昔話『旅人馬』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 『たびびとうま』は、おそろしい幻術げんじゅつ使つかおんなから若者わかもの二人ふたりのがれることを主題しゅだいにした民話みんわです。

 今回こんかいは、『旅人馬』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『たびびとうま』は、九州きゅうしゅう地方ちほうつたわる民話みんわです。
 災厄さいやくからげるおはなしで、『さんまいのおふだ』とおな逃走とうそうたん分類ぶんるいされます。

 『旅人馬』は、平安へいあん時代じだい末期まっき成立せいりつしたとられる説話集せつわしゅう今昔物語集こんじゃくものがたりしゅう』や、おなじく平安時代末期の治承じしょう年間ねんかん(1177~81ねん)に成立した仏教ぶっきょう説話集せつわしゅう宝物集ほうぶつしゅう』にしるされているほど、大変たいへんふる民話みんわです。

 類話るいわ日本にっぽん各地かくちに伝わりますが、東北とうほく地方ちほうでは旅人たびびとうまにしようとしたおんなぎゃくに、旅人の機知きちによって馬にえられてしまうという内容ないようです。それにたいして、西日本にしにほんでは今回こんかいのおはなし同様どうように、馬に姿すがたを変えられてしまった人間にんげんもともどしてにげすという内容です。

 明治めいじ時代じだい人気にんき小説家しょうせつかである泉鏡花いずみきょうかが、短編小説たんぺんしょうせつ高野聖こうやひじり』の題材だいざいとして『旅人馬』をげたことにより日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 『ふしぎなやどや (日本にっぽん傑作けっさく絵本えほんシリーズ)』は、井上洋介いのうえようすけさんのえがが、はせがわせつこさんのおどろおどろしいおはなしを、よりいっそうおどろおどろしいものにさせ、不思議ふしぎ世界せかいへといざないます。

 石倉欣二いしくらきんじさんの描く、無駄むだのない、のんきでたのしい絵により、小沢正おざわただしさんのぶんがストレートに読み手の心にんできます。『たびびとうま (日本にっぽん民話みんわえほん)』は読む価値かちのある絵本えほんです。

 『んであげたいおはなし 上巻じょうかん (松谷まつたにみよ民話みんわ)』は、筑摩ちくま書房しょぼうから出版しゅっぱんされています。ちいさなどもたちにかたかせたい民話みんわを、精選せいせんして100ぺん収録しゅうろくした一冊いっさつです。方言ほうげん口調くちょうかれた文章ぶんしょうは、テンポがく、とてもみやすいです。上巻じょうかんには、「たびびとうま」や「ミョウガ宿やど」などのはるなつ主題しゅだいにした民話みんわ収録しゅうろくされています。

 『日本昔話百選にほんむかしばなしひゃくせん』は、挿絵さしえがほとんどないため、文字もじばかりの一見いっけん面白おもしろくなさそうなほんですが、はじめるとすぐにむかしばなしの世界せかいまれます。方言ほうげん口調くちょうかれた文章ぶんしょうですが、方言ほうげん説明せつめいが書かれているなど、みやすい工夫くふうがされています。

 『今昔物語集こんじゃくものがたりしゅう (角川書店かどかわしょてんへんビギナーズ・クラシックス)』は、現代語訳げんだいごやく古文こぶんきとしたリズムによってだれもが古典こてん世界せかいたのしむことができます。

 『高野聖こうやひじり』は、泉鏡花いずみきょうか代表作だいひょうさくというだけでなく、日本にっぽん文学史ぶんがくしなかでも、怪奇小説かいきしょうせつ幻想小説げんそうしょうせつ名作めいさくとして評価ひょうかされています。『歌行燈うたあんどん高野聖こうやひじり』には、「高野聖」をはじめ「女客おんなきゃく」「国定くにさだえがく」「売色鴨南蛮ばいしょくかもなんばん」「歌行灯うたあんどん」の名作めいさく5へん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、金持かねもちの息子むすこ栄助えいすけまずしいいえ息子むすこ五郎ごろうがおりました。二人ふたりおさななじみで仲良なかよくしていました。そんな二人が一緒いっしょたびをすることになりました。

 あるのこと、二人が山道やまみちあるいていると、途中とちゅうれてしまいました。二人がまるところをさがしながらやまなかを歩いていると、ふとまえ一軒いっけん宿屋やどやがありました。

 二人がいえたたいて、
 「一晩ひとばんめてしい」
たのむと、
 「やまなかなのでなにもないが、ゆっくりとやすんでいきなさい」
と中からてきた宿屋のおんながにっこりわらっていました。

 二人はここで一晩ひとばんごすことになりました。

 その、金持ちの息子の栄助はすぐにねむってしまいましたが、貧しい家の息子の五郎はなかなか眠れませんでした。

 すると真夜中まよなかになって、すっと障子しょうじひらき宿屋の女が部屋へやはいってきて、囲炉裏端いろりばたすわりました。

 五郎はたふりをして女の様子ようすをそうっとていると、まるでんぼをたがやすように、女は囲炉裏いろりはいきまわして、ぱらりぱらりとこめ籾種もみだねきました。

 するとたねからみるみるうちにてきて、なええそろいました。さらに苗はどんどん生長せいちょうして黄色きいろくなり、たわわないねになりました。そして女は稲をってとし、そこからしろ団子だんごつくりました。

