昔話『踊る化けもの』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 ものるといううわさがあるおてらに、たびのおぼうさんがまることになりました。よるになると、使つかふるされ、ぬしてられたふる道具どうぐものがおぼうさんのまえあらわれました——日本にっぽんには日々ひび生活せいかつ使つかっているものにまでたましい宿やどるとされています。その思想しそうのおはなしが『おどけもの』です。

 今回こんかいは、『おどけもの』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

ばけものでら 日本の民話えほん 『おどけもの』は、なが年月ねんげつ道具どうぐなどにたましい宿やどるという日本にっぽん伝承でんしょうひとつである「付喪つくもがみ」を主題しゅだいとしたおはなしです。

 古来こらい、「もの大切たいせつにする」「もの能力のうりょく最大さいだいげん活用かつようする」という、ものたいする尊敬そんけい感謝かんしゃねん日本人にっぽんじんこころにはあります。

 その日本人にっぽんじん精神せいしん反映はんえいしている、とてもうつくしい日本語にほんごが「もったいない」です。

 「日本人にっぽんじんは『もったいない』の精神せいしんわすれてはならない」とさとしているおはなしが『おどけもの』です。

 『おどけもの』は、中国ちゅうごく地方ちほう中心ちゅうしん伝承でんしょうされておりますが、たようなおはなし日本にっぽん各地かくちにもひろつたわります。

 それから、付喪つくもがみは、ひゃくねん経過けいかした道具どうぐなどにたましい宿やどり、それがけるなどしてひとをたぶらかすとされています。

 絵本えほんばけものでら (日本にっぽん民話みんわえほん)』は、教育きょういく画劇がげきから出版しゅっぱんされています。岩崎いわさき京子きょうこさんのあじのある擬態ぎたいひびきがぶんは、田島たしま征三せいぞうさんがえがおおきくてちからづよいきおいをかんじる世界せかいかんとぴったりです。いまでは使つかわれなくなった道具どうぐ言葉ことばくだけで、なんだか愉快ゆかい気分きぶんになります。また、ほとんどこわさをかんじないので、内容ないようられ「もの大切たいせつにしましょう」という気持きもちがこころのこ一冊いっさつです。

 かみ芝居しばいばけものでら (日本にっぽん民話みんわかみしばいせん・おばけがいっぱい)』は、童心どうしんしゃから出版しゅっぱんされています。日本にっぽん有名ゆうめい民話みんわむかしばなしなかから、「おばなし」をあつめたぜん6かん傑作けっさくかみ芝居しばいシリーズのひとつです。監修かんしゅう児童じどう文学ぶんがく作家さっか松谷まつたにみよさんです。水谷みずたに省三しょうぞうさんによるおけのセリフはふしく、むかしばなし登場とうじょうするおけの王道おうどうえが宮本みやもと忠夫ただおさんのとの相性あいしょう抜群ばつぐんです。登場とうじょうするものたちえんじやすいので、いているほう素直すなおに「もの大切たいせつにしましょう」という気持きもちになり、こころやさしくなるかみ芝居しばいです。

 『妖怪ようかい人間にんげん (日本にっぽん民話みんわ 7)』は、角川かどかわ書店しょてんから出版しゅっぱんされています。瀬川せがわ拓男たくおさん・松谷まつたにみよさんが編者へんしゃとなり、妖怪ようかい着目ちゃくもくして日本にっぽん各地かくちつたわる民話みんわを、「動物どうぶつ妖怪ようかい」「おに山姥やまんば」「妖怪ようかいさまざま」「もの退治たいじ」という4項目こうもく分類ぶんるいし、民衆みんしゅうがいくわえながらもさちをもたらす妖怪ようかいなみだぐましい道化どうけえんずる妖怪ようかい山姥やまんば天狗てんぐ河童かっぱなど様々さまざま妖怪ようかい紹介しょうかいしています。『かに湯治とうじ』『山伏やまぶしっこだぬき』『山姥やまんばのにしき』『牛方うしかた山姥やまんば』『旅人たびびとうま』『座敷ざしきわらし』『鍛冶かじばば』『おどけもの』など、うらみつらみの相克そうこくをくりかえ人間にんげん妖怪ようかい民話みんわが40へん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、ある山間に小さな村がありました。

