昔話『座頭の木』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 『座頭ざとう』は、供養くようとはものきるものが「ともささえあうことでこころやしなわれる」という意味いみいをつことを、とても詩的してきに、そして象徴的しょうちょうてきに、どもでも理解りかいできるようつたえた、素晴すばらしい内容ないよう民話にんわです。

 今回こんかいは、『座頭の木』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『座頭ざとう』は、東北とうほく地方ちほう位置いちする秋田県あきたけんつたわる民話みんわです。

 全国ぜんこくでも秋田県あきたけんのみにつたわり、この一話いちわしか採話さいわされていない、類話るいわ存在そんざいしないという大変たいへんめずらしい民話みんわです。

 『座頭の木』は、大雨おおあめ洪水こうずい座頭ざとうのご遺体いたいなど、おそろしい内容ないようからおはなしはじまりますが、座頭をあつくほうむったわたもり善行ぜんこうによって、うつくしくたのしいお話に展開てんかいし、どものこころゆたかにはぐくんでいきます。

 昭和しょうわ43ねん(1968年)に講談社こうだんしゃより発行はっこうされた、松谷まつたにみよの『日本にっぽんのむかしばなし 1』のなかで「座頭の木」のだい紹介しょうかいされれたことにより日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 絵本えほんぼうさまのき (日本にっぽんむかしばなし)』はフレーベルかんより出版しゅっぱんされています。松谷まつたにみよさんのあじわいぶかぶん瀬川康男せがわやすおさんの精密せいみつなタッチのによって、みみにも心地ここちよい言葉ことばしあわせがちる絵本です。

 『舌切したきりすずめ ([新装版しんそうばん]日本にほんのむかしばなし 2)』は講談社こうだんしゃより出版しゅっぱんされています。松谷まつたにみよさんのきれいなかたぐち日本語にほんごは、ささめやゆきさんの可愛かわいらしい挿絵さしえによって、文章ぶんしょうにリズムがまれ、だれかにはなしてかせたい気持きもちになります。「舌切したきりすずめ」をはじめ「座頭ざとう」など、人間にんげんきる知恵ちえ真実しんじつがひそむ昔話むかしばなし24ぺん収録しゅうろくされています。

 『秋田県あきたけん民話みんわ (県別けんべつふるさとの民話みんわ 29)』は偕成社かいせいしゃより出版しゅっぱんされています。方言ほうげんがふんだんにまれたぶんは、物語ものがたり世界せかいまれることは勿論もちろんのこと、イントネーションにも興味きょうみかれます。

 『日本にっぽん民話みんわ<6> (土着どちゃく信仰しんこう)』は角川文庫かどかわしょてんより出版されています。松谷まつたにみよさんの『日本にっぽんのむかしばなし 1』に収録しゅうろくされているものとおな内容ないようの「座頭ざとう」が収録されています。四季しき折々おりおり行事ぎょうじ祭礼さいれい多大ただい影響えいきょうあたえている多種多様たしゅたよう民話みんわが収録されています。

あらすじ

 むかしむかし、あるおおきなかわのほとりに、わたもりばれるわたぶね船頭せんどうんでいました。

 あるとし、ひどいあめつづいて川のみずがあふれし、ちかくのむら洪水こうずい大変たいへんなことになりました。洪水のあとながれてくるひろおうと渡し守がふねすと、ちょうど手頃てごろな木が流れてきました。さっそくせてみるとそれは木ではなく、なんと座頭ざとうのご遺体いたいでした。

 村のどもたちにかれて、座頭が子どもたちに独楽こまたこつくっている姿すがたを渡し守もたことがありました。どくおもった渡し守は、はたけなか丁寧ていねいに座頭を埋葬まいそうしました。

 それから数日後すうじつご、渡し守がおそなものって座頭をめた場所ばしょってみると、そこには木がえていました。そして、その木はるうちに、大きな木になりました。やがてその大木たいぼくにつぼみがなり、あかしろの大きなはなかせました。

 ある、村の子どもが花のなかに座頭がすわっているのをつけました。さらに座頭は、ふえ太鼓たいこ三味線しゃみせんらしながらにぎやかなお囃子はやしはじめました。

 この座頭の木のうわさはあっというひろまり、そのにぎやかな様子ようすや花のいろかおりをたのしむ人々ひとびとが、とおくのまちからも毎日まいにちのようにせました。

 そこで、渡し守は見物客けんぶつきゃく相手あいてに、饅頭まんじゅう弁当べんとう商売しょうばいはじめました。洪水でいえを流された村人むらびとも渡し守も大勢おおぜいの見物客のおかげで、らしがかなりらくになりました。

