昔話『宝の下駄』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『たから下駄げた』とは、いてころぶと、そのたびに小判こばんてくるという不思議ふしぎちからった下駄げたです。ただし、ころんだかずだけ小判こばんてきますが、すこしずつちぢんでしまいます。

 今回こんかいは、『たから下駄げた』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『たから下駄げた』は、中国ちゅうごく地方ちほうぞくする岡山県おかやまけん北西ほくせい端部たんぶ位置いちする新見市にいみしつたわる民話みんわといわれていますが、こころやさしい孝行こうこうもの福徳ふくとくさずかり、よくぶかものにはばつくだされるという内容ないよう類似るいじのおはなしは、西にし日本にほんひろ分布ぶんぷしています。

 とくに、福岡県ふくおかけん中央部ちゅうおうぶ位置いちする田川郡たがわぐん添田町そえだまちでは、県内けんない唯一ゆいいつ神宮じんぐうで、古来こらいよりかみやまとして信仰しんこうされてきた英彦山ひこさん鎮座ちんざする英彦山ひこさん神宮じんぐうつたわる『ごんざむし』というだいしたしまれています。

 ちなみに「ごんざむし」とは、こめにつくコクゾウムシのことです。

 絵本えほんたからげた (日本にっぽん民話みんわえほん)』は、教育きょういく画劇がげきから出版しゅっぱんされています。「すってんころりん ちんちゃらりん」という擬音ぎおんたのしい絵本えほんです。香山こうやま美子よしこさんのみやすくテンポのぶんと、ちょう新太しんたさんのあじのある素敵すてきにより、孝行こうこうもの欲張よくばりなものという対照たいしょうてきもの同士どうしが、どもでも理解りかいできるよう、とてもかりやすくえがかれています。いかにも日本にっぽんむかしばなしという絵本えほんです。

 絵本えほんたからげた (日本にっぽんみんわ絵本えほん)』は、ほるぷ出版しゅっぱんから出版しゅっぱんされています。小野おの和子かずこさんのぶん福田ふくだ庄助しょうすけさんのは、人間にんげんよくふかさをコミカルにえがいていて、ともすると教訓きょうくんになりがちな物語ものがたりたのしく展開てんかいしていきます。“ザ・日本にっぽんむかしばなし”なのに、まったくふるさをかんじさせず、「やっぱり王道おうどう物語ものがたりはいいな~」とおもわせる絵本えほんです。

 オンデマンドばん岡山県おかやまけん民話みんわ (県別けんべつふるさとの民話みんわ)』は、偕成かいせいしゃから出版しゅっぱんされています。ふる歴史れきしと、温暖おんだん自然しぜんめぐまれた備前びぜん平野へいや吉備きび高原こうげん舞台ぶたいに、「もも太郎たろう」や「一本いっぽんあしのげた」など、勇気ゆうき知恵ちえはたらかせて大蛇だいじゃおになどを相手あいて活躍かつやくする主人しゅじんこうたちの民話みんわが33ぺん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、母親ははおや息子むすこ二人ふたりらしていました。

 いえまずしかったのですが、大変たいへん母親ははおやおもいのやさしい息子むすこは、さかちが得意とくいで、いつもさかあるきをして、母親ははおやたのしませていました。

 ある母親ははおやおも病気びょうきになったので、くすりうおかね必要ひつようになりました。

 「このままでは、おかあさんがんでしまう。おかねちの権造ごんぞうおじさんからおかねりよう」
おもった息子むすこは、権造ごんぞうおじさんのところへかけてき、おかねりてきました。

 やがて、りたおかね使つかたしてしまったので、息子むすこは、また権造ごんぞうおじさんのところへおかねりにきました。

 「おまえみたいなりたまんまでかえすあてもないものに、もうかねすことはできん」
権造ごんぞうおじさんはつよ口調くちょうい、おかねしてくれませんでした。

 息子むすここまてて、しょんぼりしながらも得意とくいさかあるきをしながら、権造ごんぞうおじさんのいえからかえっていると、いつのまにかむら鎮守ちんじゅさままえていました。