 その村の外れには古いお寺がありました。

 そのお寺は、何年もの間、誰も寄りつくことがなく、ネズミさえ住み着かないほど荒れ放題でした。

 ある日の夕暮れ時、一人の旅のお坊さんがこの村にやってきました。

 そのお坊さんは、
 「今夜一晩、この村にご厄介になろうと思っています。この村に寺はありますか」
と村人に尋ねました。

 ところが村人は、
 「あの寺は止めておいた方がいい。夜になると恐ろしい化け物が出るという噂があるので」
とお坊さんに止めるよう言いました。

 「ほう!それはまた面白そうではないか。化け物に会ってみたいものだ」
と言うと、お坊さんは気にすることもなく、すたすたとお寺のある方へ向かって歩き始めました。

 長い間、お寺には誰も住んでいなかったので、床は抜け、クモの巣だらけでした。

 お坊さんは、本堂に入るとご本尊に手を合わせ、
 「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」
と唱えると、本堂の掃除を始めました。

 一晩だけ泊まるだけなのに、お坊さんは本堂の隅から隅まで掃除をしました。

 掃除を終えると、再びご本尊に手を合わせ、
 「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」
とお坊さんは唱えました。

 そうこうするうちに、日も暮れて、辺りには不気味な夜が降りてきました。

 「さて、眠るとするか」
と言って、お坊さんは本堂の真ん中でごろんと横になりました。

 丑三時、お坊さんが眠っていると、

 ばさっ ばさっ ばんばらりん
 からころ からころ からころりん
 どろろん どろろん どんどろろん
 じゃんがら じゃんがら じゃんがらりん
 おしょろ おしょろ おしょろしょろ

 どこからともなく、気味の悪い囃子唄が聞こえてきました。

 「なんだ、なんだ?」
とお坊さんが目を覚ますと、その囃子唄がだんだんと近づいてきました。

 そして、
 「オレたちの正体を当ててみろ。当てられなければ、お前を頭から喰ってやる」
と言ったかと思うと、お坊さんの前に化け物が姿を現しました。

 化け物たちは、お坊さんを取り囲むと、囃子唄に合わせて踊り出したのでした。

 しばらくの間、お坊さんは化け物たち歌を聴いて踊りを見ていましたが、
 「とても楽しそうじゃないか!」
と言って、一緒になって歌い踊り始めました。

 ばさっ ばさっ ばんばらりん
 からころ からころ からころりん
 どろろん どろろん どんどろろん
 じゃんがら じゃんがら じゃんがらりん
 おしょろ おしょろ おしょろしょろ

 お坊さんの歌や踊りで、化け物たちも大いに盛り上がりました。

 コケコッコ~~!

 一番鶏の鳴き声が聞こえてきて、外が明るくなってくると、
 「夜が明ける!惜しいなぁ~」
と化け物たちは口々に言いながら消えていきました。

 一人になったお坊さんは、一休みすると、もう一晩このお寺に泊まることにしました。

 そして、鉢を持って村に托鉢に出かけました。

 村人たちは、お坊さんが何事もなかったように、托鉢をしながら歩く姿を見て、すっかり感心しました。

 村人たちは、
 「あの方は徳の高いお坊さんに違いない」
と言って、沢山のご馳走を用意してお坊さんを敬いました。

 その夜、お坊さんは再びお寺に戻り、本堂の真ん中に座禅を組みながら、化け物たちが出てくるのを待ちました。

 丑三時、

 ばさっ ばさっ ばんばらりん
 からころ からころ からころりん
 どろろん どろろん どんどろろん
 じゃんがら じゃんがら じゃんがらりん
 おしょろ おしょろ おしょろしょろ

 昨晩と同じように、どこからともなく囃子唄が聞こえてきました。

 そして、化け物たちが姿を現し、座禅を組むお坊さんを取り囲むと、囃子唄に合わせて踊り出しました。

 「坊様、歌えや踊れや」
と言う化け物たちに向かって、
 「今夜は一緒に遊ばない。ワシが一緒に遊ぶと、お前たちが成仏することが出来なくなるから」
とお坊さんはじっと座禅を組んだまま静かに言いました。

 それでも化け物たちは、
 「坊様、歌えや踊れや」
と言って、お坊さんを誘いました。

 「喝ーーーっ!」

 突然、お坊さんは、大声で化け物たちに気合をかけました。

 するとどうでしょう、気合と共に化け物たちは消えてしまいました。

 翌朝、村人たちが寺に集まり、恐る恐る本堂に入ってみると、お坊さんが本堂の真ん中で座禅を組んでいました。

 そして、お坊さんの前には、壊れた傘、下駄、太鼓、鐘、箒がありました。

 「この五つの古道具が化け物の正体です。道具たちにも心はあります。人間が己の都合で使い捨てにすれば、化けて出ます。使い終えた道具も感謝しなければなりません」
と村人たちに伝えると、お坊さんは村人たちと一緒になって、五つの古道具を本堂の前に運び出しました。

