昔話『赤神と黒神』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 力ちからか優やさしさか…大地だいちを裂さいた恋こいの物語ものがたり
 『赤神あかがみと黒神くろがみ』は、どうして津軽つがる(青森県あおもりけん)と蝦夷えぞの地ち(北海道ほっかいどう)が離はなれ、その間あいだに津軽つがる海峡かいきょうができたのかという、日本にっぽんの土地とち形成けいせいや由来ゆらいの物語ものがたりです。

 今回こんかいは、『赤神あかがみと黒神くろがみ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

 『赤神あかがみと黒神くろがみ』は、『赤神あかがみと黒神くろがみのけんか』とも呼よばれる“赤神あかがみと黒神くろがみの伝説でんせつ”です。

 東北とうほく地方ちほうに位置いちする秋田県あきたけんの男鹿おが半島はんとうから青森県あおもりけんの竜飛岬たっぴみさきと十和田湖とわだこに伝つたわる民話みんわです。

 どうして津軽つがる(青森県あおもりけん)と蝦夷えぞの地ち(北海道ほっかいどう)が離はなれ、その間あいだに津軽つがる海峡かいきょうができたのかという、日本にっぽんの土地とち形成けいせいや由来ゆらいの物語ものがたりであり、地方ちほう神話しんわの雄大ゆうだいな物語ものがたりでもあります。

 また、季節きせつごとに彩いろどり豊ゆたかな変化へんかを見みせる東北とうほく地方ちほう特有とくゆうの景観けいかんと、その景観けいかんに調和ちょうわしながら登場とうじょうする神々かみがみの揺ゆれ動うごく心こころのさまは、とにかく美うつくしいです。

 絵本えほん『赤神あかがみと黒神くろがみ (むかしむかし絵本えほん 28)』は、ポプラ社しゃから出版しゅっぱんされています。画家がかの丸木位里まるきいりさんが絵えを手掛てがけた、数かず少すくない絵本えほんです。赤神あかがみと黒神くろがみが、一人ひとりの女神めがみに恋こいをし、悩なやみ、苦くるしみ、激はげしく戦たたかった叙事詩じょじしを、松谷まつたにみよ子こさんが壮大そうだいなスケールで描えがいています。ちょっぴり切せつないけど、心こころあたたまる神々かみがみの大おおいなるロマンを感かんじる一冊いっさつです。

 かつてテレビで一大いちだいブームを作つくった『まんが日本にっぽん昔むかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『赤神あかがみと黒神くろがみ』のお話はなしは『まんが日本にっぽん昔むかしばなし 第だい19巻かん』の中なかに収録しゅうろくされています。

 『秋田あきたの民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽんの民話みんわ 10)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。秋田県あきたけんは昔むかしから文化ぶんかがひらけ、鉱山こうざん、農業のうぎょう、漁業ぎょぎょうなどに活発かっぱつな生業なりわいの歴史れきしをもっていることから、それぞれにまつわる民話みんわの数かずがとても多おおいです。「赤神あかがみと黒神くろがみ」を含ふくむ53篇ぺんの民話みんわとわらべうたが収録しゅうろくされています。

 『松谷まつたにみよ子このむかしむかし (日本にっぽんの昔話むかしばなし 2)』は、講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。松谷まつたにみよ子こさんの読よみやすく整ととのえられた文ぶんと瀬川康男せがわやすおさんの絵えが素晴すばらしいです。民話みんわへの温あたたかい心こころが感かんじられる一冊いっさつです。「赤神あかがみと黒神くろがみ」など16篇へんが収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、美うつくしい山やまに囲かこまれた十和田湖とわだこに、とても美うつくしい女神めがみが住すんでいました。女神めがみは、糸いとを紡つむぎ機はたを織おって暮くらしていました。

 きこたん ぱたとん
 きこたん ぱたとん

 機はたの音おとは、湖みずうみの岸辺きしべのブナ森もりやエゾ松まつの林はやしに響ひびき、ときおり女神めがみが美うつくしい声こえで歌うたう唄うたは、靄もやの奥おくに眠ねむる白しろい山やまや黒くろい谷たにへも流ながれていきました。

 羽後国うごのくにの男鹿おが半島はんとうには赤神あかがみが住すんでいました。赤神あかがみは、笛ふえを吹ふき、鹿しかの群むれを追おって暮くらす、痩身そうしんの美青年びせいねんでした。

