昔話『雪女』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 ふゆ自然しぜんは、雪深ゆきぶか地域ちいき生活せいかつする人々ひとびとにとって、自然の猛威もういおそろしさをたりにする現実げんじつです。そんな雪国ゆきぐにらしと文化ぶんかからまれた民話みんわが『雪女ゆきおんな』です。

 今回こんかいは、『雪女』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『雪女ゆきおんな』の起源きげんふるく、室町時代むろまちじだい末期まっき連歌師れんがしである宗祇法師そうぎほうしによる『宗祇諸国物語そうぎしょこくものがたり』には、法師ほうし越後国えちごのくに (現在げんざい新潟県にいがたけん)に滞在たいざいしていたときに「雪女ゆきおんなた」と記述きじゅつがあることから、室町時代にはすで伝承でんしょうがあったようです。

 伝承地域でんしょうちいきは、青森県あおもりけん山形県やまがたけん秋田県あきたけん岩手県いわてけん福島県ふくしまけん新潟県にいがたけん長野県ながのけん東京都とうきょうと和歌山県わかやまけん愛媛県えひめけんなどで確認かくにんされています。

 「雪女」は、明治時代めいじじだい文豪ぶんごうであるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲こいずみやくも怪奇文学作品集かいきぶんがくさくひんしゅう怪談かいだん』で紹介しょうかいしたことにより日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 小泉八雲がしるした雪女もそうであるように、雪女はおそろしくもうつくしい存在そんざいとしてかたられることがおおく、ゆき性質せいしつからはかなさ・・・・連想れんそうさせられます。

 ちなみに、小泉八雲の『怪談』におさめられている「雪女」は、武蔵国むさしのくに西多摩郡調布村にしたまぐんちょうふむら(現在げんざい東京都青梅市とうきょうとおうめし)の多摩川たまがわ沿いにつたわる民話みんわをもとにしたとわれています。

 日本にっぽん伝説でんせつ奇談きだんせられたラフカディオ・ハーンこと小泉八雲こいずみやくもさんの傑作けっさく物語ものがたり伊勢英子いせひでこさんが絵本化えほんか現時点げんじてん購入こうにゅう可能かのう絵本えほんなかでは、こちらの偕成社かいせいしゃより出版しゅっぱんされている『雪女ゆきおんな (日本にっぽん童話どうわ名作選めいさくせんシリーズ)』が最高さいこう内容ないようだとおもいます。日本にっぽん独特どくとく幽玄ゆうげん世界せかい存分ぞんぶんえがいた、小泉八雲さんと伊勢英子さんの世界にまれます。
※Kindleばんはまったくのべつ内容ないようとなっています。ご注意ちゅういください。

 絵本えほんゆきおんな (むかしむかし絵本えほん 22)』はポプラしゃより出版しゅっぱんされています。朝倉摂あさくらせつさんのえが雪女ゆきおんな姿すがたは、こわいというよりもやさしい女性じょせいです。それが松谷まつたにみよさんのぶんかさなり、こころかれるほどうつくしい絵本となっています。

 講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされている『怪談かいだん奇談きだん (講談社こうだんしゃ学術がくじゅつ文庫ぶんこ)』は、いままでにおおくの翻訳ほんやく出回でまわっている『怪談かいだん』とは一線いっせんかくします。原拠げんきょてくるいまわしや表現ひょうげん活用かつようされているため、重厚じゅうこうかたぐちとなっているのが最大さいだい特徴とくちょうです。また、末尾まつびには小泉八雲こいずみやくもさんが実際じっさいんだと推定すいていされる原話げんわ本文ほんぶんがすべて翻刻ほんこくされています。

 『怪談かいだん (小泉八雲こいずみやくも怪奇かいき短編集たんぺんしゅう)』は偕成社かいせいしゃより出版しゅっぱんされています。表現ひょうげんやわらかく、漢字かんじにはかたしめすふりがながってあり、さらに注釈ちゅうしゃくいているため、古典文学こてんぶんがくむかし独特どくとく文体ぶんたい馴染なじみのないどもでもたのしめる内容ないようになっています。

あらすじ

 むかしむかし、さむきたくに茂作しげさく巳之吉みのきちという猟師りょうし親子おやこんでいました。

 あるふゆのこと、りの途中とちゅう突然とつぜん天気てんきわるくなったので、二人ふたり山小屋やまごやさむさをしのいでることにしました。

 二人が寝ていると山小屋のとびらひらき、吹雪ふぶきとともにしろ着物きものおんな小屋こやはいってきて、寝ていた茂作に白いいききかけました。すると茂作はこおってんでしまいました。

 女は巳之吉にも息を吹きかけようとしますが、
 「おまえはまだわかうつくしいから、いのちだけはたすけてやる。だが、今夜こんやのことをだれにもってはいけない」
と言いのこし、女は吹雪ふぶきなかえていきました。

