昔話『地獄のあばれもの』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 うんわるくなってしまった医者いしゃ山伏やまぶし鍛冶屋かじやが、知恵ちえ使つかって地獄じごくすすんでいきます。閻魔えんま大王だいおうは、三人さんにんをなんとかくるしめようとしますが、あれやこれやと使つかい、三人が閻魔大王とおにたちをこまらせる痛快つうかい爆笑ばくしょう物語ものがたりが『地獄じごくのあばれもの』です。

 今回こんかいは、『地獄のあばれもの』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『地獄じごくのあばれもの』は、上方かみがたでは『地獄じごく八景ばっけい亡者戯もうじゃのたわむれ』、江戸えどでは『地獄じごくめぐり』というはなしとして、落語らくご演目えんもくひとつでもある有名ゆうめいなおはなしです。

 『閻魔えんま失敗しっぱい』ともばれる『地獄のあばれもの』は、筋立すじだて、結末けつまつなどにこまかな異同いどうはありますが、類話るいわ日本にっぽん各地かくちひろつたえられています。

 ちなみに、とおしでえんじると一時間いちじかんちょうもある『地獄八景亡者戯』は、上方かみがた落語らくご復興ふっこう心血しんけつそそぎ、人間国宝にんげんこくほう認定にんてんされた三代目さんだいめ桂米朝かつらべいちょう十八番じゅうはちばん演目えんもくとしてもられています。

 絵本えほんじごくのそうべえ (童心社どうしんしゃ絵本えほん)』は童心社どうしんしゃから出版しゅっぱんされています。桂米朝かつらべいちょうさんの落語らくご田島征彦たじまゆきひこさんの堪能たんのうできる絵本です。リアルな地獄じごくをコミカルにえがいているため、ちょっとこわい絵でも、おさんは大喜おおよろこびすることでしょう。大人おとなたのしむことができる、何度なんどんでも大爆笑だいばくしょう一冊いっさつです。

 絵本えほんえんまさまのしっぱい (どもとよむ日本にっぽんむかしばなし)』はくもん出版しゅっぱんから出版しゅっぱんされています。のひらサイズではこびに便利べんりな絵本です。『じごくのそうべえ (童心社どうしんしゃ絵本えほん)』の再話さいわです。特技とくぎつことの素晴すばらしさと、ちからわせれば困難こんなんつことができることをおしえています。閻魔えんま大王だいおうわらったりおこったりする表情ひょうじょう変化へんか描写びょうしゃ素敵すてきな絵本です。

 絵本えほんじごくのさたもうでしだい』はひかりのくにから出版しゅっぱんされています。登場とうじょうする三人さんにん職業しょくぎょうが、現代げんだいどもにもわかりやすいように現代風げんだいふう改変かいへんされています。地獄じごくのおはなしですが、パワーをかんじる独特どくとく色使いろづかいのにより、物語ものがたりがコミカルに展開てんかいするので、テンポすすめることができる絵本です。

 角川書店かどかわしょてんより出版しゅっぱんされた『乱世らんせきる (日本にっぽん民話みんわ 8)』は、瀬川拓男せがわたくおさん・松谷まつたにみよさんが編者へんしゃとなり、日本にっぽんむかしばなしから「地獄じごくのあばれもの」など“乱世らんせきる”物語ものがたり主題しゅだいとした伝説でんせつが41ぺん収録しゅうろくされています。

 CD『桂米朝かつらべいちょう 昭和しょうわ名演めいえん 百噺ひゃくばなし じゅう 地獄じごく八景ばっけい亡者戯もうじゃのたわむれ』はユニバーサル・ミュージックから発売はつばいされています。桂米朝かつらべいちょう師匠ししょう落語らくごといえば、ただしいきっちりとしたかたぐちですが、この『地獄八景亡者戯』では面白おもしろかたぐちなのに、さすが名人めいじんおもわせます。昭和しょうわ40年代ねんだいあぶらった米朝べいちょう師匠ししょう名演めいえんひかります。昭和47ねん(1972年)11がつ16にち京都会館きょうとかいかんでの公演こうえん収録しゅうろく

あらすじ

 むかしむかし、あるところに一人ひとり医者いしゃがおりました。この医者はひとやまいなおすどころか、自分じぶんが病にかかってしまいくなってしまいました。

 亡くなった人は三途さんずかわわたり、あのくのですが、おこないをしてきた人は極楽ごくらくへ、わるい行いをしてきた人は地獄じごくへ行くのです。
 そして、極楽ごくらくきか地獄じごくきかは、閻魔えんま大王だいおうめるのでした。

