がいぶの人間にんげんが一時いちじ的てきに異界いかいに迷まよい込こむという点てんで共通きょうつうしています。

 これは日本にっぽんに各地かくちで共有きょうゆうされてきた「境界きょうかいを越こえる恐おそれ」や「異界いかいとの接触せっしょく」に関かんする文化ぶんか的てき感覚かんかくを反映はんえいしていると考かんがえられます。

 現代げんだいにおいても、『かくれ里さとのふしぎ』のような昔むかし話ばなしは、多おおくの人々ひとびとに訴うったえかける力ちからを持もっています。

 「異い世界せかいとの邂逅かいこう」「一いち度ど得えたものの代償だいしょう」といった要素ようそは、ファンタジーやSFと呼よばれる現代げんだいのフィクションにも共通きょうつうして登場とうじょうし、普遍ふへん的てきなテーマとして生いき続つづけています。

 また、『かくれ里さとのふしぎ』を通つうじて、「異い世界せかいとは何なにか」「帰かえる場所ばしょとは何なにか」という哲学てつがく的てきな問といにも自然しぜんと向むき合あうことになります。

 『かくれ里さとのふしぎ』は、異郷いきょう訪問ほうもん譚たんの昔むかし話ばなしという日本にっぽん民話みんわの普遍ふへん構造こうぞうを忠実ちゅうじつに受うけ継つぎながら、岩手県いわてけん和賀わが地方ちほうの風土ふうど的てき・文化ぶんか的てき要素ようそを巧たくみに織おり込こみ、唯一ゆいいつ無二むにの物語ものがたりへと昇華しょうかしています。

 だからこそ『かくれ里さとのふしぎ』は、時代じだいを超こえて語かたり継つがれ、読よみ継つがれていく価値かちがあるのでしょう。

まんが日本昔ばなし

『かくれ里さとのふしぎ』
放送日: 昭和52年(1977年)09月03日
放送回: 第0160話(0099 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 『日本にっぽんの民話みんわ 8 (乱世らんせに生いきる)』 瀬川せがわ拓男たくお・松谷まつたにみよ子こ・辺見へんみじゅん (角川かどかわ書店しょてん)
演出: 矢沢則夫
文芸: 沖島勲
美術: 内田好之
作画: 矢沢則夫
典型: 異郷訪問譚いきょうほうもんたん
地域: 東北地方(岩手県)

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 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』の中なかから傑作けっさく101話わを厳選げんせんしました!

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最後に

 今回こんかいは、『かくれ里さとのふしぎ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 岩手県いわてけん和賀郡わがぐんの歴史れきしや文化ぶんかは、現代げんだいでも史跡しせきや観光かんこう地ちを通つうじて感かんじられ、『かくれ里さとのふしぎ』の舞台ぶたいを訪おとずれることで、物語ものがたりの背景はいけいをより深ふかく理解りかいすることができます。和賀郡わがぐんの歴史れきしを知しることは、岩手いわての民話みんわをより深ふかく味わあじわう鍵かぎとなるでしょう。ぜひ触ふれてみてください!

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