昔話『うばすて山』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 かつて日本にっぽん各地かくちでは、経済けいざいてき理由りゆうから「くちらし」を目的もくてきに、としいてはたらけなくなった老人ろうじんやまおく遺棄いきしていたという伝承でんしょうがあります。『うばすてやま』は、親子おやこきずな人間にんげん道徳どうとくいかけるふかいテーマをつおはなしです。

 今回こんかいは、『うばすてやま』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

姨捨山 日本の物語絵本12 西本鶏介 狩野富貴子 ポプラ社 「うばて」の実際じっさいについては、はっきりしたことはかっていませんが、長野県ながのけん伝承でんしょうから着想ちゃくそうています。

 民間みんかん伝承でんしょううば由来ゆらい地名ちめい各地かくちのこされていますが、すくなくとも古代こだいから現代げんだいいたるまで、うばてやそのたぐいの法令ほうれいなどが日本にっぽん国内こくないにあったという公的こうてき記録きろくはありません。

 『うばすてやま』は、親子おやこふかあい人間にんげん尊厳そんげんえがいた日本にっぽん代表だいひょうするむかしばなしです。

 この物語ものがたりは、過酷かこくおきてかう息子むすこ葛藤かっとうと、息子むすこおもはは無償むしょうあいつうじて、現代げんだいきるわたしたちに「いのち価値かち」や「家族かぞくきずな」をかんがえさせる内容ないようとなっています。

 あなたもこの感動かんどてきな『うばすてやま』をんで、むかしばなしおくぶかさにれてみませんか?

 こころあたたまる結末けつまつが、きっとあなたのこころひびきます。

 絵本えほん姨捨おばすてやま (日本にっぽん物語ものがたり絵本えほん)』は、ポプラしゃから出版しゅっぱんされています。まずずはうつくしい装丁そうていこころうばわれます。そして、登場とうじょう人物じんぶつ感情かんじょうこまやかにとらえた狩野かりの富貴子ふきこさんの繊細せんさい情感じょうかんゆたかなイラストと、民話みんわ研究けんきゅうとしてられる西本にしもと鶴介つるすけさんのかたぐちは、むかしばなし厳粛げんしゅく雰囲ふんいあたたかみを絶妙ぜつみょう調和ちょうわさせ、物語ものがたり情感じょうかん最大さいだいげんてます。親子おやこあいふかさ、過酷かこく運命うんめいかう若者わかもの姿すがたとくつきかりのもとでの姨捨山おばすてやまのシーンは幻想げんそうてきで、登場とうじょう人物じんぶつせつない表情ひょうじょう物語ものがたりのテーマである「あい犠牲ぎせい」を視覚しかくてき表現ひょうげんしていてむねあつくなります。むかしばなし教訓きょうくん現代げんだいつたえつつ、うつくしいビジュアルでどもたちの想像そうぞうりょく刺激しげきする一冊いっさつです。

 『かもとりごんべえ (ゆかいなむかしばなし50せん)』は、岩波いわなみ書店しょてんから出版しゅっぱんされています。民話みんわ研究けんきゅうしゃ稲田いなだ和子かずこさんが、日本にっぽん各地かくちたずあるき、古老ころうたちから直接ちょくせつり、丁寧ていねいあつめたユーモラスなむかしばなしが50へん収録しゅうろくされています。「ねずみきょう」「とろかしぐさ」「うばすてやま」など、方言ほうげんあじわいをかした軽快けいかいかたぐち特徴とくちょうで、わらいだけではなく、日本にっぽん地域ちいき文化ぶんか先人せんじん知恵ちえつたえ、あたたかい気持きもちをあたえてくれます。また、表題ひょうだいさくの「かもとりごんべえ」をはじめ、「あたまにはえたはなし」「たのきゅう」「なが」など、落語らくごとのつながりをかんじるむかしばなしおお収録しゅうろくされ、落語らくごファンにとってもそのルーツをさぐたのしみがあります。むかしばなしつうじて、日本にっぽん地域ちいき文化ぶんか先人せんじん知恵ちえを、丁寧ていねい世代せだいつたえる重要じゅうよう役割やくわりたすとともに、たんなるむかしばなししゅうにとどまらず、方言ほうげんまじえながらわらいと地域ちいき文化ぶんか融合ゆうごうさせたユニークな一冊いっさつとなっています。

