昔話『へび女房』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 日本にっぽんには、おとこ約束やくそくやぶり、きんじられた場所ばしょったことで、悲劇ひげきてき結果けっかおとずれるむかしばなしかずおお存在そんざいします。そのなかでも『へび女房にょうぼう』は、へび母親ははおやおも気持きもちがとてもせつなく、なみださそわれるおはなしです。

 今回こんかいは、『へび女房にょうぼう』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 へびであるおんな人間にんげん姿すがたけて、人間にんげんであるおとこ結婚けっこんする『へび女房にょうぼう』は、日本にっぽんむかしばなしなかかずおおくみられる「異類いるい婚姻こんいんたん」のひとつです。

 それと同時どうじに、なにかをしているところを「てはいけない」と禁止きんしせられていたにもかかわらず、それをやぶってしまったために悲劇ひげきてき結果けっかおとずれる、「るなの禁止きんし」や「るなのタブー」、「禁室きんしつがた」と日本にっぽんではばれる類型るいけいむかしばなしにも、『へび女房にょうぼう』は分類ぶんるいされます。

 『へび女房にょうぼう』は、『つるのおんがえ』や『うぐいす長者ちょうじゃ』にみられる、「るなの禁止きんし」に分類ぶんるいされるむかしばなしとはすこことなり、結末けつまつ別離べつりわりにせず、母親ははおや愛情あいじょうかぎりなきふかさがくわえられているため、こころかなしみがのこります。

 あらすじには、その土地とちごとに若干じゃっかん差異さいがありますが、『へび女房にょうぼう』は日本にっぽん各地かくちひろ分布ぶんぷします。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。「へび女房にょうぼう」のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい18かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『めばむほどおそろしい原典げんてん日本にっぽんむかしばなし」』は、三笠みかさ書房しょぼうから出版しゅっぱんされています。むかしばなしは、時代じだいにあわせて改訂かいていされてきました。ところが、原作げんさく残酷ざんこくさや不尽ふじんさにこそ、人間にんげん本質ほんしつ知恵ちえ教訓きょうくんかくされているものです。本書ほんしょは、原作げんさく勿論もちろんのこと、各話かくわ解説かいせつくわえられているため、当時とうじ実情じつじょう物語ものがたりまれた時代じだい背景はいけい理解りかいすることができます。「へび女房にょうぼう」など11ぺんむかしばなし裏側うらがわることができます。

 『日本にっぽん伝説でんせつ大系たいけい だいはっかん きた近畿きんきへん(滋賀しが京都きょうと兵庫ひょうご)』は、みずうみ書房しょぼうから出版しゅっぱんされています。日本にっぽん各地かくちかたがれてきた伝説でんせつが、地域ちいきごとにこまかく分類ぶんるいされ、ぜん十五じゅうごかん別巻べっかんさつ所収しょしゅうされています。だいはっかんきた近畿きんきへん伝説でんせつが134へん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、貧しい木こりの男がおりました。

 ある日、男が山へ入ると、どこからか女のうめき声が聞こえてきました。

 男が声のする方に近づいてみると、きれいな娘さんが、黒くて長い髪の毛を木にグルグル巻きつけて、身動き出来ないでいました。

 「どうして、こんな目にあったんだい」
と男は言いながら、木に巻きついた髪の毛をほどいてやると、娘はやっとのことで目を開け、涙を流しました。

 男は、娘さんを背負うと、家へと連れて帰り、体を温めてやると、お粥を食べさせました。

 毎日、娘さんを看病しているうちに、気持ちが通じ合うようになり、男と娘さんは夫婦になりました。

 やがて、二人の間には子どもができました。

 子どもを産むとき、女房は男にお願いをして、外に小屋を作ってもらいました。そして、女房は男に、
 「お産が終わるまで、決してこの小屋を覗かないでください」
とお願いすると、小屋に入っていきました。