 さて、亡くなった医者は、
 「閻魔えんま大王だいおうさまわたしは医者でございます。生前せいぜんは、人々ひとびとのおやくにたつよう精進しょうじんしてまいりました。どうぞ極楽へおねがいします」
と閻魔大王にいました。

 閻魔大王は閻魔帳えんまちょう確認かくにんすると、そこには「この医者はヤブ医者だった」としるされていたので、閻魔大王は、
 「こら!うそつきめ!おまえはヤブ医者なのに、あくどくもうけておったではないか!お前は地獄行きじゃ!」
と言いました。

 医者はおににつまみげられ、ポイッとほうげられてしまいました。
 ちたところは、地獄へつづみちでした。
 「どうせ地獄行きなので、だれか道づれがるのをつことにしよう」
と医者は覚悟かくごめ、かたわらのいしこしをおろしました。

 さて、つぎに閻魔大王のところへたのは、山伏やまぶしでした。
 山伏は、
 「私は山伏としてなかわざわいをのぞいてきました。だから極楽行きでしょう」
と閻魔大王に言いました。
 閻魔大王は閻魔帳を確認し、
 「こら!嘘つきめ!お前は神仏しんぶつたたりといって、おおくの人からかねげていたじゃないか!お前は地獄行きじゃ!」
と山伏に言いました。

 山伏も鬼につまみ上げられ、ポイッと放り投げられました。
 落ちたところの地獄へ続く道には、医者がおりました。
 「二人ふたりになったが、もう一人いると心強いな」
と医者が山伏に言うと、
 「どうせ地獄行きじゃ。慌てることはない。もう一人来るまでとう」
と山伏は言い腰をおろしました。

 さて、その次に閻魔大王のところへ来たのは、鍛冶屋かじや親父おやじでした。
 「閻魔大王様、私は百姓ひゃくしょうのために、かまくわなど農作業のうさぎょう必要ひつよう道具どうぐをたくさんつくりました。極楽行きでしょう」
と閻魔大王に鍛冶屋は言いました。
 閻魔大王は閻魔帳を確認し、
 「こら!嘘つきめ!てつものをして、あじにぶい道具をっていたじゃないか!お前は地獄行きじゃ!」
と鍛冶屋に言いました。

 鍛冶屋も鬼につまみ上げられ、ポイッと放り投げられました。
 落ちたところの地獄へ続く道では、医者と山伏がニコニコがおでお出迎でむかえしました。
 「これで三人さんにん。では、ぼちぼちまいりましょうか」
 そんなわけで、三人はってあるき、地獄のぐちである地獄門じごくもんかいました。

 地獄門では門番である鬼が、
 「さっさとはいらんか!そして、あのやまのぼれ!」
おそろしいかおで言うので、三人がると、なんとそれはするど刃物はものがズラリとならんだつるぎやまでした。

 「こんな山を登ったら、あしけてしまう」
と医者と山伏がおびえていると、
 「ここはオラにまかしとけ」
と鍛冶屋は言い、つるぎ一本いっぽんってねつかしはじめました。
 「ほら出来できた。てつ草鞋わらじじゃ。これをいてあるけば大丈夫だいじょうぶ
と鍛冶屋は得意とくいげに言いました。
 そして、三人は鉄の草鞋を履いて、剣の山を歩きはじめました。
 ポキポキと剣がおもしろいように折れるので、三人はあとからもののために道をつくりました。

 おどろいた鬼たちは、いそいで閻魔大王にそのことをつたえました。

 「なにぃ!剣の山に道を作っているだと!バカモン!さっさととららえて、釜茹かまゆででじゃ!」
と閻魔大王はいかりながら言いました。

 とらわれた三人は、おおきなかまなかに放りまれました。
 鬼たちがドンドンとき、たちまち釜の中はグツグツとえたってきました。
 医者と鍛冶屋があつさにえていると、
 「ここは拙者せっしゃに任せなさい」
と山伏は言い、なにやら呪文じゅもんとなはじめました。
 「ぬるまにな~れ、カァーーーーーッ!」
と山伏が言うと、不思議ふしぎなことに、おはちょうどいい加減かげんになりました。
 そして、三人はすかっりいい気分きぶんとなり、釜の中でうたうたい始めました。

 この様子ようすを見て、おこった閻魔大王は、おおきなで三人をひとつかみにすると、三人を一気いっきんでしまいました。
 三人が落ちたのは、閻魔大王の胃袋いぶくろの中に落ちました。
 「からだがとけてきた!」
と山伏と鍛冶屋が怯えていると、医者はいた様子ようすで、
 「心配しんぱいするな。いま、体がとけないくすりをつくったで、これを飲みなさい」
と言いました。
 その薬を飲むと、たちまち体はシャンとなりました。

