昔話『山伏と子だぬき』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 ちょっとした悪戯いたずらごころで、だぬきをおどろかしてやろうと行動こうどうした山伏やまぶしが、最後さいごはしっぺがえしをらうおはなしが『山伏やまぶしだぬき』です。

 今回こんかいは、『山伏やまぶしだぬき』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『山伏やまぶしだぬき』は、東北とうほく地方ちほうぞくする秋田県あきたけんや、九州きゅうしゅう地方ちほうぞくする長崎県ながさきけんつたわるおはなしです。

 日本にっぽんでは、近年きんねんまで、普段ふだん生活せいかつなかでタヌキやキツネにかされたおはなしが、まことしやかにかたられてきました。

 そのあらわれが、やまなどの自然しぜんなかで、人間にんげん知恵ちえでは解明かいめいできない出来事できごとこると、それをタヌキやキツネにかされたことにして納得なっとくしてきました。

 タヌキやキツネは、家畜かちくではなく野生やせい動物どうぶつなので、かつてはそれだけ身近みじか動物どうぶつだったということなのでしょう。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見ふたみ書房しょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『山伏やまぶしだぬき』のおはなしは『まんが日本にっぽんむかしばなし だい23かん』のなか収録しゅうろくされています。

 児童じどうしょねこのおんがえし (よみたい ききたい むかしばなし 1のまき)』は、のら書店しょてんから出版しゅっぱんされています。中川なかがわ李枝子りえこさんの愉快ゆかい気持きもちになる、たのしいかた口調くちょうのスッキリとしたぶんと、山脇やまわき百合子ゆりこさんのやわらかな可愛かわいらしいによって、情景じょうけいがすんなりとはいり、むかしばなし世界せかいひたることができます。「山伏やまぶしとたぬき」など、あかるくたのしい、方言ほうげんなしのむかしばなしが12へん収録しゅうろくされています。

 『わらしべ長者ちょうじゃ (日本にっぽん民話みんわせん)』は、岩波いわなみ書店しょてんから出版しゅっぱんされています。現代げんだいどもたちにはけっしてなじみぶかいとはえない擬態ぎたい擬音ぎおんがたくさん使つかわれているため、物語ものがたりゆたかな内容ないようになっています。「わらしべ長者ちょうじゃ」をはじめ「たぬきと山伏やまぶし」など、こえしてみたくなる民話みんわが22へん収録しゅうろくされています。

 『松谷まつたにみよのむかしむかし いち (日本にっぽんむかしばなし 1)』は、講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。松谷まつたにみよさんのみやすくととのえられたぶん瀬川せがわ康男やすおさんの挿絵さしえ素晴すばらしいです。民話みんわへのあたたかいこころかんじられる一冊いっさつです。「山伏やまぶしっこだぬき」など17へん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところを、怖い顔をした大男の山伏が、ホラ貝を背負い、一本歯の高下駄を履き、偉そうに肩を揺さぶりながら、一人で歩いておりました。

 まだ時刻は昼をちょっと過ぎたばかりで、お天道様は、カンカンと高いところで照っておりました

 すると道端の木の根に、一匹の小さな子狸が、気持ちよさそうに昼寝をしておりました。

 それを見つけた山伏は、
 「いっちょ驚かしてやろう」
と思い、一本歯の高下駄のまま、
 抜き足差し足忍び足
子狸のそばに近よると、その耳のわきへホラ貝をもっていって、とてつもない大きな音で、
 ボワボワボワーン
とばかり、吹き鳴らしました。

 子狸は、びっくり仰天して、一間ばかりも飛び上がって、一散走りに駆け出したが、だいぶ行ってからちょっと立ち止まって、
 「ちくしょう、覚えとけよ」
というような顔で、ちょろっとこっちを見て、それから、振り向き振り向き、逃げて行きました。

 山伏は、子狸のその後ろ姿が可笑しくて可笑しくて堪らなかったので、天までとどきそうな大きな声を出して、笑っても笑っても、なかなか笑いが止まらないほどでした。

 それから山伏は、その辺りを二、三軒まわって、今度は次の村へ行こうと思って、一本歯の高下駄の音を、
 ガラン ガラン
と響かせながら、偉そうに肩を揺さぶって、ゆっくりと歩いて行きました。

