昔話『たのきゅう』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
※当サイトのリンクには広告を含む場合があります

 『たのきゅう』とは、旅たび芝居しばいの人気にんき役者やくしゃの名前なまえです。ある日ひ、たのきゅうは、旅先たびさきで「母親ははおや、病気びょうき」との手紙てがみを受うけ取とります。急いそぎ故郷こきょうへ帰かえるたのきゅうは、その途中とちゅう、夜よるの山道やまみちでとても不ぶ気味きみな老人ろうじんに出会であいます。その老人ろうじんの正体しょうたいは……。

 今回こんかいは、『たのきゅう』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

落語絵本 たのきゅう 『たのきゅう』は、四国しこく地方ちほうに属ぞくする徳島県とくしまけんに伝つたわる民話みんわです。

 『たのきゅう』という名なの役者やくしゃの頓知とんち話ばなしで、落語らくごにも取とり上あげられている有名ゆうめいなお話はなしです。

 他たの昔むかしばなしと比較ひかくしても物語ものがたりが定型ていけい化かしており、似にたような内容ないようのお話はなしが極きわめて少すくないのが特徴とくちょうです。

 昭和しょうわ49年ねん(1974年ねん)に未來社みらいしゃより発行はっこうされた湯浅ゆあさ良幸よしゆき・緒方おがた啓郎けいろう・武田たけだ明あきらの『日本にっぽんの民話みんわ 19 阿波あわ篇へん』に「田野たの久兵衛きゅうべいさん」という題名だいめいで、徳島県とくしまけん小松島市こまつしましで採録さいろくされたお話はなしとして収録しゅうろくされたことにより日本中にっぽんじゅうに広ひろく知しられるようになりました。

 同おなじく未來社みらいしゃより昭和しょうわ53年ねん(1978年ねん)に発行はっこうされた市原いちはら麟一郎りんいちろうの『日本にっぽんの民話みんわ 39 土佐とさ篇へん』に「田能久たのきゅうの話はなし」という題名だいめいで収録しゅうろくされています。

 土佐とさ(現在げんざいの高知県こうちけん)も阿波あわ(現在げんざいの徳島県とくしまけん)と同おなじ四国しこく地方ちほうに属ぞくし、お話はなしもほぼ同おなじ展開てんかいを見みることから、徳島県とくしまけんの民話みんわの影響えいきょうを受うけているのではないかと推測すいそくされます。

 また、落語らくごにも類例るいれいがあり、展開てんかいがほぼ同おなじことから、こちらは民話みんわを脚色きゃくしょくして落おち噺ばなしに仕立したて上あげた可能かのう性せいが高たかいです。

 ちなみに、落語らくごでは「田能久たのきゅう」と表記ひょうきされる『たのきゅう』は、昭和の落語界らくごかいを代表だいひょうする六代目ろくだいめ 三遊亭圓生さんゆうていえんしょうが得意とくいとする演目えんもくの一ひとつです。

 絵本えほん『たのきゅう (落語絵本らくごえほん 七なな)』はクレヨンハウスから出版しゅっぱんされています。旅役者たびやくしゃの“たのきゅう”による町娘まちむすめや相撲すもうの力士りきし、タヌキなどの見事みごとな早変はやがわりと、壮大そうだいな大蛇退治だいじゃたいじが見みせ場ばです!『たのきゅう(落語絵本 七)』はワクワク楽たのしい冒険活劇ぼうけんかつげきの絵本えほんです。

 教育画劇きょういくがげきより出版されている絵本『たのきゅう (日本にっぽんの民話みんわえほん)』は、小沢正おざわただしさんの味あじのある語かたり口調くちょうの文ぶんと太田大八おおただいはちさんの上品じょうひんで美うつくしい絵えにより、ユーモラスな絵本に仕上しあがっています。

