かつて経済的な理由から「口減らし」を目的に、年老いて働けなくなった老人を山奥に遺棄していたという、日本各地で語り継がれている伝承が『うばすて山』です。
今回は、『うばすて山』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
「姥捨て」の実際については、はっきりしたことは分かっていません。
少なくとも古代から現代に至るまで、姥捨てやその類いの法令などが日本国内にあったという公的な記録はありません。
しかし、民間伝承や姥捨て由来の地名が各地に残されています。
『うばすて山』の物語の内容は、親子の深い情愛、隣国が出す難題の奇抜さ、それをいとも簡単に解決してしまう老人の知恵のすばらしさなどが主題となっています。
絵本『
姨捨山 (日本の物語絵本)』はポプラ
社から
出版されています。
人の
心の
中には
鬼も
仏も
住んでいることが
描かれています。そして、
後半の
和歌が
心にしみます。
現代に
通じる
老人介護を
考えさせられる絵本です。
子どもから
大人まで、すべての人の
心を
温かくする、
読み
聞かせにおススメの
一冊です。
『
栃木のむかし話 ([新装版]読みがたり)』は
日本標準から
出版されています。
昭和50
年代にブームを
呼んだ日本標準の『むかし
話』シリーズが
新装版で
復刊しました。
栃木県内の
各地に
伝わる
昔話を、
栃木県の
学校の
先生方や
下野民俗研究会の
会員の
人たちが
丁寧に
採話・
発掘して、
味わい
豊かな
言葉でつづりました。「
姥捨て
山」など、
小・
中学生から
大人まで
楽しめる昔話が64
篇収録されています。
文庫『
かもとりごんべえ (ゆかいな昔話50選)』は
岩波書店から出版されています。
語りつがれた
日本各地に
伝わる
昔話の
中から、「うばすて
山」など50
篇が
収載されています。
東西の
結び
目に
位置し、
日本の
屋根といわれる
信州の
自然のなかで
伝承されてきた
民話を
詰め
込んだ、
未來社より
出版されている『
信濃の民話 ([新版]日本の民話 1)』は、
自然と
人間の
戦いが
生んだ
祖先の
英知・
願望の
結晶です。
あらすじ
むかしむかし、あるところにお年寄りが大嫌いなお殿様がいて、「六十歳になったお年寄りは山へ捨てること」という決まりがありました。
そこに一人の息子と年老いた母親の住む家がありました。
とうとう母親が六十歳になり、泣く泣く母親を背負って山道を登っていきました。
気がつくと、背負われた母親が「ポキッ、ポキッ」と木の枝を折っては道に捨てていました。
山の奥に着くと、
「帰り道に迷わないように、ところどころ枝を折って道しるべを作ってあるから」
と母親から言われました。
子を想う親の優しい心に触れた息子は、母親を家に連れて帰りました。
母親を連れて帰った息子は、誰にも知られないように母親を床下に隠して生活することにしました。
そんなある日、隣国から「灰で縄を編め、できなければ攻め込むぞ」と難題を出しました。
村中の人たちが難題を解こうと知恵を絞りましたが、なかなか良い案が浮かびませんでした。
そこで息子が母親に相談すると、
「塩水に浸した藁で縄を編んで焼けばよい」
と教えられました。
息子は言われた通りに灰縄を作り、お殿様へ持って行きました。
助かったと喜んだお殿様は、沢山の褒美を息子に与えました。
しかし、隣国は「曲がりくねった竹に糸を通せ」や「叩かないでも鳴る太鼓を作れ」と難題をまた出してきました。
しかし、その度に母親の知恵で難題をすべて解決しました。
この知恵が六十歳を過ぎた母親の智恵によるものだと知ったお殿様は、決まりを撤回しお年寄りを大切にするようになりました。
解説
平安時代中期に清少納言により執筆された『枕草子』には「蟻通明神の縁起」という名による「姥捨山」の完成された形での記述があるため、かなり古い時代に成立した物語であることがうかがえます。
平安時代に成立した『大和物語』にみられる長野県千曲市の冠着山の伝説が特に有名で、冠着山の俗称が「姨捨山」ということから、小説家の深沢七郎が『楢山節考』で「姨捨て伝説」を結び付けています。
しかし、思想史学者の古田武彦は長野県千曲市の長楽寺への現地調査の結果などから、この地に「姥捨て伝説」はなかったと結論付けています。
『
楢山節考』は
新潮文庫から
出版されています。
当時42
歳の
深沢七郎の
処女作です。
山深い
貧しい
部落の
因習に
従い、
年老いた
母を
背板に
乗せて
真冬の
楢山へ
捨てにいく
物語です。
残酷な
棄老伝説を
通して、
人間の
矜持と
生と
死の
尊厳を
極限まで
問う
名作です。
感想
母親が子どもを育てるということは、非常に苦労なことです。
普通にできない色々な世話を、子どものために母親は喜んで行います。
そういう母の慈愛に対して、子どもがそれを喜び慕うことで、初めて母子一体の幸福な生活が生まれます。
しかし、母親が一所懸命に子どもを育てているのに、それに相応じる心の働きが子どもになければ、せっかくの慈愛が十分には響きません。
そうなると子どもは母の慈しみを自ら捨て、独りよがりの勝手な行動をとり、不幸な道を歩むことでしょう。
古き良き時代、日本の伝統と文化、礼儀作法、謙譲の美徳など、現代では“生きた化石”と揶揄され笑われる言葉かもしれませんが、たとえ笑われても私は構いません。
日本人の心がこれほどまでに荒んでしまった現代では、もしかしたら日本人が日本にしかない文化を大切にすることが日本人の心を取り戻す一番の近道なのかもしれません。
母を想うとき、私には温かい愛情、道理にかなった食べ物、添い寝で聞いた昔話、人の道に外れない生き方、礼儀作法など、親となった今ではそれらを自然と身につけていたことへの感謝の気持ちでいっぱいです。
つまり、祖母や母から受け継いだ生活の知恵やいたわりの心、優しい心などを取り戻すためには、母親は母親らしく、大人は母心にそむかぬように生きることです。
なぜなら、母の慈愛に勝るものはないからです。
まんが日本昔ばなし
『うばすて山』
放送日: 昭和51年(1976年) 01月10日
放送回: 第0028話(第0014回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 近藤英輔
文芸: 沖島勲
美術: 内田好之
作画: 三重野要一
典型: 棄老伝説・教訓譚
地域: 中部地方(長野県)
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うばすて山』は「
DVD-BOX第2集 第7巻」で
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最後に
今回は、『うばすて山』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
「上善は水の如し」は老子の有名な教えです。人間の価値を決めるのは、水のような柔軟さと謙虚さと『うばすて山』は教えています。ぜひ触れてみてください!