昔話『猫檀家』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 おてらねこが、長年ながねん世話せわになった和尚おしょうさんへの恩返おんがえしにと、貧乏びんぼうなおてら繁盛はんじょうさせようとかんがえます。お葬式そうしきで、猫が和尚さんとくんんで一芝居ひとしばいつおはなしが『ねこ檀家だんか』です。

 今回こんかいは、『ねこ檀家だんか』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『ねこ檀家だんか』は、東北とうほく地方ちほうから九州きゅうしゅう地方ちほうまで日本にっぽん各地かくちひろかたがれている民話みんわですが、東北とうほく地方ちほうおおのこされていて、九州きゅうしゅう地方ちほうにはすくないという傾向けいこうがみられます。

 面白おもしろいことに、実在じつざいするおてら伝説上でんせつじょうのおてらなど、東西とうざいわず、『ねこ檀家だんか』の舞台ぶたいかならずおてらであり、そこでわれている動物どうぶつかならねこというてんです。

 つまり、ねこによるおんがえしの対象たいしょうは、絶対ぜったい和尚おしょうさんという、ねこ和尚おしょうさんの交流こうりゅうえがいたおはなしです。

 絵本えほんとらねことおしょうさん (日本にっぽんむかしばなし)』は、くもん出版しゅっぱんから出版しゅっぱんされています。小澤おざわ俊夫としおさんのやさしいかた口調くちょうぶんと、金井田かないだ英津子えつこさんの繊細せんさいかつ緻密ちみつうつくしい水彩画すいさいがにより、昔話むかしばなし世界せかい一気いっきまれます。東北とうほく地方ちほうひろつたわる民話みんわもとに、予想外よそうがい愉快ゆかい展開てんかいえがかれています。ねこ必読ひつどく一冊いっさつです。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより新装しんそう改訂版かいていばん登場とうじょう。『ねこ檀家だんか』のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい9かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『ねこかい (江戸えど怪談かいだんむ)』は、白澤社はくたくしゃから出版しゅっぱんされています。現在げんざいではペットとしてわれる愛玩あいがん動物どうぶつねこですが、江戸えど時代じだいねこたいしてなんらかの畏怖いふねんいだいていたようです。それが怪談かいだんにおける、さまざまなねこ怪異かいい物語ものがたりしたのでしょう。怪談かいだんにおけるねこかい世界せかいだけではなく、ねこにまつわる江戸えど随筆ずいひつ民間みんかん伝承でんしょう歌舞伎かぶき怪奇かいき映画えいがなども紹介しょうかいされています。ねこきにはたまらない一冊いっさつです。

 『日本にほん昔話むかしばなし百選ひゃくせん』は、挿絵さしえがほとんどないため、文字もじばかりの一見いっけん面白おもしろくなさそうなほんですが、はじめるとすぐにむかしばなしの世界せかいまれます。方言ほうげん口調くちょうかれた文章ぶんしょうですが、方言ほうげん説明せつめいが書かれているなど、みやすい工夫くふうがされています。

 現在げんざいは、筑摩ちくま書房しょぼうより出版しゅっぱんされている佐々木ささき喜善きぜんの『聴耳ききみみ草紙ぞうし』には、いにしえの日本にっぽんいきづいていた不思議ふしぎな、愉快ゆかいな、奇想きそう天外てんがいな、あるいはこわ物語ものがたりがぎっしりとまった、日本人にっぽんじんこころ故郷ふるさとともいうべき珠玉しゅぎょく物語ものがたりしゅうです。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、滅多めったひとおとずれることのないまずしい山寺やまでらがありました。その山寺には年老としおいた和尚おしょうさんがんでおりました。

 和尚さんは、一匹いっぴきの年老いた虎猫とらねこっていて、自分じぶんもの半分はんぶんらしてでも虎猫にべさせて、どものように可愛かわいがっていました。

 あるのこと、和尚さんは虎猫にかって、
 「ワシでさえ、ものがなくてこまっている。本当ほんとうどくだが、おまえにものをやることもできなくなりそうだ。いまのうちに、どこかもののあるところへっておくれ」
うと、和尚さんのかおをじっとていた虎猫は、かなしそうな顔をして、しょぼしょぼときました。

