昔話『水の種』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 「みずにも“たね”がある」
 むかしいま米作こめづくりは、手間てま時間じかんもかかる重労働じゅうろうどうです。『みずたね』は、ながあいだみず不足ぶそくなやまされつづけてきたむらすくった、一人ひとりのお百姓ひゃくしょうさんの不思議ふしぎ物語ものがたりです。

 今回こんかいは、『みずたね』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『みずたね』は山形県やまがたけん山形市やまがたし西部せいぶ位置いちする門伝もんでん地区ちくつたわる不思議ふしぎなおはなしです。

 ながあいだみず不足ぶそくくるしんでいるむらが、なんらかの“超人的ちょうじんてき手段しゅだん”によりみず確保かくほしたことで、田畑たはたたがやすことができるようになり、ゆたかなみのりをたという内容ないようです。

 みず確保かくほするさい四十八よんじゅうはちものぬまができ、現在げんざいでは「白鷹はくちょう四十八よんじゅうはちぬま」とばれています。

 筋立すじだてに「お伊勢いせまいり」や「箱根神社はこねじんじゃまいり」をえた類話るいわ白鷹はくちょう四十八よんじゅうはちぬま水源すいげんとする地域ちいきつたわりますが、いずれも結末けつまつみずめぐまれる内容ないようです。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『みずたね』のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい18かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『松谷まつたにみよのむかしむかし いち (日本にっぽんむかしばなし 1)』は、講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。松谷まつたにみよさんのみやすくととのえられたぶん瀬川せがわ康男やすおさんの素晴すばらしいです。民話みんわへのあたたかいこころかんじられる一冊いっさつです。「みずのたね」など17へん収録しゅうろくされています。

 『みちのくの民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 別巻べんかん1)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。くるしい生活せいかつなかからまれた生産せいさん知恵ちえなど、東北とうほく六県ろっけん民衆みんしゅう日常にちじょう生活せいかつ直結ちょっけつしたおはなし数々かずかずを、各県かくけんごとに採集さいしゅうした珠玉しゅぎょく民話みんわ45へん郷土きょうどのわらべうたが収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、羽前国うぜんのくに白鷹山しらたかやまふもと門伝もんでんというむらがありました。門伝もんでんは、いけぬまかわがなかったため、あれだらけで、いねおもうようにつくれず、ひどくまずしいむらでした。

 このむらに、与左衛門よざえもんという一人ひとりまずしい百姓ひゃくしょうが、年老としおいた母親ははおやらしていました。与左衛門よざえもん信心しんじんぶかく、むら虚空蔵こくうぞう菩薩ぼさつまえとおときは、かならわせるほどでした。

 ある、ふもとのまち用足ようたしにくため、与左衛門よざえもんむらはなれることになりました。与左衛門よざえもんやままちくと、梅雨つゆ時期じきということもあり、須川すかわはいつもよりおおくのみずながれていました。

 与左衛門よざえもんは、須川すかわ岸辺きしべにある高木たかぎわたで、一休ひとやみすることにしました。

 すると、どもたちのこえこえてきて、与左衛門よざえもんあたま小石こいしたりました。
 「こらぁー!いしなんかげたらあぶねぇじゃねぇかぁ!」
与左衛門よざえもん怒鳴どなり、どもたちのほうると、一匹いっぴきしろへびどもたちが小石こいしをぶつけていました。

 どもたちにいじめられているしろへびあわれにおもった与左衛門よざえもんは、そのしろへびどもたちからることにしました。

 「今度こんどてくるときをつけるんだぞ」
与左衛門よざえもんしろへびかせ、がしてやりました。

 その夕方ゆうがた、町での用事ようじえた与左衛門よざえもんは、ふたた須川すかわ岸辺きしべにある高木たかぎわたとおりかかると、うつくしいむすめびとめられました。

 むすめは、
 「わたし龍宮りゅうぐう乙姫おとひめです」
名乗なのり、つづけて、
 「今日きょうしろへびけて地上ちじょうあそんでいました。あぶないところをたすけていただき、ありがとうございます」
与左衛門よざえもんいました。
 そして、
 「あぶないところをたすけていただいたおれいに、龍宮りゅうぐうにご招待しょうたいいたします」
とも与左衛門よざえもんいました。

 与左衛門よざえもん乙姫おとひめさまにれられて、うつくしい輿こしり、須川すかわから最上川もがみがわ合流ごうりゅうしてうみへとました。

 龍宮りゅうぐういた与左衛門よざえもんは、
 「今日きょうむすめ乙姫おとひめたすけていただき、ありがとうございます」
龍王りゅうおうからもおれいわれ、たこともないような贅沢ぜいたくなご馳走ちそう手厚てあつくもてなされました。

 与左衛門よざえもんゆめのような日々ひび龍宮りゅうぐうごしました。

 ところがある自分じぶんむらのことや年老としおいた母親ははおやのことをおもし、いえかえりたくてたまらなくなりました。

 「むらかえりたい」
与左衛門よざえもん龍王りゅうおうつたえると、龍王りゅうおう乙姫おとひめさまは大変たいへんかなしみましたが、
 「なに土産みやげにさしあげよう」
龍王りゅうおうい、もくらむような宝物たからものならべました。

