昔話『乞食のくれた手ぬぐい』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 観音かんのん三十三さんじゅうさん変身へんしんといわれるとおり、ひとちようにより、色々いろいろ姿すがた変身へんしんしたり化身けしんしたりすることができます。『乞食こじきのくれたぬぐい』は、身分みぶん上下じょうげ容貌ようぼう美醜びしゅうかかわらず、すべてを観音様かんのんさま化身けしんおもふか尊敬そんけいあいってせっしなければならないといましめるおはなしです。

 今回こんかいは、『乞食のくれた手ぬぐい』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『乞食こじきのくれたぬぐい』は東北とうほく地方ちほうつたわる民話みんわです。

 観音かんのん菩薩ぼさつ観音かんのん三十三さんじゅうさん変身へんしんといわれるとおり、人間にんげんちようで変化へんかき、色々いろいろ姿すがた変身へんしんしたり化身けしんしたりすることができるという観音かんのん信仰しんこうと、仏教ぶっきょう因果いんが応報おうほう道理どうりがおはなしまれています。

 昭和しょうわ48ねん(1973年)に角川書店かどかわしょてんより発行はっこうされた瀬川拓男せがわたくお松谷まつたにみよの『日本にっぽん民話みんわ<5> (長者ちょうじゃへのゆめ)』のなかで「こじきのくれたぬぐい」のだい紹介しょうかいされれたことにより日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより新装改訂版しんそうかいていばん登場とうじょう。『乞食こじきのくれたぬぐい』のおはなしは『まんが日本昔ばなし だい14かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『つるのよめさま ([新装版しんそうばん]日本にっぽんのむかしばなし 1)』は講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。とおいむかしにまれ、なが人々ひとびとのあいだにかたりつがれてきた昔話むかしばなしには、人間にんげんきる知恵ちえかた指南しなんいきづいています。松谷まつたにみよさん・ささめやゆきさんが日本にっぽん各地かくち採集さいしゅうし、うつくしいかたぐち再話さいわした『つるのよめさま』をはじめ、『こじきのくれたぬぐい』などぜん23ぺん収録しゅうろくされています。

 角川書店かどかわしょてんより出版しゅっぱんされた『日本にっぽん民話みんわ<5> (長者ちょうじゃへのゆめ)』は、瀬川拓男せがわたくおさん・松谷まつたにみよさん・辺見へんみじゅんさんが編者へんしゃとなり、日本にっぽんむかしばなしから“長者ちょうじゃ栄華えいが没落ぼつらく” を主題しゅだいとした伝説でんせつが44ぺん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、海産物問屋かいさんぶつどんやがありました。そこにおうめという年頃としごろ下働したばたらきをするむすめがおりました。お梅は気立きだてがよく、はたらものでしたが、けっして美人びじんというわけではありませんでした。

 あるあつなつ、お梅が店先みせさきみずをまいていると、一人ひとり乞食こじきがやってて、
 「みず一杯いっぱいませてほしい」
いました。

 しかし、女将おかみさんがてきて、
 「そこらへんかわみずでもおみ」
と言ってかえしてしまいました。

 乞食を可哀相かわいそうおもったお梅はるにかねて、女将さんに内緒ないしょで、おわんに水をにぎめしひとつと乞食のあといかけました。

 乞食はたいそうよろこび、のどらして水を飲み、握り飯をべると、おれいにときたなぬぐいをし、とぼりとぼりとってしまいました。

 お梅はそのよるゆめなか観音様かんのんさまかおをなでられる夢でましたので、井戸水いどみずに顔をうつすと、やはりいつもの顔のままでした。

 なんだかとてもかなしい気持きもちになり、お梅はがたまでとおしました。

 あさになり、わかしゅうがいつものようにお梅の顔をからかいました。お梅のからはなみだがあふれたので、井戸水で顔をあらい、乞食にもらった手ぬぐいで顔をきました。
 すると、お梅の顔がまるで大和絵やまとえに出てくるような美人びじんわっていました。

 そこに女将さんがやって来たので、ことの顛末てんまつはなすと、さっそく自分じぶんうつくしくなろうと女将さんは街中まちじゅうの乞食をあつめて、さけ食事しょくじい、乞食の手ぬぐいを集めました。