 それから何日なんにちぎて、あるばんのこと、和尚さんがているとこすものがいました。よく見たら虎猫でした。

 「和尚おしょうさま、和尚おしょうさま、ながいことお世話せわになったので、和尚おしょうさまになに恩返おんがえしをしたい」
と虎猫が言いました。

 人間にんげん言葉ことばはなした虎猫に和尚さんはおどろきましたが、虎猫はにせず話しつづけました。

 「ちかいうち、長者ちょうじゃさまがとてもかわいがっている一人ひとりむすめくなるので、その葬式そうしきとき、おいらがむすめ棺桶かんおけそらかします。長者ちょうじゃさまがあわてるから、そのとき和尚おしょうさまがおきょうとなえてください。そのおきょうなかで『南無なむトラヤヤ、トラヤヤ』とこえけてくれたら、おらが棺桶かんおけしたにおろします。そしたら、そのうち、きっといことがこります」
と言って、虎猫はどこかへってしまいました。

 しばらくすると、虎猫の言ったとおり、長者ちょうじゃさまの一人ひとりむすめ病気びょうきくなりました。お葬式そうしきは、えらいおぼうさんたちをまねいて、立派りっぱなものでした。ところが、山寺の和尚さんだけは招かれませんでした。

 行列ぎょうれつをつくって棺桶かんおけはこんでいたところ、きゅう生臭なまぐさかぜいてきて、長者さまの娘をおさめた棺桶が、突然とつぜんそらがりました。

 これには、長者さまのいえひとたちや行列に参加さんかした人たちは、おどろきました。そして、そのにいた偉いお坊さんたちが必死ひっし祈祷きとうしても、棺桶はうごきませんでした。

 もうわらにもすがるおもいで、山寺の和尚さんがばれることになりました。

 和尚さんはやぶれた法衣ほうえて、つえをつきながら、のんびりとやってて、そらあおぎ見ながら、ゆっくりとおきょうとなえはじめました。そして、いい加減かげんなところで、「南無なむトラヤヤ、トラヤヤ」と虎猫におそわった呪文じゅもんを唱えました。すると、いままで空にいていた棺桶が、そろりそろりとりてきました。

 この一件いっけんから、おおくの家がこの山寺の檀家だんかとなり、貧しかった山寺は見違みちがえるような立派なおてらとなって、後々あとあとまでさかえたそうです。

 そして、和尚さんはとうと、名声めいせいひろまったことで、まるでぼとけのようにあがめられ、余生よせい安楽あんらくらしたそうです。

解説

 ねこ仏教ぶっきょうは、じつふるくからふかいつながりがあります。

 それは、おてら収蔵しゅうぞうされている経典きょうてんふる書物しょもつを、ねずみがいからまも番人ばんにんとして、猫が大変たいへん珍重ちんちょうされたのです。

 日本にっぽんにおける猫の歴史れきしは、一説いっせつには、6世紀せいきごろに日本につたわったとされる仏教ぶっきょうともわたってきたといわれています。
 江戸えど時代じだい戯作者げさくしゃである田宮仲宣たみやちゅうせんしるした『愚雑俎ぐざっそ』には、「うみわたって大事だいじ経典きょうてんはこぶにあたり、ねずみがいからまもるためにねこふねせた」との記述きじゅつがあります。

 ねこかんしては、だい59だい天皇てんのう宇多うだ天皇てんのうが、ちちである第58代天皇・光考こうこう天皇てんのうからゆずけた黒猫くろねこを、大変たいへん可愛かわいがり大切たいせつにしていたとの記述きじゅつが『寛平御記かんぴょうぎょき』のなかのこされていますし、『源氏物語げんじものがたり』や『枕草子まくらのそうし』にも飼い猫の記述がみられことから、平安へいあん時代じだいには宮廷きゅうてい貴族きぞく邸宅ていたくでは、愛玩あいがん動物どうぶつとして猫が飼われていたとかんがえることができます。

