親孝行な子の“孝子伝説”で知られる『養老の滝』は、孝子が山で酒の泉を発見したので、それをくみ、ことのほか酒を愛する老父を養い喜ばせたという伝説の民話です。
今回は、『養老の滝』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『養老の滝』は、滝の水がお酒になったという、岐阜県養老郡養老町に古くから伝わり、親孝行な子の“孝子伝説”として知られる“養老の滝伝説”をもとにしたお話です。
『養老の滝』に類似する伝説は、「親が飲むと酒で、子が飲むとただの水」という内容で知られる『子は清水』として日本各地に広く伝承されています。
また、日本の元号の「養老(717〜724年)」は、この“養老の滝伝説”が由来とされています。
二見書房より
出版されている
新書 『
まんが日本昔ばなし 第8巻』に「
養老の滝」は
収録されています。
挿絵がどこか
懐かしく、
子どもへの
読み
聞かせにも
最適なおすすめの
新書です。
『
おさけのたき (せかい童話図書館 8)』はいずみ
書房より
出版されています。
文章の
量がとても
少なく、
余白をかなり
取りながら
物語が
進んでいくため、
挿絵がより
滝の
不思議さを
醸し
出しています。
孝行息子に、
誰もが
優しい
気持ちになる
素晴らしい
一冊です。
あらすじ
むかしむかし、ある山奥に病気で寝たきりの父親と幼い息子が二人で暮らしていました。
息子は毎日、山で薪を拾い町へ売りに行ったり、川で魚を獲ったりして生活していました。
ある日、息子は薪拾いに夢中になってしまい、山の中で野宿をすることになってしまいました。一夜明けると、どこからか甘い良い香りがしてきたので、匂いの元を探して歩いていくと、深い谷底に落ちてしまいました。
そこには大きな滝壺があって、甘い香りはその滝の香りでした。
息子は水を手ですくって一口飲んでみると、体中が熱くなって元気が出てきました。
これは寝たきりの父親も元気になるかもしれないと思い、滝の水を持っていた瓢箪に入れて持ち帰り、父親に飲ませました。
すると、父親は
「これは酒だ!」
と言いました。
そして、不思議なことに次の日から父親の病気がよくなり、しばらくするとすっかり元気になり働けるまでになりました。
この噂は広まり、感心な息子が病気の父親を養ったことで、人々から「養老の滝」と呼ばれ、長く語り継がれました。
解説
『養老の滝』については、史実として菅野真道らによって延暦16年(797年)に完成した『続日本紀』には、以下のように記されています。
霊亀3年(717年)9月、美濃国(現在の岐阜県)に行幸した元正天皇が、訪れた養老の美泉に感銘を受け、元号を「霊亀」から「養老」へ改元された。
つまり、日本の元号「養老(717〜724年)」の由来 が、光仁天皇の命により編纂された勅撰の史書にはっきりと記載されているということです。
そして、『養老の滝』は、いつの頃からか伝説化し、鎌倉時代中期の建長4年(1252年)に成立した教訓説話集『十訓抄』や、同じく鎌倉時代中期の建長6年(1254年)に橘成季によって編纂された世俗説話集『古今著聞集』の中で「孝子の養老の滝伝説」として記されています。
また、奈良時代末期に成立したとみられる日本に現存する最古の和歌集『万葉集』には、「多芸の野」という場所が登場し、不老長寿の滝の和歌が二首詠まれていて、この滝は『養老の滝』ではないかと考えられています。
そのことからも分かるように、「養老の滝伝説」の存在が古くから日本国内に広く知れ渡っていたことがうかがえます。
オンデマンド
版『
続日本紀 1 (東洋文庫)』は
平凡社より
出版されています。
豊富で
詳細な
注釈により、
奈良時代後期の
歴史書を
現代語訳で
読める
貴重な
本です。かなり
読みやすく、
楽しく読み
進めることができるため、
平城の
世の
息遣いを
感じることができる
一冊です。
全4
巻。
『
十訓抄 (新編日本古典文学全集 51)』は
小学館より
出版されています。
内容を
理解することができるよう、
原文・
現代語訳・
解説の
構成となっています。
鎌倉時代の
貴族の
裏話がリアルに
記されているオススメの
一冊です。
『
古今著聞集 ほか (21世紀版・少年少女古典文学館 第13巻)』は
講談社より
出版されています。
読みやすい
総ルビ、カラー
挿絵、
本文中の
豊富な
用語解説により、
古典に
慣れていない
方でも
苦労しないで
読み
進めることができます。
阿刀田高さんによる
現代の
言葉で、
鎌倉時代の
様子がいきいきと
再現されています。
『
万葉集 (角川書店編ビギナーズ・クラシックス)』は
角川書店より
出版されています。
元号「
令和」の
出典は、わが
国最古の
歌集『
万葉集』です。
分かりやすく、
古典を
親しみながら
読み
進められます。
巻末の
解説も
簡潔にして
親切です。
参考歌を
含めて
約200
首が
収録されています。
原文も
現代語訳も
総ルビ
付きで、
読み
聞かせにも
最適な
一冊です。
感想
儒教における伝統的な徳目の一つに「孝」というのがあります。
これは、「子は親を敬い支えるべし」と説く道徳的な概念です。
古代中国の春秋時代の思想家である孔子は「『孝』は最も大事な徳」と説いています。
日本でも古来より親孝行はたいへん尊ばれてきました。
明治・大正時代の実業家である渋沢栄一も『論語と算盤』の中で親孝行の大切さを記しています。
よく考えてみたら、親子関係は人間が最初に出会う人間関係です。
つまり、最初の人間関係がねじれてしまうと、その後の人間関係がすべてダメになってしまうということです。逆な言い方をすれば、親子関係がねじれなければ、その後の人間関係は円満にいくということです。
親孝行というのは、すべての愛情の基本であり、親を愛せない人が他人を愛せるはずがありません。
親孝行は今も昔も人の道ということでしょう。
『
論語と算盤 (現代語訳)』は
筑摩書房より
出版されています。『
論語と
算盤』は、すべての
日本人が
帰るべき
原点といわれています。
孔子の
残した
言葉を
正しく
解釈しようとする
渋沢栄一さんの
苦労を、
守屋淳さんが
表現豊かに
訳されています。まさに
現代語訳の
決定版です。
時代背景を
感じさせず、
未来を
生きる
知恵に
満ちた
内容は、
現代でも
十分に
役立つ
一冊です。
全2
巻。
まんが日本昔ばなし
『養老の滝』
放送日: 昭和51年(1976年) 02月14日
放送回: 第0035話(第0019回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 樋口雅一
文芸: 鈴木良武
美術: 内田好之・(竹森佳史)
作画: スタジオアロー
典型: 教訓譚・孝行譚
地域: 中部地方(岐阜県)
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『
養老の滝』は「
DVD-BOX第2集 第6巻」で
観ることができます。
最後に
今回は、『養老の滝』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
親孝行な子の“孝子伝説”で知られる『養老の滝』は、「親孝行は今も昔も人の道」ということを教えています。ぜひ触れてみてください!