『わらしべ長者』は、ある一人の貧乏人が、観音様のお告げを守り、最初に手に入れた一本の藁から物々交換を経ていくにつれて利益を得ていく、不思議でもあり痛快でもあるお話です。
今回は、『わらしべ長者』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
平安時代末期に成立したとみられる『今昔物語集』および鎌倉時代前期に成立と推定される『宇治拾遺物語』に「わらしべ長者」の原話が記されています。
『わらしべ長者』の舞台は、奈良県桜井市初瀬の長谷寺と伝わります。
仏教色の濃い内容のため、おそらく寺僧の説経の素材に用いられたお話ではないかと考えられています。
絵本『わらしべちょうじゃ (むかしむかし絵本 17)』はポプラ社から出版されています。一本のわらしべから始まる物の変化が2ページごとに見て取れる工夫がなされています。言葉のリズムが良く、楽しく読み進めることができる絵本です。 絵本『わらしべちょうじゃ (みんなでよもう!日本の昔話)』はチャイルド本社から出版されています。一本のわらしべが次々と高価なものに変わっていく様子は、読み聞かせている方も楽しくなります。胸がすくような気持ちの良いお話です。 絵本『わらしべちょうじゃ (よみきかせ日本昔話)』は講談社から出版されています。ページいっぱいに描かれた、西村敏雄さんの絵がとにかく優しく、成功に至る結末までわくわくしながら読むことができます。巻末にオマケで『しおふきうす』というお話が載っています。あらすじ
むかしむかし、あるところに真面目で正直者だけど、何をやっても上手くいかない、運に見放された貧しい男がいました。
そんな貧しい男が、貧乏暮らしを何とかしたいと、観音様にお祈りをしました。
すると観音様が現れ、
「お堂を出たら最初に手にした物を大切にして西へ行きなさい」
と言いました。
男は不思議に思いましたが、お堂を出たとたん転んで一本の藁を手にしました。
それを持って、観音様に言われた通り西へ歩いていくとアブが飛んできたので、男はアブを捕まえると藁の先に縛って歩き続けました。
泣きじゃくる赤ん坊に困った様子のお母さんがいたので、男は手に持っていたアブを縛った藁をあげると赤ん坊は泣き止みました。
すると、お母さんから蜜柑をお礼にもらいました。
蜜柑をもらった男がさらに西へ進んでいくと、木の下に水が欲しくて苦しんでいる娘がいました。
男は持っていた蜜柑を差し出すと、娘の体調は良くなりました。
すると、お礼に上等な絹の布をもらいました。
上機嫌の男はさらに西へ進むと、今度は強引な男に出会いました。
その男は、馬が倒れてしまったために先へ進むことができず困っていました。
そして、上等な絹の布を見ると男は、倒れた馬と上等な絹の布を取り替えて欲しいと言い、上等な絹の布と倒れた馬を無理やり取り替えられてしまいました。
男は懸命に馬を介抱しました。その甲斐あって馬はすっかり元気になりました。
男は馬を連れてまた西へ進むと、大きな屋敷を見つけました。
屋敷の門から、ちょうど出てきた主人が馬を気に入り、馬を千両で譲って欲しいと主人に言われました。
あまりにも多い金額に男は驚いて失神してしまいました。
男を介抱する主人の娘は、なんと以前に蜜柑をあげた娘でした。
主人は、娘を助けた男に対し婿になって欲しいと申し出ました。
観音様のお告げに従い、男は藁一本で長者になりました。
解説
『わらしべ長者』の内容は、広く知られている幸福な結婚を語る「観音祈願型」と、藁三本を千両に変えるという難題を押し付けられる「三年味噌型」と呼ばれる二種類に大別されます。
どちらのお話も大筋はほぼ同じですが、前者は観音様が利益を与える内容であるのに対して、後者はあくまでも富を得るに至るまでのことを主題としています。
『今昔物語集 (角川書店編ビギナーズ・クラシックス)』は、現代語訳と古文の生き生きとしたリズムによって誰もが古典の世界を楽しむことができます。 講談社学術文庫より出版されている『宇治拾遺物語』は、原文と現代語訳、解説が全話収載されています。感想
「モノの価値は人それぞれ」なので、自分にとって価値がないものであったとしても、他人には大きな価値があるということがあります。
考えは人それぞれです。人には、それぞれ違った好みや個性があるので、一律ではありません。
「十人十色」という言葉がありますが、十人の人に触れると十個の考えに触れることができます。
それは、別のものどうしを別のものだと認識することができるということなので、知識を得ることに繋がります。
たくさんの人に触れ、その考えを思考することで初めて新たに得た知識を自分の中に吸収することができます。
そして、それを吸収したうえで自分がどのように行動するのかということが最も重要なのです。
つまり、このお話は、手に入れたモノをただ持っているだけでは、何も起こらないし何も変わらないということを説いているのではないでしょうか。
吸収した知識を使い、さらに結果まで出すことは簡単なことではありませんが、行動しなければ何もおこりません。とにかく、行動を起こすことが変化を生み出す分岐点なのかもしれません。
まんが日本昔ばなし
『わらしべ長者』
放送日: 昭和50年(1975年) 03月25日
放送回: 第0024話(第0012回放送 Bパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: まるふしろう
脚本: 小田健也
美術: 内田好之
作画: 上口照人・樋口雅一
典型: 致富譚
地域: 近畿地方(奈良県)
『わらしべ長者』は未DVD化のため「VHS-BOX第1集 第4巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『わらしべ長者』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『わらしべ長者』は、観音様を熱心に信仰すれば、かならず幸せがやってくるという仏教観がよく表れています。まさに「信じる者は救われる」ということを表現したお話です。ぜひ触れてみてください!