昔話『かっぱの淵』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 河童かっぱ人間にんげんかしいが、なんともひょうひょうとしていて、かろやかで痛快つうかいなおはなしが『かっぱのふち』です。

 今回こんかいは、『かっぱのふち』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『かっぱのふち』は、『カッパふち』や『メドツからの宝物たからもの』ともばれ、東北とうほく地方ちほうぞくする岩手県いわてけん青森県あおもりけん秋田県あきたけんつたわるおはなしです。

 「メドツ」とは、青森県あおもりけん南東なんとう位置いちする八戸はちのへ地方ちほう中心ちゅうしんもちいられる方言ほうげんで、かわいけにすむ伝説でんせつじょう妖怪ようかい河童かっぱ(カッパ)」のことを意味いみします。

 ちなみに、青森県あおもりけん西部せいぶ位置いちする津軽つがる地方ちほうでは、水虎すいこ大明神だいみょうじんという水神すいじん信仰しんこうする風習ふうしゅうがあります。ほこらまつられている水虎すいこ大明神だいみょうじん神像しんぞうは、河童かっぱをかたどったものがおおられ、水難すいなんけのかみとして地域ちいき人々ひとびとからはしたしみをめて「水虎すいこさま」とばれています。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。「かっぱのふち」のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい28かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『岩手いわて民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 2)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。『遠野物語とおのものがたり』に代表だいひょうされるように、日本にっぽんなかでも民話みんわゆたかにのこ地方ちほうとして、ふるくから関心かんしんをひいていたのが岩手県いわてけんです。きょうみやこ中心ちゅうしんとした中央ちゅうおう文化ぶんか伝搬でんぱんはばむ、きびしい地勢ちせいなかはぐくまれた「山伏やまぶしいし」「へびだま」「カッパのふち」などの独特どくとく民話みんわが39へん収録しゅうろくされています。

 『日本にっぽん民話みんわ 2 (自然しぜん精霊せいれい)』は、角川かどかわ書店しょてんから出版しゅっぱんされています。瀬川せがわ拓男たくおさん・松谷まつたにみよさんが編者へんしゃとなり、「うみみずはなぜからい」「大沼おおぬまいけ黒竜こくりゅう」「かっぱのふち」など日本にっぽんむかしばなしから“自然しぜん精霊せいれい” を主題しゅだいとした伝説でんせつが63ぺん収録しゅうろくされています。

 『[新装版しんそうばん] 遠野物語とおのものがたり』は、新潮社しんちょうしゃから出版しゅっぱんされています。日本にほん民俗学みんぞくがくのメッカといわれる遠野とおのきょうは、現在げんざい岩手県いわてけん遠野市とおのし周辺しゅうへんにあたります。その遠野とおの地方ちほうには、いまなおかたつたえられている民間みんかん信仰しんこう異聞いぶん怪談かいだん数々かずかずがあり、それらを採集さいしゅう整理せいりし、古語こご独特どくとく流麗りゅうれい文体ぶんたいつづったものが『遠野物語とおのものがたり』です。柳田やなぎた國男くにお先生せんせいあい情熱じょうねつ行間ぎょうかんにあふれる、民俗みんぞく洞察どうさつ名著めいちょといっても過言かごんではありません。山本やまもと健吉けんきち吉本よしもと隆明たかあき三島みしま由紀夫ゆきおによる解説かいせつ収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、陸奥国の八戸の北に、八太郎沼という、ひっそりとした沼がありました。

 ある日、男が八太郎沼の淵を通りかかると、沼底から水がわき、一人の若者が現れ、
 「おまえ、どこへ行く」
と尋ねてきました。

 「おいら、八戸の町へ行くところだ」
と男が答えると、
 「この手紙を、勘太郎堤に住む私の友達に届けて欲しい。勘太郎堤で手を三度叩けば友達が現れる」
と言い、若者は男に手紙を差し出しました。

 男は、淵から出てきた若者のことを不審に思いながらも了承し、受け取った手紙を懐に入れて、若者の友達が住む勘太郎堤へ向かいました。

 途中、男は山伏が歩いていたので、
 「勘太郎堤はどこですか」
と尋ねたら、山伏は怪訝な顔をしながら、
 「めったに人が行かない場所だ。行くのはやめておけ」
と男に伝えました。