 ところが、その日に限って恐ろしく時の経つのが早くて、それ次の村までの道のりが恐ろしく遠くて、まだあまり行かないうちに日がどんどんと暮れてきて、いつの間にかどっぷりと暮れてしまいました。

 山伏は、
 「今日はまた、どういうわけか日が暮れるのが早いな」
と独り言を言いながら、足を速めて、歩いて行きました。

 しばらくすると、真っ暗な中を、向こうの方から白い着物を着た人たちの行列が近づいてきました。

 それは、よく見ると葬式の行列でした。

 山伏は、
 「うわ、あれは葬式だ。これは気味が悪い。こんな時に、困ったものに遭遇してしまった」
と思いましたが、一本道であったため、他の方へ逃げることができませんでした。

 仕方がないので、山伏は、回れ右をして、いま歩いてきた方へ、引き返し始めました。

 ところが、その葬式の行列は、恐ろしく足が速くて、すぐ後ろに追いついてきそうになりました。

 山伏は怖いものだから、並行して、一本歯の高下駄を履いたまま、だんだん大股に歩き出して、だんだん足を早く動かし出して、しまいにとうとう駆け出したが、白い着物の行列は、やっぱりぴったりと後ろにくっついてきました。

 それでもう、一生懸命、山伏は、息が切れそうに走って行くと、幸い大きな松の木が一本、道の真ん中に立っていたので、やっとそこへ駆けつけて、大慌てでその木の最初の枝までよじ登りました。

 そして、白い着物の行列が通り過ぎたら、木から下りようと思って、山伏が木から見おろしていたら、驚いたことに、白い着物の行列は、その松の木の根のところにお棺を下して、お坊さんたちが、
 ボジャボジャ
 ボジャボジャ
とお経を読み始めました。

 「あらあら、これは困ったことになった」
と思いながら、山伏が木の上から眺めていると、やがてお経が済んで、今度は松の木の根のところを皆が掘り始めました。

 そうしておいて、その穴の中へお棺を埋めて、それからやがて、一人帰り、二人帰りして、そのうちに誰もそこにはいなくなりました。

 誰も人がいなくなったので、
 「さあ、帰るとするか」
と山伏は思いましたが、松の木の根のところにお棺が埋めてあると思うと、どうも怖くて木から下りて行けませんでした。

 そうかといって、木の上で夜を明かすわけにもいかず、
 「さて、どうしたものか」
と真っ暗な中で、松の木の枝にまたがり、ホラ貝を背負ったまま、山伏は考え込んでいました。

 そのうちに、辺りは、ますますしんしんと、静かになって来ました。

 やがて、山伏が、なんの気もなく、ひょっと木の根の方を見おろすと、今、お棺を埋めたばかりのところから、白い着物を着た者が、ふらりふらりと這い出してきて、山伏がいる方へ向かって、そろりそろりと木を這い登って来るように見えました

 「うわ、これは困ったぞ。一体どうなっているんだ」
と山伏は思いながら、枝の上からそれを見ていました。

 すると、白い着物を着た者は、だんだんそろりそろり木を這い登って来て、山伏がまたがっている枝の下まで来て、山伏の足に、白い着物を着た者の手が触りそうになったので、
 「やめてくれ」
とわめいて、山伏は上の枝へ登って行きました。

 すると、白い着物を着た者は、またそろりそろりと、その枝の下まで、這い登って来て手を差し出しました。

 それで、山伏は、また上の枝へ登って、また上の枝へ登って、しまいにとうとう山伏は、その松の木のてっぺんまで登ってしまいましたが、それでもやっぱり白い着物を着た者は、そろりそろりと這い登って来て、手を差し出して、山伏の足に触ろうとしました。

 山伏は、夢中になって細い枝の先まで逃げたところで、枝が折れ、山伏は転落してしまいました。

 「痛たたた...」
と叫びながら山伏が倒れていると、空は元通りの明るさになり、お天道様が照りつけていることに気がつきました。

 「一体、わしは何をしていたんだ」
と山伏は言いながら、打ち付けた腰をなで、足を引きずり、歩き始めました。

 おおかた、気持ちよく昼寝をしていた子狸に悪戯をしたから、山伏はおっかない目にあったんじゃろう。

解説

 古来こらいより日本にっぽんでは、タヌキは“ひとだまもの”として認識にんしきされてきました。

 奈良なら時代じだい(推古すいこ天皇てんのう35ねん)にまれた『日本書紀にほんしょき』にも「推古すいこ三十五さんじゅうごねんはるがつに、陸奥国むつのくにうじなりて、ひとりてうたうたふ」という記述があります。

