善いものも悪いものも、自分が受ける結果のすべては、自分が作った原因によるものです。そのことを伝えているのが、『熊と狐』です。
今回は、『熊と狐』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『熊と狐』は中国地方 に伝わる民話といわれています。
『熊と狐』は、ドイツのグリム兄弟が収集し編成した世界的に有名な童話集『グリム童話』の中にある「お百姓と悪魔」とそっくりな内容です。「お百姓と悪魔」では、狐がお百姓、熊が悪魔を担っています。『熊と狐』は狐のずる賢さを描いた内容ですが、「お百姓と悪魔」はお百姓の賢さや知恵を讃える内容となっています。
絵本『くまときつね (いもとようこの日本むかしばなし)』は金の星社から出版されています。クマはお人好しでキツネは意地悪ということを、いもとようこさんの優しい文と可愛らしい絵で、見事に捉えています。お子さんが前のめりになる、読み聞かせに最適な絵本です。 絵本『グリムどうわ (母と子のおやすみまえの小さな絵本)』はナツメ社から出版されています。子どもたちのさまざまな感情を喚起させ、想像力を高めるお話が、バラエティー豊かな挿絵と共に収録されています。それぞれのお話からわかる教訓や読み聞かせのポイントも解説されています。読んだ日を記入する欄もあります。あらすじ
むかしむかし、深い山奥に、熊と狐が住んでいました。二人は非常に仲良しでしたが、熊はお人好しのため、いつも狐に騙され、得をするのは狐でした。
ある時、狐が熊に、
「熊さん、熊さん。山の物を取って食べるのもいいけど、たまには二人で畑を耕して、何かを作って食べようよ」
と提案しました。
「それはいい」
と熊が賛成すると、
「熊さんは山で一番の力持ちだから、畑は熊さんが作る。その代わり、私は里まで行って種を探してきます。それで出来たものは半分ずつでいいよね」
と言って、狐は忙しそうに里へと向かいました。
熊は、土のよさそうなところを探して、一生懸命に畑を耕しました。
畑が出来た頃、狐が大根と人参と長芋の種を持って戻って来ました。
そして狐は、
「熊さん、熊さん。これが取れたら土から上のものは、みんな熊さんにやろう。私は土の下のものだけでいい」
と言いました。
熊も「よかろう」と納得して、畑に種をまきました。
やがて畑には大根と人参と山芋ができました。
狐は約束通り、大根と人参と山芋の土から下にあるものをもらって帰りました。熊も約束通り、大根と人参との葉っぱと長芋の茎をもらって帰りました。
熊は、土から上のものである大根と人参との葉っぱと長芋の茎を、喜んで食べましたが、一日も経つと全部しおれて食べられなくなりました。
一方、狐はというと、大根と人参と長芋を料理して、美味しく食べました。
二、三日して、熊が狐の家に行ってみると、真っ白で太い大根と、真っ赤でうまそうな人参と、見事な山芋がありました。
熊はそれを見て、
「少し分けてくれないか」
と狐に言うと、
「ダメだよ。最初にちゃんと約束したじゃないか」
と熊は狐にまくしたてられました。
「それならば、今度は狐さんが土から上のものにしよう」
と熊は言い、また畑を作り始めました。
狐が今度は、瓜と、西瓜と、南瓜の種をまきました。
いよいよ収穫の時となりました。熊は約束通り土から下のものをもらって帰りました。そして狐も約束通り土から上のものをもらって帰りました。
しかし、熊がいざ食べようとすると、どれもこれも、豚の尻尾のような茎や根ばかりでした。さすがの熊も怒って狐の家に行ってみると、そこには美味しそうな瓜と、西瓜と、南瓜が、たくさんありました。
狐はすまして、
「『土から下の方がいい』と言ったのは熊さんじゃないか」
と言いました。
熊は返す言葉もありませんでした。
それから、しばらく経ったある日、
「今日は、先日の罪滅ぼしにやってきました」
と狐が熊のところへやってきて、
「蜂蜜がたっぷりある大きな蜂の巣があるので、一緒に取りに行きませんか」
と狐が熊を誘いました。
蜂蜜に目がない熊は、狐と蜂の巣へ向かいました。
「うわ~これは美味しそうだ」
と言い、熊が蜂の巣を取ろうとしたら、これがミツバチの巣ではなく、クマンバチの巣でした。そして熊は体中をクマンバチに刺されてしまいました。
熊がクマンバチと格闘しているその隙に、狐はちゃっかりと蜂蜜だけの蜂の巣を取っていました。
その夜、熊は痛さのあまり寝られず、