 『信濃しなの民話にんわ ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 1)』は、未來みらいしゃから出版しゅっぱんされています。編者へんしゃである民話みんわ研究けんきゅう第一人だいいちにんしゃである瀬川せがわ拓男たくおさんと児童じどう文学ぶんがく作家さっか松谷まつやみよさんが、信州しんしゅう雄大ゆうだい自然しぜん背景はいけいに、先人せんじんたちがつむいできた知恵ちえねがいがまった民話みんわを、丁寧ていねい再話さいわ現代げんだいよみがえらせました。信州しんしゅう奥信濃おくしなの塩田平しおだだいら佐久平さくだいら安曇野あずみの筑摩ちくまさと諏訪湖すわこ伊那谷いなだに木曾路きそじいつつの地域ちいきけ、地域ちいきごとの特色とくしょくある民話みんわ整理せいりしたことで、「おばすてやま」「黒姫くろひめ物語ものがたり」「ねこ檀家だんか」「はなさかじじい」「りゅうになった甲賀こうが三郎さぶろう」「小泉こいずみ小太郎こたろう」「早太郎はやたろういぬ人身ひとみ御供ごくう」などをみながら聖地せいち巡礼じゅんれいたのしむことができます。信州しんしゅうは“日本にっぽん屋根やね”とばれ、東西とうざいむす位置いちし、東西とうざい文化ぶんか交錯こうさくする場所ばしょです。そんな信州しんしゅう自然しぜんなか伝承でんしょうされ、風土ふうど人々ひとびとこころうつす53へん民話みんわと、郷土きょうどのわらべうたをんだ一冊いっさつです。日本にっぽんのルーツをり、信州しんしゅう魅力みりょくかんじたいのならば、ぜひってページをめくってみてください。おはなし向こうむこうに、先祖せんぞこえ故郷こきょう風景ふうけいっています。

 『越中えっちゅう民話にんわ だい1しゅう ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 35)』は、未來みらいしゃから出版しゅっぱんされています。民俗みんぞくがく専門せんもんである伊藤いとう曙覧しょらんさん、石崎いしざき直義なおよしさん、佐伯さえき安一やすいちさんの三氏さんしが、越中えっちゅう民話みんわ丁寧ていねい収集しゅうしゅう編纂へんさんしたことにより、ふか教訓きょうくん地域ちいき魅力みりょくれることができ、まるで越中えっちゅう山里やまざとにタイムスリップしたようなちになります。「ばばすてやま」「したすずめ」など、越中えっちゅう山々やまやまかわ里山さとやま風景ふうけい背景はいけいに、動物どうぶつ神々かみがみ人々ひとびと知恵ちえやユーモアがりなす民話みんわは、越中えっちゅう風土ふうどあざやかに想像そうぞうさせます。そして、たすい、勇気ゆうき正直しょうじきさといった普遍ふへんてきなテーマがまっていて、ページをめくるまりません。越中えっちゅう風土ふうど人々ひとびとこころうつす、まるで宝箱たからばこのような民話みんわ82へん郷土きょうどのわらべうたが収録しゅうろくされています。

