昔話『カジカのびょうぶ』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 天城山あまぎさんは、中部ちゅうぶ地方ちほうに属ぞくする静岡県しずおかけんの伊豆いず半島はんとう中央部ちゅうおうぶの東西とうざいに広ひろがる山やまです。「日本にほん百名山ひゃくめいざん」の一ひとつでもある天城山あまぎさんには、『伊豆いず天城山あまぎさんの狩野川かのがわの伝説でんせつ』と呼よばれ、蛙かえるのカジカに懇願こんがんされた人間にんげんが、山やまを守まもろうと奮闘ふんとうする心こころあたたまる民話 みんわ『カジカのびょうぶ』が伝つたわります。

 今回こんかいは、『カジカのびょうぶ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

かじかびょうぶ 川崎大治民話絵本 川崎大治 太田大八 童心社 ペーパーバック 河鹿屏風 河鹿 屏風 カジカガエル カジカ カエル 蛙 静岡県伊豆地方 静岡県 伊豆地方 『カジカのびょうぶ』の舞台ぶたいは、中部ちゅうぶ地方ちほうに属ぞくする静岡県しずおかけんの伊豆いず半島はんとうといわれています。

 人間にんげんに救すくわれたカジカガエルが、お礼れいに人間にんげんへ恩おん返がえしをすることを主題しゅだいにした民話みんわです。

 自然しぜんの声こえを聴きき、自然しぜんとともに生いきるという、日本人にっぽんじんの感性かんせいや自然観しぜんかんが表現ひょうげんされているのと同時どうじに、一生いっしょうを共ともに過すごした人間にんげんとカジカガエルの、満みたされた時間じかんを感かんじることができます。

 改あらためて、幸しあわせとは地道じみちに自みずからが作つくりだすものと気きづかされる内容ないようです。

 『カジカのびょうぶ』のような人間にんげんに救すくわれた動物どうぶつが、お礼れいをするという趣向しゅこうは、『ぶんぶく茶釜ちゃがま』『鶴つるの恩おん返がえし』など多おおくの昔むかし話ばなしで重要じゅうような要素ようそとなっています。

 絵本えほん『かじかびょうぶ (川崎大治かわさきだいじ民話みんわ絵本えほん)』は、童心社どうしんしゃから出版しゅっぱんされています。川崎大治かわさきだいじさん特有とくゆうの語かたり口調くちょうの文ぶんと太田大八おおただいはちさんによる絵えは、とても味あじわいがあり、力ちからのある絵本えほんです。日本人にっぽんじんの心こころを描えがいた、後世こうせいへ語かたり継つぎたい美うつくしい民話みんわです。

 『日本にっぽんのおばけ話ばなし (フォア文庫ぶんこ愛蔵版あいぞうばん)』は、童心社どうしんしゃから出版しゅっぱんされています。児童じどう文学ぶんがくに分類ぶんるいされていますが、内容ないようは“おばけ話ばなし”というよりも“民話集みんわしゅう”です。スウ~っと寒やくなるような怖こわいお話はなしから、ハッピーエンドや笑わらい話ばなしなど、「かじかびょうぶ」を含ふくむ様々さまざまな民話みんわが43篇ぺん収録しゅうろくされています。

 『伊豆いずの民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 4)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。太平洋たいへいようの海うみの中なかに、ずんと片腕かたうでを伸のばしたような伊豆いず半島はんとう。そこには、「河鹿かじかの屏風びょうぶ」のような豊ゆたかな自然しぜんに恵めぐまれた生活せいかつ条件じょうけんの中なかに、明あかるくおおらかな風格ふうかくをもつ民話みんわが伝つたわります。人間にんげん本然ほんぜんの哀愁あいしゅうの中なかに、のんびりとした明あかるさがある伊豆いずの民話みんわが55篇へん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、天城山あまぎさんの北きたの狩野かのの旧家きゅうかの跡取あととりに、菊三郎きくさぶろうという者ものがおりました。

 菊三郎きくさぶろうの生うまれた家いえは、大変たいへんなお金かね持もちで、代々だいだいのご先祖せんぞ様さまのおかげで、何なんの苦労くろうもしないで、これから先さきも安心あんしんして暮くらせるほど、山やまや田畑たはたなどを幾いくつも持もっていました。

 ところが、菊三郎きくさぶろうはどら息子むすこで、悪気わるぎはないが、働はたらくことが大嫌だいきらいな怠なまけ者ものの役立やくたたずで、遊あそんで暮くらして贅沢ぜいたくばかりするうちに、山やまや田畑たはたを売うりつくしても借金しゃっきんが残のこるという始末しまつでした。

