昔話『夢を買う』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
※当サイトのリンクには広告を含む場合があります

 何度なんど、失敗しっぱいしても、決けっして諦あきらめないで奮闘ふんとうし、見事みごとに成功せいこうを掴つかむという痛快つうかいな人生じんせいを描えがいた民話みんわが『夢ゆめを買かう』です。

 今回こんかいは、『夢ゆめを買かう』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

 『夢ゆめを買かう』は東北とうほく地方ちほうに伝つたわる民話みんわと言いわれますが、民話みんわ研究けんきゅう家かの萩坂はぎさか昇のぼるによると、中部ちゅう地方ちほうに属ぞくする新潟県にいがたけんが舞台ぶたいの民話みんわとして紹介しょううかいされています。

 原作げんさくは、鎌倉かまくら時代じだい初期しょき(建暦けんりゃく2年ねん~承久じょうきゅう3年ねん(1212~1221年ねん))に成立せいりつしたと推定すいていされる『宇治うじ拾遺しゅうい物語ものがたり』の第だい165話わ(巻かん13・第だい5話わ)「夢買ゆめかう人ひとの事こと」だと推測すいそくします。

 また『夢ゆめを買かう』は、『玉屋たまやの椿つばき』という昔むかし話ばなしと関係かんけいが深ふかいといわれています。

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより新装しんそう改訂版かいていばんで登場とうじょう。『夢ゆめを買かう』のお話はなしは『まんが日本にっぽん昔むかしばなし 第だい10巻かん』の中なかに収録しゅうろくされています。

 『いまに語かたりつぐ日本にっぽん民話集みんわしゅう ([第だい1集しゅう] 8) 天てんから降ふってくる宝物たからもの』は、野村のむら純一じゅんいちさんと松谷まつたにみよ子こさんによる監修かんしゅうのもと、作品社さくひんしゃから出版しゅっぱんされています。動物どうぶつに関かんする民話みんわを幅広はばひろく網羅もうらしていて、挿絵さしえが多おおく、文字もじも大おおきく読よみやすいので、お子こさんと一緒いっしょに読よむにもぴったりの民話集みんわしゅうです。

 新潮文庫しんちょうぶんこより出版しゅっぱんされている『日本にっぽんの昔話むかしばなし』は、日本人にっぽんじんが育はぐくんできた昔話の数々かずかずを、民俗学者みんぞくがくしゃの柳田國男先生せんせいが各地かくちから集あつめて美うつくしい日本語にっぽんごで後世こうせいに残のこそうとした名著めいちょです。夢ゆめを題材だいざいとした昔話が紹介しょうかいされています。

 講談社学術文庫こうだんしゃがくじゅつぶんこより出版しゅっぱんされている『宇治拾遺物語うじしゅういものがたり』は、原文げんぶんと現代語訳げんだいごやく、解説かいせつが全話ぜんわ収載しゅうさいされています。

 『宇治拾遺うじしゅういものがたり』は、岩波少年文庫いわなみしょうねんぶんこから出版しゅっぱんされています。昔むかしも今いまも変かわらない人ひとの心こころのふしぎさを描えがいた一冊いっさつです。現代語訳げんだいごやくのみを収載しゅうさいしたことで、古文こぶんが苦手にがてな人でも物語ものがたりの展開てんかいを知しることができます。

あらすじ

 むかしむかし、財産ざいさんを失うしなってしまった商人しょうにんと絵描えかきが、旅たびの途中とちゅう、大おおきな木きの下したで出会であいました。

 商人が絵描きに身みの上うえ話ばなしをすると、絵描きはうたた寝ねをして不思議ふしぎな夢ゆめをみました。

 それは、山やまを越こえた長者ちょうじゃの住すむ屋敷やしきの庭にわに、白しろい花はなが咲さく椿つばきの木があり、そこに一匹いっぴきのアブが飛とんでいました。その椿の木の根ねを掘ほると、そこから小判こばんがたくさん入はいった甕かめがでてきたという夢でした。

 商人は絵描きにその夢を買かうと伝つたえ、お金かねを渡わたしました。

 商人は、夢にあった通とおりの椿の木がたくさんある屋敷にたどり着つきました。しかし、花は咲いていません。そこで、商人はその屋敷に住すみ込こみで働はたらくことにしました。

 春はるになり、椿の花が咲きましたが、咲いた花はすべて赤あかい花でした。仕方しかたがないので、商人は次つぎの年としまで待まつことにしました。

 それから一年いちねんが経たち、再ふたたび春になると、赤い花の中なかに一本いっぽんだけ白い花の椿の木があり、一匹のアブが飛んでいました。その根元ねもとを掘ると、夢にあった通り小判の入った甕がでてきました。

