昔話『みそ買い橋』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『みそ買かい橋ばし』は、正直しょうじき者もので信心しんじん深ぶかい若者わかものが、夢ゆめのお告つげに従したがって、遠とおくの町まちの橋はしの上うえに立たちつくしていると、自分じぶんの家いえのそばに宝物たからものが埋うまっているという話はなしを聞きき、急いそいで家いえに帰かえり、宝物たからものを発見はっけんして大金おおがね持もちになるというお話はなしです。

 今回こんかいは、『みそ買かい橋ばし』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

 岐阜県ぎふけん北部ほくぶに位置いちする山岳さんがく都市としの高山市たかやましは、飛騨ひだ地方ちほうの中心ちゅうしん地ちであることから、「飛騨ひだ高山たかやま」と呼よばれ、日本にっぽん屈指くっしの人気にんきの観光かんこう地ちです。

 その高山たかやま市内しないの中心ちゅうしん部ぶを流ながれる宮川みやがわには、飛騨ひだ高山たかやまを代表だいひょうする有名ゆうめいな赤あかい中橋なかばしが架かかります。そして、中橋なかばしの一ひとつ下流かりゅうにある筏橋いかだばしは、橋はしのたもとに味噌みそ屋やがあったことから、地元じもとでは「味噌みそ買かい橋ばし」とも呼よばれ、『みそ買かい橋ばし』や『夢ゆめの橋はし』、『夢ゆめの夢ゆめ』と呼よばれる民話みんわの舞台ぶたいとして知しられています。

 昭和しょうわ37年ねん(1962年ねん)に中学ちゅうがく一いち年生ねんせいの国語こくごの教科きょうか書しょに採用さいようされたことにより、『みそ買かい橋ばし』は広ひろく日本にっぽん中じゅうに知しれ渡わたることになりました。

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『みそ買かい橋ばし』のお話はなしは、『まんが日本にっぽん昔むかしばなし 第だい13巻かん』の中なかに収録しゅうろくされています。

  『子こどもに語かたる 日本にっぽんの昔むかし話ばなし (1)』は、こぐま社しゃから出版しゅっぱんされています。「みそ買かい橋ばし」をはじめとした、おなじみの昔むかし話ばなしを、そのお話はなしが伝つたわる地方ちほうの方言ほうげんで語かたるとう方式ほうしきで書かかれています。方言ほうげんの味あじわいを適度てきどに残のこしながら、現代げんだい風ふうの言葉ことば遣づかいに書かき換かえられてるため、読よんでいても聞きいていても分わかりやすいです。昔むかし話ばなしが持もつ力ちからのすごさを感かんじる一冊いっさつです。

 『わらしべ長者ちょうじゃ (日本にっぽん民話みんわ選せん)』は、岩波いわなみ書店しょてんから出版しゅっぱんされています。現代げんだいの子こどもたちには決けっしてなじみ深ぶかいとは言いえない擬態ぎたい語ご・擬音ぎおん語ごがたくさん使つかわれているため、物語ものがたりが豊ゆたかな内容ないようになっています。「わらしべ長者ちょうじゃ」をはじめ「みそ買かい橋ばし」など、声こえに出だして読よみたくなる民話みんわが22篇へん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、飛騨国ひだのくにの乗鞍のりくら岳だけのふもとの丹生川にうかわというところの澤上さうれという村むらに、炭すみ焼やきの長吉ちょうきちという男おとこが住すんでいました。
 長吉ちょうきちは、信心しんじん深ぶかく、正直しょうじき者もので、とてもよく働はたらきましたが、生活せいかつは貧まずしく、決けっして楽らくではありませんでした。

 ある日ひの晩ばん、長吉ちょうきちが囲炉裏いろり端ばたでうとうとしていると、夢ゆめに白しろく長ながいあご髭ひげを蓄たくわえた仙人せんにんが現あらわれ、不思議ふしぎなことを言いいました。
 「長吉ちょうきちや、目めが覚さめたら高山たかやまの町まちへ行いって、『みそ買かい橋ばし』のたもとに立たっておれ。たいそうよい話はなしが聞きけるぞ」
 そう告つげると、仙人せんにんは長吉ちょうきちの前まえから姿すがたを消けしました。