 そこで、菊三郎きくさぶろうは、最後さいごに残のこっていた山も手放てばなすことになり、下調したしらべに山やまへ出でかけていきました。

 山やまは狩野川かのがわの谷たにを挟はさんで、美うつくしい木立こだちが昼ひるも暗くらいほど茂しげっていました。足下あしもとの狩野川かのがわは、玉砂利たまじゃりを敷しき詰つめたような美うつくしい川原かわらと、どこまでも澄すんだ冷つめたく綺麗きれいな水みずの流ながれる川かわでした。

 菊三郎きくさぶろうは、川上かわかみの方ほうへどんどん歩あるいていきました。

 川かわのサラサラという心地ここち良よい流ながれの音おととともに、菊三郎きくさぶろうの足音あしおとにも動どうぜず、あちこちから哀あわれ深ぶかいカジカの声こえが群むれれを成なして鳴なき歌うたっていました。

 「そうか、それでこの辺あたりを河鹿沢かじかざわと呼よぶのか」
と菊三郎きくさぶろうは思おもいながら、さらに歩あるき続つづけました。

 朝あさから歩あるき続つづけた菊三郎きくさぶろうは、すっかりくたびれてしまいました。
 「どれ、ちっと一眠ひとねむりしようか」
と菊三郎きくさぶろうは、河鹿沢かじかざわにある大おおきな一枚いちまい岩いわの上うえに、ゴロンと大だいの字じになって寝ねころびました。

 だいぶ疲つかれていたのでしょう、菊三郎きくさぶろうはウトウトと眠ねむってしまいました。

 やがて、冷つめたい手てが菊三郎きくさぶろうの肩かたをゆすぶり、
 「もし、だんな様さま、だんな様さま」
と、どこからか菊三郎きくさぶろうを呼よぶ声こえが聞きこえてきました。

 「だんな様さま、菊三郎きくさぶろう様さま」
 「うん?誰だれだ、名前なまえを呼よぶのは」
菊三郎きくさぶろうが目めをあけると、今いままでに見みたこともないような奇妙きみょうな顔立かおだちをした老人ろうじんが立たっていました。

 「菊三郎きくさぶろう様さま、お願ねがいがあります。どうかこの河鹿沢かじかざわだけは、売うらないでくだされ」
と老人ろうじんは、深々ふかぶかと頭あたまを下さげて言いいました。
 「お前まえさんは?」
とその時とき、菊三郎きくさぶろうは老人ろうじんの着物きものの袖そでがぐっしょり濡ぬれていて、ポタポタと水みずが滴したたるのに気きづきました。
 「わしはこの河鹿沢かじかざわのカジカの頭領とうりょうじゃ。河鹿沢かじかざわが売うり渡わたされれば、この山やまの河岸かわぎしの木きは伐きられて、谷たには日照ひでりりに渇かわき、雨あめがあれば川床かわどこはにごり水みずに押おし流ながされてしまうであろう。そうなれば、我々われわれカジカは棲すむことができなくなってしまうのじゃ」
とカジカの頭領とうりょうは、目めに涙なみだを浮うかべ、何度なんども頭あたまを下さげて言いいました。
 「なるほど」
と菊三郎きくさぶろうは思おもいました。

 カジカは緑みどりの深ふかい清きよらかな谷川たにがわを好このんで棲すむ生いき物ものでした。

 「なにとぞ、この河鹿沢かじかざわをお売うりにならんよう、お頼たのみ申もうし上あげます」
と老人ろうじんは言いって、菊三郎きくさぶろうの手てを取とりましたが、その手てがあまりに冷つめたいので、菊三郎きくさぶろうはハッとして我われに返かええりました。

 「なんだ、夢ゆめか」
しかし、カジカの頭領とうりょうの手てが触ふれた菊三郎きくさぶろうの手ては、水みずでびっしょりと濡ぬれていました。

 菊三郎きくさぶろうは、
 「分わかりましたよ、頭領とうりょう」
とつぶやくと、そのまま家いえに帰かえりました。

 家いえに帰かえった菊三郎きくさぶろうは、土蔵どぞうの中なかの書画しょがや骨董こっとう、あらゆるものを金かねに換かえて、どうにか河鹿沢かじかざわを人手ひとでに渡わたさずに済すみました。

