昔話『三年寝太郎』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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  『三年さんねん寝太郎ねたろう』は、てばかりいることから寝太郎ねたろうばれるなまものおとこが、突然とつぜん灌漑かんがいげるという民話みんわです。

今回こんかいは、『三年さんねん寝太郎ねたろう』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 三年さんねん寝太郎ねたろう』は山口県やまぐちけん山陽小野田市さんようおのだし厚狭あさ地区ちくつたわる民話みんわです。

 天保てんぽう13ねん(1842ねん)に成立せいりつした『防長ぼうちょう風土ふうど注進案ちゅうしんあん』に三年さんねん寝太郎ねたろう物語ものがたり原型げんけいではないかとわれる記述きじゅつがあります。

 それは、「一人ひとりおきな仕事しごともせず、いつもてばかりいるので、世人せじんから『寝太郎ねたろう』とばれていた。やがてかれ沓村くつむらおおきなせきつくって厚狭川あさがわながれをき、千町ヶ原せんちょうがはらひらいて美田びでんとした」との内容ないようです。

 このおはなしに、寝太郎ねたろうちち庄屋しょうやであることや、さんねんさんげつらしたこと、佐渡さど金山きんざん資金しきん調達ちょうたつしたことなどがくわえられ、現在げんざい厚狭あさ寝太郎ねたろう伝説でんせつ形成けいせいされたとかんがえられています。

 『三年さんねん寝太郎ねたろう』の民話みんわ全国ぜんこくひろまるきっかけをつくったのは、昭和しょうわ28ねん(1953ねん)2がつ2朝日あさひ新聞しんぶん民話みんわめぐり」に、山口県やまぐちけん萩市はぎし出身しゅっしんおか不可止ふかし寄稿きこうしたものがもととされます。

 絵本えほんさんねんねたろう』は、ポプラしゃより出版しゅっぱんされています。てばかりいるので、村人むらびとたちにからかわれる寝太郎ねたろう。そんな寝太郎ねたろうが、むらのためにはたら姿すがたとおして、「ひとつよさで民話みんわみだし、民話みんわひとをよりつよくする」ということを、大川おおかわ悦生えっせいさんのぶん渡辺わたなべ三郎さぶろうさんのからかんることができます。

 『夕鶴ゆうづる彦市ひこいちばなし』は、偕成かいせいしゃより出版しゅっぱんされています。表題ひょうだいの「夕鶴ゆうづる」や「彦市ひこいちばなし」のほかに「三年さんねん寝太郎ねたろう」や「こぶとり」など、民話みんわからまれた名作めいさく7へん収録しゅうろくされています。ちなみに、「夕鶴ゆうづる」はげき作家さっかである木下きのした順二じゅんじ最高さいこう傑作けっさくわれています。

 『日本にっぽん伝奇でんき伝説でんせつだい事典じてん』は、角川かどかわ書店しょてんより出版しゅっぱんされています。日本にっぽん各地かくちつたわる、上代じょうだい(飛鳥あすか奈良なら時代じだい)から明治めいじ時代じだいまでの神話しんわ伝説でんせつ昔話むかしばなし説話せつわ奇談きだん人物じんぶつ逸話いつわなどをしゅう大成たいせいした事典じてんです。時代じだい変遷へんせんとも物事ものごと事情じじょうかんがえなどがじゅんってしるされています。そのなかに「厚狭あさ寝太郎ねたろう」のこうがあります。『日本にっぽん伝奇でんき伝説でんせつだい事典じてん』は、調しらべものとして使つかうだけではなく、ものとしてもたのしむことができます。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、一日いちにちじゅうていて、村人むらびとたちからなまけものきらわれ、寝太郎ねたろうばれているおとこがおりました。

 寝太郎ねたろうは、っからのなまけものというわけではなく、いつのころからか、一日いちにちじゅうごろごろとてばかりいて、たたいてもゆすってもあさになってもどんなにしてもきなくなってしまったのでした。

 さすがに十日とおかにいっぺんはきて、やまうえから小便しょうべんをするものの、それ以外いがいはもう三年さんねんつづけておりました。

 あるとしむらつづきであめらず、んぼにみずがなくなり、農作のうさくぶつそだたなくなってしまいました。

 村人むらびとたちは、「むら罰当ばちあたりがいるせいだ」といい、寝太郎ねたろうころすことにしました。

 その寝太郎ねたろう夜中よなかき、やまうえおおきないわがけしたとしました。

 いわによる衝撃しょうげきやまくずれがこり、そのしたながれるかわながれをえ、むらにまでみずとどくようになり、んぼにもみずくことができるようになりました。

 むら農作のうさくぶつたすかりました。

 寝太郎ねたろうはただていたのではなく、どうすればむらたすかるのかをずっとかんがえていたのでした。

解説

 戦国せんごく時代じだい伝承でんしょうじょう人物じんぶつとされる平賀ひらが清恒きよつねが、三年さんねん寝太郎ねたろう由来ゆらいではないかとつたわります。

 平賀ひらが清恒きよつね信濃国しなののくに佐久郡さくぐん(現在げんざい長野県ながのけん佐久市さくし)のしょう豪族ごうぞく平賀ひらが城主じょうしゅ平賀ひらが玄信げんしん息子むすことされます。