 徳島県とくしまけんは、四国地方しこくちほうのなかでも民間伝承みんかんでんしょうの豊ゆたかかな地方ちほうといわれています。『阿波あわの民話みんわ 第だい1集しゅう ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 8)』は、阿波地方あわちほうの豊かな民話を収録しゅうろくした貴重きちょうな一冊いっさつです。

 『土佐とさの民話みんわ 第だい1集しゅう ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 53)』は、「このままでは、私わたしたちの先祖せんぞが創つくりあげてきた民話みんわが消滅しょうめつしてしまう」と事態じたいを憂うれえた人ひとたちが「土佐民話とさみんわの会かい」を作つくり、埋うもれた民話を掘ほりおこし収録しゅうろくした大切たいせつな一冊いっさつです。

 CD『圓生百席えんしょうひゃくせき』は、昭和しょうわの落語界らくごかいを代表だいひょうする名人めいじんの一人ひとりと称しょうされる六代目ろくだいめ 三遊亭圓生さんゆうていえんしょうさんの古典落語こてんらくご大全集だいぜんしゅうシリーズです。ジャケットは写真家しゃしんかの篠山紀信しのやまきしんさんの手てによるものです。

 『落語魅捨理全集らくごミステリぜんしゅう 坊主ぼうずの愉たのしみ』は講談社文庫こうだんしゃぶんこから出版されています。落語らくごを文字もじで読よむという山口雅也やまぐちまさやさんの遊あそび心ごころから、「田能久たのきゅう」を含ふくむ愉快痛快奇天烈ゆかいつうかいきてれつな江戸噺えどばなし七編ななへんが収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、たのきゅうという旅たびの役者やくしゃがいました。

 ある日ひ、故郷こきょうの母ははの病やまいの知しらせを受うけ、親孝行おやこうこうのたのきゅうは大急おおいそぎで里帰さとがえりを始はじめます。

 その帰かえり道みち、夜よるの山道やまみちで怪あやししい大男おおおとこに出でくわします。
 「お前まえは何者なにものか」
と大男が聞きくので、震ふるえながら
 「たのきゅう」
と答こたえると、大男は“タヌキ”と聞き間違まちがえ、
 「タヌキなんぞ食くえるか」
といい、
 「タヌキなら何なにか化ばけてみせろ」
というので、たのきゅうは芝居しばいの道具どうぐを使つかって女おんなに変装へんそうすると、大男は驚おどろき
 「実じつは俺おれも化けておるんじゃ」
と、みるみるウワバミと呼よばれる大おおきなヘビに変かわりました。

 たのきゅうは震えあがりながらも、気きを紛まぎらわすために煙草たばこに手てを伸のばしました。
 するとウワバミは、
 「やめてくれ、わしは煙草の煙けむりが大嫌だいきらいなんじゃ!」
と叫さけびました。
 そして、ウワバミがたのきゅうに、
 「お前の嫌きらいな物ものはなんじゃ」
と聞くので、
 「私わたしは世よの中なかで小判こばんが一番いちばん嫌いです」
とたのきゅうは答えて、ウワバミと別わかれました。

 翌朝よくあさ、たのきゅうは昨夜さくやのことを村むらの人ひとたちに教おしえ、村人むらびとたちは煙草を吸すいながらウワバミ退治たいじへと出でかけました。これには、さすがのウワバミも七転八倒しちてんばっとうし、苦くるしみもがいて、息いきも絶たえ絶だえになってようやく逃にげ出しました。
 「これは、きっと、あのタヌキのせいに違ちがいない」
と怒おこったウワバミは、たのきゅうの家いえを探さがしあて、
 「性悪しょうわるタヌキめ、思おもい知しれ!」
と天窓てんまどから大量たいりょうの小判を投なげこんでいきました。
 「助たすけて~苦くるしい~」
と小判にまみれながら苦しむたのきゅうに、
 「ざまあみろ!」
と捨すて台詞ぜりふを残のこしてウワバミは去さっていきました。