 その為ため、菊三郎きくさぶろうの手元てもとに残のこったものは、売うり物ものにならない二曲にきょくの白しろい屏風びょうぶが一隻いっせきだけでした。

 その夜よる、涼すずしい風かぜの吹ふき抜ぬける中なか、菊三郎きくさぶろうは、この屏風びょうぶを枕元まくらもとに立たて、ひっそりと眠ねむりにつきました。

 夢ゆめの中なかで、菊三郎きくさぶろうは、たくさんのカジカの鳴なき声ごえを聞ききました。

 お日様ひさまが昇のぼり、目めを覚さまました菊三郎きくさぶろうは、起おき上あがると、
 「あっ!」
と思おもわず大おおきな声こえを上あげてしましました。

 枕元まくらもとから縁えんにかけて点々てんてんとカジカの足跡あしあとが続つづき、白しろい屏風びょうぶには、いつの間まにか墨すみの色いろも生々なまなましく、たくさんのカジカが谷間たにまに戯たわむれている絵えが生いき生いきと描えがかれていました。

 「不思議ふしぎじゃ」
そう菊三郎きくさぶろうはつぶやきながら、その絵えに見みとれてしまいました。

 墨すみ一色いっしょくの濃淡のうたんを、物ものの見事みごとに描かきわけたカジカの戯たわむれる絵えは、見みるものの心こころに不思議ふしぎな感動かんどうを与あたえました。

 カジカの屏風びょうぶの噂うわさは、人ひとから人ひとへと伝つたわり、都みやこからはるばるやってきた名高なだかい絵師えしは、この屏風びょうぶを見みて感嘆かんたんの声こえを上あげました。
 なかには、屏風びょうぶを売うってほしいと、千両せんりょう箱ばこをいくつも積つみ重かさねる人ひとまで現あらわれました。

 しかし、菊三郎きくさぶろうはこの屏風びょうぶを決けっして手放てばなしませんでした。

 そして、この屏風びょうぶを売うらない程度ていどに、菊三郎きくさぶろうは仕事しごとに精せいを出だすようになりました。

 やがて、長ながい月日つきひが経たち、見事みごとに家いえを再興さいこうした菊三郎きくさぶろうは、老おいて亡なくなりました。

 不思議ふしぎなことに、菊三郎きくさぶろうが亡なくなると屏風びょうぶに描えがかれたカジカの絵えも次第しだいに薄うすれていき、何年なんねんかすると、絵えはとうとう消きえてしまいました。

 河鹿沢かじかざわという浄蓮じょうれんの滝たきの上うえの方ほう、渓流けいりゅうにやや川床かわどこのひらけた辺あたりでは、今いまでもカジカの鳴なき声ごえを耳みみにすることができるそうです。

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解説

 中部ちゅうぶ地方ちほうに属ぞくする静岡県しずおかけんの伊豆いず半島はんとうの中なかで、年間ねんかん降水量こうすいりょうが最もっとも高たかい天城山あまぎさんに源げんを発はっし、大小だいしょうの支川しせんを合あわせながら北流ほくりゅうし、平安へいあん時代じだい初期しょきの大同だいどう2年ねん(807年ねん)に弘法大師こうぼうだいし(空海くうかい)の開基かいきと伝つたわる修善寺しゅぜんじを経へて、沼津市ぬまづしにおいて駿河湾するがわんに注そそぐ、美うつくしい河川かせんが狩野川かのがわです。

 狩野川かのがわは、太平洋たいへいよう側がわでは珍めずらしい、北流ほくりゅうする一級いっきゅう河川かせんです。

 狩野川かのがわの上流部じょうりゅうぶに位置いちする浄蓮じょうれんの滝たきは、「日本にっぽんの滝たき百選ひゃくせん」に選えらばれ、石川いしかわさゆりの演歌えんか『天城あまぎ越ごえ』の歌詞かしにも登場とうじょうする地ちとして、日本中にっぽんじゅうに広ひろく知しられています。

 雨あめが多おおく降ふり、目めに鮮あざやかな天城山あまぎさん、耳みみにさわやかな狩野川かのがわのせせらぎ、幽玄ゆうげん・華麗かれいな浄蓮じょうれんの滝たき、その自然しぜんは数々かずかずの文人ぶんじん墨客ぼっかくを惹ひきつけるだけではなく、河鹿かじか(カジカガエル)がすむにとっても適てきしているようです。

 古来こらい、日本人にっぽんじんに愛あいされるカジカガエルは、「清流せいりゅうの歌姫うたひめ」と呼よばれ、その鳴なき声ごえは「フィー、フィー」という鹿しかのようなとても美うつくしい声こえで鳴なきます。