 「南無阿弥陀仏 南無阿弥陀仏」
とお坊さんは念仏を唱えながら、六つの古道具を火にくべて燃やしました。

 無事に古道具たちは成仏しました。

 それからというもの、村人たちは古道具といえども、大切に扱うようになりました。

解説

 古来、日本には、長い年月を経て使い続けた道具には、魂が宿るという思想があります。

 そして、使い古された道具は、意思を持つとされています。

 さらに、意思を持った古道具は、人をたぶらかすともされます。

 これは「付喪神」と呼ばれています。

 付喪神に関する初出は、室町時代に成立したとされる御伽草子系の絵巻物『付喪神絵巻』と考えられています。

 日本において、古い道具が変化したものを付喪神と呼ぶようになったのは、『付喪神絵巻』の冒頭にある「陰陽雑記云、器物百年を経て、化して精霊を得てより、人の心を誑す、これを付喪神と号すといへり」という詞書きによるものである。

 付喪とは九十九という意味で、「百歳に一歳足りない道具の精」を表しています。

 平安時代に成立したとされる『伊勢物語』の六十三段には、「百年に 一年たらぬつくも髪 我を恋ふらし 面影に見ゆ」という、老婆が在原業平に恋をする和歌があります。

 現代語訳では、「百歳に一歳たりないほどの白髪の老女が私を恋しているらしい。その姿がありありと目に浮かぶ」となります。

 これは、百の漢字の上の一を引くと「白」になることから、白髪の老女や老女のことを「九十九髪」と呼ぶことを受けて、長い時間のことを「九十九年」と示していると解釈できます。

 それから、現時点では『陰陽雑記』という書籍は確認されておらず、その正確な出典および字義は不明です。

 また、牡丹花肖柏によって文明9年(1477年)に成立したとされ、『伊勢物語』の注釈書である『伊勢物語抄』(冷泉家流伊勢物語抄)では、『陰陽雑記』にある説として百年生きた狐狸などが変化したものを「付喪神」としています。

感想

 「もったいないを知り、ありがたいを悟る」
 これはパナソニック創業者の松下幸之助が残した言葉です。

 さて、日本人の誇りと言っても過言ではない「もったいない」という精神は、仏教用語である「勿体」に由来する言葉です。

 「勿体」とは「本来のあるべき姿」という意味で、「勿体ない」とは「本来のあるべき姿ではない」という意味になります。

 古来、日本には「全ての物は繋がっている」という考えがあります。

 つまり、物を粗末にするというのは、自分の命を削ってしまうことに等しいと考えられています。

 そのため、日本人は「もったいない」という精神で、様々な工夫をしながら物を大切に、最後まで使いつくすようにしてきました。

 世界には「もったいない」を表す言葉がないとされています。

 地球上には多くの資源があります。

 しかし、その資源が限られていると知られている現在でも、資源をどんどん使い、便利な暮らしを続けています。

 限りある資源を大切に正しく活かし将来につないでいくことが、今を生きる私たちの使命ではないでしょうか。

まんが日本昔ばなし

おどけもの
放送日: 昭和52年(1977年)08月06日
放送回: 第0154話(0095 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 『妖怪ようかい人間にんげん (日本にっぽん民話みんわ 7)瀬川せがわ拓男たくお松谷まつたにみよ (角川かどかわ書店しょてん)
演出: 殿河内勝
文芸: 境のぶひろ
美術: 青木稔
作画: 殿河内勝
典型: 怪異譚かいいたん
地域: 中国地方

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最後に

 今回こんかいは、『おどけもの』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 古来こらい日本にっぽんでは、なが年月ねんげつをかけて道具どうぐ使つかつづければ、やがて道具どうぐにはたましい宿やどり、さらにはかみになるとわれていました。いまとはちがって、むかしものをとても大切たいせつ使つかいました。こわれても修理しゅうりをして、おやからへとものがれていったので、『おどけもの』のおはなしにあるように、ものたましい宿やどうごすようなことが日常にちじょうてきにあったのかもしれませんね。ぜひれてみてください!

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