 何日なんにちかすると、花が川にはじめました。花の中の座頭は川に流れながらも賑やかに楽器がっきらすので、川を流れる花と一緒いっしょに座頭のお囃子をたのしみたいという見物客がえたので、渡し守は舟を出すようになり、本職ほんしょくの渡し船でもおかねかせぐことができるようになりました。

 そしてあきになり、中に座頭が座っている花はすべて散って見物客はいなくなりました。

 やがてゆきいはじめ、北風きたかぜつよくなってきた正月しょうがつちかころ、座頭の大木はをつけるわりに、独楽やまりや凧や人形にんぎょうなど、子どもたちがしがるおもちゃをみのらせるようになりました。

 座頭の木は正月になるまで、村中むらじゅうの子どもたちにしいものおくりました。

 これは子どもきだった座頭から子どもたちへのお正月のおくものでした。

解説

 座頭ざとうとは、琵琶法師びわほうし所属しょぞくする剃髪ていはつした盲人もうじん名称めいしょうです。中世ちゅうせいには琵琶法師の通称つうしょうとなり、近世きんせいには琵琶びわ三味線しゃみせんなどをいてうたうたい、物語ものがたりかたり、按摩あんまはり治療ちりょう金融きんゆうなどを生業なりわいとしました。

 さて、供養くようとはもともとは仏教ぶっきょうおしえであり、ほとけささげものをすることを言葉ことばです。しかし、仏教がインドから日本にっぽんつたわり、なが時間じかんなかで日本の祖先崇拝そせんすうはい風習ふうしゅうわさっていったことで、だんだんと祖先そせん故人こじん冥福めいふくいの行為こうい全般ぜんぱんを供養とぶようになりました。

 そして、自然しぜん万物ばんぶつのあらゆるものに神様かみさま宿やどるという日本古来こらいかんがかたかさなりったことで、今日こんにちの日本では供養の対象たいしょう先祖せんぞや故人のほかに、動物どうぶつ人形にんぎょう大事だいじ道具どうぐなどもふくむようになりました。

 供養には故人の冥福を祈る他にも、一族いちぞくきずなふかめあったり、自身じしん人生じんせいについてかんがなおしたりする目的もくてきがあります。供養には、さまざまな種類しゅるいとそれぞれに意味いみがありますが、いずれにしてももっと大切たいせつなことは故人の冥福を祈る気持きもちです。

感想

 孔子こうしひらいた儒教じゅきょうは、つぎみっつのことを人間にんげんの“つとめ”としてしています。
 ひとは、祖先祭祀そせんさいしをすることです。仏教ぶっきょうでいうところの先祖供養せんぞくようです。
 ふたつ目は、家庭かていにおいておやあいし、かつうやまうことです。
 みっつ目は、子孫しそん一族いちぞくつづくことです。
そして、この三つの“つとめ”をわせたものを「こう」とびます。

 あらゆるひとには祖先そせんおよび子孫しそんというものがありますが、祖先とは過去かこであり、子孫とは未来みらいです。その過去と未来をつなぐ中間ちゅうかん現在げんざいがあり、現在は現実げんじつ親子おやこによってあらわされます。

 すなわち、親は将来しょうらいの祖先であり、子は将来の子孫の出発点しゅっぱつてんです。だから、子の親にたいする関係かんけいは、子孫の祖先に対する関係かんけいでもあります。

 つまり、現在を生きているわたしたちは、みずからの生命せいめいいとをたぐっていくと、はるかな過去かこにも、はるかな未来みらいにも、祖先も子孫も含め、みなと一緒いっしょともきていることになります。私たちは個体こたいとしての生物せいぶつではなくひとつの生命として、過去も現在も未来も、一緒に生きるということです。

 『座頭ざとう』は、「遺体いたい」の本当の意味は、文字もじどおり「のこしたからだ」と教えています。

 遺体とは、自分がこの世に遺していった体、すなわち「」ということです。あなたは、あなたの祖先の遺体であり、ご両親の遺体なのです。あなたが、いま生きているということは、祖先やご両親の生命も一緒に生きているということを『座頭の木』は教えています。

まんが日本昔ばなし

座頭ざとう
放送日: 昭和51年(1976年)05月01日
放送回: 第0052話(第0030回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 馬郡美保子
文芸: 沖島勲
美術: 馬郡美保子
作画: 福田皖
典型: 奇譚きたん
地域: 東北地方(秋田県)


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最後に

 今回こんかいは、『座頭ざとう』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 供養くようとは、ものへの尊敬そんけいねんから、行動こうどう()と言葉ことば(くち)とこころ()の三種さんしゅ方法ほうほうによって供物くもつささげることをいます。『座頭ざとう』は、普段ふだんわすれがちな亡き者への感謝かんしゃおもすきっかけとなるとともに、どもに供養の意義いぎや亡き者にたいする感謝の念をおしえる物語ものがたりです。ぜひれてみてください!

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