昔話『七夕さま』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『七夕たなばたさま』は、あいおとこおんなが、天上界てんじょうかいおういかりにれ、はなればなれにされますが、ねん一度いちど七月七日しちがつなのかよるあまがわをはさんでうことをゆるされたという物語ものがたりです。

 今回こんかいは、『七夕さま』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 「羽衣伝説はごろもでんせつ」ともばれる『七夕たなばたさま』は、日本各地にっぽんかくち数多かずおおくの類話るいわ存在そんざいし、民間みんかんつたわる伝承でんしょう説話せつわとしてかたがれてきました。

 日本にっぽんの羽衣伝説でもっと有名ゆうめいなものは、静岡県静岡市清水区しずおかけんしずおかししみずく三保半島みほはんとうにある「三保みほ松原まつばら」につたわるおはなしではないでしょうか。

 「七夕伝説たなばたでんせつ発祥はっしょう」といわれる大阪府枚方市おおさかふひらかたし交野市かたのしに伝わるお話や、鹿児島県奄美大島かごしまけんあまみおおしまにも伝わる天女てんにょのお話もとても有名です。

 最もふるいとされる羽衣伝説は、『風土記ふどき』の逸文いつぶんとなりますが、『近江国風土記おうみのくにふどき』と『丹後国風土記たんごのくにふどき』でみることができます。

 日本各地の羽衣伝説は、この『風土記』の逸文が各地かくちひろまり、その根付ねづいたものとかんがえられています。

 また、天女はしばしば白鳥はくちょう同一視どういつしされてきたため、『白鳥はくちょう乙女おとめ (The Swan Maidens)』として、アジアをはじめひろ世界中せかいじゅうにお話が伝わっています。

 絵本えほん天人てんにんにょうぼう (行事ぎょうじむかしむかし)』は佼成出版社こうせいしゅっぱんしゃから出版しゅっぱんされています。日本にっぽん七夕たなばたあまがわ由来ゆらいについてのおはなしで、「羽衣伝説はごろもでんせつ」を題材だいざいにした絵本です。織姫おりひめ彦星ひこぼしのお話ではありませんが、赤坂三好あかさかみよしさんによるがとても綺麗きれいで、谷真介たにしんすけさんのぶん意外性いがいせいがあって物語ものがたり展開てんかいはやく、最後さいごまでたのしむことができます。

 絵本えほん天人女房てんにんにょうぼう (日本にっぽんのむかしはなし)』は童話館出版どうわかんしゅっぱんから出版しゅっぱんされています。「羽衣伝説はごろもでんせつ」を題材だいざいにした絵本です。太田大八おおただいはちさんのは、とにかく色彩しきさいうつくしく、天女てんにょかお上品じょうひんです。そこに、稲田和子いなだかずこさんによる鹿児島県かごしまけんかた口調くちょうかさなると、き手も絵本の世界せかいまれます。

 絵本えほん天女てんにょのはごろも (どもとよむ日本にっぽんむかしばなし)』はくもん出版しゅっぱんから出版しゅっぱんされています。のひらサイズの絵本です。秋田県あきたけんつたわる「七夕たなばたになった親父おやじ」をもとにした絵本です。「羽衣伝説はごろもでんせつ」が題材だいざいです。かたがれたむかしばなしには、どものこころきつけるちからがあります。昔ばなし本来ほんらいの「かたぐち」の特徴とくちょうかした、七夕たなばた由来ゆらい親子おやこまなべるたのしい絵本です。

 『年中行事覚書ねんじゅうぎょうじおぼえがき』は講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。「七夕たなばた」をはじめ、日本各地にっぽんかくちめずらしい年中行事ねんちゅうぎょうじ焦点しょうてんて、その由来ゆらい変遷へんせんなどが柳田國男やなぎたくにお先生せんせい独特どくとく表現ひょうげんかれています。伝統でんとうある行事ぎょうじ途絶とだえてしまうことへの危機感ききかんからまれたほんだけあって、ここには“なつかしい日本にっぽん”があります。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、土鍋どなべあるおとこがおりました。

 ある、いつものように男が土鍋を売り歩いていると、みずうみむすめたちが水浴みずあびをしているのをかけました。

 「気持きもちよさそうじゃのう」
と男はおもいながら、ふとまえを見ると、湖畔こはんえだうつくしい羽衣はごろもがかけてありました。

 「なんて美しくてめずらしい羽衣だ」
と男は思い、どうしても羽衣がしくなってしまい、一着いっちゃくだけぬすんでしまいました。

 その日の夕方ゆうがた、男が仕事しごとえて、昼間ひるまおとずれた湖をとおりかかると、一人ひとりの美しいむすめはだかいておりました。

 男はこの娘に一目惚ひとめぼれしてしまいました。

 「娘さん。どうしたんだい」
と男が娘にたずねました。
 すると娘が、
 「水浴びをしているうちに、羽衣を盗まれてしまいました」
いました。
 そして、
 「あの羽衣がないとわたしかえることが出来できないのです」
と言いました。

 男は羽衣をかえそうと思いましたが、一目見てすっかり娘をってしまったため、
 「羽衣がなくて帰れないのなら、私のいえ一緒いっしょらしませんか」
と男は娘に言い、娘をよめにしてしまいました。