 「鎮守ちんじゅさま、なにかあんさずけてください」
息子むすこはおまいりをし、そのすわむと、つかれがて、うとうとねむってしまいました。

 カラーン カラーン
 カラーン カラーン
どこからともなく、ゲタのおとが、息子むすこちかづいてきました。

 そして、ひとりの老人ろうじんあらわれました。

 老人ろうじんは、
 「この下駄げたをおまえさんにやろう。この下駄げたいてころべば、ころぶたびに小判こばんてくる。しかし、ころぶたびにひくくなる。だから、やたらところぶではないぞ」
って、息子むすこ一本いっぽん下駄げたわたすと、パッと姿すがたしてしまいました。

 ました息子むすこは、鎮守ちんじゅさまげると、賽銭さいせんばこまえに、一本いっぽん下駄げたいてありました。

 息子むすこは、おっかなびっくり、ためしにゲタをいてみました。ところが、一本いっぽん下駄げたなので、つかたないかのうちに、すってんところんでしまいました。

 「いててててえ」
息子むすこったとたん、チャリーンとおとがして、小判こばん一枚いちまいてきました。

 「本当ほんとう小判こばんてきた。鎮守ちんじゅさま、ありがとうございます。これで、おかあさんのくすりうことができます」
息子むすこ何度なんど何度なんどもおれいうと、下駄げたをかかえておおよろこびでいえかえりました。

 いえかえった息子むすこは、早速さっそく母親ははおやまくらもとで、下駄げたいてころんでみせると、また小判こばん一枚いちまい、チャリーンとてきたので、母親ははおやおどろくやらよろこぶやら、家中うちじゅうもうおおさわぎとなりました。

 息子むすこ母親ははおやに、昼間ひるま出来事できごとはなしてかせると、母親ははおやなみだながしながら、鎮守ちんじゅさま方角ほうがくわせておれい何度なんどいました。

 そして、
 「小判こばん一枚いちまいではくすりとおこめい、もう一枚いちまい権造ごんぞうおじさんにかえしてきなさい」
母親ははおや息子むすこうと、下駄げた宝物たからものとして神棚かみだなまつりました。

 息子むすこ権造ごんぞうおじさんのところへき、おかねかえすと、権造ごんぞうおじさんはおかねどころをしつっこくいてきました。

 しかたなく下駄げたのことをはなすと、
 「いままで、おまえたちにしてやったかねかえさなくていい。そのわり、その下駄げたをワシによこせ」
うと、息子むすこいえにやってて、無理むりやり下駄げたっていってしまいました。

 いえもどった権造ごんぞうおじさんは、家中うちじゅうめると、おおきな風呂ふろしきひろげました。

 そして、その風呂ふろしきうえ下駄げたき、
 「まずは、ひところび」
って、権造ごんぞうおじさんはすってんところびました。

 すると、チャリーンと小判こばん一枚いちまいてきました。

 「おおっ、小判こばんじゃ、小判こばんじゃ」
権造ごんぞうおじさんはうと、それからは小判こばんしいので、夢中むちゅうになってころびました。

 「小判こばんがだんだんおおきくなっている。ワシよりおおきくなっている。ワシは日本にっぽんいちおお金持がねもちじゃあ」
興奮こうふんしながらおおごえさけ権造ごんぞうおじさんは、ころぶたびに自分じぶんちいさくなっていることに、まったくがついていませんでした。

 下駄げたってかれた息子むすこは、
 「権造ごんぞうおじさんは、どうしているだろう」
心配しんぱいおもいながら、権造ごんぞうおじさんのいえにやってました。

 けようとしても、きません。息子むすこちからまかせにけると、なかから大量たいりょう小判こばんがジャラジャラとながてきました。そして、権造ごんぞうおじさんのいえなかには、びっくりするほどの小判こばんが、やまのようにもっていました。

