
長野県の風土が紡ぐ、母と子の感動の物語
長野県北部には、「犀龍と白龍王の間に生まれた龍の子どもが、人間の姿をして老夫婦にあずけられ、『泉小太郎』と名づけられた」という伝説があります。信濃国(現在の長野県)の誕生神話を題材に、児童文学作家の松谷みよ子が創作した、母と子の絆と約束の歌が空に響き渡る児童文学が『小太郎と母龍』です。
今回は、『小太郎と母龍』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
長野県北東部に位置する信州上田地域には、「人間と大蛇の間に生まれた少年・小太郎」にまつわる民話『小泉小太郎』の伝説が伝わります。
また、長野県中央部に位置する安曇野地域には、「犀龍と白龍王の子として生まれた龍の子・泉小太郎」にまつわる民話『泉小太郎』の伝説が伝わります。
『小泉小太郎』と『泉小太郎』は、共に長野県に伝わることから、内容こそ異なるものの関連が指摘されており、民俗学者の柳田國男は「元は一つであったのではないか」と指摘しています。
かなり古い時代から長野県に伝わる『小泉小太郎』と『泉小太郎』の二つの伝説を基に、日本各地に伝わる民話を織り交ぜて、児童文学作家の松谷みよ子が創作した物語が『小太郎と母龍』です。
『小太郎と母龍』は、松谷みよ子による創作児童文学『龍の子太郎』のことです。
『龍の子太郎』は、「第1回講談社児童文学新人賞」「国際アンデルセン賞優良賞」など、数々の賞に輝いた、松谷みよ子の代表的傑作です。
絵本『たつのこたろう』は、信濃国(現在の長野県)に伝わる『小泉小太郎』と『泉小太郎』の民話伝説を踏襲しながら、まったく新しい文学世界を作り上げた創作絵本です。著者である松谷みよ子さんは、「子どもたちに日本の昔話を伝えたい」という強い想いから、この作品を生み出したそうです。物語は、母親を助けるため、そして村を救うため、龍の子・太郎が知恵と勇気を振り絞って困難に立ち向かい、大きな使命を果たす姿が描かれています。また、朝倉摂さんの鮮やかで力強い絵は、龍の神秘的な雰囲気と温かみを絶妙に表現しており、物語の情感を一層引き立てます。講談社の創作絵本シリーズの代表作として高い評価を受け、昭和35年(1960年)の初版以来、世代を超えて愛され続け、親子で読み継がれる日本の絵本の魅力が詰まった一冊です。 『信濃の民話 ([新版]日本の民話 1)』は、未來社から出版されています。信濃の古老や伝承者から収集した物語を、民話研究家の瀬川拓男さんと児童文学作家の松谷みよ子さんが丁寧に編纂しています。民俗学的な視点と親しみやすい語り口が融合したことで、学術的かつ親しみやすい内容に仕上がっています。信濃の神秘的な風土と人々の心を映し出す、宝物のような民話50篇と郷土のわらべうたが収録されています。『小泉小太郎』と『泉小太郎』の民話を一つの物語にまとめた「小泉小太郎」が収録されています。あらすじ
むかしむかしのとても古い時代、人々が信濃の国に住み始め、開拓に汗を流していました。
そこには、人々を束ねる若くてたくましい長がおりました。長のもとには夜な夜な一人の女が通っていました。女の素性が分からない長は、ある夜、別れ際に糸の付いた針を女の服の裾に刺しました。
翌日、長が糸をたどると、それは山の中の岩屋まで続いていました。そして、なんと女は龍の化身だったのです。正体を知られると、女はそれっきり長のところには現れず、やがて長も死んでしまいました。
ある日のこと、産川から流れてきた赤ん坊をお婆さんが拾い上げました。お婆さんは、赤ん坊に小太郎と名付け育てることにしました。小太郎が成長すると、お婆さんは病で亡くなってしまいます。
独りぼっちになってしまった小太郎は、お婆さんから「お前は千曲の湖に住む龍の子どもに違いない」と言われていたことを思い出しました。そこで小太郎は、母を探す旅に出ることにしました。
幾多の苦難を越え、小太郎は龍である母の住む千曲の湖に着きました。
小太郎が湖に向かって、
「おっかあ」
と叫ぶと、湖面に一人の女が現れました。 小太郎は母に、
「この湖を田んぼにして百姓の役に立ちたい」
と頼みました。
母は、この湖がないと生きてはいけませんが、小太郎の望みを叶えることを決心しました。