 ちなみに、平安時代、猫は大変に高価こうかなものだったので、ひもつながれて飼われていました。

 ながあいだ、猫は、貴族や富裕層ふゆうそうの間で紐に繋がれて飼われていましたが、安土あづち桃山ももやま時代じだい慶長けいちょう7ねん(1602年)に、「ねこはないにするように」との法令ほうれいされ、猫が本来ほんらい仕事しごとおこなうことができるようになったことから、徐々じょじょ庶民しょみんの間でも猫を飼う習慣しゅうかんひろまり、鼠の害がまちからったとの記録きろくのこっています。

 さらに、江戸えど時代じだいはいると、猫の人気にんき爆発的ばくはつてきひろがりをみせます。

 猫が鼠を駆除くじょしてくれる大切な存在そんざいだけではなく、おまもりや縁起物えんぎものとしてもあいされるようになり、浮世絵うきよえまねねこ置物おきものなども登場とうじょうし、庶民の間に広がっていきました。

 また、江戸時代には、猫はたんなる愛玩動物としてだけではなく、“妖怪ようかい”としてもえがかれるようになります。「葬式そうしき墓場はかばから死体したいうばう」とされる火車かしゃばれる妖怪ようかいは、年老としおいた猫がけるとされる猫又ねこまた正体しょうたいといわれています。

感想

 日本にっぽん各地かくちかたがれている『猫檀家ねこだんか』は、舞台ぶたい例外れいがいなくおてらなので、うがった見方みかたをすると、「大金たいきんたい和尚おしょうさんやおてらが、火車かしゃによる事件じけん自作自演じさくじえんした」というおはなしではないかとおもえてなりません。

 お話の背景はいけいかんがえると、妖怪ようかいである火車かしゃ撃退げきたいしたことを、和尚おしょうさんやおてら宣伝せんでん利用りようしていたことへの批判ひはんとらえることができます。

 火車かしゃとなったいた虎猫とらねこは、おおくのえらいおぼうさんたちが必死ひっしにご祈祷きとうしても、棺桶かんおけろそうとはしませんでした。しかし、ぬしであった和尚さんが呪文じゅもんとなえると、棺桶がそろりそろりと下りてきました。

 これは、妖怪である火車の妖力ようりょくほうが、和尚さんの法力ほうりょくよりもつよいということです。

 そこからかんがえられることは、『猫檀家』というだいは、「火車かしゃ事件じけん自作自演じさくじえんしたことは、おてら檀家だんか秘密ひみつにしましょう」という約束事やくそくごとという意味いみではないかと捉えることもできます。

 つまり、『猫檀家』は、和尚さんに老いた虎猫が恩返おんがえしとしてとみあたえるという、昔話むかしばなしによくみられる内容ないようですが、もしかしたら、檀家だんかという民衆みんしゅうが、よくがくらんだ和尚さんを皮肉ひにくった内容ではないかとかんじてなりません。

まんが日本昔ばなし

猫檀家ねこだんか
放送日: 昭和51年(1976年)11月06日
放送回: 第0094話(第0057回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 漉田実
文芸: 漉田実
美術: 下道一範
作画: 上口照人
典型: 動物報恩譚どうぶつほうおんたん猫譚ねこたん
地域: ある所

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 『ねこ檀家だんか』は「DVD-BOXだい2しゅう だい7かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『ねこ檀家だんか』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 和尚おしょうさんのやさしいいにたいして、いた虎猫とらねこおんがえしとしてとみあたえるおはなしが『ねこ檀家だんか』です。「ねこ死体したいぬすむ」「いたねこが“火車かしゃ”とばれる妖怪ようかいけて葬儀そうぎおそい、亡骸なきがらうばう」といった、日本にっぽん古来こらい俗信ぞくしんがおはなし背景はいけいにあるとかんがえられます。ぜひれてみてください!

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