 目めを覚さました長吉ちょうきちは、
 「なんだ、夢ゆめか。それにしても、仙人せんにんとはよい夢ゆめを見みたもんだ。せっかく仙人せんにんが教おしえてくれたんだから、高山たかやまへ行いってみるか」
 長吉ちょうきちは半信はんしん半疑はんぎだったものの、わざわざ仙人せんにんが夢ゆめに出でてくるくらいのことだからと、炭すみを売うりに行いくついでに、仙人せんにんのお告つげ通どおり高山たかやまへ行いってみることにしました。

 長吉ちょうきちは、まだ暗くらいうちから炭すみを背負せおって山やまを下くだると、まだ昼前ひるまえに高山たかやまの町まちに到着とうちゃくしました。炭すみはあっという間まに売うれ、身軽みがるになった長吉ちょうきちは、仙人せんにんが言いっていた“みそ買かい橋ばし”へ向むかいました。

 みそ買かい橋ばしという名前なまえは、宮川みやがわに架かかる橋はしが味噌みそ屋やの前まえにちょうどあったことから、町まちの人ひとたちがその橋はしを渡わたって味噌みそを買かいに行いくので、いつしかそう呼よばれるようになったのでした。

 みそ買かい橋ばしを見みつけた長吉ちょうきちは、夜よるになるまで橋はしにじっと立たっていましたが、何なにもよい話はなしは聞きけませんでした。次つぎの日ひも何なにもなく、その次つぎの日ひも、そのまた次つぎの日ひも夢ゆめのお告つげを信しんじ、長吉ちょうきちは立たち続つづけました。

 こうしてとうとう五いつ日かが経たち、さすがに疲つかれてしまい、
 「やっぱり、ただの夢ゆめだったのかな」
と長吉ちょうきちが半なかば諦あきらめていた時とき、橋はしのそばの豆腐とうふ屋やの主人しゅじんが、
 「お前まえさん、何日なんにちも橋はしの上うえに立たっているが、いったい何なにをしているんだい」
と話はなしかけてきました。

 長吉ちょうきちは素直すなおに夢ゆめのことを話はなしました。

 すると豆腐とうふ屋やの主人しゅじんは、
 「馬鹿ばか正直しょうじきに夢ゆめなどを信しんじるものではない」
と大おお笑わらいしました。

 そして、思おもい出だすようにこう言いいました。
 「実じつは、わしもこの間あいだ、おかしな夢ゆめを見みた。白しろく長ながいあご髭ひげを蓄たくわえた仙人せんにんが出でてきてな、乗鞍のりくらのふもとの澤上さうれとかいう村むらに、長吉ちょうきちとかいう男おとこがおる。長吉ちょうきちの家いえの前まえに立たつ大おおきな杉すぎの木きの根ねっこには、大判おおばん小判こばんがどっさり埋うまっているから掘ほってみよという夢ゆめを見みた。わしは乗鞍のりくらの澤上さうれなんていう村むらはどこにあるか知しらないし、知しっていたとしてもそんな馬鹿ばかげた夢ゆめを信しんじるはずがなかろう」

 「夢ゆめのお告つげはこれだ!」
と思おもった長吉ちょうきちは、豆腐とうふ屋やの主人しゅじんへの挨拶あいさつもそこそこに、一目いちもく散さんに家いえに帰かえると、家いえの前まえに立たつ大おおきな杉すぎの木きの根元ねもとを鍬くわで掘ほり返かえしました。

 すると、そこには話はなしの通とおり大判おおばん小判こばんが詰つまった大おおきな甕かめが三みっつも出でてきました。

 夢ゆめのお告つげは本当ほんとうのことでした。

 夢ゆめに現あられた仙人せんにんのお告つげを正直しょうじきに信しんじた長吉ちょうきちは、大金たいきんを手てに入いれて村むら一番いちばんの長者ちょうじゃとなり、福徳ふくとく長者ちょうじゃと呼よばれ、一生いっしょう安楽あんらくに暮くらしたという、夢ゆめのようなお話はなしでした。

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解説

 民俗みんぞく学者がくしゃの柳田やなぎた國男くにおが、昭和しょうわ14年ねん(1939年ねん)に発表はっぴょうした『昔むかし話ばなし覚書おぼえがき』の中なかで「味噌みそ買かい橋ばし」が紹介しょうかいされ、それ以後いご、日本にっぽん国内こくないに『みそ買かい橋ばし』が知しられることになります。

 その中なかで柳田やなぎたは、「ロンドン橋ばしの話はなしとまったく同おなじ話はなし」と言いいながらも、「日欧にちおう共通きょうつうの典型てんけい的てきな話はなし」と記しるし、「問題もんだいは、誰だれがいかなる方法ほうほうで運はこんで、この地球ちきゅうの両端りょうたんともいってよい二ふたつの国くにに、共通きょうつうの昔むかし話ばなしを分布ぶんぷせしめたかということである」と述のべています。