 男は女房に言われた通りにしていましたが、二日経っても、三日経っても女房は小屋から出てきませんでした。

 心配になった男は、少しだけ扉を開けて、そっと小屋の中を覗いてみました。

 すると、小屋の中には大きな蛇がいて、生まれたばかりの赤ん坊を抱くようにトグロを巻いていました。

 男はびっくりして、腰を抜かしてしまいました。

 七日目に、女房は男の赤ん坊を抱いて小屋から出てきました。

 「あれほど中を見ないでとお願いしたのに...私は女人禁制の山に入り、山の神の怒りに触れて蛇にされてしまいました。そして、沼の主になりましたが、山の神にお願いをして一度だけ娘の姿に戻してもらいました。お前さまが小屋を覗かなければ、私はそのまま人間でいることが許されるはずでした。でも、それももう叶わなくなりました。私はすぐに山の沼へ帰らなくてはなりません」
と涙を流しながら言いました。

 そして、
 「どうぞこの子を大事に育ててください。この子が泣くときには、これを舐めさせてください」
と言いと、自分の左の目をくり抜いて男に渡しました。

 女房は、だんだんと蛇の姿に変っていき、名残惜しそうに山の中へ姿を消していきました。

 赤ん坊は、母の目玉をしゃぶってスクスク育ちました。

 しかし、目玉は月日が経つにつれて、だんだん小さくなり、ついにはなくなってしまいました。

 目玉がなくなると、赤ん坊は何を与えても泣き止みませんでした。

 困り果てた男は、泣く赤ん坊を背負って、山の沼へ女房を捜しに行きました。

 山の奥深くの大きな沼に着くと、
 「おっ母ぁ、どこだぁ」
と男は叫びました。

 すると、沼の水が渦を巻いて、片目の大きな蛇が現われました。

 「お前にもらった目玉を舐めつくしてしまった。どうしたらいいだろうか」
と男が言うと、
 「それではもう片方の目をあげましょう。これで、私は朝も晩もわからなくなりましまったので、この沼の近くに鐘を吊して、その鐘を朝と晩に鳴らし、時刻を知らせてください」
と大きな蛇は男に頼むと、残っていた右の目をくり抜いて赤ん坊に握らせました。

 そして、
 「元気に育ちなさい」
と言うと、蛇は沼の中に沈んでいきました。

 男は言われた通り、沼の近くに鐘を吊るし、朝と晩にその鐘を鳴らして、沼の蛇に時刻を知らせました。

 赤ん坊は、再び母の目玉をしゃぶって大きくなりました。

 子どもが十歳になった頃、男は、
 「お前のおっ母ぁは山の沼の主になっている」
と教えました。

 朝と晩の鐘を鳴らす際、蛇のすむ沼に向かって子どもが、
 「おっ母ぁ、おっ母ぁ」
と呼んでみましたが、 蛇が姿を見せることは一度もありませんでした。

解説

 海辺うみべかわいけほとりには、みず神様かみさまとして弁財天べんざいてんまつられています。

 日本にっぽんにおいてへびは、弁財天べんざいてん使者ししゃとされていることから、へび姿すがたをした人頭じんとう蛇身じゃしんぞうや、あたまうえにとぐろをいたへびせている弁財天べんざいてんぞうが、やしろほこらまつられています。

 さて、『へび女房にょうぼう』のむかしばなしは、日本にっぽん各地かくちひろかたられています。

 代表だいひょうてきなものとしては、岩手県いわてけん稗貫ひえぬき江刺えさし地方ちほうの『へび目玉めだま』、奈良県ならけん吉野郡よしのぐん天川村てんかわむら(洞川どろがわ温泉おんせん)の『龍泉寺りゅうせんじりゅうくち』、滋賀県しがけん大津市おおつし園城寺おんじょうじつたわる『三井みい晩鐘ばんしょう』、佐賀県さがけん佐賀市さがし川副町かわそえまち長崎県ながさきけん島原しまばら地方ちほうの『へび女房にょうぼう』などです。

 おおむね共通きょうつうしてかたられるすじてではありますが、どものなみだへびち、へび人間にんげん姿すがたわり、えるようになり、親子おやこさんにんなかむつまじくくららす結末けつまつや、どもがちょうじてくらいたかそうになったという結末けつまつなどがあります。

 また、おてらかね由来ゆらいとしてかたられることもあります。

 そのほとんどが、滋賀県しがけん大津市おおつし園城寺おんじょうじつたわる『三井みい晩鐘ばんしょう』がもとになっていて、愛知県あいちけん道成寺どうじょうじ和歌山県わかやまけん宝勝寺ほうしょうじなどの著名ちょめいなおてらにも同様どうよう伝承でんしょうがあります。

