昔話『湖の怪魚』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 勇者ゆうしゃカンナカムイは、つよくてやさしくて男気おとこぎにあふれています。『みづうみ怪魚かいぎょ』は、カンナカムイがみずうみ怪魚かいぎょのチライとたたかうおはなしです。

 今回こんかいは、『湖の怪魚』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『みづうみ怪魚かいぎょ』は、北海道ほっかいどう地方ちほう位置いちする北海道ほっかいどう川上郡かわかみぐん弟子屈町てしかがちょうにある摩周湖ましゅうこ舞台ぶたいです。

 日本列島にほんれっとう北部ほくぶ先住せんじゅうし、独自どくじ言語げんご文化ぶんかをもつアイヌ民族みんぞく生活様式せいかつようしき信仰しんこう、そして精神性せいしんせいかんじる民話みんわです。

 昭和しょうわ30年代ねんだい作詞さくし: 島暁子しまあきこ作曲さっきょく: 笹倉重男ささくらしげおによる日本民話にほんみんわによるどものための合唱組曲がっしょうくみきょく『湖の怪魚』が、小学校しょうがっこう音楽おんがく教科書きょうかしょ採用さいようされたので、うたとしてこの物語ものがたりっているというかたおおいのではないでしょうか。

 絵本えほんカンナカムイのたたかい (フレーベルのえほん 20)』はフレーベルかんより出版しゅっぱんされています。とうといのちえに、摩周湖ましゅうこまもり、アイヌの人々ひとびとらしを守った勇者ゆうしゃカンナカムイのおはなしです。堀尾青史ほりおせいしさんによるうつくしい言葉ことばが、太田大八おおただいはちさんの力強ちからづよせまります。

 オンデマンドばん北海道ほっかいどう民話みんわ (県別けんべつふるさとの民話みんわ)』は偕成社かいせいしゃより出版しゅっぱんされています。アイヌの神話しんわ昔話むかしばなし蝦夷えぞ北海道ほっかいどう伝説でんせつなど、さむさがきびしい北国きたぐに自然しぜんなかまれかたがれてきた物語ものがたりが28へん収録しゅうろくされています。

 『アイヌ民話集みんわしゅう』は青土社せいどしゃより出版しゅっぱんされています。人間にんげん創造そうぞうのおはなしからはじまり、けものとりさかなほしつき、おけのお話まで、アイヌ文化ぶんか研究けんきゅうとしてられる更科源蔵さらしなげんぞうが、数十年すうじゅうねんにわたるアイヌ集落しゅうらく探訪たんぼうたびなかで、長老ちょうろうたちによってかたられたアイヌ民話みんわ集大成しゅうたいせいです。

あらすじ

 むかしむかし、日本にっぽんきたて、北海道ほっかいどう山奥やまおくに、うつくしいおおきなみずうみがありました。
 四季折々しきおりおり変化へんかいろどられ、動物どうぶつたちもんだみず豊富ほうふ獲物えものもとめて、この湖にあつまってました。

 ある、その湖のそばで、少年しょうねんサマイと勇者ゆうしゃカンナカムイがはなしをしていました。
 カンナカムイは、おおきな鹿しかたたかう話をサマイにかせていました。サマイは、カンナカムイの話を聞くのが大好だいすききでした。だから、カンナカムイの話は、いつまでもきませんでした。そして、がつくといつも夕暮ゆうぐれでした。

 ところで、サマイが村人むらびとは、みながこのおおきくてうつくしい湖からさかなってらしていました。

 しかし、あるころから、この湖で、りょうひとがそのままかえらなかったり、死体したいとなってきしげられたり、おそろしいことこるようになりました。
 湖畔こはんの村人は漁ができなくなってしまいました。
 この頃から、この湖には恐ろしい怪魚かいぎょひそんでいるといううわさが、村人のあいだひろまるようになりました。そして、村人は、この怪魚を「チライ」とんで恐れたのでした。

 むら長老ちょうりょうは、なんとかチライと呼ばれる怪魚を退治たいじできないかとかんえました。そこで、カンナカムイに湖に潜む怪魚の退治をたのむことにしました。
 しかし、カンナカムイは湖の獲物とはたたかわないと言ってことわりました。

 ところが数日後すうじつご、カンナカムイがりの途中とちゅうで湖のそばをとおりかかると、怪魚が大角鹿おおつのしかをひとみにしてしまうところを目撃もくげきしました。
 これで、カンナカムイは怪魚の退治にのりだすことを決心けっしんしました。