 けると、女は、
 「さあ、このお団子だんごをおべ」
とおぼん昨夜さくやの団子をせて部屋に入ってきました。
 五郎は、
 「それはあやしい団子だんごなのでべないほうがいい」
と栄助にそっとみみうちをしました。
 しかし、女が、
 「おいしいお団子だんごだよ」
と言うので、栄助はおもわずをのばして、団子をパクリと食べてしまいました。

 するとそのとたん、栄助はうまになってしまいました。

 五郎はおどろいてそのからしました。

 逃げたさきむらで、ある農家のうかのおじいさんに山の中での出来事できごとはなすと、
 「ここからひがしくと、おおきな茄子なすはたけがあるから、そのなかに、ひがしいた一本いっぽん一度いちどななつのがなっている茄子なすがあるので、そのななつとも友達ともだちべさせるといい」
おしえてくれました。

 五郎は栄助のために、何日なんにちもかけて言われたとおりの茄子なすさがしました。ようやくひがしいた一本いっぽんからななつのがなる茄子をつけたので、女の留守るすを見はからって宿屋へもどり、馬なった栄助に茄子を食べさせると、栄助は無事ぶじ人間にんげんに戻ることができました。

 そして、そのも旅をつづけた二人は、何年なんねんあとむらると、栄助はいのち恩人おんじんである五郎に財産ざいさん半分はんぶんゆずり、兄弟きょうだいのように仲良なかよらしました。

解説

 九世紀きゅうせいき前半ぜんはん中国ちゅうごくとう時代じだい末期まっき成立せいりつしたとされる伝奇小説集でんきしょうせつしゅう河東記かとうき』のなかにある「板橋三娘子はんきょうさんじょうし」は、『旅人馬たびびとうま』にかなりちか内容ないようのおはなしです。

 そして、「板橋三娘子」の内容は、『アラビアンナイト』の「バドルバートムの物語ものがたり」とほとんどおな趣向しゅこうのお話です。

 『アラビアンナイト』の成立せいりつは、およそ九世紀ごろとかんがえられているので、『アラビアンナイト』の成立の過程かていで、その一支流いちしりゅうが中国につたわり「板橋三娘子」となり、その日本にっぽんはいってきて伝承でんしょうされ、『旅人馬』がまれたのでしょう。

 それから、『旅人馬』にある“ひとうまえる幻術げんじゅつ”は、日本では文芸ぶんげい興味きょうみぶか素材そざいであったようで、ひとうまえることができるといって人をだますお話は、狂言きょうげんでは『人馬ひとうま』にれ、江戸時代えどじだい小咄こばなし魔法まほう』から落語らくご大師だいしうま』へとつづきます。

感想

 昔話むかしばなしには、はじめは人間にんげん世界せかいのおはなしだったものが、途中とちゅうからその世界がことなる世界である「異界いかい」へとわってしまうものがあります。そのさい異界いかいとして“やまなか”が昔話には、たびたび登場とうじょうします。

 異界が登場する昔話には、どちらかといえば、妖怪ようかいとか魔物まものとか、あまりこのましくない“ひとでないもの”がかならず登場します。そして最後さいごは、人間にんげん知恵ちえはたらかせたり勇気ゆうきをふるったりしてはらったり、またはやっつけたりします。

 では、異界という場所ばしょは、どこにあるのでしょうか。

 ひとむ人間の世界とかたちで、もしくはかさなるようにして異界は存在そんざいするのだろうとわたしかんがえます。それをしんじることができる人、それから想像そうぞうすることがきる人は、人間の世界と異界とをったりたりすることができ、なにかのきっかけで異界をたりかんじたりすることができるのではないかとおもいます。同時どうじに、“ひとでないもの”が“ひとにはできないこと”をおこなえる場所が異界で、そうした異界での出来事できごとかたることによって、人間にんげん自身じしんすくわれたり、はげまされたりする、そういう存在そんざいが異界だとおもいます。

 “ひとであるもの”、つまり人間が、いまている世界は、人によってかた景色けしきちがいます。もしかしたら、人間の世界にいるのに、異界を見ている場合ばあいもあるのかもしれません。

 しかし、疑心暗鬼ぎしんあんきになる必要ひつようはありません。

 昔話をとおして、異界という世界をることは、先人せんじん苦労くろうかさね語りいできたことをることにつながります。

 『旅人馬たびびとうま』から、日本人にっぽんじんつたえようとしたこと知ることで、こころゆたかでたくましいかんがかたにつけることができると、わたしはふとおもいます。

まんが日本昔ばなし

旅人馬たびびとうま
放送日: 昭和51年(1976年)04月24日
放送回: 第0051話(第0028回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 今沢哲男
文芸: 沖島勲
美術: 山守正一
作画: 鈴木欽一郎
典型: 逃走譚とうそうたん
地域: 九州地方


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最後に

 今回こんかいは、『旅人馬たびびとうま』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 うま姿すがたえられてしまった友達ともだちを、もと人間にんげんもどして、不思議ふしぎちからおんなからにげすという内容ないようです。ぜひれてみてください!

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