昔話『馬方とタヌキ』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 どもたちにいじめられていたところを、人間にんげんたすけられたダヌキが、ちちダヌキから「たすけられた恩返おんがえしをしないのは、人間にんげんよりもおとり、タヌキのみちにもはんする」とさとされて、恩返おんがえしにやってるおはなしが、『馬方うまかたとタヌキ』です。

 今回こんかいは、『馬方うまかたとタヌキ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 日本にっぽんにおいては『ぶんぶく茶釜ちゃがま』『つるおんがえ』『浦島うらし太郎たろう』『ききみみ頭巾ずきん』のように、動物どうぶつたすけてもらったおれいに、人間にんげんへのおんがえしとして幸福こうふく名声めいせいむくいるという昔話むかしばなしかずおおくあります。

 さて、落語らくごには、「狸札たぬさつ」「狸賽たぬさい」「狸鯉たぬこい」「狸釜たぬかま」という、タヌキが人間にんげんおんがえしをするはなしつあります。このはなし総称そうしょうして『たぬき』とびます。

 落語らくごの『たぬき』がもとになっているといわれる『馬方うまかたとタヌキ』は、主人公しゅじんこうである人間にんげん馬方うまかたダヌキのこころあたたまる交流こうりゅうえがいたおはなしです。

 東北とうほく地方ちほう伝承でんしょうするとされる民話みんわです。

 絵本えほんうまかたとこだぬき (日本にっぽん民話みんわえほん)』は、教育きょういく画劇がげきから出版しゅっぱんされています。落語らくごの『たぬき』を絵本えほんしたものです。香山こうやま美子よしこさんのほのぼのとしたやさしいぶん野村のむらたかあきさんの版画はんがが、馬方うまかたダヌキの世界せかいあざやかに演出えんしゅつします。感動かんどうてき結末けつまつに、こころあらわれる瞬間しゅんかんおとずれる絵本えほんです。

 絵本えほんえほん寄席よせ 愉快つうかい痛快ゆかいまき』は、小学館しょうがっかんから出版しゅっぱんされています。NHKで放送ほうそうされ大評判だいひょうばんとなった『えほん寄席よせ』が完全かんぜん単行本たんこうぼん愉快つうかい痛快ゆかいまきでは、「さらやしき」「たぬきのサイコロ」「あたごやま」「池田いけだししい」「やかんなめ」の5収録しゅうろくされています。放送ほうそう音源おんげんもとにしたCDが付録ふろくいているので、すてきなイラストを絵本えほんながら、CDで落語家らくごかはなしくと、ゆかいな落語らくご世界せかいたのしむことができます。

 『とってもおかしな動物どうぶつたち (こえして、えんじるども落語らくご)』は、PHP研究所けんきゅうじょから出版しゅっぱんされています。むかし日本にっぽんらしは、人間にんげんちか距離きょりきている野生やせい動物どうぶつがたくさんいました。だから、おおくの動物どうぶつ昔話むかしばなしまれたのだとおもいます。「たぬきのおさつ」など、おかしな動物どうぶつとゆかいな人間にんげん大活躍だいかつやくする、落語らくご小噺こばなしが11ぺん収録しゅうろくされています。落語らくご漫才まんざい落語らくごコント、落語らくごげきなど、友達ともだちえんじられるスタイルで紹介しょうかいする落語らくご収録しゅうろくされているので、学校がっこうなどの行事ぎょうじもののシナリオとしても使用しようすることができます。

 CD『立川たてかわ談志だんしひとりかい 落語らくごCD全集ぜんしゅう だい12しゅう』は、日本にっぽんコロムビアから発売はつばいされています。最後さいご最後さいごまで自身じしんかたつらぬき、くなる直前ちょくぜんまでなかおどろかせつづけた落語らくご立川流たてかわりゅう家元いえもと立川たてかわ談志だんし。その談志だんし真髄しんずいを、CD50まいぜん124せき壮大そうだいなスケールで収録しゅうろくした『ひとりかい』は、立川談志たてかわだんし集大成しゅうたいせいともいえる保存版ほぞんばん落語らくごCD全集ぜんしゅうです。だい12しゅうには、「花見はなみ仇討あだうち」「たぬき」のふたつのはなし収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、ひとりの馬方さんがおりました。

 ある日、馬方さんが馬を引いて歩いていると、
 「やっちまえ!」
という子どもの声が聞こえてきました。

 何やら子どもたちは、動物をいじめている様子でした。

 「これこれ、何をしているんだね」
と馬方さんが子どもたちに声をかけると、
 「いたずらばっかりするタヌキを懲らしめているんだよ」
と棒キレを振り回しながら子どもたちは答えました。

