昔話『さるかに合戦』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『さるかに合戦がっせん』は、よわものでも、おたがいに協力きょうりょくし、長所ちょうしょかしてかえば、たとえ自分じぶんよりずっとつよ相手あいてでもたおすことはできるということをおしえてくれるおはなしです。

 今回こんかいは、『さるかに合戦』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 江戸時代えどじだい五大昔話ごだいむかしばなしひとつで、通称つうしょう赤本あかほん”とばれる草双紙くさぞうしにも『さるかに合戦がっせん』は記録きろくされています。

 ちなみに、日本五大昔話は『桃太郎ももたろう』『カチカチやま』『さるかに合戦がっせん』『舌切したきすずめ』『花咲はなさじいさん』です。

 明治めいじ20ねん(1887年)に尋常小学校じんじょうしょうがっこう国定教科書こくていきょうかしょ尋常小学校読本じんじょうしょうがっこうどくほん 巻之二かんのに』に掲載けいさいされるなど、明治時代以後めいじじだいいご絵本えほんものひろしたしまれています。

 昭和時代末期以後しょうわじだいまっきいごは、かにさるなずに大怪我おおけがみ、敵討かたきうちされ反省はんせいした猿が蟹たちにあやま意地悪いじわるめると改作かいさくされたものがおおられます。

 芥川龍之介あくたがわりゅうのすけは、主犯しゅはんかに死刑しけいに、共犯者きょうはんしゃ無期徒刑むきとけい判決はんけつけるという、『さるかに合戦』の後日談ごじつだんである『猿蟹さるかに合戦かっせん』を大正たいしょう12年(1923年)に発表はっぴょうしています。

 現時点げんじてん購入可能こうにゅうかのうな『さるかに合戦がっせん』の絵本えほんなかでは、こちらが最高さいこうではないでしょうか。『さるかに合戦』は、暴力的ぼうりょくてき部分ぶぶんどもにどうつたえるかをおおかたにされますが、ぶん絶妙ぜつみょうなバランスで素晴すばらしい絵本に仕上しあがっています。

 最近さいきんの『さるかに合戦がっせん』の絵本えほんは、“残虐ざんぎゃく”な部分ぶぶん改作かいさくされたものがおおいようですが、こちらはむかしながらの民話みんわ内容ないようです。「わるいことをしたらむくいがある」と現代げんだいつたえるのにふさわしい内容ないよう絵本えほんです。

 “残虐ざんぎゃく”な部分ぶぶんがマイルドに改作かいさくされているので、いまよむならば一番いちばんおすすめな『さるかに合戦がっせん』の絵本えほんです。石崎洋司いしざきひろしさんの小気味好こきみよ文章ぶんしょうと、やぎたみこさんのダイナミックな見事みごとわさり、とてもがるあたらしい『さるかに合戦』の絵本です。

 昭和しゅわ10年代ねんだい一流いちりゅう日本画家にほんがかによってすみずみまで丹念たんねんえがかれた「講談社こうだんしゃ絵本えほん」が現代仮名遣げんだいかなづかいいで復刊ふっかんしました。『猿蟹合戦さるかにかっせん (しん講談社こうだんしゃ絵本えほん)』は、どもだましの絵本えほんとはちがい、挿絵さしえ専業せんぎょう画家がか先駆者せんくしゃといわれる井川洗涯いがわせんがいによるがとてもっていて、大人おとなたのしむことができる絵本です。

 大正時代たいしょうじだい文豪ぶんごう芥川龍之介あくたがわりゅうのすけは、古典こてんたくみに再構成さいこうせいすることを得意とくいとしていますが、『さるかに合戦がっせん』をもとにした短編たんぺんいています。そのも『猿蟹合戦さるかにかっせん』。芥川龍之介が母蟹ははがに敵討かたきうちをした子蟹こがにとその仲間なかまたちの残酷ざんこくな“その”をかたります。

あらすじ

 むかしむかし、かにがおにぎりをってあるいていると、ずるがしこさるひろったかきたね交換こうかんしようと提案ていあんをしました。
 「蟹さん、おにぎりはべてしまえばそれっきりだが、柿の種をまけばあまくて美味おいしい柿が毎年なんねんもなるよ」
と猿がいったので、蟹はおにぎりと柿の種を交換しました。

 蟹は大喜おおよろこびで早速さっそく
 「はやせ柿の種、出さねばハサミでちょんるぞ」
うたいながらにわに柿の種をまき、毎日まいにちみずをあげて大事だいじそだてました。

 種が成長せいちょうして柿がたくさんなると猿がやってきて、のぼれない蟹のわりに登ってってやるといい、柿の木に登ると自分じぶんだけ柿を食べはじめました。登れず柿の木のしたにいる蟹には、まだあおくてかたい柿のげつけました。柿の実を投げつけられた拍子ひょうしに蟹の甲羅こうられ、そのさい三匹さんびき子蟹こがにみ、母蟹ははがにはそのままんでしまいました。