 女将さんの顔はどの手ぬぐいを使つかっても変わりませんでしたが、最後さいごのこった手ぬぐいで顔を拭くと、うまの顔になってしまいました。

 女将さんは馬になり、ヒヒーンときながら、やまほうけてき、それっきりもどってくることはありませんでした。

解説

 『乞食こじきのくれたぬぐい』に登場とうじょうする観音様かんのんさまとは、仏教ぶっきょう菩薩ぼさつ一尊いっそんで、観音かんのん観世音菩薩かんぜおんぼさつともばれ、人々ひとびとねがいをかなえてくれる観音菩薩かんのんぼさつのことです。
 この“観音”という名前なまえには、人々の苦悩くのうこえき、すくうという意味いみがあります。
 つまり、観音菩薩のご利益りえきは、きわめて広現世利益げんぜりやくです。

 また、仏像ぶつぞうとしてよくかける観音菩薩ですが、たくさんのうでがあったり、いくつもの頭部とうぶがあったりと、仏像によって姿形すがたかたちがかなりことなっています。
 それは、人々をすくうために観音菩薩がその姿すがた自由自在じゆうじざいえられるという特徴とくちょう関係かんけいしています。そのため、観音菩薩の仏像には、じつにさまざまなかたち存在そんざいします。
 観音かんのん三十三さんじゅうさん変身へんしんといわれるとおり、観音菩薩は三十三さんじゅうさんの姿をつといわれています。だから、おなじ観音菩薩でも、変身後へんしんごの姿にはそれぞれ個性こせいがあるのです。

 日本人にっぽんじんとくしたしみをかんじて崇拝すうはいしてきたのが、この変化観音へんかかんのんである観音菩薩です。

 古来こらい日本にっぽんでは「仏様ほとけさまならなんでもいい」というかんがえではなく、自分じぶんゆめ実現じつげんしてくれる個性こせいつよ仏尊ぶっそん特定とくていしてあがめてきました。だから、現世利益をよりおおくもたらし、自分の理想りそう変化へんかする観音菩薩がれられたのでしょう。

感想

 “第一印象だいいちいんしょう”とはその言葉ことばとおり「物事ものごとせっして最初さいしょ印象いんしょう」のことをします。はじめてったひといだ印象いんしょうのことです。

 他方たほう、「ひとかけによらぬもの」ということわざもあります。このことわざは姿すがたかたちだけのひとしを判断はんだんするのではなく、性格せいかく人間性にんげんせいといった中身なかみで人を判断するべきだという意味いみもちいられます。

 しかし、この言葉ができた意味をかんがえると、やはりそれだけ“見た目”で、人の印象を判断してしまうことがおおいともえます。人は中身が大切たいせつだとあたま理解るかいしていても、第一印象はやはり見た目などの姿かたちで判断せざるをないのです。

 見た目からける第一印象は重要です。そして、一度いちど他者たしゃめられてしまった自分自身じぶんじしんの印象をえるのは、とてもむずかしいことです。

 「人は外見ではなく、中身だ」という言葉をよくみみにしますが、相手あいてによって決定けっていされた第一印象を払拭ふっしょくすることは容易よういではありません。第一印象で相手に好感こうかんを抱いてもらえなければ、そのも良い印象をたせることもまた難しくなります。

 さらに、見た目から決定された第一印象が好意的こういてきなものであるかいなかで、その後どのようにせっしていくかもまた、決定されてしまうことがあります。つまり、見た目というのは、内面ないめんってもらうための機会きかいともなり得るものなのです。

 これらの事実じじつ考慮こうりょすると、はじめての接触せっしょくがいかに大切なものであるかが理解できます。

 第一印象は、自分と相手の関係かんけい一生いっしょう左右さゆうしかねない影響力えいきょうりょくを持っているので、自分の姿かたちやいを見直みなおし、見た目に細心さいしん注意ちゅういはらうことで、相手に好感を抱いてもらえるようととのえたほういと言えるでしょう。

まんが日本昔ばなし

乞食こじきのくれたぬぐい
放送日: 昭和51年(1976年)05月15日
放送回: 第0056話(第0032回放送 Bパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 高橋良輔
文芸: 沖島勲
美術: 西田稔
作画: 倉橋達治
典型: 観音信仰かんのんしんこうとなり爺型じじいがた
地域: 東北地方


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 『乞食こじきのくれたぬぐい』はDVDのため「VHS-BOXだい5しゅう 第45かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『乞食こじきのくれたぬぐい』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『乞食のくれた手ぬぐい』は、「ひとかけによらぬもの」といわれているように、そのひと本当ほんとうはどんな人かは、なりやうわべの態度たいどただけではわからないといましめるおはなしです。ぜひれてみてください!

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