 「ひとり」というのは、タヌキの特殊とくしゅ能力のうりょくなかもっとられている“姿すがたえる魔術まじゅつ”です。

 昔話むかしばなしなかにも、うつくしい女性じょせいなどの人間にんげんけて、人間にんげんだま逸話いつわ数多かずおおのこされています。

 そのほかにも、小石こいし小判こばんえたり、ふんものせかけたりして、人間にんげんだますのもタヌキの常套じょうとう手段しゅだんです。

 ちなみに、タヌキが魔術まじゅつ使つかって人間にんげんけるさいには、あたまうえせるといわれています。

 それから、日本にっぽんいては、ける動物どうぶつ代表だいひょうかくとして、タヌキとならしょうされているもののなかにキツネがあります。

 ことわざに「きつねななけ、たぬきけ」とあることから、キツネよりもタヌキのほう人間にんげんかすうで一段いちだんうえといわれています。

 なにをもって基準きじゅんとしているのかはさだかではありませんが、キツネはひと誘惑ゆうわくするためにけるのにたいし、タヌキはひとをバカにするためにけるのであって、けること自体じたいきだからというせつ有力ゆうりょくとされます。

 『日本書紀にほんしょき (いち)』は、岩波いわなみ文庫ぶんこからぜんかん刊行かんこうされています。同書どうしょはそのいっかんとなります。
 『日本書紀にほんしょき』は、養老ようろう4ねん(720ねん)に成立せいりつした日本にっぽんはつ正史せいしです。だい四十よんじゅうだい天武てんむ天皇てんのうだいろく皇子おうじである舎人とねり親王しんのうが、だい四十四よんじゅうよんだい元正げんしょう天皇てんのうめいによって編纂へんさんしました。ぜん三十さんじゅっかんからり、かんだいいちかんだい神代じんだいしょだい神武じんむ天皇てんのうからだい四十一よんじゅういちだい持統じとう天皇てんのうまでの国史こくしおさめています。
 こちらの『日本書紀にほんしょき (いち)』には、「かんだいいち神代じんだいのじょう」から「かんだいだいじゅうだい崇神すじん天皇てんのう」までが収録しゅうろくされています。
 原文げんぶん漢文かんぶんであるため、こちらのシリーズぜんかんでは、漢文かんぶん日本語にほんごとして意味いみがわかるようにあらためたくだぶんみぎページにあり、その註釈ちゅうしゃくひだりページにあるという形式けいしきなので、らくすすめることができます。また、補注ほちゅう豊富ほうふで、原文げんぶん資料しりょう掲載けいさいされています。ここまで網羅もうらしている文庫ぶんこぼんにはないでしょう。いつんでもあたらしい発見はっけんきないため、つねにそばにいておきたい一冊いっさつです。

感想

 ている時間じかんって、だれにも邪魔じゃまされたくないですよね。

 とくに、昼寝ひるねきらいだというひとはいないのではないでしょうか。

 どもは、昼寝ひるね時間じかん無理むりこしたりすると、がつけられないくらいわめきらして、るまでいたりすることがあります。

 どもにとって、ねむいっていうことは、きっと大人おとなのそれよりもとてつもなく不快ふかいなことなんでしょう。

まんが日本昔ばなし

山伏やまぶしだぬき
放送日: 昭和52年(1977年)03月12日
放送回: 第0123話(0075 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 『松谷みよ子むかしむかし 第一巻 (日本のむかし話 1)』 松谷みよ子 (講談社)
演出: 殿河内勝
文芸: 沖島勲
美術: 竹内靖明
作画: 殿河内勝
典型: 因果応報譚いんがおうほうたん狸譚たぬきたん
地域: ある所

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 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』のなかから傑作けっさく101厳選げんせんしました!

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最後に

 今回こんかいは、『山伏やまぶしだぬき』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 「昼寝ひるね」はこころからだ元気げんきにするといわれています。その昼寝ひるねをしているだぬきを邪魔じゃましたことで、山伏やまぶしいたにあうおはなしが『山伏やまぶしだぬき』です。ぜひれてみてください!

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