昔話『火男』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 古来こらい日本にっぽんでは、宗教しゅうきょうてき意味いみをもち、観念かんねんなかせいなるものとされてきました。あつかうところは神聖しんせいされ、かまどには神様かみさままつられてきました。その神様かみさまが『火男ひおとこ』です。

 今回こんかいは、『火男ひおとこ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 おまつりなどで、縁起えんぎいものとしてあつわれるものの一つに「ひょっとこ」のおめんがあります。くちし、おどけた表情ひょうじょうは、るからに縁起物えんぎものです。

 しかし、なぜ「ひょっとこ」とばれるようになったのでしょうか。

 ひょっとこの語源ごげんには諸説しょせつありますが、有力ゆうりょくなもののひとつに竹筒たけづつく「火男ひおとこ」がなまったというせつがあります。

 ひょっとこのお面がどうやってできたのかというむかしばなしが、この『火男ひおとこ』のおはなしです。

 松谷まつたにみよの『昔話十二むかしばなしじゅうにげつ十二月じゅうにがつまき』で「火男」は「ひょっとこ」と紹介しょうかいしたことにより日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 芥川龍之介あくたがわりゅうのすけは『ひょっとこ』という題名だいめい小説しょうせつ発表はっぴょうしています。

 太宰治だざいおさむ著作ちょさくおしゃれ童子どうじ』で、演劇えんげきちゅう鳶職とびしょくが「ひょっとこめ!」と台詞せりふくことにあこがれ、こん股引ももひきしかったという記載きさいがあります。

 また、日本にっぽん舞台ぶたいにしたレーヴィ・マデトヤ作曲さっきょくのバレエ音楽おんがくオコン・フオコ』は、「おかめ・ひょっとこ」が由来ゆらいといわれています。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『火男ひおとこ』のおはなしは、『まんが日本にっぽんむかしばなし だい22かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『昔話十二むかしばなしじゅうにげつ十二月じゅうにがつまき』は講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。十二月の巻は一年いちねんさかいとなる神聖しんせいつきということで、神様かみさまのおはなし数多かずおお収録しゅうろくされています。そのなかで「火男ひおとこ」は「ひょっとこ」と紹介しょうかいされています。

 岩波文庫いわなみぶんこより出版されている『こぶとり爺さん・かちかちやま』に「火男ひおとこ」が収載しゅうさいされています。『こぶとり爺さん・かちかちやま』は、じっくりとすすめることで、多面性ためんせい意外性いがいせい、そして物語ものがたり魅力みりょくあじわうことができる大人おとなが読むむかしばなしです。

 芥川龍之介あくたがわりゅうのすけの『ひょっとこ』は、筑摩書房ちくましょぼうより出版しゅっぱんされている『芥川龍之介あくたがわりゅうのすけ全集ぜんしゅう〈1〉(ちくま文庫ぶんこ)』に収録しゅうろくされています。うとひょっとこのおめんをつけて、馬鹿ばかおどりをするくせがある主人公しゅじんこう山村平吉やまむらへいきちをめぐる短篇たんぺんです。

 太宰治だざいおさむの『おしゃれ童子どうじ』は、筑摩書房ちくましょぼうより出版しゅっぱんされている『太宰治だざいおさむ全集ぜんしゅう〈1〉(ちくま文庫ぶんこ)』に収録しゅうろくされています。お洒落しゃれ大好だいすきすぎるおとこのおはなしです。

 『オコン・フオコ』は、フィンランドの作曲家さっきょくかであるレヴィ・マデトヤが1927ねん発表はっぴょうしたバレエ音楽おんがくです。楽曲がっきょくみじかきょく集合体しゅうごうたいですが、ソプラノ・テノール・合唱がっしょう管弦楽かんげんがくによる80ぷんにもなる大規模だいきぼなものです。

あらすじ

 むかしむかし、やさししいおじいさんと欲張よくばりなおばあさんがいました。

 ある、お爺さんがやま芝刈しばかりにくと、
 「しばよこせー、しばよこせー」
ちいさな洞穴ほらあなからこえがするのでしばれてみました。
 すると、お爺さんはその洞穴にまれてしまいました。