 天文てんぶん20ねん(1551ねん)8がつきた「大寧寺たいねいじへん」により厚狭あさ(現在げんざい山口県やまぐちけん山陽小野田市さんようおのだし厚狭あさ地区ちく)にらしはじめましたが、みず不足ぶそくくるしむ村人むらびとこえうごかされ、三年さんねんさんげつ長期ちょうきにわたり、日夜にちや思案しあんかさね、厚狭川あさがわめ、千町ヶ原せんちょうがはら水路すいろをひいたとされます。

 厚狭あさ地区ちくながれる厚狭川あさがわには、実際じっさい寝太郎ねたろうあつめた資金しきんにより整備せいびしたとされるせきがあり、「寝太郎ねたろうせき」とばれています。

 平賀ひらが清恒きよつねは、いつしか「寝太郎ねたろうさま」とばれるようになり、地元じもと窮地きゅうちすく開墾かいこんした英雄えいゆうとしていまなおたたえられており、神様かみさまとして寝太郎荒神社ねたろうこうじんじゃまつられています。

 厚狭駅あさえきまえには寝太郎ねたろう銅像どうぞうがあり、地元じもとでは毎年まいとし4がつ29にちに「寝太郎ねたろうまつり」がもよおされています。

 いつだれによって厚狭川あさがわめられ、厚狭あさ盆地ぼんち縦横じゅうおう水路すいろ構築こうちくする事業じぎょうおこなわれたか公的こうてき記録きろくのこっていません。

 しかし、膨大ぼうだい資金しきん労力ろうりょくようしたことはうたがいようがなく、この偉業いぎょうたいする人々ひとびと感謝かんしゃ気持きもちが、「寝太郎ねたろう伝説でんせつ」としてかたられるようになったのでしょう。

 厚狭あさ地区ちくでは「寝太郎ねたろう伝説でんせつ」がかたがれるだけではなく、現在げんざい寝太郎ねたろうつくったとされるせき用水ようすい人々ひとびとらしをささえています。

感想

 『三年さんねん寝太郎ねたろう』は“どもの成長せいちょう”がまれているおはなしです。

 じつおおくのむかしばなしでは主人しゅじんこう性格せいかくわります。

 はじめはけていても、最後さいごかしこくなります。

 てばかりいる若者わかものが、あるとき知恵ちえはたらかせます。

 ちょっとした知恵ちえはたらかせることはだれにでもあり、その意味いみ本当ほんとう人間にんげん姿すがたつたえています。

 そして、「寝太郎ねたろう」の姿すがたは、「若者わかもの変化へんか」そのものではないでしょうか。

 わかときにはいい加減かげんでも、30~40さいになれば、しっかりとした大人おとなになっています。

 そんなひとはたくさんいます。

 いまは、勉強べんきょうやお手伝てつだいをしない小学生しょうがくせいだとしても、20~30ねんには、だれもがすまして立派りっぱ大人おとなになっているものです。

 このおはなしからもかるように、どもはみずからのちからでちゃんとそだちます。

 それを理解りかいし、どもを信頼しんらいすればよいということです。

 どもだって、「自分じぶんはこういう姿すがたでありたい」という意思いしっているはずです。

 だから、大人おとながやるべきことは、どもを信頼しんらいして、すくすくそだ環境かんきょうつくることです。

 「どもは無限むげん可能かのうせいっている」といわれますが、それは「大人おとな干渉かんしょうしない」という条件じょうけんつきではじめてちます。

 どもはみず成長せいちょうし、変化へんかするものだという、そうしたたりまえ大切たいせつなことを、むかしばなしおしえてくれます。

 大人おとなは、あわてずにあせらずに、どもを信頼しんらいして、あたたかく見守みまもっていきましょう。

まんが日本昔ばなし

三年さんねん寝太郎ねたろう
放送日: 昭和50年(1975年)02月18日
放送回: 第0014話(第0007回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 樋口雅一
脚本: 伊東恒久
美術: 内田好之(※青木稔)
作画: 樋口雅一
典型: 寝太郎ねたろう伝説でんせつ
地域: 中国地方(山口県)

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 『三年さんねん寝太郎ねたろう』はDVDのため「VHS-BOXだい2しゅう だい18かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『三年さんねん寝太郎ねたろう』のあらすじと内容解説ないようかいせつ感想かんそうをご紹介しょうかいしました。

 厚狭あさ人々ひとびとこころなかには、いま寝太郎ねたろうつづけています。毎年まいとし祭祀さいしおこなわれ、人々ひとびと信奉しんぽうされしたしまれています。『三年さんねん寝太郎ねたろう』のおはなしには、寝太郎ねたろう偉業いぎょうたいする人々の感謝かんしゃ気持きもちまっています。ぜひれてみてください!

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