 小判こばんしのけていえなかはいった息子むすこは、権造ごんぞうおじさんをさがしましたが、姿すがたはどこにもたりませんでした。

 「権造ごんぞうおじさんは、どこへってしまったのかな」
息子むすこさがつづけると、部屋へやすみなにやらちいさいものがうごいているのにがつきました。

 「もしかして、ころぎてあんなのになってしまったのか」
おもいながら、かがみみ、よくてみると、やはり権造ごんぞうおじさんでした。

 「こんなにちいさくなってしまうと、もう下駄げた使つかえないし、小判こばんもいらないね」
息子むすこ権造ごんぞうおじさんにつたえると、下駄げた小判こばんっていえかえりました。

 権造ごんぞうおじさんはというと、ピョコンピョコンとうごいていたかとおもったら、そのうちにとうとうちいさなむしになってしまい、どこかへんでいってしまいました。

 これが「ごんぞうむし」の名前なまえ由来ゆらいです。

 さて、いえもどった息子むすこは、かえったおかねで、母親ははおやうで医者いしゃせることができたので、母親ははおや病気びょうきもすっかりよくなり、のちのちまでしあわせにらしたとのことです。

解説

 古代こだい中国ちゅうごく書物しょもつ老子ろうし』に、

 「るをる」

という言葉ことばがあります。

 これは、

 「人間にんげん欲望よくぼうにはりがなく、その欲望よくぼうかなった瞬間しゅんかん満足まんぞくしても、その満足まんぞく長続ながつづきせず、つぎ欲望よくぼうがわいてくる」

といった意味いみです。

 ところが、実際じっさいには、

 「るをものみ、つとめておこなものこころざしり」

つづくことから、老子ろうしは、けっしてやる向上こうじょうしん否定ひていしているのではなく、まずは自分じぶんのことをよく理解りかいし、いまあるそのものに満足まんぞくすることの大切たいせつさを示唆しさしているとかんがえられます。

 そして、ただたん欲望よくぼうおさえて、ほどほどのところで現状げんじょう妥協だきょうするという消極しょうきょくてきなことではなく、積極せっきょくてきるをって、しん満足まんぞくもとめることの大切たいせつさも示唆しさしているとかんがえられます。

 さて、『たから下駄げた』では、「るをる」を権造ごんぞうおじさんが登場とうじょうします。

 そこからも、『たから下駄げた』は、きているかぎ欲望よくぼうはつきることがなく、なくすことはできないので、欲望よくぼうをなるがままに肥大ひだいさせるのではなく、ただしくコントロールして「るをる」なかにしあわせをつけるということの大切たいせつさをいているとかんがえられます。

感想

 ねがごとかなえてくれるものは、現実げんじつ生活せいかつきびしければきびしいほど魅力みりょくてき存在そんざいです。

 『たから下駄げた』に登場とうじょうする一本いっぽん下駄げたは、ころぶたびに小判こばんてくるという不思議ふしぎ下駄げたです。

 ただし、ころびすぎると自分じぶん自身じしんちいさくなってしまいもともどらないという条件じょうけんきです。

 ケチな権造ごんぞうおじさんは、この下駄げた無理むりやりうばり、何度なんどころんでどっさり小判こばんにしますが、からだむしほどのおおきさになってしまいました。

 おかね使つかってこそ価値かちがあるものであり、また本当ほんとう必要ひつようとするだけあれば十分じゅうぶんだということでしょう。

まんが日本昔ばなし

たから下駄げた
放送日: 昭和52年(1977年)01月15日
放送回: 第0110話(0067 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 小林三男
文芸: 沖島勲
美術: 竹内靖明
作画: スタジオアロー
典型: 呪宝譚じゅほうたん
地域: 中国地方(岡山県)/九州地方(福岡県)

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最後に

 今回こんかいは、『たから下駄げた』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 老子ろうしおしえに「るをる」というものがあります。人間にんげん欲望よくぼうにはきりがありませんが、よくぶかくならず、ぶん相応そうおうのところで満足まんぞくすることができるものは、こころんでゆたかであるといているおはなしが『たから下駄げた』です。ぜひれてみてください!

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