かつて日本各地では、経済的な理由から「口減らし」を目的に、年老いて働けなくなった老人を山奥に遺棄していたという伝承があります。『うばすて山』は、親子の絆や人間の道徳を問いかける深いテーマを持つお話です。
今回は、『うばすて山』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
「姥捨て」の実際については、はっきりしたことは分かっていませんが、長野県の伝承から着想を得ています。
民間伝承や姥捨て由来の地名が各地に残されていますが、少なくとも古代から現代に至るまで、姥捨てやその類いの法令などが日本国内にあったという公的な記録はありません。
『うばすて山』は、親子の深い愛と人間の尊厳を描いた日本を代表する昔話です。
この物語は、過酷な掟に立ち向かう息子の葛藤と、息子を想う母の無償の愛を通じて、現代を生きる私たちに「命の価値」や「家族の絆」を考えさせる内容となっています。
あなたもこの感動的な『うばすて山』を読んで、昔話の奥深さに触れてみませんか?
心温まる結末が、きっとあなたの心に響きます。
絵本『
姨捨山 (日本の物語絵本)』は、ポプラ
社から
出版されています。
先ずは
美しい
装丁に
心を
奪われます。そして、
登場人物の
感情を
細やかに
捉えた
狩野富貴子さんの
繊細で
情感豊かなイラストと、
民話研究家として
知られる
西本鶴介さんの
語り
口は、
昔話の
厳粛な
雰囲気と
温かみを
絶妙に
調和させ、
物語の
情感を
最大限に
引き
立てます。
親子愛の
深さ、
過酷な
運命に
立ち
向かう
若者の
姿、
特に
月明かりの
下での
姨捨山のシーンは
幻想的で、
登場人物の
切ない
表情が
物語のテーマである「
愛と
犠牲」を
視覚的に
表現していて
胸が
熱くなります。
昔話の
持つ
教訓を
現代に
伝えつつ、
美しいビジュアルで
子どもたちの
想像力を
刺激する
一冊です。
『
かもとりごんべえ (ゆかいな昔話50選)』は、
岩波書店から
出版されています。
民話研究者の
稲田和子さんが、
日本各地を
訪ね
歩き、
古老たちから
直接聞き
取り、
丁寧に
集めたユーモラスな
昔話が50
篇収録されています。「
ねずみ経」「とろかし
草」「
うばすて山」など、
方言の
味わいを
活かした
軽快な
語り
口が
特徴で、
笑いだけではなく、
日本の
地域文化や
先人の
知恵を
伝え、
読み
手に
温かい
気持ちを
与えてくれます。また、
表題作の「
かもとりごんべえ」をはじめ、「
頭にはえた
木の
話」「
たのきゅう」「
長い
名の
子」など、
落語との
繋がりを
感じる
昔話も
多く
収録され、
落語ファンにとってもそのルーツを
探る
楽しみがあります。
昔話を
通じて、
日本の
地域文化や
先人の
知恵を、
丁寧に
次世代に
伝える
重要な
役割を
果たすと
共に、
単なる
昔話集にとどまらず、
方言を
交えながら
笑いと
地域の
文化を
融合させたユニークな
一冊となっています。
『
信濃の民話 ([新版]日本の民話 1)』は、
未來社から
出版されています。
編者である
民話研究の
第一人者である
瀬川拓男さんと
児童文学作家の
松谷みよ
子さんが、
信州の
雄大な
自然を
背景に、
先人たちが
紡いできた
知恵と
願いが
詰まった
民話を、
丁寧な
再話で
現代に
蘇らせました。
信州を
奥信濃、
塩田平・
佐久平、
安曇野・
筑摩の
里、
諏訪湖・
伊那谷、
木曾路の
五つの
地域に
分け、
地域ごとの
特色ある
民話を
整理したことで、「
姥捨山」「
黒姫物語」「
猫檀家」「
花さかじじい」「
龍になった
甲賀三郎」「
小泉小太郎」「
早太郎犬と人身御供」などを
読みながら
聖地巡礼を
楽しむことができます。
信州は“
日本の
屋根”と
呼ばれ、
東西の
結び
目に
位置し、
東西の
文化が
交錯する
場所です。そんな
信州の