 『栃木とちぎのむかしばなし ([新装しんそうばん]みがたり)』は、日本にっぽん標準ひょうじゅんから出版しゅっぱんされています。栃木とちぎむかしばなし丁寧ていねいあつめられ、ときえて新装しんそうばん現代げんだいよみがえりました。栃木とちぎ県北けんほく県央けんおう県南けんなん地域ちいきけし、地域ちいき文化ぶんか歴史れきし後世こうせいつたえる重要じゅうよう資料しりょうであるとともに、むかしばなしつうじて地域ちいき風土ふうど価値かちかんまなぶことができます。「日光にっこう龍神りゅうじん伝説でんせつ」「那須なす九尾きゅうびきつね」「足尾あしお山人やまびと」「宇都宮うつのみやむじなかしい」「うばやま」など、栃木とちぎ山々やまやまかわ村々むらむららしを背景はいけいに、動物どうぶつ妖怪ようかい神々かみがみ登場とうじょうする多様たよう内容ないようむかしばなしが64へん収録しゅうろくされています。新装しんそうばん特徴とくちょうは、みやすさを重視じゅうしした編集へんしゅうで、物語ものがたり背景はいけい文化ぶんかてき意義いぎ丁寧ていねい解説かいせつされており、しょうちゅう学生がくせいから大人おとなまでたんなる娯楽ごらくえたまなびの機会きかい提供ていきょうしています。栃木とちぎ地域ちいきアイデンティティをさい発見はっけんするきっかけとなる一冊いっさつです。

あらすじ

 むかしむかし、あるところにお年寄としよりが大嫌だいきらいなお殿様とのさまがいて、「六十歳ろくじゅっさいになったお年寄りはやまてること」というまりがありました。

 そこに一人ひとり息子むすこ年老としおいた母親ははおやいえがありました。

 とうとう母親が六十歳になり、く母親を背負せおって山道やまみちのぼっていきました。

 がつくと、背負われた母親が「ポキッ、ポキッ」とえだってはみちに捨てていました。

 やまおくくと、
 「かえり道にまよわないように、ところどころ枝を折って道しるべをつくってあるから」
と母親からわれました。

 おもおややさしいこころれた息子は、母親を家にれてかえりました。

 母親を連れて帰った息子は、だれにもられないように母親を床下ゆかしたかくして生活せいかつすることにしました。

 そんなある隣国りんこくから「はいなわめ、できなければむぞ」と難題なんだいしました。

 村中むらじゅうひとたちが難題をこうと知恵ちえしぼりましたが、なかなかあんかびませんでした。

 そこで息子が母親に相談そんだんすると、
 「塩水かいすいひたしたわらで縄を編んでけばよい」
おしえられました。

 息子は言われたとおりに灰縄はいなわつくり、お殿様へってきました。

 たすかったとよろこんだお殿様は、沢山たくさん褒美ほうびを息子にあたえました。

 しかし、隣国は「がりくねったたけいととおせ」や「たたかないでも太鼓たいこつくれ」と難題をまた出してきました。

 しかし、そのたびに母親の知恵で難題をすべて解決かいけつしました。

 この知恵が六十歳をぎた母親の智恵によるものだとったお殿様は、決まりを撤回てっかいしお年寄りを大切たいせつにするようになりました。

解説

 平安へいあん時代じだい中期ちゅうきせい少納言しょうなごんにより執筆しっぴつされた『枕草子まくらのそうし』には、「蟻通ありどおし明神みょうじん縁起えんぎ」というによる「うばすてやま」の完成かんせいされたかたちでの記述きじゅつがあるため、かなりふる時代じだい成立せいりつした物語ものがたりであることがうかがえます。

 平安へいあん時代じだい成立せいりつした『大和やまと物語ものがたり』にみられる長野県ながのけん千曲市ちくまし冠着山かむりきやま伝説でんせつとく有名ゆうめいで、冠着山かむりきやま俗称ぞくしょうが「うばすてやま」ということから、小説しょうせつ深沢ふかざわ七郎しちろうが『楢山ならやま節考ぶしこう』で「うば伝説でんせつ」をむすけています。

 しかし、思想しそう学者がくしゃ古田ふるた武彦たけひこ長野県ながのけん千曲市ちくまし長楽寺ちょうらくじへの現地げんち調査ちょうさ結果けっかなどから、このに「うば伝説でんせつ」はなかったと結論けつろんけています。