 赤神あかがみは、女神めがみの美うつくしい声こえを聞ききつけて、雪解ゆきどけの水みずが男鹿おがの海うみへ注そそぐ頃ころ、十和田湖とわだこへとやって来きました。そして、一目ひとめ見みるなり、赤神あかがみは女神めがみを好すきになりました。

 それからというもの、赤神あかがみは、鹿しかをお使つかいにして、毎日まいにち、毎日まいにち、心こころ優やさしい手紙てがみを女神めがみに送おくりました。

 そして、手紙てがみの最後さいごには、
 「どうか、私わたしの妻つまになってください」
と必かならず書かいてありました。

 しかし、
 「嬉うれしいお申もうし出でですが、もう少すこし待まってください」
と女神めがみはなかなか承知しょうちしませんでした。

 さて、八甲田山はっこうださんのはるか遠とおく、陸奥国むつのくにの竜飛たっぴ岬みさきには黒神くろがみが住すんでいました。黒神くろがみは、氷こおりで研といだ剣つるぎを腰こしに下さげ、いばらのような髭ひげを八方はっぽうに突つきだし、龍りゅうを従したがえ、低ひくい空そらと大地だいちの間あいだを治おさめていました。

 黒神くろがみも、女神めがみの歌うたう唄うたを聞ききつけて、十和田湖とわだこへやって来きました。そして、一目ひとめ見みるなり、黒神くろがみも女神めがみに魅了みりょうされました。

 それからというもの、黒神くろがみも、毎日まいにち、毎日まいにち、龍りゅうに乗のっては、海うみの幸さち、山やまの幸さちはいうにおよばず、手当てあたり次第しだいの宝物たからものを担かついでは、女神めがみのところを訪たずねては、
 「どうか、わしの妻つまになれ」
と言いうのでした。

 しかし、
 「嬉うれしいお申もうし出でですが、もう少すこし待まってください」
と女神めがみはなかなか承知しょうちしなかったのでした。

 女神めがみは悩なやみました。

 この春はる、優やさしい赤神あかがみの真心まごころを受うけて、また黒神くろがみの雄々おおしい姿すがたを目めに浮うかべ、女神めがみの心こころは乱みだれるばかりでした。

 そんな女神めがみの姿すがたを見みているうちに、赤神あかがみと黒神くろがみは、自分じぶんたちが神かみであることを忘わすれて、
 「十和田とわだの女神めがみは私わたしのものだ」
 「いや、わしのものだ」
と声こえを荒あらげて争あらそうようになった。

 やがて、十和田湖とわだこにも夏なつがやってきた頃ころ、争あらそいは激はげしい戦いくさに変かわりました。

 嵐あらしを起おこし龍りゅうを飛とばして襲おそってくる黒神くろがみを、数知かずしれぬ鹿しかの群むれれを率ひきいて赤神あかがみは迎むかえ撃うちました。

 その時とき、みちのくの八百万やおよろずの神かみは、津軽つがるの岩木山いわきさんに集あつまって、この戦いくさの行ゆく末すえを見守みまもっていました。いつの間まにか見物けんぶつの神々かみがみも二ふたつに分わかれ、黒神くろがみの味方みかたは山やまの右側みぎがわに、赤神あかがみの味方みかたは山やまの左側ひだりがわに集あつまり、それぞれの応援おうえんを始はじめたのでした。

 七なな対たい三さんで黒神くろがみを応援おうえんする山やまの右側みぎがわに陣じん取どる神々かみがみの数かずの方ほうが多おおく、その神々かみがみが手てを打うち足あしを踏ふみ鳴ならして騒さわいだことで、岩木山いわきさんの右みぎの肩かたは、踏ふみ崩くずされてやや低ひくくなってしまいました。

 さて、はるか戦いくさの様さまを眺ながめると、力ちからの差さは歴然れきぜんで、黒神くろがみの剣つるぎにより燦々さんさんたる痛手いたでを受うけた赤神あかがみは、故郷こきょうの男鹿おが半島はんとうに逃にげ帰かえりました。