 商人は、その小判を屋敷の主人しゅじんと半分はんぶんずつ分わけ、それを元手もとでに商売しょうばいを始はじめ大成功だいせいこうして大金持おおがねもちになりました。

解説

 日本にっぽんに現存げんぞんする最古さいこの書物しょもつ『古事記こじき』や奈良時代ならじだいに成立せいりつした日本の歴史書れきししょ『日本書紀にほんしょき』には、天あまつ神かみの御子みこである神倭伊波礼毘古命カムヤマトイワレビコノミコト(後のちの神武天皇じんむてんのう)が、神武東征じんむとうせい中ちゅうに夢ゆめのお告つげで神剣しんけんを得えるお話はなしがありますが、夢ゆめのやり取とりという考かんがえが社会しゃかい一般いっぱんに広ひろく浸透しんとうするのは鎌倉かまくら~室町むろまち時代じだいです。

 例たとえば、『夢ゆめを買かう』の原作げんさくとされる「夢買人事ゆめかうひとのこと」が載のる『宇治拾遺物語うじしゅういものがたり』には、他たにも夢に関かんするお話はなしがあります。

 四よん話わ(巻かん第一ノ四だいいちのよん)の「伴大納言ばんのだいなごんの事こと」は、伴大納言が夢の内容ないようを妻つまに語かたり不運ふうんに見舞みまわれるという内容ないようのお話です。

 鎌倉時代かまくらじだい初期しょきに起おきた曾我兄弟そがきょうだいの仇討かたきうちを題材だいざいにした軍記物語ぐんきものがたりである『曽我物語そがものがたり』にも、鎌倉幕府ばくふを開ひらいた源頼朝みなもとのよりともの妻つまである北条政子ほうじょうまさこが、「夢を買う」という記述きじゅつがあります。

 古代こだいの日本では、夢もまた一種いっしゅの実体じったいとして捉とらえられていたため、そこから夢を売買ばいばいするという考かんがえが生うまれたのでしょう。

感想

 夢ゆめをみた絵描えかきの夢は、正夢まさゆめだったのでしょうか。財産ざいさんを失うしなった商人しょうにんは、その夢を買かって、自分じぶんの正夢にしたということなのでしょう。

 『宇治拾遺物語うじしゅういものがたり』の百六十五ひゃくろくじゅうご話わ(巻かん第十三ノ五だいじゅうさんのご)「夢買人事ゆめかうひとのこと」の最後さいごには、「夢ゆめを人ひとに聞きかすな」とあります。つまり、大事だいじな夢を他人たにんに語かたってしまう絵描きの軽率けいそつさと、この夢を大事だと悟さとり、すぐさま夢を買かい取とる商人の機転きてん、とっさの判断はんだんの正確せいかくさとの対比たいひが面白おもしろさでもあり、教訓きょうくんとして伝つたえたいことなのでしょう。

 夢を買うということは、いかにも恐おそろしい行動こうどうです。夢を売うった絵描きは、お金持かねもちになれないで終おわってしまいました。夢を売らなかったら、お金持ちになれたであろうに。だから、「夢を人に聞かすな」と言いい伝つたわっているのです。

まんが日本昔ばなし

『夢ゆめを買かう』
放送日: 昭和50年(1975年)02月18日
放送回: 第0013話(第0007回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: まるふしろう
脚本: 鈴木良武
美術: 阿部幸次
作画: 上口照人
典型: 致富譚ちふたん
地域: 東北地方/中部地方(新潟県)

 Amazonプライム・ビデオで、『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』へ、ひとっ飛とび。

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』の中なかから傑作けっさく101話わを厳選げんせんしました!

 国民的こくみんてきアニメーション『まんが日本昔にっぽんむかしばなし』がDVDになりました!
 『夢ゆめを買かう』は未みDVD化かのため「VHS-BOX第だい1集しゅう 第1巻かん」で観みることができます。

最後に

 今回こんかいは、『夢ゆめを買かう』のあらすじと解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 平安へいあん~鎌倉かまくら時代じだい、夢ゆめのお告つげは「夢想告むそうのつげ」と呼よばれ、古代こだいの日本人にっぽんじんの通念つうねんとして、夢は“現世げんせと異界いかいを結むすぶ神秘しんぴの領域りょういき”でした。呪術じゅじゅつや陰陽道おんみょうどうも人々ひとびとの生活せいかつに深ふかく関かかわっていました。それを楽たのしむことができる昔話むかしばなしが『夢を買う』です。ぜひ触ふれてみてください!

おすすめの記事