 そして、山伏は男を見て、考えながら、
 「おぬしの持っている手紙からただならぬ殺気を感じる」
とも男に伝えました。

 驚いた男は、八太郎沼の淵での出来事を山伏に話しました。

 それを聞いた山伏は、
 「手紙をワシにみせろ」
と男に言いました。

 男から渡された手紙を山伏が開いてみると、手紙は真っ白で何も書いてありませんでした。

 しかし、山伏が手紙を小川の水につけると、
 「この男はうまそうだから、とっ捕まえて喰ってしまえ」
という文字が浮かび上がりました。

 「これは河童の手紙だ。手紙を書き換えてやる」
と男に伝えると、かぼちゃの茎を筆にして山伏は手紙を書き始めました。

 「この男にお前の宝物をやってくれ」
と手紙を書き変えた山伏は、新しい手紙を男に渡すと去っていきました。

 山伏と別れた男は、新しい手紙を懐に入れると、また勘太郎堤へ向かいました。

 タンタンタン
 男は勘太郎堤に着くと、若者に教えられた通りに三度手を叩きました。

 すると、どこからともなくなりのいい若衆が現れたので、男は手紙を渡しました。

 手紙を読んだ若衆は、不思議そうな顔をしながら、
 「一代物がいいか、それとも二代物か」
と男に尋ねました。

 二よりも一の方が良いだろうと思った男は、
 「一代をお願いします」
と若衆に伝えました。

 すると若衆は、
 「これは、いくらでも米の出てくる石の挽臼だ」
と言って、男に石の挽臼を渡すと姿を消しました。

 若衆に言われた通り、この臼を回すと、ぞろぞろとお米が出てきました。

 そして、男の暮らしはみるみる良くなり、長者と呼ばれるほどのお金持ちになりました。

 男は、立派な家や蔵を建て、きれいなお嫁さんももらいました。

 しかし、男のお嫁さんは欲深く、もっと米を出してやろうと、臼の穴に火箸を入れてえぐり回しました。

 すると、臼は怒って、隣の出羽国へ飛んでいってしまいました。

 にわか長者はにわか乞食。
 男の繁栄は一代で終わってしまいました。

 さて、石の挽臼が飛んできた出羽国はというと、いまも臼は土の中で回り続けており、それで現在の秋田県は米どころになったそうです。

解説

 馬淵川まべちがわながれる青森県あおもりけん八戸市はちのへし北側きたがわ地域ちいきには、八太郎はったろうという地名ちめいがあります。

 そのしめとおり、かつてこの地区ちくは「八太郎はったろうぬま」や「きたぬま」などの沼地ぬまち大半たいはんでしたが、現在げんざいてにより姿すがた一変いっぺんしています。

 そして、八太郎はったろうぬまには、『はち太郎たろう大蛇だいじゃ伝説でんせつ』として東北とうほく地方ちほう北部ほくぶかたがれている大蛇だいじゃ伝説でんせつのこります。

 現在げんざい青森県あおもりけん東部とうぶ位置いちする八戸市はちのへし十日市とおかいちんでいたおふじというむすめと、同市どうし八太郎はったろうぬまんでいた大蛇だいじゃあいだおとこまれ、はち太郎たろうづけられました。
 やがて、青年せいねんになったはち太郎たろうは、シナのかわぎに仲間なかまやまはいったが、途中とちゅう谷川たにがわつかまえたイワナを三匹さんびきべたところ、なぜか異常いじょうのどかわいたので、きとめたかわみずつづけました。
 すると、大蛇だいじゃになってしまいました。
 その大蛇だいじゃとなったはち太郎たろうは、谷間たにまみずめて青森県あおもりけん秋田県あきたけんにまたがる十和田湖とわだこつくり、そのぬしとなりました。

 古来こらい馬淵川まべちがわさい下流かりゅう位置いちする八太郎はったろう地区ちくは、しばしば洪水こうずいわれてきました。『はち太郎たろう大蛇だいじゃ伝説でんせつ』は、水害すいがいによる天変てんぺん地異ちい大蛇だいじゃえ、あばれる大蛇だいじゃしずめようと難題なんだい解決かいけつした人々ひとびとと、治水ちすい歴史れきし物語ものがたりでもあります。

 また、通称つうしょう勘太郎かんたろうづつみ」とばれるおおきな貯水ちょすいの「類家るいけづつみ」も、現在げんざいてられ消滅しょうめつしています。

感想

 日本にっぽんではとても有名ゆうめい伝説でんせつ妖怪ようかいといえば、天狗てんぐおに、そして河童かっぱではないでしょうか。

 ところが、不思議ふしぎなことに河童かっぱは、天狗てんぐおにとはちがいい、近代きんだいにいたるまで日本にっぽん各地かくち目撃もくげきだん非常ひじょうおおいのが特徴とくちょうです。

 これは、河童かっぱ目撃もくげきだん動物どうぶつ行動こうどう関係かんけいしているからではないでしょうか。

 想像そうぞうするに、水辺みずべにいたサルやリス、カモシカなどの昼行性ちゅうこうせい動物どうぶつとカワウソやタヌキ、ヤマネコなどの夜行性やこうせい動物どうぶつを、河童かっぱあやまった可能性かのうせいかんがえられます。

 日本人にっぽんじんは、身近みじか自然しぜん動物どうぶつしたしみ、それらと共生きょうせいしてきました。

 それにくわえて、東北とうほく地方ちほうは、本州ほんしゅうでも屈指くっしさむさをほこるとても過酷かこく自然しぜん環境かんきょうにあります。

 その“東北とうほくらしさ”とばれる風土ふうどにもまれながら、現代げんだいにも通用つうようする独特どくとく創造そうぞうりょくはぐくまれ、そのゆたかな感性かんせいから河童かっぱしたとかんがえられます。

まんが日本昔ばなし

かっぱのふち
放送日: 昭和52年(1977年)06月25日
放送回: 第0146話(0090 Aパート)
語り: 不明
出典: 不明
演出: 漉田実
文芸: 漉田実
美術: 下道一範
作画: 上口照人
典型: 怪異譚かいいたん致富譚ちふたん河童譚かっぱたん
地域: 東北地方(岩手県)

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最後に

 今回こんかいは、『かっぱのふち』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 東北とうほく地方ちほう北部ほくぶかたがれている大蛇だいじゃ伝説でんせつには、河童かっぱ伝説でんせつ長者ちょうじゃ伝説でんせつのこでもありました。それが『かっぱのふち』です。ぜひれてみてください!

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