昔話『船幽霊』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
※当サイトのリンクには広告を含む場合があります
AdMax

 『船幽霊ふなゆうれい』は、うみりょうをしていると、水難すいなんくなったひとれいが、きているもの仲間なかまれようと、「柄杓ひしゃくをよこせ」とこえこえてくることがあります。要求ようきゅうどお柄杓ひしゃくわたしてしまうと、その柄杓を使つかって海水かいすいをどんどん船内せんないれ、ふね沈没ちんぼつさせるというこわ妖怪ようかいです。

 今回こんかいは、『船幽霊』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

AdMax

概要

 『船幽霊ふなゆうれい』は、いそ海上かいじょうるといわれる妖怪ようかいで、水死すいししたひと亡霊ぼうれい幻想げんそうふねとなりあらわれ、「柄杓ひしゃくせ」と要求ようきゅうしてくるので、柄杓ひしゃくそこをぬいてさないと、柄杓で海水かいすいを船にれて船をしずめるといわれています。

 『船幽霊』に遭遇そうぐうしたさいには、こめはいをまくと退散たいさんするといわれています。

 江戸時代えどじだい怪談かいだん随筆ずいひつ近代きんだい民俗みんぞく資料しりょうなどにおおくみられ、『幽霊船ゆうれいせん』や『亡霊船ぼうれいせん』ともばれる『船幽霊』は、人の姿すがたで現れるもの、船そのもののかたちで現れるもの、怪火かいか怪音かいおんなどの怪現象かいげんしょうとして現れるなど、類話るいわ日本にっぽん沿岸地域えんがんちいきらす人々ひとびとあいだではひろつたえられています。

 『船幽霊』は、明治時代めいじじだい文豪ぶんごうであるラフカディオ・ハーンこと小泉八雲こいずみやくもが、明治めいじ27ねん(1844年)に出版しゅっぱんされた『られぬ日本にっぽん面影おもかげ』のなかの「日本海にほんかい沿うて」のしょう挿入話そうにゅうわとして「船幽霊」を紹介しょうかいしたことにより、日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『船幽霊ふなゆうれい』のおはなしは『まんが日本昔ばなし だい17かん』のなか収録しゅうろくされています。

 雑誌ざっし時空旅人じくうたびびと 2021ねん9月号がつごう』は三栄書房さんえいしょぼうから出版しゅっぱんされています。伝説でんせつのアニメ『まんが日本にっぽんむかしばなし』から傑作けっさくばれる幽霊ゆうれい怪談かいだんのおはなしが、制作秘話せいさくひわ紹介しょうかいしながら23ぺん収録しゅうろくされています。 同番組どうばんぐみつ、素朴そぼくさと先進性せんしんせいがにじみてくる好企画こうきかくで、名作めいさくかえりながら物語ものがたりつたえたかった“こころ”にれることができます。

 『日本にっぽん面影おもかげ ([新編しんぺん]角川かどかわソフィア文庫ぶんこ)』はKADOKAWAから出版しゅっぱんされています。わたしたち日本人にっぽんじんは、本当ほんとう日本にっぽんさをわかっているのだろうかとかんがえさせられる内容ないようです。そのくらい日本と日本人の評価ひょうか素晴すばらしいです。ラフカディオ・ハーン外国人がいこくじん視点してんつめた、明治時代めいじじだい初期しょきうつくしい日本へのおもいを色濃いろこつたえる11ぺん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、ある漁師町りょうしまちでは、おぼんに「むか」をいてくなったひとれいをおむかえする風習ふうしゅうがありました。
 また、お盆の日は、うみで亡くなった人の霊が船幽霊ふなゆうれいとなってふねしずめにるので、けっしてりょうてはいけないというつたえもありました。

 あるとしのお盆のよるのこと、威勢いせいのいい漁師りょうし親方おやかたが、むら長老ちょうろうたちがめたのにもかかわらず、迎え火のあと、船でりょう出掛でかけてきました。

 そのばんは、かぜしずかで、そらにはほしかがやき、まるでいけみたいななぎでした。
 そして、面白おもしいようにさかなれました。

 「『おぼんふねしてはいけない』なんて、だれしたんだ!さかなるのにぼん正月しょうがつもあるもんか!ろ、今夜こんや大漁たいりょうだ!」
と親方はご機嫌きげんいました。
 当初とうしょおそおそるだった漁師たちも、いつにない大漁たいりょうおおきくなって、夢中むちゅうあみ手繰たぐりました。

 そのうち、星がえ、あたりにどんよりとした空気くうきただよってきました。

 「おい、あれは、なんじゃ!」
一人ひとりの漁師がおきほう指差ゆびさしました。

 ると、水平線すいへいせんこうから、ちかけた不気味ぶきみな船がおともなくちかづいてきました。不気味な船からは青白あおじろたまがふわふわとまいび、やがて、
 「柄杓ひしゃくをくれえ~、柄杓ひしゃくをくれぇ~」
と、うめくようこえこえてきました。