 男と娘は仲良なかよく暮らし、二人ふたりあいだにはどもがまれました。

 ある日のこと、娘は天井てんじょうはりからなにつつみがぶらがっていることにがつきました。包みをけてみると、なかには娘が湖で盗まれた羽衣がかくしてありました。

 あやまる男に娘は、
 「私は天女てんにょです。羽衣が見つかったので、てんかえらなければなりません」
と言って、羽衣をまとった娘は、子どもをいて天にのぼっていきました。
 そのさい
 「もし私にいたかったら、わらじを千足せんぞくんで、たけ根元ねもとめなさい」
と言いのこしました。

 男は娘に会いたい一心いっしんで、わらじを編みつづけました。あさからばんまでわらじを編み続け、あと一足いっそくで千足のわらじが出来できあがるとこまできました。

 娘にはやく会いたくて仕方しかたのなかった男は、我慢がまんができず、千足より一足すくないわらじを竹の根元に埋めました。

 その途端とたん、竹がぐんぐん天にかってはじめました。男は娘のいる天上界てんじょうかいに向かって竹をのぼりはじめましたが、もう少しのところで竹は天にはとどかず、ぴたりと伸びなくなってしまいました。

 「おーい」
と男はさけびました。
 叫びごえに気づいた娘がしたをのぞくと、男が泣きそうなかおっていました。

 娘には、男がわらじを一足編んでいないことが、すぐにかりました。

 それでも娘は、手を伸ばしてあいする男を天にげました。

 二人は再会さいかいよろこびましたが、天にいる娘の両親りょうしんは、自分じぶんたちの許可きょかなく勝手かってに娘を嫁にした男のことをこころよく思っていませんでした。

 そこで男をこまらせてやろうと、父親ちちおやは娘と結婚けっこんするかわわりに男に無理難題むりなんだいを言いつけました。

 しかし、男はそれをなんとかこなしていきました。

 男を知恵者ちえしゃと思った父親は、男に褒美ほうびあたえることにしました。

 「おまえうりをやろう。はたけってきなだけべるがいい」
と父親は男に言い、続けて、
 「ただし、瓜はかならたてれ」
と言いました。

 早速さっそく、男は喜んで瓜畑うりばたけへ向かいました。

 男は言われたとおはたけの瓜を縦に切ると、瓜から大量たいりょうみずがあふれし、その水はおおきなあまがわとなって男をながしてしまいました。

 流される男に向かって娘は、
 「七日なのかに会いましょう」
と言いました。

 ところが、男がこれを七月しちがつ七日なのか間違まちがえてしまい、二人はねん一度いちど、七月七日に天の川をはさんでしか会えなくなってしまいました。

 これが七夕たなばたはじまりと言われています。

解説

 天女てんにょとは仏教ぶっきょう用語ようごです。人間界にんげんかいうえにある天道てんどう存在そんざいのことを天女とびます。

 さて、「羽衣伝説はごろもでんせつ」ともばれる『七夕たなばたさま』のおはなしは、『近江国風土記おうみのくにふどき』と『丹後国風土記たんごのくにふどき』などおおくの文献ぶんけんにみえており、日本各地にっぽんかくちにさまざまな類話 るいわ存在 そんざいします。

 いずれのお話も天女が地上ちじょうかわみずうみ天降あまくだって水浴すいよいをしていると、人間にんげんおとこが天女の羽衣はごろもぬすみ、てんかえれなくなった天女が、やむをえず羽衣をかくした男のつまとなりをもうけるが、やがて羽衣をみつけてふたたび天に帰るというのが標準的ひょうじゅんてきすじです。

 沖縄本島おきなわほんとうから喜界島きかいじまにかけてつたわるものには、さらに難題なんだい婿むこ要素ようそくわえ、あまがわ由来ゆらいとなっているおはなしもあります。

 静岡県静岡市清水区しずおかけんしずおかししみずく三保半島みほはんとうにある「三保みほ松原まつばら」の伝説でんせつは、おのう人気にんき演目えんもく羽衣はごろも』によってひろられるようになりました。

感想

 「おとこ天女てんにょ水浴みずあびをのぞき、そして天女の羽衣はごろもぬすむ」という、とんでもない行為こういから『七夕たなばたさま』の物語ものがたりはじまります。

 男は羽衣をかえさず、さらに天界てんかいかえることができずこまった天女を、有無うむわせずつまにしまいます。

 二人ふたりあいだどもがまれ、天女にも男にたいして愛情あいじょうまれたものの、羽衣をもどしてからの行動こうどうはとてもはやいものでした。

 それは、羽衣を盗み天界に還れないようにしておきながら、何食なにくわぬかお結婚生活しんこんせいかつおくっていた男への絶望ぜつぼういかりがそうさせたのでしょう。

 もし、男が盗んだ羽衣を天女に返し、誠意せいいをもってあやまり、そして一目惚ひとめぼれした気持きもちをけていれば、もしかしたら天女が天界に還らなかったのではないかと想像そうぞうします。

 いずれにしても、『七夕さま』は人間にんげんのさもしさがかたられています。

まんが日本昔ばなし

七夕たなばたさま
放送日: 昭和51年(1976年)07月03日
放送回: 第0065話(第0038回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 児玉喬夫
文芸: 沖島勲
美術: 阿部幸次
作画: 猿山二郎
典型: 羽衣伝説はごろもでんせつ天人女房譚てんにょにょうぼたん異類婚姻譚いるいこんいんたん由来譚ゆらいたん
地域: 近畿地方(大阪府)


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最後に

 今回こんかいは、『七夕たなばたさま』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 日本にっぽんには、『七夕さま』のような羽衣伝説はごろもでんせつをはじめ、天女てんにょにまつわるおはなしかぞれないほどたくさんつたわります。ぜひれてみてください!

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