 そこで、三人は閻魔大王の体の中の探検たんけんを始めました。
 山伏と鍛冶屋は、うえからひものようなものがいくつもぶらがっているのを発見はっけんしました。
 医者がある紐をると、閻魔大王はきゅうわらしました。
 次にちがう紐を引っ張ると、今度こんどは急に閻魔大王はき出しました。
 わけもなく笑ったり泣いたりする閻魔大王に、鬼たちは気味悪きみわるそうにかお見合みあわせました。
 「こりゃあ、おもしろい」
と体の中の三人は、笑いの紐に、泣きの紐、それから怒りの紐に、くしゃみの紐と、色々いろいろな紐を滅茶苦茶めちゃくちゃに引っ張りました。

 「さて、そろそろくだし薬をって、そとよう」
と医者は、下し薬というものを閻魔大王の体の中に塗りながら言いました。
 すると、泣いたり笑ったりしていた閻魔大王は、急にはらをかかえて便所べんじょにかけこみました。
 そして、閻魔大王のおしりから、医者、山伏、鍛冶屋が、次々つぎつぎしてきました。
 カンカンの閻魔大王は、
 「よくもワシにはじをかかせたな!お前たちは、地獄にいておくわけにはいかない!とっととシャバへもどれ!」
と言って、三人を地上ちじょうき飛ばしてしまいました。

 こうして三人は、もう一度いちどこのもどり、いつまでも仲良なかよらしたそうです。

解説

 「三人さんにんれば文殊もんじゅ知恵ちえ」という格言かくげんがあります。
 これは、凡人ぼんじんであっても、三人さんにんあつまってかんがえれば文殊もんじゅおとらないような知恵ちえせるという意味いみになります。
 ちなみに、この格言に出てくる文殊とは、文殊もんじゅ菩薩ぼさつのことで、知恵ちえつかさど菩薩ぼさつとされます。

 さて、「三人寄れば文殊の知恵」は、じつ学術的がくじゅつてきには否定ひていされています。

 わかりやすいれいとしては、高度こうど数学すうがく問題もんだいを、凡人が三人集まれば回答かいとうできるかというと、それは無理むりはなしです。

 現実げんじつでは、三人のうち、個々ここわせていない知恵が、三人集まることで相互そうご作用さようしょうじるということは、絶対ぜったいにありえません。

 つまり、高度な数学を勉強べんきょうしている一人ひとり専門家せんもんかに、数学をまったく勉強していない三人が集まったとしても絶対にかなわないということです。

 では、「三人寄れば文殊の知恵」の本当ほんとう意味いみはというと、具体的ぐたいてきな問題を解決かいけつすることではなく、だれかとかかわることで精神的せいしんてき安定あんていることができるということではないでしょうか。

 不安ふあんむねけそうなときは、一人でなやまないで、複数ふくすうでいることが重要じゅうようということです。

感想

 ひとは、かならにます。
 つまり“必死ひっし”ということです。
 はかない人生じんせいも、必死であるからこそとうといのです。

 お釈迦しゃかさま出家しゅっけ動機どうきは、「からのがれたい」ということでした。
 そして、お釈迦様がした結論けつろんは、「死からは逃れられない」というさとりでした。

 では、人はきているうちに、なにをなすべきなのでしょうか。

 やはりえることは、いまのこの瞬間しゅんかんをいかに精一杯せいいっぱいきるかにきるとおもいます。
 それは、全力ぜんりょくきていること、それ自体じたいが尊いからです。

 お釈迦様が「死から逃れたい」ために出家したことから、仏教ぶっきょう根本こんぽん動機どうきは“”であるといわれます。

 せいがあればがあり、生がなければ死もありません。しかし、同時どうじにそれはうらかえせば、死があるから生があり、死がなければ生もないということになります。

 このかんがえを体得たいとくし、“必死”であることをこころめてきることが、生死せいしえていくみちであり、ゆたかな人生のありかたではないでしょうか。

まんが日本昔ばなし

地獄じごくのあばれもの
放送日: 昭和51年(1976年)08月07日
放送回: 第0074話(第0044回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 彦根のりお
文芸: 沖島勲
美術: 内田好之(スタジオユニ)
作画: 山崎久
典型: 冒険譚ぼうけんたん
地域: 関東地方(埼玉県)


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最後に

 今回こんかいは、『地獄じごくのあばれもの』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 どんな困難こんなんえようと、知恵ちえをしぼりちからわせ、つねまえくこのと。そして、困難はおそれるものではなく、つものであるとおしえている物語ものがたりが、『地獄のあばれもの』です。ぜひれてみてください!

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