 洞穴のなか世界せかいひろがっており、そこには火の神様かみさまがいました。

 火の神様が芝のおれいにと宝物たからものはいっているというつつみをわたすので、うちかえってけてみると、おもしろいかおをしたヘソばかりいじっているおとこが入っていました。
 へんなものを持ち帰ってきたとお婆さんはおこりますが、お爺さんは「火男ひおとこ」と名付なづけて大切たいせつそだてることにしました。

 火男はヘソばかり毎日まいにちいじっているので、ヘソがおおきくがってしまいました。かわいそうにおもったお爺さんはがキセルでヘソをたたいてみると、ヘソから小判こばんてきました。
 小判が出るたびにヘソがちいさくなるので、お爺さんはは一日いちにち三回さんかいだけヘソを叩くようにしました。

 一日に三枚さんまいの小判がはいるようになり、二人ふたりはお金持かねもちになりましたが、お爺さんは山へ芝刈りに行くことをやめませんでした。
 お爺さんの留守るすねらって、欲張りなお婆さんは小判を山ほどそうとたくらみ、おおきなキセルでヘソを叩こうとしますが、火男はまわります。家中うちじゅうを逃げ回ったすえ、火男はかまどまえめられました。

 火男は真っ赤にがる火にまねかれるように竈のなかへ入り、火になって神様のところへかえってしまいました。

 火男がいなくなったことをり、かなしんだお爺さんは、火男にせたおめんりました。そのお面を竈のちかくにかざり、それをるたびにお爺さんは火男のことをおもしてごしました。

 火男がやがて「ひょっとこ」とわり、おまつりなどで使つかわれるお面になったそうです。

解説

 あかりは家族かぞく人々びとつど場所ばしょであり、生活せいかつ拠点きょてんであるともいえます。

 日本人にっぽんじん古来こらいより、そうした火をあつかう場所としてのかまど大切たいせつにし、「竈に『火男ひおとこ』のめんるすといえ繁栄はんえいする」として「火男」を信仰しんこう対象たいしょうとしてきました。

 さて、おまつりなどの屋台やたいかならずあるのが、お面をるおみせです。そこには、「お多福たふく」とならんで「ひょっとこ」のお面がかならずといっていいほどあります。それは、ひょっとこをらない日本人がいないからでしょう。お多福たふくは、日本人にっぽんじん女性じょせいうつくしさの代表的だいひょうてき顔形かおかたち象徴しょうちょうしていますが、ひょっとこが日本人にっぽんじん男性だんせい男前おとこまえ代表だいひょうとはいえませんね。

 では、ひょっとこがなぜくちをすぼめてげたような表情ひょうじょうなのかというと、火男がだんだんなまって「ひょっとこ」にわったからだといわれています。口をとがらせ一方いっぽうちいさいのは、火吹ひふたけで火をくときのかおつきということです。

 日本人は、「みずぶ」という意識いしきっています。ひょっとこが火の神様かみさまであることから、対照的たいしょうてきな水の神様としてお多福ができ、これを一対いっついにしました。つまり、火と水が人間にんげん生活せいかつなか一番いちばん重要じゅうようなものであるというあらわれです。

感想

 『火男ひおとこ』は、“無欲むよく”と“よく”が題材だいざいです。

 つまり、無欲で行為こういをしていくと幸福こうふくがもたらされるが、欲がわいてくると良いこともになってしまうといういましめの意味いみめられています。

 すなわち、無欲こそが日本人にっぽんじん伝統的でんとうてき最高さいこう精神美せいしんびであるとつたえようとしているのです。

 欲望よくぼうみにくこころっていてはいけないと強調きょうちょうしています。

まんが日本昔ばなし

火男ひおとこ
放送日: 昭和50年(1975年)01月28日
放送回: 第0008話(第0004回放送 Bパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 杉井ギサブロー
脚本: 平見修二
美術: 馬郡美保子
作画: 杉井ギサブロー
典型: 民間信仰みんかんしんこうとなりじじがた由来ゆらいたん
地域: 東北地方

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 『火男ひおとこ』はDVDのため「VHS-BOXだい1しゅう だい9かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『火男ひおとこ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 人間にんげんきるためにはどうしても必要ひつようなものです。神様かみさまからつかわされたおとこ大事だいじにするという、日本人にっぽんじんかみたいするかんがかたが『火男ひおとこ』からはかんじられます。ぜひれてみてください!

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