昔話『イワナの怪』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 底そこ無なしの淵ふちから、巨大きょだいイワナが静しずかに浮うかび上あがる
 『イワナの怪かい』は、楽らくをして儲もうけるために「根流ねながし」と呼よばれる漁法ぎょほうを計画けいかくした木きこりたちが、それを注意ちゅういする僧侶そうりょの警告けいこくを無視むしして根流しを強行きょうこうした結果けっか、因果応報いんがおうほうの結末けつまつを迎むかえることになる物語ものがたりです。

 今回こんかいは、『イワナの怪』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

 『イワナの怪かい』は福島県南会津郡南会津町ふくしまけんみなみあいづぐんみなみあいづまちの水無川みずなしがわが舞台ぶたいのお話はなしです。

 物語ものがたりに登場とうじょうする僧侶そうりょは、「岩魚いわな坊主ぼうず」と呼よばれ、大おおきな岩魚いわなが化ばけた日本にっぽんの妖怪ようかいです。

 「岩魚坊主」は、江戸時代えどじだいの随筆ずいひつ『想山著聞奇集しょうざんちょもんきしゅう』に美濃国恵那郡みののくにえなぐん(現在げんざいの岐阜県中津川市ぎふけんなかつがわし・恵那市えなし)の伝承でんしょうの記述きじゅつがあるほか、福島県ふくしまけんや東京都とうきょうとなど、日本各地にっぽんかくちの伝承でんしょうに登場とうじょうします。

 また、僧侶に化ける魚さかなもイワナに限かぎらず、ヤマメ、ウナギなどのお話も存在そんざいします。

 大正たいしょう7年ねん(1918年)に中央公論ちゅうおうこうろんに掲載けいさいされた田中貢太郎たなかこうたろうの『魚さかなの妖よう・蟲むしの怪かい』という怪談話かいだんばなしで「岩魚いわなの怪かい」を取とり上あげたことにより、このお話は注目ちゅうもくを浴あびることになります。

 昭和しょうわ49年(1974年)に未來社みらいしゃより発行はっこうされた片平幸三かたひらこうぞうの『日本にっぽんの民話みんわ 3 福島篇ふくしまへん』に、南会津みなみあいづ地区ちくのお話として「いわなの怪」が収録しゅうろくされたことで、日本中にっぽんじゅうで広ひろく知しれ渡わたるようになりました。

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『イワナの怪かい』のお話はなしは『まんが日本昔ばなし 12巻かん』の中なかに収録しゅうろくされています。

 未來社みらいしゃより出版しゅっぱんされている『福島ふくしまの民話みんわ 第だい1集しゅう ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 13)』は、片平幸三かたひらこうぞうさんが編者へんしゃとなり、福島県ふくしまけんの地域性ちいきせい豊ゆたかな民話みんわ63篇ぺんとわらべうたが収録しゅうろくされています。

岩魚の怪
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 田中貢太郎たなかこうたろうさんの怪談話かいだんばなし『岩魚いわなの怪かい』は電子書籍でんししょせきで読よむことができます。谷川たにがわの淵ふちに毒どくを流ながして魚さかなを獲とる男おとこたちのお話はなしです。不気味ぶきみな僧侶そうりょから「やめなされ」と言いわれても、男たちは無視むしして漁りょうを続つづけたことで、思おもいもよらぬ結末けつまつを迎むかえることになります。

あらすじ

 むかしむかし、ある夏なつのこと、南会津みなみあいづの山奥やまおくに、水無川みずなしがわという川かわが流ながれておりました。その水無川の上流じょうりゅうでは、四人よにんの木きこりたちが山やまへ入はいり、山小屋やまごやに泊とまりがけで木を切きっていました。

 暑あつさが続つづき仕事しごとに疲つかれた彼かれらは、明日あすは仕事を休やすんで魚さかなを獲とることにしました。そして、できるだけ楽らくをして儲もうけようと、「根流ねながし」という方法ほうほうで魚を獲ることにしました。

 「根流し」というのは、山に自生じせいする毒どくを含ふくんだ木きの根ねや植物しょくぶつを煮にたりすり潰つぶしたりして、「根ね」と呼よばれる毒液どくえきを作つくり、それを川かわに流ながして、仮死状態かしじょうたいとなった大量たいりょうの魚を一気いっきに獲る方法です。

 早速さっそくその晩ばん、小屋こやへ帰かえり、木の根や葉はっぱなどをいっしょに潰して鍋なべで煮にて、「根」を作っていると、山奥にもかかわらず、谷川たにがわの方ほうから、一人ひとりの僧侶そうりょが現あらわれ、木こりたちの方ほうへやって来きました。
 「川に毒を流せば小魚こざかなまで死しんでしまう。人間にんげんの子こどもが殺ころされると思おもってみなさい。惨むごいことはやめなされ」
と僧侶は木こりたちに説教せっきょうを始はじめました。

 木こりたちは、この僧侶を気味悪きみわるく思おもいました。

 そこで、木こりの一人が、
 「お坊ぼうさん、団子だんごでも食くわねえか」
と僧侶に言いって、持もっていたキビ団子を僧侶に差さし出だしました。
 そして続つづけて、
 「お坊さんの言いう通とおり、明日あすの『根流し』は止やめよう」
と仲間なかまたちを説得せっとくしました。