 ちなみに、『三井みい晩鐘ばんしょう』として親しまれている園城寺おんじょうじつたわる有名ゆうめいかね正体しょうたいは、琵琶湖びわこ龍神りゅうじんとされています。

 日本にっぽん各地かくちひろ分布ぶんぷする『へび女房にょうぼう』ですが、そのなかでもとく興味きょうみぶかすじてが、どもにあたえただま殿様とのさまげられたいかりから、へび復讐ふくしゅうとして災害さいがいこすという展開てんかいむかしばなしです。

 長崎県ながさきけん島原しまばら地方ちほう伝承でんしょうをまとめた『島原しまばらくずれの肥後ひごいたん』には、「雲仙岳うんぜんだけ噴火ふんかは、へび女房にょうぼういかりによってこされた」としるされています。

 絵本えほん三井みつい晩鐘ばんしょう』は、小学館しょうがっかんから出版しゅっぱんされています。琵琶湖びわこのほとりの三井寺みついでら(正式せいしきめい: 園城寺おんじょうじ)で、むかしからかたりつがれている、ははうつくしくかなしい近江おうみ湖底こてい伝説でんせつを、梅原うめはらたけしさんがつづった感動かんどう一冊いっさつです。つよふか母子ぼしあいにやどる人間にんげん真実しんじつを、梅原うめはらさんにみいされた池田いけだ一憲いっけんさんによる、独特どくとく世界せかいかん重厚じゅうこう絵肌えはだによってまれた絵本えほんです。

 『岩手いわて民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 2)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。『遠野物語とおのものがたり』に代表だいひょうされるように、日本にっぽんなかでも民話みんわゆたかにのこ地方ちほうとして、ふるくから関心かんしんをひいていたのが岩手県いわてけんです。きょうみやこ中心ちゅうしんとした中央ちゅうおう文化ぶんか伝搬でんぱんはばむ、きびしい地勢ちせいなかはぐくまれた「山伏やまぶしいし」「へびだま」などの独特どくとく民話みんわが39へん収録しゅうろくされています。

 『佐賀さが民話みんわ だいいっしゅう ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 60)』は、未來みらいしゃから出版しゅっぱんされています。「そばのはなぜあか」「へび女房にょうぼ」「かえるおんがえ」などのバラエティにんだ民話みんわを、鳥栖とす三養基みやき地方ちほう神崎かんざき地方ちほう佐賀さが小城おぎ地方ちほう多久たく武雄たけお地方ちほうひがし松浦まつうら地方ちほう白石しらいし有明ありあけ太良たら地方ちほう唐津からつ伊万里いまり地方ちほうなな地域ちいきけ、佐賀さがふるくからつたわる84へん民話みんわ郷土きょうどのわらべうたが収録しゅうろくされています。

感想

 『へび女房にょうぼう』には、日本にほんてき特徴とくちょうあらわれています。

 その特徴とくちょうとは、きんやぶったものばっせられずに、きんやぶられたものっていくてんです。

 しかし、きんやぶったおとこは、つまるという立派りっぱばっけているととらえれば、きんやぶるということは、かえしがつかないことをしてしまったというてん重要じゅうよう意味いみがあると理解りかいすることができます。

 つまり、きんやぶったら、それですべてわりというてんが、じつ日本にほんてき特徴とくちょうあらわしているといえます。

 『へび女房にょうぼう』からは、「きんじられたことはやぶってはいけない」という教訓きょうくんまなぶことができるということです。

まんが日本昔ばなし

へび女房にょうぼう
放送日: 昭和52年(1977年)03月12日
放送回: 第0122話(0075 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 藤本四郎
文芸: 沖島勲
美術: 下道一範
作画: 上口照人
典型: 禁室型きんしつがた異類婚姻譚いるいこんいんたん龍蛇譚りゅうじゃたん
地域: ある所

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 『へび女房にょうぼう』はDVDのため「VHS-BOXだい6しゅう だい56かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『へび女房にょうぼう』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『へび女房にょうぼう』は、欲望よくぼう感情かんじょうにとらわれ、たったひとつの約束やくそくさえまもることのできない人間にんげんおろかさをいましめると同時どうじに、母親ははおや愛情あいじょうかぎりなきふかさがこころひび素晴すばらしいおはなしです。ぜひれてみてください!

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