 おかげで、たのきゅうは大金おおがね持もちになり、お母かあさんの病気びょうきも治なおって、幸しあわせしに暮くらしました。

解説

 『たのきゅう』のお話はなしの舞台ぶたいは、阿波国あわのくにの田能村たのむらと伝つたわります。

 お話の題名だいめいである『たのきゅう』は、田能村の百姓ひゃくしょうの久兵衛きゅうべえさんの通称つうしょうから由来ゆらいするもので、漢字かんじでは「田能久たのきゅう」と書かきます。

 阿波国は現在げんざいの徳島県とくしまけんに当あたりますが、田能村という村むらが存在そんざいしたという記録きろくは見みつかっていません。

 しかし、『たのきゅう』は特定とくていの地区ちくを舞台にした数少かずすくない民話みんわであり、田能村以外いがいの登場とうじょうする地名ちめいはすべて実在じつざいするものです。それから、徳島県とくしまけんの阿波地方あわちほうは昔むかしから芸能げいのうが盛さかんな土地柄とちがらで、「阿波人形浄瑠璃あわにんぎょうじょうるり」の本場ほんばでもあり、歌舞伎かぶきや文楽ぶんらくで上演じょうえんされる『傾城阿波けいせいあわの鳴門なると』の舞台でもあります。そのことから、芸達者げいたっしゃな久兵衛さんを「阿波人形浄瑠璃」や「阿波踊あわおどり」など芸能が盛んな土地柄の人ひとという筋立すじだてにするため、阿波国に架空かくうの田能村を持もってきた可能性かのうせいが考かんがえられます。

 また、主人公しゅじんこうが女装じょそうするというお話は、古ふるくはヤマトタケルの「熊襲くまそ征伐せいばつ」があります。女装や男装だんそうするお話は、印象的いんしょうてきだからでしょうか、記憶きおくに残のこるお話が多おおいのですが、実じつは神話しんわや昔むかしばなしの中なかに数多かずおおく存在そんざいするわけではありません。

感想

 ウワバミと呼よばれる大蛇だいじゃが、“たのきゅう”を“タヌキ”と勘違かんちがいしたことが、そもそもの事ことの発端ほったんです。

 それからは可笑おかしさの連続れんぞくです。

 たのきゅうはウワバミの変身へんしん要求ようきゅうに、役者やくしゃの衣装いしょうを用もちいて次つぎから次へと早変はやがわりをみせ、さらに頭あたまを働はたらかせて、最後さいごはまんまと小判こばんをせしめてしまいます。

 たのきゅうに庶民しょみんのしぶとさ、たくましさを感かんじるとともに、自分じぶんの弱点じゃくてんをポロっと漏もらしてしまうウワバミに、恐おそろしさよりも人ひとの良よさを感かんじて、親したしみが湧わいてきます。

まんが日本昔ばなし

『たのきゅう』
放送日: 昭和50年(1975年)01月21日
放送回: 第0006話(第0003回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 近藤英輔
脚本: 平見修二
美術: 小関俊一
作画: 金沢比呂司
典型: 異類退治譚いるいたいじたん・呪的勝負譚じゅてきしょうぶたん・頓智話とんちばなし・蛇譚へびたん
地域: 四国地方(徳島県)

 Amazonプライム・ビデオで、『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』へ、ひとっ飛とび。

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』の中なかから傑作けっさく101話わを厳選げんせんしました!

 国民的こくみんてきアニメーション『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』がDVDになりました!
 『たのきゅう』は未みDVD化かのため「VHS-BOX第だい1集しゅう 第2巻かん」で観みることができます。

最後に

 今回こんかいは、『たのきゅう』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 人気にんき役者やくしゃの“たのきゅう”による見事みごとな早変はやがわりとウワバミと呼よばれる大蛇だいじゃを退治たいじするという、わくわくして楽たのしい冒険ぼうけん物語ものがたりです。ぜひ触ふれてみてください!

おすすめの記事