 ちなみに、カジカガエルは、その鳴なき声ごえから「河かわの鹿しか」と呼よばれ、カジカガエル(河鹿蛙かじかがえる)と名付なづけられました。

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 CD『石川いしかわさゆり ベスト・コレクション』はポニーキャニオンから発売はつばいされています。「天城あまぎ越ごえ」をはじめ、「津軽海峡つがるかいきょう・冬景色ふゆげしき」「ウィスキーがお好すきでしょ」「風かぜの盆恋ぼんこい歌うた」など、ヒット曲きょくばかりを収録しゅうろくしたベスト・コレクションです。石川いしかわさゆりさんを昔むかしから好すきな人ひとに対たいしても、これからという初はじめての人ひとに対たいしても、自信じしんをもっておススメできる一枚いちまいです。

感想

 『カジカのびょうぶ』には、日本人にっぽんじんの感性かんせいや自然観しぜんかんがとても良よく表現ひょうげんされています。

 その一ひとつが、カジカの頭領とうりょうが河鹿沢かじかざわを売うらないで欲ほしいと、菊三郎きくさぶろうに懇願こんがんする場面ばめんでの以下いかの台詞せりふです。

「木きは伐きられて、谷たには日照ひでりに渇かわき、雨あめがあれば川床かわどこはにごり水みずに押おし流ながされてしまうであろう」

 では、なぜ森もりは木きが切きられると川床かわどこがにごってしまうのでしょうか?

 それは、森もりというのは、地中ちちゅうにはりめぐらされた樹木じゅもくの根ねによって、土壌どじょうを斜面しゃめんにつなぎ止とめる能力のうりょくを持もっているからです。

 また、同時どうじに森もりは、土壌どじょうの表面ひょうめんをおおう落葉らくよう落枝らくしや潅木かんぼく、下草したくさなどによって、降雨こううなどによる土壌どじょうの流出りゅうしゅつを抑おさえ、土砂どしゃ崩くずれなどの土砂どしゃ災害さいがいの未然みぜん防止ぼうしに力ちからを発揮はっきします。

 もう一ひとつは、最後さいごに菊三郎きくさぶろうの手元てもとに残のこった白しろい枕まくら屏風びょうぶに描えがかれたカジカの絵えについて、

墨一色すみいっしょくの濃淡のうたんをものの見事みごとに描えがきわけたカジカの戯たわむれる絵え

 では、実際じっさいに墨すみ一色いっしょくの濃淡のうたんで、絵えを描えがきわけることができるのでしょうか?

 たとえ墨すみ一色いっしょくであっても、物ものの大おおきさ、輪郭りんかく、光影こうえい、質感しつかんなどを濃淡のうたんによって描えがきわけることは可能かのうです。

 それは、墨すみに水みずを加くわえることで色調しきちょうを感かんじさせる描写びょうしゃや表現ひょうげんが可能かのうとなるからです。

 「墨すみに五彩ごさいあり」といわれますが、墨すみと水みずによる濃淡のうたんや滲にじみ、かすれなどを使つかえば、墨すみ一色いっしょくでも描えがきわけることが出来できるということです。

 『カジカのびょうぶ』は、カジカの鳴なき声ごえや不思議ふしぎな老人ろうじんの佇たたずまいなど、美うつくしい表現ひょうげんが数かず多おおく織おり込こまれているため、目めと耳みみからの情報じょうほうのみで物語ものがたりを理解りかいし、創造そうぞうを広ひろげる力ちからを養やしなうことを可能かのうとしています。

 次つぎの世代せだいの日本人にっぽんじんに伝つたえていきたいお話はなしです。

まんが日本昔ばなし

『カジカのびょうぶ』
放送日: 昭和51年(1976年)10月09日
放送回: 第0088話(第0053回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 漉田実
文芸: 漉田実
美術: 槻間八郎
作画: 樋口雅一
典型: 動物報恩譚どうぶつほうおんたん
地域: 中部地方(静岡県)

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最後に

 今回こんかいは、『カジカのびょうぶ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 小鳥ことりの鳴なき声ごえや小川おがわのせせらぎ、葉はがこすれる音おとなど、耳みみを澄すませて自然しぜんが生うみ出だす声こえを聴きくと気持きもちが穏おだやかになります。自然しぜんとともに生いきる、日本人にっぽんじんの感性かんせいや自然観しぜんかんが表あらわされているお話はなしが『カジカのびょうぶ』です。次つぎの世代せだいに伝つたえたいお話はなしなので、ぜひ触ふれてみてください!

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