 その宝物たからものやまなかに、ひとつだけ、みすぼらしい二本にほんぐみみのしろ徳利とっくり与左衛門よざえもんまりました。

 与左衛門よざえもん龍王りゅうおうしろ徳利とっくりのことをたずねると、
 「このしろ徳利とっくりなかには『みずたね』がはいっている」
われました。

 与左衛門よざえもん龍王りゅうおうから
 「こんなつまらないものを」
わらわれましたが、みず不足ぶそくなやまされていた与左衛門よざえもんむらにとっては、ねがってもない宝物たからものでした。

 「これさえあれば、むらんぼをつくることが出来できる!」
おもったところで、与左衛門よざえもんは、ふと目覚めざめました。

 そこは、みすぼらしい自分じぶんいえでした。

 「いままでのことは、すべてゆめだったのだろうか・・・」
与左衛門よざえもんはがっかりしながら、いつものようにむら虚空蔵こくうぞう菩薩ぼさつにおまいりに行くと、そこにはゆめたのとそっくりな二本にほんぐみみのしろ徳利とっくりがありました。

 「まさか!」
与左衛門よざえもんおもいながら、一本いっぽんしろ徳利とっくりかたむけてみると、なかからはみずながして、いつまでもきることがありませんでした。しかも、気付きづけばもう一本いっぽん徳利とっくりからもこんこんと水がていてまらないではありませんか。

 みずあふれ、しまいには与左衛門よざえもんみずながされそうになってきました。

 たにというたにみずながち、四十八よんじゅうはちものいけぬまむら出来できました。

 与左衛門よざえもんすわんでうれなみだれました。

 こうして、門伝もんでんではみずこまることがなくなり、いねみのるようになり、むらゆたかになったそうです。

解説

 山形県やまがたけん地図ちずると山形市やまがたし上山市かみのやまし南陽市なんようし山辺町やまのべまち白鷹町しらたかまち三市さんし二町にちょう境界線きょうかいせんひとつの地点ちてんせっしているようにえる場所ばしょがあります。

 その地点ちてん白鷹山しらたかやまというやまいただき(標高ひょうこう994m)です。

 白鷹山しらたかやま山形やまがた米沢よねざわりょう盆地ぼんちへだてる火山かざんで、その北東ほくとう斜面しゃめんには火山かざん噴火ふんかによってできた陥没かんぼつ地形ちけいのカルデラがおおられます。このカルデラにみずまってできたものが、通称つうしょう白鷹はくちょう四十八よんじゅうはちぬま」とばれる湖沼群こしょうぐんです。

 「白鷹はくちょう」とがついていますが、湖沼こしょうおおくは白鷹町しらたかまちではなく、山形市やまがたし西隣にしどなりにある山辺町やまのべまちひろがっています。

 近年きんねんまで山形県やまがたけん山形市やまがたし西部せいぶにある村木沢むらきさわ門伝もんでん柏倉かしわぐら地区ちくは、その湖沼群こしょうぐんなかでも大沼おおぬま荒沼あれぬまなどをおも水源すいげんとしていました。

 大沼おおぬま荒沼あれぬまもとはカルデラのくぼみを利用りようした人工湖じんこうこであり、類話るいわふくめて『みずたね』の舞台ぶたいは主にこのふたつのぬまです。

感想

 おおくの昔話むかしばなしが「むかしむかしあるところに…」と表現ひょうげんされるのに、この『みずたね』は「どこで」という場所ばしょ明確めいかくまれています。

 つまり、『みずたね』は、実際じっさい出来事できごともとにして、超常ちょうじょう現象げんしょうまじえて伝説でんせつがつくられたということです。

 その伝説でんせつ舞台ぶたいが、山形県やまがたけん山形市やまがたし西部せいぶにある村木沢むらきさわ門伝もんでん柏倉かしわぐら地区ちく水源すいげんであった大沼おおぬま荒沼あれぬまです。

 みず不安ふあん解消かいしょうしたいという庶民しょみん願望がんぼうもあって、「みずにも“たね”がある」という伝説でんせつ成立せいりつしたのでしょう。

 人間にんげん自然しぜんたいして“神頼かみだのみ”だけをしてきたわけではありません。

 民話みんわうえでは「超常ちょうじょう現象げんしょう」によって説明せつめいされていたとしても、実際じっさい水源すいげん確保かくほ水路すいろ開削かいさくをすることなどは、自然しぜんにできるものではないし、一人ひとり人間にんげんによってできることでもありません。

 そこにはおおくの人間にんげん実際じっさいかかわった歴史的れきしてき事実じじつであり、きるための英知えいち結晶けっしょうです。

 だからこそ、歴史的れきしてき事実じじつ伝説でんせつとなってかたられることになったのでしょう。

まんが日本昔ばなし

みずたね
放送日: 昭和51年(1976年)08月21日
放送回: 第0077話(第0046回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 坂井俊一
文芸: 沖島勲
美術: 坂本信人
作画: 坂井俊一
典型: 動物報恩譚どうぶつほうおんたん龍蛇譚りゅうじゃたん
地域: 東北地方(山形県)

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 『みずたね』は「DVD-BOXだい6しゅう だい28かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『みずたね』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『みずたね』は、みず不安ふあん解消かいしょうし、水源すいげん確保かくほした村人むらびとたちの歴史的れきしてき事実じじつに、超常ちょうじょう現象げんしょうまじえたおはなしです。ぜひれてみてください!

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