『花咲か爺さん』は、「日本五大昔話」のひとつとして、昔から広く知られている有名なお話です。心の優しいお爺さんは幸運を得ますが、それをねたんで真似をしたお爺さんは、失敗して不幸を招くというお話です。
今回は、『花咲か爺さん』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
「ここほれワンワン」や「枯れ木に花を咲かせましょう」という台詞が有名な『花咲か爺さん』は、室町時代末期から江戸時代初期にかけて成立した民話といわれています。
ちなみに、江戸時代は『枯木に花咲かせ爺』と呼ばれていたそうです。
明治27~29年(1894~1896年)にかけて博文堂から刊行された、巖谷小波による日本初の児童叢書である『日本昔噺 (全24篇)』に収録されたことにより、日本中で広く知られるようになりました。
明治34年(1901年)に出版された『幼年唱歌 初編 下巻』に収録された、作詞:石原和三郎・作曲:田村虎蔵による唱歌「花咲爺」は、現在も日本中で広く親しまれています。
『はなさかじい (むかしむかし絵本 15)』はポプラ社から出版されています。桜井誠さんの素敵な絵を楽しむことができ、同時に吉沢和夫さんによる独特の古めかしい言い回しと青森県の方言が愛おしく、それらが物語に花を添えます。 『はなさかじいさん (よみきかせ日本昔話)』は講談社から出版されています。松成真理子さんによる春の息吹が感じられる色使いの水彩の絵と、昔ばなし口調でありながら決して難しくはない石崎洋司さんの文が、とてもバランスが良く、心に満開の桜が咲く、美しくて優しい絵本です。あらすじ
むかしむかし、あるところに心優しい老夫婦と、その隣に欲張りで乱暴な老夫婦が住んでいました。
ある日、心優しい老夫婦が弱った小犬を見つけました。
その小犬にポチという名を付け、わが子のように大切に育てることにしました。
老夫婦に可愛がられて、ポチはどんどん大きくなって、立派な犬に成長しました。
あるとき、ポチが裏山で、
「ここ掘れワンワン」
と鳴き始めます。
驚いたお爺さんがそこを掘ってみると、たくさんの小判が出てきました。
それを見ていた隣のお爺さんは、無理やりポチを連れ去り、財宝を探させました。
しかし、ポチが指し示した場所から出てきたものが、蛇や化け物だったので、隣のお爺さんは怒ってポチを殺してしまいました。
わが子同然の犬を失って悲しみにくれる老夫婦は、裏山に墓を建てポチを埋め、そこに木を植えました。
すると植えた木はぐんぐん大きくなり、やがて夢にポチが現れて、
「木を切って臼を作るように」
と助言しました。
ポチの助言どおりに木を切って臼を作り、それで餅をつくと、餅が小判に変わりました。
それを知った隣の老夫婦がそれを真似すると、出てくるのは泥団子ばかりだったため、怒った隣のお爺さんは斧で臼を打ち割って薪にして燃やしてしまいました。
心優しい老夫婦は悲しんでいると、再びポチが夢に出てきて、
「桜の枯れ木に灰を撒いてほしい」
と頼みました。
その言葉にお爺さんが従ったところ、枯れた木が光り出して桜の花で満開になりました。
そこをたまたま通りがかったお殿様が感動し、老夫婦を褒めてたくさんの褒美を与えました。
それを見ていた隣のお爺さんが真似をして枯れ木に灰を撒いたところ、桜が咲くどころかお殿様の目に灰が入ってしまい、隣の老夫婦は無礼をとがめられて牢屋に入れられてしまいました。
解説
『花咲か爺さん』は、日本の「日本五大昔話」のひとつとして、広く民間に普及した勧善懲悪の昔ばなしです。
ちなみに、「日本五大昔話」は『桃太郎』『舌切り雀』『さるかに合戦』『カチカチ山』『花咲か爺さん』の五つです。
民俗学者の柳田國男によると、花を咲かせる着想は、江戸時代以降、千手観音の信仰を背景として民間に普及した「枯れ木に花を」のたとえの形象化であると指摘しています。
また、江戸時代以前の『花咲か爺さん』は、灰をまいて雁を取る『雁取り爺』という内容のお話だったとも指摘しています。
感想
『花咲か爺さん』は、心優しい老夫婦と隣の欲張りで乱暴な老夫婦による勧善懲悪の昔話と一般的には伝えられていますが、このお話の根底にはそのような教訓ではなく、「死からの復活」という思想があると私は考えます。
犬が死んだのに、枯れた木に見事な花を咲かせています。これこそが物語の核心である死を生にかえる「死からの復活」なのです。
犬の復活とは蘇生という意味ではありません。
心優しい老夫婦の心に犬が生き続けるということです。それを具象的に表現したということです。
そうなると隣の欲張りで乱暴な老夫婦は、灰が花を咲かせる過程を語るために登場しているだけということになります。
つまり、日本人が古来持っている輪廻転生という死生観を、『花咲か爺さん』は色濃く反映したお話ということです。
まんが日本昔ばなし
『花咲か爺さん』
放送日: 昭和50年(1975年) 03月18日
放送回: 第0021話(第0011回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: まるふしろう
脚本: 小田健也
美術: 阿部幸次
作画: 上口照人
典型: 隣の爺型・動物報恩譚・致富譚
地域: 東北地方(岩手県)/中部地方(岐阜県)
最後に
今回は、『花咲か爺さん』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『花咲か爺さん』は、正直な老夫婦が不思議な子犬を手に入れて、宝物を掘り出したり枯木に花を咲かせたりして富み栄えるというお話です。ぜひ触れてみてください!