昔話『七夕さま』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 星ほし空ぞらの恋こい物語ものがたりが紡つむぐ永遠えいえんの絆きずな
 『七夕たなばたさま』は、人間にんげん界かいの男おとこと天女てんにょが出で会あい、恋こいの喜よろこびと別わかれの悲かなしみを描えがいています。そして、天あまの川かわの形成けいせいと年ねんに一度いちどの「七夕たなばた」に再会さいかいする男おとこと天女てんにょを、星ほし空ぞらのロマンスとして語かたり継ついでいます。

 今回こんかいは、『七夕たなばたさま』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

天人にょうぼう 行事むかしむかし 谷真介 赤坂三好 佼成出版社 「羽衣はごろも伝説でんせつ」とも呼よばれる『七夕たなばたさま』は、日本にっぽん各地かくちに数かず多おおくの似にたお話はなしが存在そんざいし、民間みんかんに伝つたわる伝承でんしょう説話せつわとして語かたり継つがれてきました。

 日本にっぽんの羽衣はごろも伝説でんせつで最もっとも有名ゆうめいなものは、静岡県しずおかけん静岡市しずおかし清水区しみずくの三保みほ半島はんとうにある「三保みほの松原まつばら」に伝つたわるお話はなしではないでしょうか。

 「七夕たなばた伝説でんせつ発祥はっしょうの地ち」といわれる大阪府おおさかふ枚方市ひらかたし・交野市かたのしに伝つたわるお話はなしや、鹿児島県かごしまけん奄美大島あまみおおしまにも伝つたわる天女てんにょのお話はなしもとても有名ゆうめいです。

 最もっとも古ふるいとされる羽衣はごろも伝説でんせつは、『風土記ふどき』の逸文いつぶんとなりますが、『近江国おうみのくに風土記ふどき』と『丹後国たんごのくに風土記ふどき』でみることができます。

 日本にっぽん各地かくちの羽衣はごろも伝説でんせつは、この『風土記ふどき』の逸文いつぶんが各地かくちに広ひろまり、その地ちに根ね付づいたものと考かんがえられています。

 また、天女てんにょは、しばしば白鳥はくちょうと同一どういつ視しされてきたため、『白鳥はくちょうの乙女おとめ (The Swan Maidens)』として、アジアをはじめ広ひろく世界せかい中じゅうにお話はなしが伝つたわっています。

 絵本えほん『天人てんにんにょうぼう (行事ぎょうじむかしむかし)』は、佼成こうせい出版しゅっぱん社しゃから出版しゅっぱんされています。「行事ぎょうじむかしむかし」は、実じつの兄弟きょうだいである谷たに真介しんすけさんと赤坂あかさか三好みよしさんがタッグを組くみ、絵本えほんを通とおして日本にっぽんの年中ねんちゅう行事ぎょうじを知しることで、子こどもたちに季節きせつ、生活せいかつ、文化ぶんかの理解りかいを促うながすために企画きかくされた全ぜん13巻かんのシリーズです。本書ほんしょは「七夕たなばた」の由来ゆらいを扱あつかった第だい5弾だんです。児童じどう文学ぶんがく作家さっかの谷たに真介しんすけさんが、七夕たなばたの由来ゆらいを「羽衣はごろも伝説でんせつ」を基もとに、伝承でんしょうを簡潔かんけつに抜粋ばっすいし、軽快けいかいでユーモラスな表現ひょうげんを織おり交まぜ、昔むかし話ばなしとして再話さいわしました。人間にんげん界かいの男おとこと天上てんじょう界かいの女おんなが、羽衣はごろもをめぐる恋こいの喜よろこびと別わかれの悲かなしみを、天あまの川かわと呼よばれる星ほし空ぞらのロマンスとして語かたられている点てんが魅力みりょく的てきです。そして、赤坂あかさか三好みよしさんの版画はんがによる独特どくとくの味わあじわいが、物語ものがたりを鮮あざやかに蘇よみがえらせます。力ちから強づよい線せんが織おりなす版画はんが絵えは、切せつない雰囲気ふんいきをより深ふかめ、物語ものがたりの趣おもむきと日本にっぽんの行事ぎょうじを視覚しかく的てきに伝つたえる影響えいきょうを与あたえています。意外いがいすぎる物語ものがたりの展開てんかいは、運命うんめいの残酷ざんこくさと誤解ごかいの悲劇ひげき性せいが核心かくしんなのに、そこから7月がつ7日かの「七夕たなばた」の背景はいけいを知しることは、新鮮しんせんであり、喜よろこびをもたらします。七夕たなばたの夜よるに読よみ聞きかせたくなる、心こころに残のこる優やさしさが詰つまった一冊いっさつです。

