
あなたは、悪戯好きな狐が縁起物の「めでたい」を生み出す、ユーモラスで心温まる昔話を知っていますか?
『おさん狐とめで鯛』は、狐とお爺さんの交流を通じて、失敗から生まれる知恵を描いた、日本の心を感じるお話です。
今回は、『おさん狐とめで鯛』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『おさん狐とめで鯛』の舞台である能美島は、広島県江田島市に属する広島湾の島です。
能美島は、東能美島と西能美島に二分され、さらに隣接する江田島とも陸続きでY字型の一つの島となっています。
『おさん狐とめで鯛』には、瀬戸内海の漁業文化や、能美島の素朴な暮らしが息づいています。
そして、『おさん狐とめで鯛』という題にもある通り、「めで鯛」という言葉が、日本人の愛する“めでたい”文化を象徴し、祝い事や繁栄への願いを反映しています。
また、『おさん狐とめで鯛』を知ることは、瀬戸内海やそこに浮かぶ能美島の文化に触れる小さな旅でもあります。
牡蠣養殖、柑橘や花、野菜の栽培で知られる能美島の風景が、物語の背景に生き生きと描かれ、私たちを穏やかな海辺の村へと誘うことでしょう。
絵本『えんぎがいい どうして じんじゃに きつねがいるの?』は、白泉社から出版されています。雨宮尚子さんが描く、愛らしい切り絵と手彩で彩られた絵本は、例えば、「なぜ神社のキツネは縁起がいいの?」「招き猫が手を上げている理由は?」といった疑問を、おばあちゃんが孫に語るように、ユーモアと温かみのあるストーリーで、縁起物の由来を易しく答えています。24ページのコンパクトな構成ながら、情報量は豊富で、昔から「縁起が良い」と言われる動物たちを通じて、日本人の知恵と日本の伝統や文化を自然と楽しく学べる一冊です。※尚、現時点では『おさん狐とめで鯛』に関する絵本は存在しません。 『安芸・備後の民話 第1集 ([新版]日本の民話 22)』は、未來社から出版されています。編者である垣内稔氏は、民話の収集に深い情熱を注いだ研究者の一人です。その温かみのある文体は、まるで古老から直接お話を聞いているかのような臨場感を与えます。昔話の背景や文化的意義も分かりやすく解説されており、例えば、瀬戸内の海神と人間の交流は、現代の私たちに自然への敬意を思い出させてくれます。「おさん狐と目出鯛」など、瀬戸内の風土に育まれた人々の暮らし、知恵、そして心の機微を映し出す民話77篇と郷土のわらべうたが収録されています。 『日本の島 39号 (江田島・能美島) [分冊百科]』は、デアゴスティーニ・ジャパンから出版されています。 『日本の島』シリーズは、日本に点在する約6,800の島々を、自然・歴史・文化・暮らしの視点から丁寧に紹介するビジュアルマガジンです。第39号では、広島県に浮かぶ江田島・能美島を特集。江田島は、旧海軍兵学校の歴史が息づく島として知られ、現在の海上自衛隊第1術科学校も立地する「海軍の島」です。一方、能美島は、穏やかな海と豊かな自然に恵まれ、牡蠣養殖やレモン栽培が有名です。豊富な写真と詳細な解説で、美しい瀬戸内海に囲まれた、江田島の歴史的な重みと能美島の穏やかな島時間を同時に感じることができます。歴史や自然、グルメに興味がある方は勿論のこと、広島湾に浮かぶ江田島・能美島の魅力を深く知りたい全ての人にお勧めの一冊です。島旅のインスピレーションを得たい方は、ぜひ手に取ってください!
