『しっぽの釣り』は、キツネがカワウソから「尻尾を水に垂らして釣をするとたくさん魚が釣れる」というでたらめな魚釣りを教えてもらい、それを試みた結果、大失敗するというお話です。
今回は、『しっぽの釣り』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
東北地方に位置する秋田県に伝わる民話ですが、類話は東北地方や北陸地方にも広く分布しています。
昭和32年(1957年)に未來社より刊行された『日本の民話 別巻1 みちのくの民話』に収録されている「川うそとキツネ」や、昭和24年に刊行された『きつねとかわうそ』という童話集によって、日本中で広く知られるようになりました。
しかし、元々は、昭和18年(1943年)に河北新報社より刊行された『炉辺夜話 東北の昔ばなし』という民話集に収録された「川獺に仇討された悪狐」が原作ではないかと言われています。
また、作曲: 團伊玖磨・脚本: 水木洋子のオペラ『ちゃんちき』や、作詞: 坪田譲治・作曲: 菅野浩和の女声合唱曲『きつねとかわうそ』も、世代を超えて日本中で広く親しまれています。
絵本『狐とかわうその知恵くらべ (読み聞かせ絵本シリーズ 日本の昔ばなし2)』は瑞雲舎より出版されています。文を担当した鈴木サツさんは、岩手県遠野地方に伝わる昔話の語り手として有名な方です。その文と太田大八さんの迫力ある絵が重なり合い、見ごたえのあるとても楽しい絵本となっています。あらすじ
むかしむかし、ある山にキツネが住んでいました。
山に何日も雪が降り続き、食べるものがなく、お腹をすかせたキツネは里に降りてきました。
そこには美味しそうな魚を持ったカワウソがいたので、キツネはカワウソに魚をとる方法を教えてもらうことにしました。
しかし、意地悪なカワウソはキツネに嘘を教えることにしたのです。
カワウソは、
「夜中に湖へ行き分厚く張った氷に穴を開けて、そこにしっぽを垂らすと大きな魚がかかるよ」
といいました。
それを信じたキツネはカワウソにいわれた通り、氷の張った湖に穴を開け、冷たいのを我慢してしっぽを垂らしました。
じっと待っていると、だんだん湖に開けた穴が凍ってきて、キツネのしっぽは分厚い氷に挟まれてしまいました。
しかし、それを大きな魚だと勘違いしたキツネは、力いっぱい引っ張り上げると、しっぽがちぎれてしまいました。
解説
しっぽで釣りをする動物は、お話によって狐、狼、猿、熊、兎などとなっており、また「しっぽで魚を釣る」という嘘を教えた動物も獺、狐、熊などと様々であり、人間が登場する場合もあります。
結末としては、逃げ出そうとしっぽを無理やり引っ張ったためにしっぽがちぎれてしまうお話や、動けないでいるところを殺されたり、生け捕りにされてしまったりするお話があります。
さらにお話の趣旨についても、釣りをする動物の違いにより大きく二通りのものが存在します。
ひとつは動物同士の騙しあいや葛藤を描いた笑い話の要素を持つもの、もうひとつはしっぽがちぎれてしまったことから動物のしっぽの短さを説明するものです。
感想
さまざまな種類の動物が、自然のままの姿で、それぞれの種類の属性を生かした性格の役柄に擬人化され、異なる種類の動物相互の葛藤を物語の主題にしている「動物昔ばなし」は、この『しっぽの釣り』にもみられるように、教訓的効果が強調されていますが、それが昔ばなし本来の社会的意義の重要な部分であったようです。
さて、いつも他者を化かすキツネが“騙される被害者”になるお話は大変に珍しいです。
キツネのように普段から意地悪な振る舞いをしていると、いざというときに仕返しをされてしまうということです。
ことわざに「人の振り見て我が振り直せ」とあるように、まさに『しっぽの釣り』は自分の振る舞いを直接自分で見ることはできないので、他人の言動の良し悪しをよく見て、自らを反省し、直すべきところを改めよという戒めの意味が込められたお話です。
まんが日本昔ばなし
『しっぽの釣り』
放送日: 昭和50年(1975年)02月11日
放送回: 第0011話(第0006回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 光延博愛
脚本: 平見修二
美術: 半藤克美(スタジオユニ)
作画: 山崎久
典型: 動物対戦譚・狐譚・獺譚
地域: 東北地方(秋田県)
最後に
今回は、『しっぽの釣り』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『しっぽの釣り』は、いつも他者を化かすキツネが“騙される被害者”になるお話です。ことわざの「人の振り見て我が振り直せ」という戒めの意味が込められています。ぜひ触れてみてください!