 絵本えほん『天人女房てんにんにょうぼう (日本にっぽんのむかし話はなし)』は、童話館出版どうわかんしゅっぱんから出版しゅっぱんされています。「羽衣伝説はごろもでんせつ」を題材だいざいにした絵本です。太田大八おおただいはちさんの絵えは、とにかく色彩しきさいが美うつくしく、天女てんにょの顔かおが上品じょうひんです。そこに、稲田和子いなだかずこさんによる鹿児島県かごしまけんの語かたり口調くちょうが重かさなると、読よみ手ても聞きき手も絵本の世界せかいに吸すい込こまれます。

 絵本えほん『天女てんにょのはごろも (子こどもとよむ日本にっぽんの昔むかしばなし)』は、くもん出版しゅっぱんから出版しゅっぱんされています。手てのひらサイズの絵本です。秋田県あきたけんに伝つたわる「七夕たなばたになった親父おやじ」をもとにした絵本です。「羽衣伝説はごろもでんせつ」が題材だいざいです。語かたり継つがれた昔むかしばなしには、子こどもの心こころを惹ひきつける力ちからがあります。昔ばなし本来ほんらいの「語かたり口ぐち」の特徴とくちょうを生いかした、七夕たなばたの由来ゆらいを親子おやこで学まなべる楽たのしい絵本です。

 『年中行事覚書ねんじゅうぎょうじおぼえがき』は、講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。「七夕たなばた」をはじめ、日本各地にっぽんかくちの珍めずらしい年中行事ねんちゅうぎょうじに焦点しょうてんを当あて、その由来ゆらいや変遷へんせんなどが柳田國男やなぎたくにお先生せんせいの独特どくとくな表現ひょうげんで書かかれています。伝統でんとうある行事ぎょうじが途絶とだえてしまうことへの危機感ききかんから生うまれた本ほんだけあって、ここには“懐なつかしい日本にっぽん”があります。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、土鍋どなべを売うり歩あるく男おとこがおりました。

 ある日ひ、いつものように男が土鍋を売り歩いていると、湖みずうみで娘むすめたちが水浴みずあびをしているのを見みかけました。

 「気持きもちよさそうじゃのう」
と男は思おもいながら、ふと目めの前まえを見ると、湖畔こはんの木きの枝えだに美うつくしい羽衣はごろもがかけてありました。

 「なんて美しくて珍めずらしい羽衣だ」
と男は思い、どうしても羽衣が欲ほしくなってしまい、一着いっちゃくだけ盗ぬすんでしまいました。

 その日の夕方ゆうがた、男が仕事しごとを終おえて、昼間ひるまに訪おとずれた湖を通とおりかかると、一人ひとりの美しい娘むすめが裸はだかで泣ないておりました。

 男はこの娘に一目惚ひとめぼれしてしまいました。

 「娘さん。どうしたんだい」
と男が娘に尋たずねました。
 すると娘が、
 「水浴びをしているうちに、羽衣を盗まれてしまいました」
と言いいました。
 そして、
 「あの羽衣がないと私わたしは帰かえることが出来できないのです」
と言いました。

 男は羽衣を返かえそうと思いましたが、一目見てすっかり娘を気きに入いってしまったため、
 「羽衣がなくて帰れないのなら、私の家いえで一緒いっしょに暮くらしませんか」
と男は娘に言い、娘を嫁よめにしてしまいました。

 男と娘は仲良なかよく暮らし、二人ふたりの間あいだには子こどもが生うまれました。

 ある日のこと、娘は天井てんじょうの梁はりから何なにか包つつみがぶら下さがっていることに気きがつきました。包みを開あけてみると、中なかには娘が湖で盗まれた羽衣が隠かくしてありました。

 謝あやまる男に娘は、
 「私は天女てんにょです。羽衣が見つかったので、天てんに還かえらなければなりません」
と言って、羽衣をまとった娘は、子どもを抱だいて天に昇のぼっていきました。
 その際さい、
 「もし私に会あいたかったら、わらじを千足せんぞく編あんで、竹たけの根元ねもとに埋うめなさい」
と言い残のこしました。

 男は娘に会いたい一心いっしんで、わらじを編み続つづけました。朝あさから晩ばんまでわらじを編み続け、あと一足いっそくで千足のわらじが出来できあがるとこまできました。

 娘に早はやく会いたくて仕方しかたのなかった男は、我慢がまんができず、千足より一足少すくないわらじを竹の根元に埋めました。

 その途端とたん、竹がぐんぐん天に向むかって伸のび始はじめました。男は娘のいる天上界てんじょうかいに向かって竹を登のぼりはじめましたが、もう少しのところで竹は天には届とどかず、ぴたりと伸びなくなってしまいました。

 「おーい」
と男は叫さけびました。
 叫び声ごえに気づいた娘が下したをのぞくと、男が泣きそうな顔かおで手てを振ふっていました。

 娘には、男がわらじを一足編んでいないことが、すぐに分わかりました。

 それでも娘は、手を伸ばして愛あいする男を天に引ひき上あげました。

 二人は再会さいかいを喜よろこびましたが、天にいる娘の両親りょうしんは、自分じぶんたちの許可きょかなく勝手かってに娘を嫁にした男のことを快こころよく思っていませんでした。