 『楢山ならやま節考ぶしこう』は、新潮しんちょう文庫ぶんこから出版しゅっぱんされています。当時とうじ42さい深沢ふかざわ七郎しちろう処女しょじょさくで、三島みしま由紀夫ゆきおなどの有力ゆうりょく作家さっかや、正宗まさむね白鳥はくちょうなどの辛口からくち批評ひひょうたちに衝撃しょうげきあたえ、絶賛ぜっさんされ、だい1かい中央公論ちゅうおうこうろん新人賞しんじんしょう受賞じゅしょうしました。『楢山ならやま節考ぶしこう』は、たんなる残酷ざんこく棄老きろう伝説でんせつではありません。貧困ひんこん生存せいぞんきびしさのなかで、個人こじん尊厳そんげん家族かぞくあいがどう共存きょうぞんするかをえがいた物語ものがたりです。深沢ふかざわ簡潔かんけつかつ詩的してき文体ぶんたいは、物語ものがたりおもさをかるやかにつたえるのと同時どうじに、信州しんしゅう山村さんそん風景ふうけい風習ふうしゅうきとえがかれているので、まるでそのにいるかのような臨場りんじょうかんがあり、読後どくごにはしずかな余韻よいんのこります。そして、現代げんだい価値かちかんとはことなるかたは、日本人にっぽんじんのアイデンティティや先祖せんぞらしにおもいをせられます。表題ひょうだいさくほかに「つきのアペニンさん」「東京とうきょうのプリンスたち」「白鳥はくちょう」の3ぺん収録しゅうろくされています。

感想

 母親ははおやどもをそだてるということは、非常ひじょう苦労くろうなことです。

 普通ふつうにできない色々いろいろ世話せわを、子どものために母親はよろこんでおこないます。

 そういうはは慈愛じあいたいして、子どもがそれを喜びしたうことで、はじめて母子一体ぼしいったい幸福こうふく生活せいかつまれます。

 しかし、母親が一所懸命いっしょけんめいに子どもを育てているのに、それに相応あいおうじるこころはたらきが子どもになければ、せっかくの慈愛が十分じゅうぶんにはひびきません。

 そうなると子どもは母のいつくしみをみずかて、ひとりよがりの勝手かって行動こうどうをとり、不幸ふこうみちあゆむことでしょう。

 ふる時代じだい日本にっぽん伝統でんとう文化ぶんか礼儀作法れいぎさほう謙譲けんじょう美徳びとくなど、現代げんだいでは“きた化石かせき”と揶揄やゆされわらわれる言葉ことばかもしれませんが、たとえ笑われてもわたしかまいません。

 日本人にっぽんじんの心がこれほどまでにすさんでしまった現代では、もしかしたら日本人が日本にっぽんにしかない文化を大切たいせつにすることが日本人の心をもど一番いちばん近道ちかみちなのかもしれません。

 母をおもうとき、私にはあたたかい愛情あいじょう道理どうりにかなったものいた昔話むかしばなしひとみちはずれないかた、礼儀作法など、おやとなったいまではそれらを自然しぜんにつけていたことへの感謝かんしゃ気持きもちでいっぱいです。

 つまり、祖母そぼや母からいだ生活の知恵ちえやいたわりの心、やさしい心などを取り戻すためには、母親は母親らしく、大人おとな母心ははごころにそむかぬように生きることです。

 なぜなら、母の慈愛にまさるものはないからです。

まんが日本昔ばなし

うばすてやま
放送日: 昭和51年(1976年) 01月10日
放送回: 第0028話(第0014回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 近藤英輔
文芸: 沖島勲
美術: 内田好之
作画: 三重野要一
典型: 棄老伝説きろうでんせつ教訓譚きょうくんたん
地域: 中部地方(長野県)

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最後に

 今回こんかいは、『うばすてやま』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 「上善じょうぜんみずごとし」は老子ろうし有名ゆうめいおしえです。人間にんげん価値かちめるのは、みずのような柔軟じゅうなんさと謙虚けんきょさと『うばすて山』はおしえています。ぜひれてみてください!

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