 馬方さんが見ると、子どもたちにいじめられていたタヌキは、まだ子どもで、縄でぐるぐる巻きに縛られていました。

 馬方さん、この子ダヌキが、とても可哀想に思えてなりませんでした。

 「そんな事をしてはならん。おじさんが、その子ダヌキ買うから、放してやってくれないか」
と馬方さんは言うと、子どもたちにお小遣いを渡しました。

 子ダヌキを買い取った馬方さんは、
 「可哀想に…いま縄をほどいてやるからな」
と言って子ダヌキの縄をほどいてやりました。

 自由になった子ダヌキは、一目散に山へ逃げ帰って行きました。

 さて、その日の真夜中、馬方さんは、好きなお酒を飲んで、家で寝ていると、
 ドンドンドン
 ドンドンドン
誰かが戸を叩く音が聞こえてきました。

 その音に目を覚ました馬方さんは、
 「誰だ?今日はもう寝ちまったんだ。明日にしてくれ」
と布団の中から言って、再び眠ろうとすると、
 ドンドンドン
 ドンドンドン
と、あまりにもしつこく戸を叩くので、馬方さんが戸口まで歩いていき、
 「いま戸を開けるので、ちょっと待ってなさい」
と言いながら戸を開けると、その途端、何やら丸いものが家に中に転がり込んできました。

 「なんだ?タヌキか?」
と言いながら、転がり込んできた丸いものを馬方さんが見ると、それは昼間に助けた子ダヌキでした。

 子ダヌキは父ダヌキを連れて、馬方さんの家にやってきたのでした。

 父ダヌキは、
 「親方に助けて頂いたのは、あっしのせがれでして、恩返しのために、今日からこいつをここに置いては頂けませんか」
と頭を下げながら言って、馬方さんに頼みこみました。

 突然のことに、馬方さんが驚いていると、
 「恩返しもしないでこのままでは、人間同様の不人情と笑われてしまいます」
と父ダヌキに言われ、その言い分も分からなくはないと思った馬方さんは、
 「それなら預かるけど、2~3日したら帰ってくれよ」
と言って、父ダヌキの願いを聞き入れることにしました。

 父ダヌキは、ほっと安心したような表情をして、
 「しっかりやれよ!」
と子ダヌキに言うと、山へ帰って行きました。

 こうして、この日から子ダヌキは、馬方さんの身の回りのお世話をすることになりました。

 子ダヌキはクルクルとよく働くので、最初は渋っていた馬方さんも、すっかり子ダヌキことが気に入ってしまいました。

 そんなある日、
 トントントン
 トントントン
馬方さんの家の戸を叩く音が聞こえてきました。

 馬方さんは、押入れに隠れているよう子ダヌキに指示すると、
 「開いているよ」
と戸に向かって言いました。

 すると、戸が開き、キチンとした身なりの老人が家の中に入ってきました。

 この老人は、馬方さんがいつもお金を借りている、吉田屋という金貸しの旦那さんでした。

 吉田屋の旦那さんは、
 「今日来たのは、他でもない。どうしても今日中に利息込みで一両の金を返してもらう。それが無理なら馬をもらっていく」
と言いました。

 二人が話していると、
 「親方、親方」
と子ダヌキの馬方さんを呼びました。

 「おや、誰か居るのかね」
と吉田屋の旦那さんに言われたので、
 「友達がきてるもので」
と馬方さんは嘘をつきました。

 「それなら、その友達に借金の肩代わりをしてもらえばいい。私はその辺をひと回りしてくるので、その間に話をつけておくれ」
と言うと、吉田屋の旦那さん表へ出ていってしまいました。

 馬を持っていかれては、馬方として仕事になりません。馬方さんは、すっかり困ってしまいました。

 押入れから出てきた子ダヌキは、
 「ボクがお金になります!ボクだってタヌキの端くれ、小判くらいには化けられますよ」
と得意げになって言うと、あっという間に小判に化けました。

 吉田屋さんが戻って来たので、馬方さんは慌てて子ダヌキの化けた小判を懐にしまうと、戸口で吉田屋の旦那さんを出迎えました。

 「話はつきましたか?」
と吉田屋の旦那さんに言われたので、
 「へい、二つ返事で」
と答えた馬方さんは、
 「頼んだぞー」
と小判に話しかけながら、吉田屋の旦那さんに小判を渡すと、受取書まで切ってもらいました。

 吉田屋の旦那さんは、不思議に思いながらも小判を受け取ると、巾着袋の中にしました。

 馬方さんは、もう気が気ではありませんでした。

 「乱暴に扱うと、小判に噛まれますよ」
と変なことを馬方さんが言うので、吉田屋の旦那さんは、小判を調べようと、お日さまに透かしたり裏返したりかじったりしました。

 「小判が可哀想だよ!」
という馬方さんに、
 「何を馬鹿なことをいっているんだ」
と吉田屋の旦那さんは言って、帰って行きました。

 吉田屋の旦那さんの後ろ姿に向かって、
 「腹が減ったら何かつまめよ。イヌになんかに噛まれるなよ」
と言いながら、馬方さんは子ダヌキの化けた小判を見送りました。

 その夜、馬方さんは、子ダヌキのことが気になって、なかなか寝つかれませんでした。

 「子ダヌキのやつ、大丈夫かな。何とか上手く逃げ出してくれ」
と馬方さんが思っていると、窓から小さな影が見えて、それが家の中に転がり込んできまいた。

 「子ダヌキか!?」
と思わず叫んだ馬方さんの目の前には、傷だらけの子ダヌキが立っていました。

 「親方!」
と言って、馬方さんに抱きついた子ダヌキを、馬方さんもギューっと抱きしめてやりました。

 それから、子ダヌキは馬方さんに、吉田屋さんに連れて帰られてからのいきさつを話し始めました。

 「親方が妙なことばかり言うもんだから、吉田屋の旦那さんからは何回もかじられ、ひっくり返され、ひっぱたかれました。犬にも追いかけられました。夜になって、みんな寝てしまったので、袋を食いちぎって逃げてきました」
と言う子ダヌキに、馬方さんは、思わずおかしくなって笑ってしまいました。

