だれもが幼いころに聞いたことのある、頓智で有名な『一休さん』のお話です。昭和50年(1975年)にはアニメーションテレビ番組としても放映されていたので、世代を超えて人気があります。
今回は、『一休さん』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
お話の主人公である『一休さん』は、室町時代の臨済宗大徳寺派の僧である一休宗純の愛称です。後小松天皇の落とし胤と伝わります。
主に、その生涯に様々な説話を残したことから、江戸時代前期の元禄年間に説話『一休咄』が作られ、頓智で一躍有名になります。
『一休咄』は作者不詳ですが、現在でも絵本や童話、紙芝居の題材として多く用いられています。
あらすじ
むかしむかし、京のはずれの安国寺というお寺に一休という頓智の利く小坊主がいました。
安国寺の和尚さんは甘いものが大好きで、いつもひとりでこっそり水飴を舐めており、小坊主たちには子どもが舐めると毒だと嘘を言っていました。
ある日、和尚さんが出かけると、小坊主たちはみんなで水飴を全部舐めてしまいました。
和尚さんが帰ると、水飴がないことに気がつき小坊主たちを責めました。
すると一休が、
「大切な硯を割ってしまったので、死のうと思って毒を食べましたがまだ死ねません」
と言い、和尚さんを呆れさせました。
また別のある日、太平という男がお寺にやってきて和尚さんと碁を打っては夜更けまで家に帰らないのでみんなが困っていました。
そこで一休は、いつも太平が毛皮のちゃんちゃんこを身につけていることから、
「毛皮を着た者は寺に入ってはいけません」
と張り紙をしました。
しかし、太平は
「寺にある太鼓もケモノの皮ではないか」
と言うので、それならばと一休はバチを持って太平を叩こうと追い回しました。
太平は、なんとか頓智で仕返しをしてやろうと、和尚さんと一休を家に招きました。
太平は、家の前の橋のたもとに、
「この橋を渡るな」
と立て札があるのに、一休が橋を渡ったので理由を尋ねると、
「端ではなく真ん中を渡りました」
と言い、太平を感心させました。
やがて一休の頓智は将軍の耳に入り、ある日お城に呼ばれました。
将軍から、
「夜になると屏風の虎が飛び出して悪さをするので縛ってほしい」
と言われました。
そこで一休は、
「縛りますので屏風から虎を追い出してください」
と言いました。
将軍が、
「絵に描いた虎を追い出せると思うか」
と問いかけると、
一休は、
「絵に描いた虎を縛れると思いますか」
と答えたので、将軍はただただ感服するばかりでした。
その後、一休は一休宗純と呼ばれ、とても偉いお坊さんになりました。
解説
一休さんは、6歳で京都にある安国寺の侍童となり、27歳の時に大徳寺の高僧である華叟宗曇から印可をうけます。
その後、日本各地の庵を転々とし、当時の世俗化、形式化した禅に反抗して、奇行、風狂の中に生きます。
文明6年(1474年)に勅命により大徳寺の第47代住持となり、入寺はしませんでしたが、「応仁の乱」により荒廃した大徳寺の復興に尽くしました。
文明13年(1481年)に酬恩庵で示寂。
ちなみに、一休宗純は、後小松天皇の落とし胤であるとされることから、その墓所は宮内庁が御陵として管理する酬恩庵にあり「慈揚塔」と呼ばれ、一般の方が墓所前にて参拝することはできません。
『オトナの一休さん』は、KADOKAWAから出版されています。NHK・ラジオ第2放送のラジオドラマおよびNHK・Eテレのアニメにて放送され、大きな話題を集めた『オトナの一休さん』が、待望の書籍化。子ども向けの伝記には書くことができない、破戒僧と呼ばれた一休さんの真実の姿が、驚きの逸話とともに描かれています。悩めるあなたの道しるべとなる一冊です。 『となりの一休さん』は、春陽堂書店から出版されています。イラストレーターの伊野孝行さんと、一休さんの研究者である飯島孝良さんの対談の中から、一休さんの様々な側面を知ることができます。イラストレーターならではの独特な視点と若手研究者が、とんでもない破戒僧の一休さんを丸裸にします。感想
物事や出来事に対して、解釈で判断し、思い込みだけで生きているという人が少なからず存在します。その思い込みというものは、正しいとか間違っているとかではなく、その人が無意識の内に判断し、そしてその人にとってはその判断しかできないということです。
いざこざというのは、人間関係による摩擦や亀裂が原因であり、それは事実ではなく解釈の差異によって生じるものです。「事実は一つ、解釈は無数」という言葉がありますが、一休さんの「水飴」のお話は、まさにこれに当てはまるのではないでしょうか。
和尚さんが目にしたものは、
A: 割れた硯
B: 無くなった水飴
一休さんによると、
A: 硯を割った
B: 死んで償おうと毒である水飴を無くなるまで舐めた
ところが事実は、
B: 水飴を全部舐めた
A: 誤魔化すために硯を割った
つまり、原因と結果が正反対なのです。事実は一つですが、しかし解釈によっては事実と違うことになってしまうという現象は、当然のことながらあり得るということです。
「事実」と「解釈」を見分けることができると、思い込みを防ぐことができ、違いを受け入れやすくなります。
自分自身が選択した答えによって、感情が変わり、思考が変わり、行動が変わり、結果が変わり、最終的には物事の捉え方が変わります。人は、顕在意識と無意識、そしてこれまでに自分自身が経験してきた価値観から物事を判断してしまう傾向があります。自分自身が追い込まれた時には、思考と視野が狭くなるので、それが如実に表れます。
だからこそ、起こる出来事を肯定的に捉え、感謝へ転換し、朗らかに日々を過ごすことができれば、真の強さにつながるということを一休さんの頓智を通じて伝えたかったのではないでしょうか。
まんが日本昔ばなし
『一休さん』
放送日: 昭和51年(1976年)02月28日
放送回: 第0038話(第0021回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 高橋良輔
文芸: 沖島勲
美術: 阿部幸次(スタジオユニ)
作画: 倉橋達治
典型: 頓知話・一休咄
地域: 近畿地方(京都府)
『一休さん』は「DVD-BOX第1集 第5巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『一休さん』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
明るく、賢く、そして心優しい『一休さん』の愉快痛快な頓智話に、ぜひ触れてみてください!