 柳田やなぎたのこの発言はつげんにより、『みそ買かい橋ばし』は注目ちゅうもくされることになります。

 しかし、それもそのはず、『みそ買かい橋ばし』にまつわる昔むかし話ばなしは、“イギリスのグリム”と呼よばれるジョセフ・ジェイコブスが1894年ねんに発表はっぴょうした名著めいちょ『イギリス民話みんわ集しゅう 続編ぞくへん』の中なかに収おさめられている「スウォファムの行商ぎょうしょう人にん」を翻案ほんあんしたものだからです。

 大正たいしょう15年ねん(1926年ねん)に出版しゅっぱんされた『世界せかい童話どうわ大系たいけい 第だい七なな巻かん』に収おさめられている、松村まつむら武雄たけお訳やくの「スウォファムの行商ぎょうしょう人にん」を参考さんこうにして、高山たかやま市立いちりつ西にし小学校しょうがっこう教諭きょうゆで郷土きょうど教育きょういくを熱心ねっしんに行おこなっていた小林こばやし幹みきが、児童じどうやに話はなすために地元じもとの橋はしをめぐるお話はなしに書かき換かえたからです。

 つまり、あまりにも日本にっぽんらしい民話みんわになっていたので、あの柳田やなぎた國男くにお先生せんせいでさえ、それに気きづかないで、まんまと騙だまされたということです。

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感想

 長吉ちょうきちと豆腐とうふ屋やの主人しゅじんを分わけたものは何なんでしょうか。

 どちらにも相応そうおうのチャンスがあり、長吉ちょうきちはチャンスをしっかり掴つかみました。その一方いっぽうで、豆腐とうふ屋やの主人しゅじんは、チャンスと認識にんしきすらできず、チャンスを逃のがしたことにも気きづいていません。

 それは、せっかく見みた夢ゆめに対たいして、最善さいぜんの行動こうどうが伴ともなったかどうかということなのでしょう。

 僅わずかな差さなのかもしれませんが、行動こうどうするかどうかによって、結果けっかには大おおきな差さが生うまれてしまったということです。

 では、チャンスを掴つかむためには、どのような行動こうどうを執とることが重要じゅうようなのでしょうか。

 レオナルド・ダ・ヴィンチの言葉ことばに、
 「幸運こううんの女神めがみには、前髪まえがみしかない」
というものがあります。

 これは、「チャンスの女神めがみには前髪まえがみしかないので、向むかってきた時ときに掴つかまなければ、チャンスが通とおり過すぎた時ときに慌あわてて掴つかもうとしても、後うしろ髪がみがないため掴つかむことが出来できない」という意味いみです。

 ところが、チャンスというものは、目めの前まえに現あらわれた時とき、チャンスの形かたちをしていないことがほとんどです。それどころか、チャンスは女神めがみとして現あらわれるのではなく、悪魔あくまの仮面かめんをかぶってピンチとしてやってきます。

 つまり、辛つらいこと、苦くるしいこと、人ひとが嫌いやがることなど、リスクを伴ともなうことから目めをそらしていると、チャンスを見みつけることができないということです。

 そして、チャンスとは、ピンチが変かわるものでなく、自分じぶんで造つくり出だすか否いなかに尽つきるということです。

 だからこそ、毎日まいにちを大事だいじに生いきることが大切たいせつであり、それがチャンスなのかもしれません。

まんが日本昔ばなし

『みそ買かい橋ばし』
放送日: 昭和51年(1976年)10月23日
放送回: 第0091話(第0055回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 漉田実
文芸: 漉田実
美術: 下道一範
作画: 上口照人
典型: 致富譚ちふくたん・夢譚ゆめたん
地域: 中部地方(岐阜県)

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 『みそ買かい橋ばし』は「DVD-BOX第だい5集しゅう 第だい25巻かん」で観みることができます。

最後に

 今回こんかいは、『みそ買かい橋ばし』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『みそ買かい橋ばし』は、「富とみを得えたい」という欲よく深ぶかい気持きもちより、「素直すなおに信しんじて辛抱しんぼうする」という忍耐にんたい強づよく努力どりょくを惜おしまないで生いきていくことの大切たいせつさを教おしえています。ぜひ触ふれてみてください!

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