 やがて大きくなった子蟹たちは、母蟹の敵討かたきうちをしようと決心けっしんし、くりはちうしふんうす一緒いっしょに猿のいえかいました。猿が留守るすあいだに家へしのり、栗は囲炉裏いろりなかかくれ、蜂は水桶みずおけの中に隠れ、牛の糞は土間どまに隠れ、臼は屋根やねに隠れました。

 猿がかえってきてからだあたためようと囲炉裏端いろりばたすわると、熱々あつあつけた栗が猿に体当たいあたりをして猿は火傷やけどいました。いそいでみずやそうと水桶みずおけちかづくと、今度こんどは蜂にされました。あわててそとげようとした猿は、牛の糞にすべってころび、最後さいごは屋根からちてきた臼につぶされて猿は死に、子蟹たちは見事みごとに親のかたきちました。

解説

 江戸時代えどじだいの『さるかに合戦がっせん』には、いまのような型通かたどおりで敵討かたきうちをするものはいだせません。そのわりに、たくさんの動植物どうしょくぶつ器物きぶつが敵討ちに参加さんかします。

 享保時代きょうほうじだい(1716~1736ねん)の『さるかに合戦』の絵本えほんには、へび、(海藻かいそうの) 荒布あらめきねうすたまご包丁ほうちょうはちが見えます。またおなころべつの絵本では、上記じょうき以外いがいはしたこ水母くらげなども登場とうじょうします。蛇や包丁なんて、ちょっと残酷ざんこくかんじがします。

 そして、ここで注目ここですべきは荒布あらめです。かたちこそちがえど、荒布は昆布こんぶ加工前かこうまえ姿すがたです。江戸時代では昆布が敵討ちの仲間なかまはいっていたということです。ただし、そこでたした役割やくわりについてはしるされていませんけど。

感想

 母蟹ははがにころされた子蟹こがにたちがさる復讐ふくしゅうすることがげがちですが、このはなし真髄しんずいは、猿とかにがおにぎりとかきたね交換こうかんする序盤じょばんこそが重要じゅうようてんであるとしめしているようにかんじます。

 おにぎりがしい猿は、蟹にたいして
 「柿の種はまけばになり柿のがたくさんなる」
付加価値ふかかち説明せつめいして物々交換ぶつぶつこうかんいたります。

 これは“目先めさき利益りえき”と“将来しょうらいの利益”の対比たいひとらえることができます。

 この時点じてんでは、柿の種よりおにぎりのほうが、すぐにおなかたし満足まんぞくられるため魅力的みりょくてきなものでした。しかし、あとになって柿の種はたくさん柿のをつけた成長せいちょうします。
 「こんなにたくさん柿の実がなるのなら、あのとき、おむすびと交換こうかんしなければよかった」
と猿はおもいます。
 これは時間じかん経過けいかとともに価値かち逆転ぎゃくてんしたということです。つまり、目先の利益より将来の利益の方が価値がたかいということを、猿はをもってまなんだのです。

 このお話では、柿の種が成長し見事みごとに柿をみのらせるという結果けっかたことで、目先の利益よりも将来の利益の方が価値が高くなりました。しかし、結果の良ししにかかわらず、結果以上いじょうあたらしい価値がここではまれました。

 それは、柿の種をそだてたという“過程かてい”の存在そんざいです。

 この過程の体験たいけんは、新しい価値といっていいのではないでしょうか。目先のことだけをかんがえれば、おむすびの消費しょうひ優先ゆうせんされますが、将来のことを考えれば、柿の種を育てるという投資とうしかせません。柿の種をどう育て、たくさん実をならせるかという過程も重要です。

 『さるかに合戦がっせん』は、目先の利益と将来の利益、さらに将来の利益という結果をるための過程、そのすべてが大事だいじであることをるきっかけとなるお話ではないでしょうか。

まんが日本昔ばなし

さるかに合戦がっせん
放送日: 昭和50年(1975年)01月21日
放送回: 第0005話(第0003回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 光延博愛
脚本: 平見修二
美術: 阿部行夫
作画: 三重野要一
典型: 因果応報譚いんがおうほうたん宝物交換譚たからものこうかんたん
地域: 中部地方(新潟県)

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最後に

 今回こんかいは、『さるかに合戦がっせん』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 「おこないをすれば良いむくいがあり、わるい行いをすれば悪い報いはある」という、仏教ぶっきょうおしえである因果応報いんがおうほうつたえる教訓きょうくんが『さるかに合戦』にはかくされています。「敵討かたきうちは残酷ざんこくなためどもの教育上きょういくじょう問題もんだいがある」というかんがえもありますが、あく徹底的てっていてきにやられたほうが「悪いことをしてはいけない」というこころがしっかりと子どもに根付ねづくとおもうので、ぜひれてみてください!

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