『力太郎』は、お爺さんとお婆さんの“垢”から生れた男の子です。大食いで、百貫目の金棒を振り回す力持ちです。家来を従えて、村を荒らす鬼を退治します。
今回は、『力太郎』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『力太郎』は、お爺さんとお婆さんが体の“垢”をこすって人形を作ったところ、その人形に命が芽生え、突然泣き出し、立派な人間の子どもになったという、垢から生まれた男の子のお話です。
東北地方に伝わる民話です。
『桃太郎』『一寸法師』『かぐや姫』などと同じ“小人伝説”の一つで、日本では数多くみられます。
ちなみに、『力太郎』のお話は、『一寸法師』と同じ系統に入ります。
絵本『ちからたろう (日本名作おはなし絵本)』は小学館より出版されています。杉山亮さんの生き生きした文と伊藤秀男さんのダイナミックな絵が、見事にマッチした絵本です。雄大な物語なので、昔話の醍醐味を十分に堪能することができます。
あらすじ
むかしむかし、あるところに風呂にも滅多に入れないほど貧しい上にものぐさな老夫婦が住んでおりました。
何日も風呂に入っていなかったので体中が垢だらけでした。
ある日、老夫婦は自分たちの体の垢を落として、それで人形を作ることにしました。
すると、その人形が動き出し、飯まで欲しがりました。
老夫婦は、この子を「力太郎」と名付けて、大切に育てることにしました。
数年が経過したある日、力太郎が力試しの武者修行に行くと言うので、百貫目の金棒を作り送り出しました。
旅の途中で出会った、「御堂っこ太郎」と「石っこ太郎」という力自慢の二人との勝負にそれぞれ勝ち、彼らを家来に加えることにしました。
その後、ある町に着いたのですが、町は静まりかえっていて人の気配がありませんでした。
長者の家まで来ると、そこで泣いている長者の娘を見つけました。
訳を娘に聞くと、
「この町には毎月一日に化け物が現れ、生け贄の娘を食べてしまうのです」
と娘は言いました。
そして、
「今日は私がその生け贄になる日なのです」
とも言いました。
そこで、力太郎は化け物を退治することにしました。
夜になり、化け物が現れました。
まず、御堂っこ太郎が飛びかかりますが、化け物に食べられてしまいました。
石っこ太郎も後に続きましたが、同じように食べられてしまいました。
最後に残った力太郎が化け物と戦っていると、食べられたはずの二人が化け物の腹の中で暴れたので、化け物は倒れてしまいました。
こうして化け物を退治した三人は、それぞれ長者の三人娘を嫁にして、力太郎は里の両親を呼んで楽しく暮らしました。
解説
『力太郎』と同様のお話の分布は、ほとんどが東北地方に限られています。
それから、身体の一部分から生まれ代わるという内容のお話も東北地方に多く存在します。
青森県には母親の踵から生まれた『あくと太郎』、岩手県にはお婆さんの脛から生まれた『脛こたんぱこ』など、様々な名を有していますが、それらは一様に“力持ち”という点が共通しています。
また、『力太郎』は『グリム童話集』の「六人組世界歩き」や「六人の家来」と同じ型であることから、同様のお話が世界各地にも広く分布していると考えられます。
最後に、お話に登場する百貫目はおよそ375キログラムです。
製鉄技術の発達していなかった時代では、この重さの金棒はかなり高価なものだったと考えられます。
感想
主人公である力太郎の豪快さが楽しいお話です。
力太郎は、その名の通りもの凄い力持ちで、その力を示す逸話の数々が笑っちゃうほど凄すぎます。
このような超越的な冒険活劇の要素が入ったお話は、現在の日本の子どもたちにも十分に受け入れられるのはないでしょうか。
さて、日本では古来より水にて身心の罪穢を除き清めるための行為を「垢離」と言います。
『力太郎』は、そんな一見、汚らしく思える体の“垢”で人形を作るところからお話が始まります。
垢離と呼ばれる禊の行為が、いかに精神と身体の調和を保つために大切であるかということと、普段は捨てられてしまう垢ですが、このお話では単に捨てるのではなく、それと向き合い、感謝の気持ちを持つことで、思いもよらなかった幸運が舞い込んでくるといった教訓が隠れているのかもしれません。
まんが日本昔ばなし
『力太郎』
放送日: 昭和51年(1976年) 01月31日
放送回: 第0032話(第0017回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 光延博愛
文芸: 沖島勲
美術: まるふしろう
作画: 川島明
典型: 異常誕生譚
地域: 東北地方(岩手県)
『力太郎』は「DVD-BOX第6集 第27巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『力太郎』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『力太郎』は、日本人が忘れずに持ち続けなければいけない、日本文化そのものの魅力や独自性が盛り込まれたお話です。現代にも通じる内容なので、子どもたちには読んでもらいたい物語です。ぜひ触れてみてください!