 「笑いごとじゃありませんよ」
と言って、子ダヌキは、馬方さんの前に小判を三枚差し出しました。

 そして、
 「悔しいから、袋の中に小判が三枚あったので、お土産に持ってまいりました」
と言った子ダヌキに、
 「それじゃあ、まるで泥棒だ。そいつは明日、オイラが返しに行ってくる」
と言い、馬方さんは、
 「今夜はもうお休み」
と言って、子ダヌキを布団の中に入れてやりました。

 そうして、その夜、子ダヌキは馬方さんのそばでグッスリ眠りました。

 さんざんな目にあった子ダヌキに、馬方さんは涙を流して感謝し、
 「明日になったら、この優しい子ダヌキを父ダヌキのところへ帰らせよう」
と思いながら眠りました。

解説

 仏教ぶっきょう用語ようごに「善因善果ぜんいんぜんか」と「悪因悪果あくいんあっか」という言葉ことばがあります。

 それぞれ、「おこないをしていれば、いずれ結果けっかむくいられる」と、「わる行為こういには、かならわる結果けっかむくいがある」という意味いみです。

 人生じんせい形成けいせいする要素ようそとして、ふたつのものがあるといわれています。

 ひとつは「運命うんめい」で、もうひとつは「因果いんが応報おうほう」です。

 ひとは、毎日まいにちなにかをおもい、なにかをはなし、なに行動こうどうしています。

 その自己じこ意志いし行為こういを、仏教ぶっきょうでは「ごう」とび、それが存続そんぞくすることで果報かほうをもたらすとされます。

 それを「因果応報いんがおうほう」と仏教ぶっきょうでは表現ひょうげんします。

 つまり、ひとは「因果応報いんがおうほう」によって、ってまれた「運命うんめい」をもかええていくことができるというわけです。

 ひとやさしく、ひとのためにいことをする、ただそれだけで人生じんせい素晴すばらしいものになっていきます。

 つまり、いことをおもい、いことをはなし、行動こうどうをすれば、「運命うんめい」も方向ほうこうえていくことができるのです。

 「因果応報いんがおうほう」の存在そんざいしんじ、毎日まいにちごせば、人生じんせい結果けっか間違まちがいなくほうかうということです。

感想

 『馬方うまかたとタヌキ』は、めぐみやおんけたダヌキだぬきが、恩返おんがえしとしてそのひと幸福こうふくむくいるというおはなしです。

馬方うまかたさんが、ダヌキのいのちをおかねすくうくだりは、『浦島うらし太郎たろう』とまったくおなじです。

 さて、日本にっぽん昔話むかしばなししあわせな結末けつまつには、“おかね不自由ふじゆう生活せいかつからの開放かいほう”という内容ないようのものがかずおお存在そんざいします。

 そして、そのおはなしおおくは、結末けつまついたるまで主人公しゅじんこうのおかねへの無執着むしゅうちゃくえがかれています。

 このおはなしでも、主人公しゅじんこう馬方うまかたさんは、おかねへの執着心しゅうちゃくしんうす存在そんざいとしてえがかれています。

 つまり、もし馬方うまかたさんのわりに、おかねへの執着心しゅうちゃくしんつよ人間にんげん主人公しゅじんこうだったら、おな結末けつまつむかえることはないということです。

 なぜなら、このおはなし馬方うまかたさんに幸福こうふくをもたらしたものは、ダヌキの善意ぜんいだからです。

 主人公しゅじんこう馬方うまかたさんは善意ぜんいダヌキをたすけました。

 それにたいして、ダヌキも善意ぜんいこたえました。

 そのことからも、執着しゅうちゃくから離れ、無執着むしゅうちゃくへとちかづいていくことができれば、善意ぜんいはなれていかないということです。

 『馬方うまかたとタヌキ』は、ほんのひとしずくの善意ぜんい勇気ゆうき責任せきにんつたえるおはなしなのかもしれません。

まんが日本昔ばなし

馬方うまかたとタヌキ
放送日: 昭和52年(1977年)02月05日
放送回: 第0115話(0070 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 樋口雅一
文芸: 沖島勲
美術: 山守啓陽
作画: 上口照人
典型: 動物報恩譚どうぶつほうおんたん
地域: 東北地方

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最後に

 今回こんかいは、『馬方うまかたとタヌキ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 おこないをすれば、それがもととなって、かならむくいがあります。日々ひび生活せいかつなかで、おもうようにいかないことってありますよね。そんなときおもしていただきたいおはなしが、『馬方うまかたとタヌキ』です。ぜひれてみてください!

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