 その日から、巳之吉は、だれともしゃべらなくなり、言葉ことばはっすることもなくなりました。

 それから数年後すうねんごのあるゆきよるひとりでくららす巳之吉のいえたたおとがしました。戸をけると、一人ひとりうつくしい女がっていました。その女は、たびの途中にみちまよってしまったので一晩ひとばんめてほしいと言うのです。巳之吉は、おゆき名乗なのるその女をすっかりってしまったので、よめにして一緒いっしょらしはじめました。

 お雪ははたらものでした。あさからばんまで、こまめによくはたらきました。同時どうじに、巳之吉もひとわったように、せっせとやまかけてよく働くようになりました。

 それから五年ごねんぎました。お雪は五人ごにんどもをみました。お雪にて、はだいろが白い子どもたちでした。巳之吉は子どもたちを、まるで宝物たからもののように大切たいせつにしました。いえなかには、いつもあかるいわらごえがあふれ、しあわせな毎日まいにちつづきました。

 ある吹雪の夜、巳之吉はさけって、お雪に茂作がくなった山小屋での出来事できごとはなしてしまいました。

 「あの日の雪女ゆきおんなはお前にそっくりだった」
と巳之吉が言うと、
 「お前が見た雪女はこのわたしです」
とお雪は告白こくはくし、
 「あのとき、私のことはだれにもはなさないと約束やくそくしたはずです。そして、ひとことでも私のことを話したら、お前の命はないとも言ったはずです」
 さらに続けて、
 「でも、命はうばいません。それは、あなたが子どもたちを大事だいじにしてくれるからです。これからも子どもたちを大切たいせつにしてください」
と言って、お雪は姿すがたしてしまいました。

 それからは、もう誰ひとりお雪を見かけた者はいませんでした。

解説

 『雪女ゆきおんな』は、『つる恩返おんがえ』や『浦島太郎うらしまたろう』とおなじく、「きんおかすと悲劇ひげきおとれる」というおはなしです。
 むかしばなしでの被害者ひがいしゃは、ほとんどの場合ばあい男性だんせいです。それも、いつも女性じょせい出生しゅっせい悲劇ひげきもとになっています。それは、「女性の過去かこあばいてはいけない」という教訓きょうくんなんでしょう。

 さて、『雪女』は地域ちいきによって「しがま女房にょうぼう」や「ユキオンバ」など様々さまざまかたがありますが、呼び方はちがえど、つねに“”をあらわす白装束しろしょうぞくにまとい、男につめたいいききかけて凍死とうしさせたり、男のせいすいいつくしてころしたりすところは共通きょうつうしていて、ひろく「ゆき妖怪ようかい」としておそれられています。

感想

 『雪女ゆきおんな』を恋愛れんあい物語ものがたりとみなすと、非常ひじょうせつない物語です。

 伝統的でんとうてき日本人にっぽん情念じょうねん世界せかいでは、雪女という異類いるい人物じんぶつにさえも人間的にんげんてき感情かんじょう付与ふよし、普通ふつう人間にんげん同一視どういつししています。

 しかし、この二人ふたり結婚けっこんは、破綻はたんすべく宿命しゅくめいづけられていたのです。では、なぜ破綻する運命うんめいにあるのかというと、異類の人物との婚姻こんいんというのはそもそも成立せいりつしてはならないものであるからです。

 その根底こんていには、人間がそうでないものとむすばれてはならないという不文律ふぶんりつ存在そんざいするからだとかんがえられます。

 そして、当人とうにん同士どうしあいっているにもかかわらず、けっしてむすばれてはならない関係かんけい、その悲劇性ひげきせいに日本人はかんじたのでしょう。

 人間は人間の領域りょういきえてはなりません。それは、その領域を超えた瞬間しゅんかんに、人間が人間ではなくなるからです。だから、巳之吉みのきちは雪女との約束やくそくやぶらなければならないのです。そして、この約束を破るという行為こういこそが人間であることのあかしなのです。

まんが日本昔ばなし

雪女ゆきおんな
放送日: 昭和50年(1975年)02月11日
放送回: 第0012話(第0006回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: りんたろう
脚本: 沖島勲
美術: 椋尾篁
作画: 矢沢則夫・森田浩光
典型: 怪異譚かいいたん異類婚姻譚いるいこんいたんん
地域: 関東地方(東京都)/東北地方(青森県・岩手県)/中部地方(新潟県)

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最後に

 今回こんかいは、『雪女ゆきおんな』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『雪女』は、“おそろしいおんな”であると同時どうじに、人間的にんげんてきよわさをった“あわれなおんな”でもあります。自分じぶんきんじたはなしかた巳之吉みのきち言葉ことばを、じっとかなければならなかったおゆきこころは、どれほどくるしかったことでしょうか。しかし、それが雪女の宿命しゅくめいなのです。最期さいごに雪女は“どもたちへのあい”をのこしてってゆきました。それが雪女にとって、せめてもの“こころすくい”だったのかもしれません。ぜひれてみてください!

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