昔話『うぐいす長者』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『うぐいす長者ちょうじゃ』は、おとこ約束やくそくやぶり、きんじられた場所ばしょったことで、悲劇ひげきてき結果けっかおとずれるおはなしです。

 今回こんかいは、『うぐいす長者ちょうじゃ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『うぐいす長者ちょうじゃ』は、『うぐいす女房にょうぼう』『るなの宿やど』『うぐいすの法華経ほけきょう』『るなのはな座敷ざしき』『うぐいす浄土じょうど』『うぐいす内裏だいり』と、さまざまな別称べっしょうでもばれ、中部ちゅうぶ地方ちほうぞくする新潟県にいがたけん富山県とやまけんつたわるおはなし原型げんけいとされます。

 あらすじには、その土地とちごとに若干じゃっかん差異さいがありますが、おはなしひがし日本にほん中心ちゅうしんひろ分布ぶんぷします。

 日本にっぽんでは、なにかをしているところを「てはいけない」と禁止きんしせられていたにもかかわらず、それをやぶってしまったために悲劇ひげきてき結果けっかおとずれたり、あるいは、「けっしててはいけない」とわれたものてしまったため、おそろしいったりする民話みんわを、「るなの禁止きんし」や「禁室型きんしつがた」とばれる類型るいけい分類ぶんるいします。

 『つる恩返おんがえ』は、『うぐいす長者ちょうじゃ』と同様どうように、「るなの禁止きんし」に分類ぶんるいされる代表的だいひょうてき民話みんわです。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『うぐいす長者ちょうじゃ』のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい19かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『佐久間さくまクラかたり (あたらしい日本にっぽんかたり 12)』は、日本にほん民話みんわかいから出版しゅっぱんされています。ふる伝承でんしょうむかしばなし現代げんだい民話みんわ生活せいかつ体験たいけんなど、民話みんわのすばらしさやかたりの魅力みりょくたのしむことができる一冊いっさつです。また、巻末かんまつには、かたりのきもまなべる「かたりの学校がっこう」も掲載けいさいされています。だい12かんには「ウグイス長者ちょうじゃ」など、ちいさいおはなしからおおきいおはなしまで、日本にっぽん各地かくちむかしばなしが35へん収録しゅうろくされています。

 『津軽つがる民話みんわ ([新版しんぱん] 日本にっぽん民話みんわ 7)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。半年はんとしゆきざされる青森県あおもりけん西部せいぶ位置いちする津軽つがる地方ちほうは、ほぼ原型げんけいたもった状態じょうたい文化ぶんか伝承でんしょうされてきました。さらに面白おもしろいことに、奥羽おうう山脈さんみゃくみなみきた士族町しぞくまち山村さんそんとでは文化ぶんか対照たいしょうてきでもあります。そんな弘前ひろさき地方ちほう石川いしかわ地方ちほうなどにふる時代じだいから伝承でんしょうされてきた、「うぐいす長者ちょうじゃ」など津軽つがる素朴そぼく民話みんわ69へんと、津軽つがるこども風土記ふどきとして、わらべうたとわらべ言葉ことば収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、北風きたかぜく、あるさむふゆのことでした。おちゃりのおとこ山道やまみち一人ひとりでとぼとぼとあるいておりました。

 そのは、どうしたものかさっぱりおちゃれず、おとこったことのない田舎いなかほうあしばしてみることにしましたが、途中とちゅうみちまよってしまい、いつのにか竹藪たけやぶなかにいました。

 「どうやら、みちまよったらしい」
がつぶやきながらうすぐら竹藪たけやぶをさまよっていると、おくからウグイスのこえこえてくるのであしめてみると、そこにははなけたうめがありました。

 うめしたには、うめかおりをたのしむように、うっとりするほどうつくしいむすめ一人ひとりたたずんでいました。

 おとこちかづくと、もう一人ひとり、また一人ひとりむすめたちが四人よにんあらわれ、
 「あら、めずらしい。人間にんげんおとこひとだわ」
いながら、にっこりとおとこわらいかけてきました。

 いつしかむすめたちはおとこり、自分じぶんたちのいえへと案内あんないしました。

 そこは、おとこいままでにたこともないほどのおおきなお屋敷やしきでした。

 早速さっそくおとこ商売しょうばいはじめました。おとこがおちゃ、おはし、かんざしをせると、母親ははおや四人よにんむすめたちは、よろこんでのこらずげてくれました。

 そして、母親ははおやおとこかって、
 「おんなばかりの五人ごにんらしており、こころぼそいので、もしよろしければむすめ一人ひとり結婚けっこんして、そのままここにんでくれませんか」
もうました。

