古来、日本では「地震・雷・火事・おやじ」と言われ、雷は大変に恐れられていたものの一つです。昔は、雷や地震など自然災害がなぜ起こるのかわからず、雷は“神様の怒り”であると考えられていました。『雷さまと桑の木』は、落雷を避けるための「くわばら、くわばら」という呪文の由来のお話です。
今回は、『雷さまと桑の木』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『雷さまと桑の木』は、東北地方に位置する福島県や関東地方に位置する群馬県に伝わる民話です。
昔は、雷や地震など自然災害がなぜ起こるのか分からず、雷は“神様の怒り”であると考えられていました。
なんとなくジョセフ・ジェイコブスの『イングランド民話集』に記述されいる「ジャックと豆の木」を連想させる物語です。
昭和6年(1931年)に三元社より発行された佐々木喜善の『聴耳草紙』には、「雷神の手傳」の題で収録されています。
昭和48年(1973年)に未來社より発行された片平幸三の『福島の民話 第2集 日本の民話42』には「雷神と桑の木」の題で収録されています。
岩波書店より出版されている文: 長谷川摂子/絵: 飯野和好の『くわばら くわばら (てのひらむかしばなし)』は、手のひらほどの大きさなのに大迫力の絵本です。あらすじ
むかしむかし、幼くして父親を亡くした男の子が、母親と二人で暮らしていました。
ある日、男の子は母親から茄子の苗を買ってきて畑に植えるよう言われました。男の子は街へ行き、値段の一番高い苗を一本だけ買いました。それは、一本きりでも値段の高い苗なら、きっとたくさんの実がなると思ったからです。男の子が思った通りで、植えたとたん苗はグングンと伸びて、雲を突き抜け、茄子の実がたくさんなりました。
次の日、男の子は茄子の木を登って、雲の上へと向かいました。雲の上には立派なお屋敷があり、そこにはお爺さんが二人の娘と暮らしていました。そして、毎日おいしい茄子をいただいているお礼と言って、男の子をお屋敷に招いてもてなしてくれました。
その次の日、お爺さんは仕事があると言って雷様の姿になり、太鼓をたたき、ひとりの娘が鏡で稲妻を、もうひとりの娘が柄杓で雨を降らせました。その様子を見ていた男の子は、自分も雨を降らせてみたいと言って、娘から柄杓を借り、面白がって雲の上から雨を降らせました。ところが、男の子は足を滑らせて、雲の上から落ちてしまいました。しかし、落ちたところは桑畑で、男の子は運良く桑の木に引っかかって、命は助かりました。
それ以来、雷様は男の子を助けたお礼に、桑の木の側には雷を落とさなくなったそうです。
解説
古来より日本では、雷は大変に恐れられていました。
平安時代の延長8年(930年)6月26日に平安京の清涼殿に雷が落ちました。
この落雷は、大宰府に左遷され失意のうちに亡くなった菅原道真の怨霊ではないかと噂されたのです。
昔は、雷や地震などの自然災害がなぜ起こるのかわからず、誰かの怒りによって引き起こされると信じられていました。そして雷は“神様の怒り”であると考えられていました。
雷除けの「くわばら、くわばら」というおまじないは、菅原道真の領地であった土地の名が“桑原”で、そこには一度も雷が落ちたことがないという言い伝えから、落雷を防ぐ呪文となりました。
『雷さまと桑の木』は、落雷を避けるための「くわばら、くわばら」という呪文の由来のお話です。
感想
家族や親しい友人など、自分にとって大切な人を亡くした時に生じる苦痛や哀しいという感情を押し殺して、不自然なほど明るく振る舞う方がいます。そして、そういった振る舞いをする方が、日常のふっとした瞬間に見せる寂しそうな表情ほど、切なさを感じるものはありません。
明るく振る舞うという行動は、不安や怒りを隠したり逃げたりするための手段だと考えます。つまり、不自然な明るさは単なる仮面でしかありません。
明るく振る舞うという心理には、「自分さえ我慢をすればいい」という考えを持っている可能性があります。それは、「大切な人に自分の辛さ話すことで、自分の辛さを相手にも感じさせることが申し訳ない」と考えてしまうからです。しかし、何でも話すことができる人がいるのならば、そこに頼ることが必要な時もあります。ただし、伝えたことにより、二人の関係が悪くなる可能性もあります。ところが、そこは安心してください、多くの場合は話したことにより身近に感じてもらえるようになり、より二人の関係が親しくなります。そして、頼られるということは、相手にとっても自信につながります。
『雷さまと桑の木』に登場する男の子は不自然なほど明るく振る舞っています。それは、早くに父親を亡くしたことで、寂しい時間を過ごしてきたからなのでしょう。雲の上で過ごす時間は、冒険であり、とても刺激的で、非日常を体験することができます。その非日常の楽しいひと時の中に、父親との楽しかった想い出を探していたのかもしれません。
誰かに複雑な自分の胸の内を打ち明ける勇気を持ちましょう。心の葛藤を解決することが、物事を本質的に解決するために一番大切なことなので。
まんが日本昔ばなし
『雷さまと桑の木』
放送日: 昭和51年(1976年)04月10日
放送回: 第0047話(第0027回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 多井雲
文芸: 沖島勲
美術: 小関俊之
作画: 菊田武勝
典型: 由来譚・起源譚
地域: 東北地方(福島県)/関東地方(群馬県)
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『雷さまと桑の木』は「DVD-BOX第3集 第14巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『雷さまと桑の木』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『雷さまと桑の木』は、「くわばら、くわばら」という雷除けの呪文の由来のお話です。ぜひ触れてみてください!