 そこで男を困こまらせてやろうと、父親ちちおやは娘と結婚けっこんする代かわわりに男に無理難題むりなんだいを言いつけました。

 しかし、男はそれを何なんとかこなしていきました。

 男を知恵者ちえしゃと思った父親は、男に褒美ほうびを与あたえることにしました。

 「お前まえに瓜うりをやろう。畑はたけに行いって好すきなだけ食たべるがいい」
と父親は男に言い、続けて、
 「ただし、瓜は必かならず縦たてに切きれ」
と言いました。

 早速さっそく、男は喜んで瓜畑うりばたけへ向かいました。

 男は言われた通とおり畑はたけの瓜を縦に切ると、瓜から大量たいりょうの水みずがあふれ出だし、その水は大おおきな天あまの川がわとなって男を流ながしてしまいました。

 流される男に向かって娘は、
 「七日なのかに会いましょう」
と言いました。

 ところが、男がこれを七月しちがつ七日なのかと聞きき間違まちがえてしまい、二人は年ねんに一度いちど、七月七日に天の川をはさんでしか会えなくなってしまいました。

 これが七夕たなばたの始はじまりと言われています。

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解説

 天女てんにょとは仏教ぶっきょう用語ようごです。人間界にんげんかいの上うえにある天道てんどうに住すむ存在そんざいのことを天女と呼よびます。

 さて、「羽衣伝説はごろもでんせつ」とも呼よばれる『七夕たなばたさま』のお話はなしは、『近江国風土記おうみのくにふどき』と『丹後国風土記たんごのくにふどき』など多おおくの文献ぶんけんにみえており、日本各地にっぽんかくちにさまざまな類話 るいわで存在 そんざいします。

 いずれのお話も天女が地上ちじょうの川かわや湖みずうみに天降あまくだって水浴すいよいをしていると、人間にんげんの男おとこが天女の羽衣はごろもを盗ぬすみ、天てんに帰かえれなくなった天女が、やむをえず羽衣を隠かくした男の妻つまとなり子こをもうけるが、やがて羽衣をみつけて再ふたたび天に帰るというのが標準的ひょうじゅんてきな筋すじです。

 沖縄本島おきなわほんとうから喜界島きかいじまにかけて伝つたわるものには、さらに難題なんだい婿むこの要素ようそを加くわえ、天あまの川がわの由来ゆらいとなっているお話はなしもあります。

 静岡県静岡市清水区しずおかけんしずおかししみずくの三保半島みほはんとうにある「三保みほの松原まつばら」の伝説でんせつは、お能のうの人気にんき演目えんもく『羽衣はごろも』によって広ひろく知しられるようになりました。

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感想

 「男おとこが天女てんにょの水浴みずあびを覗のぞき、そして天女の羽衣はごろもを盗ぬすむ」という、とんでもない行為こういから『七夕たなばたさま』の物語ものがたりは始はじまります。

 男は羽衣を返かえさず、さらに天界てんかいへ還かえることができず困こまった天女を、有無うむを言いわせず妻つまにしまいます。

 二人ふたりの間あいだに子こどもが生うまれ、天女にも男に対たいして愛情あいじょうが生うまれたものの、羽衣を取とり戻もどしてからの行動こうどうはとても早はやいものでした。

 それは、羽衣を盗み天界に還れないようにしておきながら、何食なにくわぬ顔かおで結婚生活しんこんせいかつを送おくっていた男への絶望ぜつぼうと怒いかりがそうさせたのでしょう。

 もし、男が盗んだ羽衣を天女に返し、誠意せいいをもって謝あやまり、そして一目惚ひとめぼれした気持きもちを打うち明あけていれば、もしかしたら天女が天界に還らなかったのではないかと想像そうぞうします。

 いずれにしても、『七夕さま』は人間にんげんのさもしさが語かたられています。

まんが日本昔ばなし

『七夕たなばたさま』
放送日: 昭和51年(1976年)07月03日
放送回: 第0065話(第0038回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 児玉喬夫
文芸: 沖島勲
美術: 阿部幸次
作画: 猿山二郎
典型: 羽衣伝説はごろもでんせつ・天人女房譚てんにょにょうぼたん・異類婚姻譚いるいこんいんたん・由来譚ゆらいたん
地域: 近畿地方(大阪府)

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 『七夕たなばたさま』は「DVD-BOX第だい1集しゅう 第だい5巻かん」で観みることができます。

最後に

 今回こんかいは、『七夕たなばたさま』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 日本にっぽんには、『七夕たなばたさま』のような「羽衣はごろも伝説でんせつ」をはじめ、天女てんにょにまつわるお話はなしが数かぞえ切きれないほどたくさん伝つたわります。ぜひ触ふれてみてください!

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