 突然とつぜんのことにおどろきましたが、
 「わたしでよろしければ、よろこんで」
おとこ快諾かいだくし、長女ちょうじょ婿むこになりました。

 おとこ一夜いちやのうちに長者ちょうじゃになり、そのから、美人びじんよん姉妹しまいたのしくあそびながららしました。

 やがてふゆわり、あたたかいはるがやってました。

 ある母親ははおやおとこ
 「今日きょうよりがいので、むすめたちをれておはなってます。すみませんが、留守るすばんをおねがいします」
いました。

 母親ははおやつづけて、
 「もし退屈たいくつであれば、くらけてなかのぞいてあそんでください。ただし、よっつあるくらのうち、みっまではてもいいけど、よっくらだけは、けっしてけてはいけませんよ」
いました。

 「わかった。よっないよ」
おとこ約束やくそくをすると、おんなたちはかけていきます。

 さて、おんなたちのかけたあと留守るすあずかることになったおとこは、なにもすることがなくてボンヤリとしていました。

 「ひまじゃー。そうだ、くらなかのぞいてみるか」
って、おとこくらなかのぞいてみることにしました。

 まずおとこは、ひとくらけてみました。

 ザザーッ
 ザザーッ
 なみおとこ足元あしもとせてきました。不思議ふしぎなことに、くらなかうみで、なつ景色けしきひろがっていました。おとこからだはいつのにかとりになっていて、なつうみうえんでおりました。
 「これはおもしろい。愉快ゆかいじゃ、愉快ゆかいじゃ」

 つぎおとこは、ふたくらけてみました。

 そこには、うつくしいあきやまがありました。あか黄色きいろいろづいた木々きぎがあり、おおきなかきにはかきがなっておりました。
 「紅葉もみじかきとは、風流ふうりゅうじゃのう」

 そのつぎおとこは、みっくらけてみました。

 ビューッ
 ビューッ
 くらなかからつめたいかぜいてきました。くらなかは、ゆきもり、一面いちめんしろゆき景色げしきひろがっていました。
 「さむい、さむい。ふゆ苦手にがてじゃ」
おとこふるわせながら、よっくらまえにやってきました。

 そして、よっくらはるちがいないとおもい、くらけようとしたおとこは、
 「よっくらだけは、けっしてけてはいけませんよ」
母親ははおやわれた言葉ことばおもしました。

 しかし、けてはいけないとわれると、これまでのみっつがあまりにもたのしかっただけに、余計よけいたくなって、
 「約束やくそくはしたが、ちょっとくらいなら大丈夫だいじょうぶだろう」
おもったおとこは、とうとう我慢がまんしきれずに、よっくらけてしまいました。

 そこには、おとこおもったとおり、あたたかいはるひろがっていました。くらなかは、小川おがわがさらさらとながれ、そのほとりには桃色ももいろはないたうめがありました。

 ホーホケキョ
 ホーホケキョ
 うめには五羽ごわのウグイスがたのしそうにびかい、うつくしいこえいていました。
 その景色けしき感動かんどうしながら、
 「ウグイスじゃ、きれいじゃ」
いながら、ウグイスたちにちかったおとこは、そのウグイスたちのかおをどこかでたようながしました。

 すると、「ハッ」としたウグイスたちは、くのをめて、するどつきとなり、おとこかってんできました。

 おとここわくなり、あわててくらからしました。

 おとこくらからると、母親ははおやむすめたちがっており、
 「あなたはよっくらけないという約束やくそくやぶりました。わたしたちはこの竹藪たけやぶむウグイスです。今日きょうおだやかな日和ひよりなので、みんなでもと姿すがたもどってあそんでいました。あなたとは、いつまでも一緒いっしょらそうとおもっていました。しかし、姿すがたられてしまっては、もう一緒いっしょらすことはできません。さようなら」
そう母親ははおやおとこつたえると、おとこはまたもとのおちゃりの姿すがたになり、むすめたちと最初さいしょったうめしたもどっていました。

 「そんな…」

 おとこ仕方しかたなく、つめたい北風きたかぜやま一人ひとりりていきました。

解説

 「春告鳥はるつげどり」ともばれ、はるおとずれをげるとりだとされるウグイスのごえは、「ホー、ホケキョ」とこえます。

 ところが、わたしたち現代人げんだいじんにとってたりまえの、「ホー、ホケキョ」というごえですが、江戸えど時代じだいよりまえひとたちにとっては、「ホー、ホキ」とか「ホホ、キチ」「ツー、キヒホシ」などとこえていたようです。