「痛いよう、狐の奴め、今度会ったらタダでは済まさねぇぞ」
と夜通し叫びました。
心配して、熊のところを訪ねてきたミミズクに、痛みの訳を話すと、
「熊さん、それはお前さんが狐さんに騙されたんじゃ。ワシがひとつ良いことを教えてやろう」
とミミズクは言いました。
数日後、また狐が熊のところを訪ねてみると、熊は狐の大好物である、馬の肉を食べていました。
狐は、
「馬の肉をどうやって手に入れたの」
と熊に尋ねました。
すると熊は、
「まず、美味そうな馬に目をつけるのじゃ。そして、その馬が眠りかけたという時に、後ろから近づいて、馬の後ろ足にガブッと噛みつくんじゃ」
続けて熊は、
「馬は後ろ足が急所だから、そこを噛まれると死んでしまう。死んだところで、私が狐さんの家まで馬を運んであげよう」
と言いました。
そうして二人は原っぱへと向かいました。そこにはたくさんの馬が草を食べていました。狐は馬の肉が食べたい一心で、とびきり大きな馬の後ろ足に噛みつきました。
驚いた馬は、思い切り狐を蹴飛ばしました。
そして、狐はどこかへ飛んで行ってしまいました。
解説
日本の昔話では勿論のこと、古代ギリシャの説話集『イソップ寓話』でもキツネがズル賢い動物の代名詞として、頻繁に登場しては悪事のかぎりを尽くしています。
では、なぜキツネはずる賢くて、嫌味な生き物にされたのでしょうか。
キツネが人間に忌み嫌われる原因は、家畜を襲う動物ということに尽きます。そして、家畜を襲う方法に、他の家畜を襲う動物とは違う、キツネのずる賢さを想起させる習性があるからです。
例えば、養鶏農家が朝起きて鶏小屋へ行くと、大きな穴が掘られていて、小屋の中は鶏の羽根が散乱し、鶏も卵も消えている惨事を見て、キツネの仕業と農家は地団太を踏むしかありません。
これは、キツネの夜行性という習性によるものですが、昔の人たちにとっては、人間が寝静まった時を見計らって、鶏小屋を襲うという用意周到な動物にキツネは映ったのでしょう。
『イソップ寓話集 (クラシックイラストレーション版)』は童話館出版から出版されています。何千年と語り継がれてきたお話は示唆に富んでいて飽きません。そこに過去150年間にイギリス、ヨーロッパ、アメリカで出版された素晴らしい挿絵の傑作が加わることで、さらに物語の魅力が増しています。何百もあるお話の中から精選した46篇が収録されています。感想
「因果応報」という言葉があります。これは仏教の教えを表す言葉で、原因としての善い行いをすれば善い結果が得られ、悪い行いには悪い結果をもたらすという意味です。
では、幸福や不幸という「運命」を決める「原因」は、一体何でしょうか。
仏教では、それは「行い」と教えています。
自分のやった「行い」が自分の「運命」を作るということです。
仏教では、「行い」に応じて「運命」は決まると教えているので、「善い行い」から「悪い運命」が現れることもなければ、「悪い行い」から「善い運命」が現れることもありません。
昨今では「正直者が馬鹿を見る」と言われる世の中ですが、それは一見すると例外のように感じますが、これも長期的にみると、すべて「善因善果」「悪因悪果」にしかならないということです。
因果応報は、すぐに結果が出るとは限りません。しかし、蒔いた種はかならず生えます。善い種を蒔くことに努め、悪い種は蒔かないよう心掛けていきましょう。
まんが日本昔ばなし
『熊と狐』
放送日: 昭和51年(1976年)06月19日
放送回: 第0063話(第0037回放送 Bパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 坂本雄作
文芸: 坂本雄作
美術: 坂本雄作(ジャック)
作画: 坂本雄作
典型: 因果応報譚・動物昔話
地域: 中国地方
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『熊と狐』は未DVD化のため「VHS-BOX第4集 第37巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『熊と狐』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『熊と狐』は、善い行いをすれば善い結果が得られ、悪い行いをすれば悪い結果をもたらすという内容の物語です。ぜひ触れてみてください!