自然の
中で
伝承され、
風土と
人々の
心を
映し
出す53
篇の
民話と、
郷土のわらべうたを
詰め
込んだ
一冊です。
日本のルーツを
知り、
信州の
魅力を
感じたいのならば、ぜひ
手に
取ってページをめくってみてください。お
話の
向こうに、
先祖の
声と
故郷の
風景が
待っています。
『
越中の民話 第1集 ([新版]日本の民話 35)』は、
未來社から
出版されています。
民俗学の
専門家である
伊藤曙覧さん、
石崎直義さん、
佐伯安一さんの
三氏が、
越中の
民話を
丁寧に
収集・
編纂したことにより、
深い
教訓や
地域の
魅力に
触れることができ、まるで
越中の
山里にタイムスリップしたような
気持ちになります。「
ばばすて山」「
舌切り雀」など、
越中の
山々や
川、
里山の
風景を
背景に、
動物や
神々、
人々の
知恵やユーモアが
織りなす
民話は、
越中の
風土を
鮮やかに
想像させます。そして、
助け
合い、
勇気、
正直さといった
普遍的なテーマが
詰まっていて、ページをめくる
手が
止まりません。
越中の
風土と
人々の
心を
映し
出す、まるで
宝箱のような
民話82
篇と
郷土のわらべうたが
収録されています。
『
栃木のむかし話 ([新装版]読みがたり)』は、
日本標準から
出版されています。
栃木に
根付く
昔話が
丁寧に
集められ、
時を
超えて
新装版で
現代に
蘇りました。
栃木を
県北・
県央・
県南に
地域分けし、
地域文化や
歴史を
後世に
伝える
重要な
資料であると
共に、
昔話を
通じて
地域の
風土や
価値観を
学ぶことができます。「
日光の
龍神伝説」「
那須の
九尾の
狐」「
足尾の
山人」「
宇都宮の
狢の
化かし
合い」「
姥捨て山」など、
栃木の
山々や
川、
村々の
暮らしを
背景に、
動物や
妖怪、
神々が
登場する
多様な
内容の
昔話が64
篇収録されています。
新装版の
特徴は、
読みやすさを
重視した
編集で、
物語の
背景や
文化的意義が
丁寧に
解説されており、
小・
中学生から
大人まで
単なる
娯楽を
超えた
学びの
機会を
提供しています。
栃木の
地域アイデンティティを
再発見する
きっかけとなる一冊です。あらすじ
むかしむかし、あるところにお年寄りが大嫌いなお殿様がいて、「六十歳になったお年寄りは山へ捨てること」という決まりがありました。
そこに一人の息子と年老いた母親の住む家がありました。
とうとう母親が六十歳になり、泣く泣く母親を背負って山道を登っていきました。
気がつくと、背負われた母親が「ポキッ、ポキッ」と木の枝を折っては道に捨てていました。
山の奥に着くと、
「帰り道に迷わないように、ところどころ枝を折って道しるべを作ってあるから」
と母親から言われました。
子を想う親の優しい心に触れた息子は、母親を家に連れて帰りました。
母親を連れて帰った息子は、誰にも知られないように母親を床下に隠して生活することにしました。
そんなある日、隣国から「灰で縄を編め、できなければ攻め込むぞ」と難題を出しました。
村中の人たちが難題を解こうと知恵を絞りましたが、なかなか良い案が浮かびませんでした。
そこで息子が母親に相談すると、
「塩水に浸した藁で縄を編んで焼けばよい」
と教えられました。
息子は言われた通りに灰縄を作り、お殿様へ持って行きました。
助かったと喜んだお殿様は、沢山の褒美を息子に与えました。
しかし、隣国は「曲がりくねった竹に糸を通せ」や「叩かないでも鳴る太鼓を作れ」と難題をまた出してきました。
しかし、その度に母親の知恵で難題をすべて解決しました。
この知恵が六十歳を過ぎた母親の智恵によるものだと知ったお殿様は、決まりを撤回しお年寄りを大切にするようになりました。
解説
平安時代中期に清少納言により執筆された『枕草子』には、「蟻通明神の縁起」という名による「姥捨山」の完成された形での記述があるため、かなり古い時代に成立した物語であることがうかがえます。