あらすじ
むかしむかし、瀬戸内海に浮かぶ能美島の大柿という所に、利平という名のお爺さんが住んでおりました。
利平爺さんの仕事は船頭だったので、行きは能美島で獲れた魚を船に積み、その魚を大阪の市場で売り、帰りは能美島で必要な物資を大坂で船に積み、それを能美島まで運んでいました。
利平爺さんは、そんな勤勉なお爺さんでした。
ところで、安芸国にある比治山には、“おさん”という名の狐が住んでおりました。
おさんは、賢くて少しばかり悪戯好きな狐でした。
そして、おさんは魚、特に鯛が大好物で、中でも鯛の目ん玉をくり抜いて吸うのが大の楽しみでした。
ある年の秋の日のことでした。
利平爺さんの息子が鯛をたくさん獲ってきました。
「これで家族に少しは良い暮らしをさせられる」
と利平爺さんは胸を弾ませながら、息子が獲ってきた鯛を船に積み、二か月ぶりに大阪へと向かいました。
ところが、瀬戸内海を船が進むうち、船底から妙な音が聞こえてきました。
チューチューチューチュー
チューチューチューチュー
船底から何かを吸う音が聞こえてきました。
利平爺さんが船底に降りてみると、魚箱の中の鯛の目ん玉がすべて飛び出ていました。
実は、船には一匹の狐がこっそり忍び込んでいました。
その狐が鯛の目ん玉をすべて吸ってしまったのでした。
「これじゃあ売り物にならん!」
と怒った利平爺さんは、狐を捕まえて縛り上げました。
すると狐は、
「私は比治山に住む『おさん』という名の狐です。鯛の目ん玉をくり抜いて吸うのが大好きなので、こっそり船に忍び込みました。目ん玉が飛び出た鯛は、私が街ですべて売ってきますので、どうか許してください」
と利平爺さんに言いました。
大阪に着くと、おさんは魚屋に化け、目ん玉の飛び出た鯛を担いで街へ売りに出かけました。
ところが、
「目ん玉が飛び出ていて、気味の悪い鯛だなぁ~」
「この鯛は古いんじゃないのか?」
などと買い物客たちから言われ、どこへ行ってもさっぱり鯛は売れませんでした。
「このままでは、利平爺さんに申し訳が立たない。なんとかしなければ」
と、責任の重さを感じたおさんは、知恵を求めて京都の伏見稲荷大社へ向かいました。
伏見稲荷大社に祀られている稲荷大明神は、狐を使いとして操るお稲荷さまの総元締なので、おさんにとっては最高の相談相手でした。
伏見稲荷大社に着いたおさんは、稲荷大明神に正直に事情を打ち明け、
「利平爺さんを助ける方法を教えてください」
とお願いしました。
すると、稲荷大明神は、
「目ん玉が飛び出た鯛だから、『目出鯛』と名付けて売りなさい。縁起の良い名前が、人々の心を掴むことでしょう」
と告げました。
おさんは、
「それだ!」
と言って、稲荷大明神のお告げに目を輝かせ、喜び勇んで大阪へと戻りました。
早速、おさんは、
「さあさあ、めで鯛じゃ~!瀬戸内の海で獲れためで鯛じゃ~!幸せを呼ぶ縁起物のめで鯛じゃ~!買えば必ず福がやってくるめで鯛じゃ~!」
と言いながら、大阪の街を売り歩きました。
すると、目ん玉が飛び出た鯛は、その縁起の良い名前に買い物客たちが惹かれ、いつもよりも高い値段で、次々と飛ぶように売れていきました。
おさんは、目ん玉が飛び出た鯛を全部売りつくし、意気揚々と船着き場へ戻りました。
利平爺さんは、予想外の大成功に目を丸くし、
「おさん、おかげで助かったよ。これで孫への土産を買うことができる。ありがとう」
と喜びながら、おさんへ感謝の言葉を口にしました。
そうして、利平爺さんとおさんは、船で能美島へ帰りました。
途中、帰りの船でおさんが、
「比治山に帰りたい」
と言うので、利平爺さんはおさんを比治山まで送ってやりました。
その後、安芸国には、「おさん狐」と呼ばれる伝説の狐が登場します。
その狐は、この“おさん”の子孫と言われています。
解説
『おさん狐とめで鯛』は、能美島に伝わる心温まる昔話で、狐と人間の交流を通じて、恩返しの美徳を描いています。
そして、能美島の自然と人々の優しさを象徴する逸話として、地元で語り継がれています。
物語の舞台である能美島の美しい海は、訪れる人々に昔話の情景を彷彿とさせます。
ところで、能美島は、歴史的に重要な島ということはご存知ですか。
能美島は、平安時代末期に活躍した武将・平清盛が開削したとされる伝説の海峡「音戸の瀬戸」の対岸に位置し、平家と深いつながりがあります。
特に、治承4年〜元暦2年(1180〜1185年)に起こった「源平合戦」の折、その終盤である寿永4年/元暦2年(1185年)の「屋島の戦い」で、源義経率いる源氏軍に敗れた平家一門が、屋島から壇ノ浦へ下る際に、8歳だった安徳天皇(平清盛の孫)を奉じて行在所を設けた場所が能美島です。