 漁師たちは、すじがゾクゾクしました。
 そして、「柄杓をわたしてはならんぞ」という村の長老たちの言葉ことばおもしました。

 「たすけてくれー!船幽霊ふなゆうれいだ!」
と漁師たちがさけんだときには、青白い火の玉のれがふわふわとび、そこから何百なんびゃくというしろてきて、船をしっかりとつかんだため、漁師たちの船はうごくことができなくなりました。

 そのときはまでは不思議ふしぎことこっていました。
 浜でいていた迎え火が次々つぎつぎえ、夜空よぞらあかほのおとなって沖へ飛んでいったのでした。

 赤い炎の群れが、漁師たちの船のそばまでやってきて、
 「うみいのちとした仲間なかまじゃないか、わるさをせずにえておくれ」
と青白い火の玉の群れにはなしかけたのでした。

 すると、青白い火の玉の群れは赤い炎の言葉をれたのか、ふわふわと船にもどり、ひとつずつえていきました。

 不気味な船がったのを見届みとどけた赤い炎の群れも、浜へかえしていきました。

 このことは、漁師りょうし仲間なかまつたわり、それからというもの、お盆の日に漁に出る船はなくなったそうです。

解説

 國學院大學こくがくいんだいがくもと教授きょうじゅ国文学者こくぶんがくしゃであり民俗学者みんぞくがくしゃ花部英雄はなべひでおによれば、『船幽霊ふなゆうれい』の出現しゅつげん風雨ふうう濃霧のうむばんきゅう天候てんこう悪化あっかしたときにおおいとあります。

 そうした状況下じょうきょうかでは、事故じこ発生はっせいしやすく、はなし現実味げんじつみくわわり、不気味ぶきみさや不安感ふあんかんをかきたてるため、わずかな怪異かいい伝承でんしょうわくなかれ、幻影げんえい幻想げんそう現実げんじつとしてかたったりするとされます。

 また、『船幽霊』の出現しゅつげん時期じきにおぼんおおいのは、精霊船しょうりょうせんのイメージとかさなるためとしています。

 しかし、その根底こんていには、まつられることのない水死すいししたひとれい浮遊ふゆうしていて、それが『船幽霊』としてあらわれる死霊しりょう信仰しんこうがあるとされます。

 お盆や大晦日おおみそか、あるいは特定とくていなどの禁漁日きんりょうびに、「うみてはならない」とした、禁忌きんきおかした場合ばあいいましめもあるとしています。

感想

 「かめこうよりとしこう」ということわざがあります。
 それは、「年長者ねんちょうしゃ豊富ほうふ経験けいけん貴重きちょうであり、尊重そんちょうすべきものである」といった意味いみです。

 周囲しゅういの年長者からの小言こごとめいた助言じょげんに、「うるさい」といったわずらわしさを、だれしもかんじたことがあるのではないでしょうか。
 しかし、その小言こごとじつ大変たいへん有難ありがたいお言葉ことばかもしれませんよ。

 近年きんねん、“老人力ろうじんりょく”が注目ちゅうもくされています。
 ふか経験けいけん裏打うらうちされた老人力が発揮はっきされることで、社会しゃかいはより活性化かっせいかするのではないかという考えです。

 どんなにすぐれた人物じんぶつでも、その知恵ちえにはかぎりがあります。
 そのかぎりある知恵で物事ものごと判断はんだんし、処理しょりをしていくと、往々おうおうにして独断どくだんおちいり、あやまりをおかしやすくなります。

 やはり、誤りなく物事をすすめていくためには、伝統でんとうむかしながらの知恵をつ年長者の意見いけんみみかたむけることが大切たいせつです。

 つまり、年長者から人生じんせい教訓きょうくんただしくるようこころがけ、そこからまなんだことをわすれてはならないということです。

まんが日本昔ばなし

船幽霊ふなゆうれい
放送日: 昭和51年(1976年)08月14日
放送回: 第0075話(第0045回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 児玉喬夫
文芸: 沖島勲
美術: 青木稔
作画: スタジオアロー
典型: 怪異譚かいいたん
地域: 中国地方(岡山県)


 Amazonプライム・ビデオで、『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』へ、ひとっ飛び。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』のなかから傑作けっさく101厳選げんせんしました!

 国民的こくみんてきアニメーション『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』がDVDになりました!
 『船幽霊ふなゆうれい』は「DVD-BOXだい10しゅう 第47かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『船幽霊ふなゆうれい』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 日本人にっぽんじんうみ関係かんけい密接みっせつで、文明ぶんめい発達はったつふねかせないものでした。そして、予測よそくできない事態じたいがいつでもこりうる海上かいじょうでは、ときとして不運ふうん見舞みまわれる船がありました。海上でいのちとしたひと行方不明ゆくえふめいになってしまった人、おおくの人間にんげんたましいせた『幽霊船』は、いまこのとき漂流ひょうりゅうしているかもしれません。ぜひれてみてください!

AdMax
おすすめの記事