 それを聞きいて、僧侶はすっかり安心あんしんしたか、深々ふかぶかと木こりたちに頭あたまを下さげると、元もと来きた道みちを引ひき返かえしていきました。

 しかし、木こりたちは根流しを止めるつもりはさらさらなく、翌朝よくあさになるとすぐに根を川に流し大量のイワナを獲り始はじめました。

 大漁たいりょうに気きを良よくした木こりたちは、もっと大おおきな魚を獲ろうと、川の上流へ向むかいました。

 上流は「底無そこなしの淵ふち」と呼よばれ、普段ふだんは誰だれも近寄ちかよらないような場所ばしょでした。

 勢いきおい任まかせに、底無しの淵に向むかって残のこった根をすべて流し始めました。

 やがて、魚がプカプカと浮ういてきました。並なみの大きさイワナのみならず、見みたこともないほど巨大きょだいなイワナが白しろい腹はらを見せて浮かび上あがってきました。

 その夜よ、浮かれた木こりたちが、巨大なイワナの腹を割さいてみると、ポロポロと団子が出でてきました。

 昨夜さくやの僧侶は、この巨大イワナが化ばけていたのだと木こりたちが察さっしたとたん、「根流し」の中止ちゅうしを提案ていあんした木こりはバッタリと倒たおれて動うごかなくなりました。それを見た他たの者ものたちは、恐怖きょうふにかられてその場ばから逃にげ出しました。

 やがて川の水みずはきれいに戻もどり、魚も住すめるようになりましたが、この不思議ふしぎな話はなしはいまも人々ひとびとに語かたり継つがれています。

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解説

 日本各地にっぽんかくちに『イワナの怪かい』の類話るいわが存在そんざいしますが、それらに共通きょうつうしているのは、年老としおいた巨大きょだいな魚さかなが僧侶そうりょに化ばけるという点てんと、その僧侶に人間にんげんが食事しょくじを振ふる舞まい、気きをよくして僧侶は帰かえるという点です。

 そして、人間が獲とった巨大な魚のお腹なかを割さき、そこから人間が僧侶に食たべさせたものが出でてくることから、ここで僧侶と魚を同一視どういつしさせるので、最後さいごには必かならず死しんでしまう、ちょっと可哀想かわいそうな妖怪ようかいという点です。

 ちなみに、「根流ねながし」とは、海うみや河川かせんなどに毒どくを撒まいて魚さかなを獲る漁法ぎょほうです。「毒どくもみ」とか「毒流どくながし」とか呼よぶ地方ちほうもあります。

 淡水たんすい・海水かいすい問とわず、「根流し」に関かんしては世界中せかいじゅうで歴史上れきしじょうの様々さまざまな文章ぶんしょうに記しるされていて、植物しょくぶつの毒どくを漁りょうに使つかうことは人類じんるいの歴史れきしの中なかで非常ひじょうに古ふるい習慣しゅうかんです。

 日本にっぽんでは、昭和しょうわ26年ねん(1951年)施行しこうの「水産資源保護法すいさんしげんほごほう 第六条だいろくじょう」で、調査ちょうさ研究けんきゅうのため農林水産大臣のうりんすいさんだいじんの許可きょかを得えた場合ばあいを除のぞいて禁止きんしされています。

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感想

 私わたしたちの社会しゃかいにはさまざまな「決きまり」が存在そんざいします。この「決まり」は、私たちの社会をうまく成なり立たたせ、動うごかしていくうえで欠かかすことのできない仕組しくみです。

 仏教ぶっきょうにも、お釈迦様しゃかさまが定さだめられた「戒律かいりつ」と呼よばれる決まり事ごとがあります。その中なかでも、あらゆる命いのちあるものの「命いのちを奪うばってはいけない」という「不殺生戒ふせっしょうかい」は、仏教の戒律の中では最もっとも重要じゅうようなものの一ひとつです。

 この戒律の元もとになっているものは、「自分じぶんがされて嫌いやなことは、他たにしてはならない」という倫理りんりです。

 一方いっぽう、私たちが生いきるためには、他たの生命せいめいを犠牲ぎせいにしなければなりません。

 それを仏教では、その自覚じかくに持もって、戒かいを破やぶらなくては生いきられない自分じぶんの存在そんざいと、生かされている命の意味いみを知しり、自らの生き方かたを省かいまみて、より良よい生き方を求もとめていくと教おしえています。

 現代社会げんだいしゃかいに目めを向むけると、近年きんねん、あまりにも簡単かんたんに人ひとの命を奪う、凄惨せいさんな事件じけんが増ふえています。

 自分が作つくり上あげた身勝手みがってな理由りゆうで、何なんのためらいもなく他人たにんの命を奪い、その上うえ、死刑しけいになることもいとわない。

 他人の命は言いうに及およばす、自らの命でさえ軽かろんじるような兆きざしがある今いまの社会には、『イワナの怪かい』のような昔話むかしばなしを通とおして、不殺生ふせっしょうの教おしえの重要性じゅうようせいが増ましていると感かんじます。

まんが日本昔ばなし

『イワナの怪かい』
放送日: 昭和51年(1976年)07月17日
放送回: 第0068話(第0041回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 小林三男
文芸: 沖島勲
美術: 末永光代
作画: 福田皖
典型: 怪異譚かいいたん
地域: 東北地方(福島県)

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 『イワナの怪かい』は「DVD-BOX第だい1集しゅう 第だい5巻かん」で観みることができます。

最後に

 今回こんかいは、『イワナの怪かい』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 人間にんげんの欲よくと愚おろかさを描えがいた『イワナの怪かい』は、とても考かんがえさせられる昔むかし話ばなしです。ぜひ触ふれてみてください!

岩魚の怪
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