 その、カンナカムイは湖にふねし、怪魚があられるのをつことにしました。
 そのまま何時間なんじかん経過けいかすると、怪魚が現れました。そして、カンナカムイの船をおそってきました。船はひっくりり、カンナカムイと船のは湖のなかほおされてしまった。
 漕ぎ手がひっくり返った船にしがみついてあたりを見渡みわたすと、カンナカムイが怪魚のって戦っているのがえました。カンナカムイは怪魚のあたまめがけててつもりしましたが、そのまま怪魚と一緒いっしょにに湖の中へとしずんでいってしまいました。
 その、怪魚もカンナカムイも水面すいめんにその姿すがたが現れることはありませんでした。

 のこって、なんとか岸にたどりいた漕ぎ手は、一部始終いちぶしじゅうを村人にかたって聞かせました。

 それから何ヶ月なんかげつかして、湖からながれ出る川のほとりに、大きな魚の死骸しがいいていました。
 その魚の頭にはカンナカムイの銛が刺さっていました。

解説

 『みづうみ怪魚かいぎょ』の主人公しゅじんこうであるカンナカムイは、アイヌ伝承でんしょう創世そうせい神話しんわにおいては、男女だんじょ一対いっつい雷神らいじん化身けしんである龍神りゅうじんわれています。

 ちなみに、アイヌで“カンナ”は「うえ(上方かみがた)」を、“カムイ”は「かみ」を意味いみします。

 大蛇だいじゃ(りゅう)の姿すがたをしているとされ、伝承でんしょうによればかみなり衣装いしょうとして人間界にんげんかいあらわれると言われています。

 神々かみがみ世界せかいである天上界てんじょうかいにおいてもっと気性きしょうはげしい性格せいかく荒神あらがみと言われ、どもようかごってそらぶとされています。

 それから、おはなし登場とうじょうするチライとは、イトウとばれる日本にっぽんでは北海道ほっかいどう一部いちぶのみで生息せいそく確認かくにんされており、絶滅危惧種ぜつめつきぐしゅにも指定していされている日本一にっぽんいちおおきなまぼろしさかなです。

感想

 戦国時代せんごくじだい義将ぎしょう石田三成いしだみつなり陣幕じんまく幟旗のぼりばたには「大一大万大吉だいいちだいまんだいきち」とめられています。この「大一大万大吉」にめられた意味いみは、「一人ひとり万民ばんみんのために、万民は一人のためにくせば、天下てんか人々ひとびと幸福こうふく(きち)になれる」というたすいの精神せいしんです。

 海外かいがいではこれと同様どうようの意味で、フフランスの作家さっかアレクサンドル・デュマ・ペールの『ダルタニヤン物語ものがたり』のだい1三銃士さんじゅうし』のなか登場とうじょうする「One for all, All for one (ワンフォーオール、オールフォーワン)」(一人ひとりはみんなのために、みんなは一人のために)という言葉ことばしたしまれています。

 集団しゅうだんという“おおやけ”ののために、である“わたくし”が、粉骨砕身ふんこつさいしん努力どりょくをしてことあたるというのは、まさにひとうえもの姿勢しせいです。そして、一人ひとりがそのような意識いしきって自己形成じこけいせいはげむことは、本当ほんとう素晴すばらしいとおもいます。

 近年きんねん日本にっぽんおおきな災害さいがい見舞みまわれています。それにより、若者わかもの意識いしき随分ずいぶん変容へんようしたとわれています。
 「他者たしゃのために自分じぶんなにができるのか」「自分のちからを何に使つかえばよいのか」をかんがえてはげ時代じだいになったと言われます。

 こういう時代だからこそ、「一人はみんなのために」というあたたかいこころどもを、日本につたわる昔話むかしばなしつうじて、一人でもおおはぐくむことができればとおもいます。

 『三銃士さんじゅうし<じょう> (福音館ふくいんかん古典こてん童話どうわシリーズ)』は、初版しょはん昭和しょうわ52ねん(1977年)なので、40年以上いじょうまえ出版しゅっぱんされたほんでありながら、やくうつくしい銅版どうばん版画はんが挿絵さしえ素晴すばらしい上質じょうしつ一冊いっさつです。名高なだか古典こてんとおすことは、きるかてとして役立やくだつこと間違まちがいなしです。

まんが日本昔ばなし

みづうみ怪魚かいぎょ
放送日: 昭和51年(1976年)05月08日
放送回: 第0054話(第0031回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 児玉喬夫
文芸: 沖島勲
美術: 稲場富恵
作画: 高橋信也
典型: 英雄譚えいゆうたん
地域: 北海道


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最後に

 今回こんかいは、『みづうみ怪魚かいぎょ』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 みずうみ怪魚かいぎょのチライを退治たいじするため、文字通もじどおいのちけてのぞんだおとこ勇者ゆうしゃカンナカムイです。ほこりと知恵ちえちから、そしてなによりも勇気ゆうきって、とうといのちえに、摩周湖ましゅうこまもり、アイヌの人々ひとびとらしを守った英雄伝説えいゆうでんせつが『湖の怪魚』です。ぜひれてみてください!

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