小太郎を背に乗せた母龍は、山を切り崩して水を流すため、岩肌に幾度も幾度も体当たりを続けました。小太郎は母龍の背にしがみつき、体当たりする母龍の目となって導きました。母龍も体中に無数の傷を負いながら、岩にぶつかっていきました。
そしてついに山に裂け目が拓かれ、そこから滝となって水があふれ出ました。その水はどんどん信濃の国を貫き通し、海へと流れ着きました。そのときにできた川が、千曲川へとそそぐ犀川なのです。
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解説
『小太郎と母龍』の魅力は、児童文学作家・松谷みよ子さんが二つの民話を一つの壮大な叙事詩に昇華させた点にあります。
長野県の信州・上田地域に伝わる「蛇の母を持つ少年の伝説」の民話『小泉小太郎』と、同じく長野県の安曇野地域に伝わる「泉の守り神としての龍」の民話『泉小太郎』を、信濃国の成り立ちを探る手がかりが記されている『古事記』を由来とする神話と結びつけることで、かつては信濃国と呼ばれた長野県の“地域の誇り”を日本中に届けました。
龍は日本神話で「雨と豊穣」の象徴です。
『小太郎と母龍』は、「長野県とは何か」という長野県らしさを形作る核となる要素を、昔話を通じて優しく語っています。
さて、長野県の松本・安曇野一帯は四方を山々に囲まれた盆地なので、ここに湖であったとしても何ら不思議ではありません。
享保9年(1724年)に完成した信濃国(現在の長野県)内の地理・歴史を記述した『信府統記』には、
信濃国の松本・安曇野一帯は景行天皇12年まで湖であった。
という記述があります。
景行天皇といえば日本武尊の父なので、実在したとすれば4世紀前期から中期となります。
もし、その頃まで長野県松本・安曇野一帯に湖があったとするならば、『小太郎と母龍』は、古代日本を代表する海人族であり、最後は信濃国に定住したとされる安曇氏の開拓や開墾の歴史と読み取ることが出来ます。
長野県の地には、そんな血と汗が染み込んでいるのかもしれません。
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感想
ことわざに、「情けは人のためならず」というものがあります。
これは「情けを人にかけておけば、巡り巡って自分によい報いが来る」という教えです。
『小太郎と母龍』は、まさにこの言葉通りの仕組みを題材にしたお話です。
他人に優しくすると、その様子を見ていた他の人から優しくされ、最後は優しさが自分に返ってきます。
しかし、「他人に優しく」と言うことは簡単ですが、その具体的な行動はいまいち想像できないという方も多いのではないでしょうか。
そこで鍵となるのが“共感力”です。
相手側のことを否定せず、じっくりと話を聞くことができれば、相手の気持ちを把握することができます。
そうすれば、どう忠告したらいいのか、どう励ましたらいいのか、自分なりの考えを示すことができます。
それが共感力を高める方法です。
優しくすることは、特別な何かを与えるということではありません。
相手の気持ちを考え、少しだけ相手に寄り添うことを心がけるだけで、相手だけではなく、自分にも良いことがもたらされることでしょう。
まんが日本昔ばなし
『小太郎と母龍』
放送日: 昭和51年(1976年)04月03日
放送回: 第0046話(第0026回放送 Bパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 樋口雅一
文芸: 沖島勲
美術: 小関俊一(サキスタジオ)
作画: 高橋信也
典型: 異類婚姻譚・由来譚・龍蛇譚
地域: 中部地方(長野県)
『小太郎と母龍』は「DVD-BOX第1集 第5巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『小太郎と母龍』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『小太郎と母龍』は、「情けは人の為ならず」ということを題材にした物語であるのと同時に、信濃国(現在の長野県)の誕生の物語です。ぜひ触れてみてください!