能美島の地で、平家は源氏に対して最後の抵抗を試み、「壇ノ浦の戦い」へ向かう準備を整えたのでした。
また、能美島の大原地区には、能美城跡があり、かつて能美氏という海賊衆が拠点としていました。
能美氏は、室町時代に大内氏の水軍として活躍し、源平合戦の時代にも地域の海上交通を支えたとされます。
この歴史的背景から、能美島が単なる島ではなく、古代から戦略的に重要な場所だったことを物語っています。
現代の能美島は、瀬戸内海の穏やかな気候と豊かな自然を活かした産業で知られています。
能美島は、広島県が誇る牡蠣養殖の中心地の一つに挙げられます。
清らかな海で育った能美島の牡蠣は、濃厚な味わいとプリプリの食感が特徴です。
能美島の温暖な気候は、柑橘類の栽培に最適です。
島の農園では、季節ごとに新鮮な果物や野菜が収穫されます。
また、能美島は、花の栽培も盛んです。
島の風景を彩る花畑では、春には桜、夏には向日葵が島を鮮やかに彩ります。
能美島は、歴史と自然、食の魅力が詰まった島です。
カヤックや釣りなど、瀬戸内海の自然を満喫できるアクティビティが豊富な能美島ですが、島を訪れたらレンタサイクルを利用して、平清盛ゆかりの音戸の瀬戸を眺めながら、源平合戦の足跡を感じ、のんびり島の風光明媚な道を巡るのがお勧めです。
源平合戦の舞台を訪れ、平家や安徳天皇の足跡を辿りながら、美しい海を眺める――そんな体験は、能美島でしか味わえません。
さらに、新鮮な牡蠣や柑橘類を楽しみ、島の穏やかな雰囲気に癒される時間は、日常の喧騒を忘れさせてくれます。
『おさん狐とめで鯛』の舞台となった、瀬戸内海の隠れた名所が能美島です。
源義経の幼名は牛若丸です。
感想
『おさん狐とめで鯛』は、悪戯好きな狐のおさんと、利平爺さんが織りなす、ユーモラスで温かなお話です。
しかし、『おさん狐とめで鯛』は、単なる昔話にとどまりません。
このお話には、瀬戸内海の漁業文化や、能美島の素朴な暮らしが息づいています。
『おさん狐とめで鯛』の題にある「めで鯛」は、日本人が愛する「めでたい」文化を象徴し、祝い事や繁栄への願いを反映しています。
そして、その「めで鯛」を生みだすために、伏見稲荷大明神を登場させたことで、狐と稲荷信仰の深い結び付きを伝え、物語に神秘的な魅力を加えています。
また、おさん狐のキャラクターも大きな魅力です。
おさん狐は、悪戯好きな一面を持ちながら、失敗を認め、利平爺さんを助けるために奔走する姿は、胸がじんわり温かくなります。
能美島が舞台というのも、物語の魅力を引き立てます。
『おさん狐とめで鯛』は、瀬戸内海やそこに浮かぶ能美島の文化に触れる小さな旅です。
瀬戸内の美しい海や、島に住む人々の素朴な暮らしが想像でき、いつか訪れてみたいという気持ちになります。
それはきっと、『おさん狐とめで鯛』が、能美島の海風のような温もりを届ける昔話だからでしょう。
あなたの心にも、能美島の海風のような温もりが届きましたか。
家族でもカップルでも一人でも、のんびり散策、歴史探訪、グルメツアーなど、どんな旅行スタイルにも対応できるのが能美島です。
もし、旅行のご予定がありましたら、次回の旅行先に、ぜひ能美島を加えてみませんか。
瀬戸内海の隠れた名所「能美島」が、あなたを待っています。
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まんが日本昔ばなし
『おさん狐とめで鯛』
放送日: 昭和52年(1977年)08月27日
放送回: 第0158話(0098 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 『安芸・備後の民話 第1集 ([新版]日本の民話 22)』 垣内稔 (未來社)
演出: 芝山努
文芸: 沖島勲
美術: 芝山努
作画: シンエイ動画
典型: 動物報恩譚・狐譚
地域: 中国地方(広島県)
最後に
今回は、『おさん狐とめで鯛』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『おさん狐とめで鯛』は、ユーモアと優しさ、そして日本の「めでたい」文化が詰まった、心温まるお話です。狐と人間の交流を通じて、物語の奥深さを知ると、瀬戸内海に浮かぶ能美島の海風のような温もりが心に届き、笑顔と感動に包まれます。ぜひ触れてみてください!