平安時代に成立した『大和物語』にみられる長野県千曲市の冠着山の伝説が特に有名で、冠着山の俗称が「姥捨山」ということから、小説家の深沢七郎が『楢山節考』で「姨捨て伝説」を結び付けています。
しかし、思想史学者の古田武彦は長野県千曲市の長楽寺への現地調査の結果などから、この地に「姨捨て伝説」はなかったと結論付けています。
『
楢山節考』は、
新潮文庫から
出版されています。
当時42
歳の
深沢七郎氏の
処女作で、
三島由紀夫氏などの
有力作家や、
正宗白鳥氏などの
辛口批評家たちに
衝撃を
与え、
絶賛され、
第1
回中央公論新人賞を
受賞しました。『
楢山節考』は、
単なる
残酷な
棄老伝説ではありません。
貧困と
生存の
厳しさの
中で、
個人の
尊厳と
家族愛がどう
共存するかを
描いた
物語です。
深沢氏の
簡潔かつ
詩的な
文体は、
物語の
重さを
軽やかに
伝えるのと
同時に、
信州の
山村の
風景や
風習が
生き
生きと
描かれているので、まるでその
場にいるかのような
臨場感があり、
読後には
静かな
余韻が
残ります。そして、
現代の
価値観とは
異なる
生き
方は、
日本人のアイデンティティや
先祖の
暮らしに
思いを
馳せられます。
表題作の
他に「
月のアペニン
山」「
東京のプリンスたち」「
白鳥の
死」の3
篇が
収録されています。
感想
母親が子どもを育てるということは、非常に苦労なことです。
普通にできない色々な世話を、子どものために母親は喜んで行います。
そういう母の慈愛に対して、子どもがそれを喜び慕うことで、初めて母子一体の幸福な生活が生まれます。
しかし、母親が一所懸命に子どもを育てているのに、それに相応じる心の働きが子どもになければ、せっかくの慈愛が十分には響きません。
そうなると子どもは母の慈しみを自ら捨て、独りよがりの勝手な行動をとり、不幸な道を歩むことでしょう。
古き良き時代、日本の伝統と文化、礼儀作法、謙譲の美徳など、現代では“生きた化石”と揶揄され笑われる言葉かもしれませんが、たとえ笑われても私は構いません。
日本人の心がこれほどまでに荒んでしまった現代では、もしかしたら日本人が日本にしかない文化を大切にすることが日本人の心を取り戻す一番の近道なのかもしれません。
母を想うとき、私には温かい愛情、道理にかなった食べ物、添い寝で聞いた昔話、人の道に外れない生き方、礼儀作法など、親となった今ではそれらを自然と身につけていたことへの感謝の気持ちでいっぱいです。
つまり、祖母や母から受け継いだ生活の知恵やいたわりの心、優しい心などを取り戻すためには、母親は母親らしく、大人は母心にそむかぬように生きることです。
なぜなら、母の慈愛に勝るものはないからです。
まんが日本昔ばなし
『うばすて山』
放送日: 昭和51年(1976年) 01月10日
放送回: 第0028話(第0014回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 近藤英輔
文芸: 沖島勲
美術: 内田好之
作画: 三重野要一
典型: 棄老伝説・教訓譚
地域: 中部地方(長野県)
Amazonプライム・ビデオで、『
まんが日本昔ばなし』へ、ひとっ
飛び。
かつてテレビで
一大ブームを
作った『
まんが日本昔ばなし』の
中から
傑作101
話を
厳選しました!
国民的アニメーション『
まんが日本昔ばなし』がDVDになりました!
『
うばすて山』は「
DVD-BOX第2集 第7巻」で
観ることができます。
最後に
今回は、『うばすて山』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
「上善は水の如し」は老子の有名な教えです。人間の価値を決めるのは、水のような柔軟さと謙虚さと『うばすて山』は教えています。ぜひ触れてみてください!