 平安へいあん時代じだいの『古今こきん和歌集わかしゅう』にはつぎのようなうたがあります。

 むめのはな にこそきつれうぐいす
 人来ひとく人来ひとく厭霜居いとひしものを

 「うめはなにきたのに、そこにいるウグイスが『ひとた、ひとた』といやがっている」という意味いみですが、この時代じだいひとには、ウグイスのごえは、「人来(ひとく)人来(ひとく)」とこえていたようです。

 動物どうぶつごえは、時代じだいによって、だいぶこえかたちがったようです。

 ウグイスのごえを「ホー、ホケキョ」と表現ひょうげんするようになったのは、江戸えど時代じだいといわれています。

 そして、そこには仏教ぶっきょう影響えいきょうつよ関係かんけいしているようです。

 ウグイスは別名べつめいきょう」とばれ、それも「法華経ほけきょう法華経ほけきょう」とおきょうんでいるようにごえこえることから、そうばれるようになったとのことです。

 ちなみに、『うぐいす長者ちょうじゃ』には、約束やくそくまもって、おとこが「くらない」という内容ないようつたわります。

 それは、

 約束やくそくまもったおとこのもとにおんなあらわれ、
 「あなたが約束やくそくまもってくれたおかげで、わたし法華経ほけきょうぎょうたすことができ、ウグイスから菩薩ぼさつくらい転生てんせいすることができました。ありがとうございます」
って、金銀きんぎん財宝ざいほうはいったおおきな葛籠つづらいてる。

といった内容ないようです。

 ここからもわかかるように、ウグイスのごえが「ホー、ホケキョ」とこえるのは、日本人にっぽんじんがいかに法華経ほけきょうしたしみをち、仏教ぶっきょう帰依きえしているかをかたっているようにおもえてなりません。

 そして、日本人にっぽんじん何百年なんびゃくねんものあいだ、ウグイスのごえきながら、とうと仏教ぶっきょうおしえにおもいをせてきたということです。

 『古今こきん和歌集わかしゅう 現代げんだい語訳ごやくき ([新版しんぱん]角川かどかわソフィア文庫ぶんこ)』はKADOKAWAから出版しゅっぱんされています。自然しぜん季節きせつながれ、そして感情かんじょう機微きび日本人にっぽんじん美意識びいしきは『古今こきん和歌集わかしゅう』によって完成かんせいしたといっても過言かごんではありません。原文げんぶんやく解説かいせつのみならず、うた背景はいけいとなる当時とうじかんがかた事象じしょう、それから当時とうじ言葉ことば微妙びみょうなニュアンスもっているため、堅苦かたくるしくならず、中学生ちゅうがくせいからなら興味きょうみってすすめることができます。もう一度いちど古典こてんれる機会きかいあたえてくれる一冊いっさつです。

感想

 昔話むかしばなしうぐいす長者ちょうじゃゆ』の特徴とくちょうは、きんやぶったものばっせられずに、きんやぶられたものっていくてんにあります。

 きんやぶったおとこは、うつくしいむすめたちがり、とみうしなうという立派りっぱばつけています。

 さらに、きんやぶるということは、もうかえしがつかないというてん重要じゅうよう意味いみがあるようにかれています。

 つまり、きんじられたことをしたら、それですべておしまいということです。

 これは、とても日本にっぽんらしいかんがかたです。

 『うぐいす長者ちょうじゃ』には、「きんやぶってはいけない」というつよいメッセージがふくまれています。

 それだけ、人間にんげんは、きんやぶりやすい存在そんざいであるとふか認識にんしきしているとかんがえられます。

 また、物語ものがたり成立せいりつした当時とうじは、社会的しゃかいてきにも、きんやぶるということが、重大じゅうだいつみになるという認識にんしきもあったとかんがえられます。

まんが日本昔ばなし

うぐいす長者ちょうじゃ
放送日: 昭和52年(1977年)02月19日
放送回: 第0118話(0072 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 森田浩光
文芸: 沖島勲
美術: 槻間八郎
作画: 森田浩光
典型: 禁室型きんしつがた運命譚うんめいたん異類婚姻譚いるいこんいんたん
地域: 東北地方

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 『うぐいす長者ちょうじゃ』は「DVD-BOXだい1しゅう だい2かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『うぐいす長者ちょうじゃ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『うぐいす長者ちょうじゃ』は、約束やくそくとはとても大事だいじなものなので、まもることの大切たいせつさとやぶってもいい約束やくそく存在そんざいしないとおしえています。それと同時どうじに、日本人にっぽんじんならではの贅沢ぜいたく特異とくい自然しぜんかん表現ひょうげんされています。ぜひれてみてください!

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