 そして、地上ちじょうは、またたく間まに赤神あかがみの血ちで紅葉こうように包つつまれてしまいました。

 赤神あかがみは、
 「もうこれまでだ。以後いご、再ふたたび世よにあらわれることはないだろう」
と言いうと、岩屋いわやの中なかに身みを隠かくしてしまいました。

 戦いくさに勝かった黒神くろがみは、急いそいで龍りゅうに飛とび乗のると、女神めがみを妻つまに迎むかえようと、十和田湖とわだこへ向むかいました。

 ところが、十和田湖とわだこのどこにも、女神めがみの姿すがたはありませんでした。

 女神めがみは、
 「負まけた赤神あかがみがかわいそう」
と言いって、赤神あかがみの後あとを追おいかけ、男鹿おが半島はんとうへ行いき、赤神あかがみと一緒いっしょに岩屋いわやの中なかに隠かくれてしまったのでした。

 それを知しった黒神くろがみは、石いしのような重おもい足取あしどりで、津軽つがるの竜飛たっぴ岬みさきへ帰かえって行いきました。

 戦いくさには勝かちましたが、女神めがみはもういません。

 山々やまやまはひらひらと木きの葉はを落おとし、空そらには雪ゆきが舞まい始はじめました。

 黒神くろがみは、優やさしい女神めがみを忘わすれることもできず、やがて十和田湖とわだこには背せを向むけて、北きたへ向むかって大おおきな“ため息いき”をつきました。

 そのため息いきはもの凄すごく、大地だいちがメリメリと音おとを立たてて裂さけ、そこに海うみの美うつくしい白しろい泡あわの波なみが流ながれ込こみ、この時ときから津軽つがると蝦夷えぞは離はなれてしまい、今いまの津軽つがる海峡かいきょうが出来できました。

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解説

 日本にほん地図ちずを広ひろげてみると、秋田県あきたけん北西部ほくせいぶには日本海にほんかいに突つき出だした男鹿おが半島はんとうがあります。

 男鹿おが半島はんとうは、秋田県あきたけんの中なかでも最もっとも早はやく開ひらかれた地域ちいきで、歴史れきしも古ふるく、奈良なら時代じだいに成立せいりつした日本にっぽんで最もっとも古ふるい史書ししょの一ひとつである『日本書紀にほんしょき』にも登場とうじょうします。

 男鹿おが半島はんとう西部せいぶの男鹿おが三山さんざん(真山しんざん・本山ほんざん・毛無山けなしやま)は、山岳さんがく信仰しんこうの霊場れいじょうとして名高なだかく、貴重きちょうな社寺しゃじ建造物けんぞうぶつや仏像ぶつぞうなど県けん・国くに指定していの文化財ぶんかざいが多おおく残のこされています。

 秋田県あきたけんに伝つたわる“なまはげ伝説でんせつ”もここから生うまれました。

 男鹿おが三山さんざんは、真山しんざんから本山ほんざんを経へて毛無山けなしやままでは登山道とざんどうが伸のび、縦走じゅうそうすることができます。

 そして、男鹿おが三山さんざんの本山ほんざんには、物語ものがたりに登場とうじょうする赤神あかがみを祀まつる赤神あかがみ神社じんじゃが鎮座ちんざします。

 赤神あかがみ神社じんじゃは、一般いっぱんには赤神あかがみ神社じんじゃ五社堂ごしゃどうとして知しられます。赤神あかがみ神社じんじゃの拝殿はいでんから、鬼おにが一晩ひとばんで築きずきき上あげたと伝つたわる九百九十九きゅうひゃくきゅうじゅうきゅう段だんの険けわしい石段いしだんを登のぼると、その先さきに国くにの重要じゅうよう文化財ぶんかざいに指定していされている赤神あかがみ神社じんじゃ五社堂ごしゃどうが現あらわれます。

 ちなみに、神社じんじゃに祀まつられているのは赤神あかがみだけで、黒神くろがみと女神めがみは祀まつられていません。

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感想

 秋田県あきたけんには、『赤神あかがみと黒神くろがみ』のような、こんなにも雄大ゆうだいな神々かみがみの物語ものがたりがあることに驚おどろき、そして計はかり知しれない魅力みりょくを感かんじます。

 その土地とちの形成けいせいや由来ゆらいに関かんする物語ものがたりは数多かずおおくありますが、これほど大おおらかな物語ものがたりは珍めずらしいのではないでしょうか。

 今いまから約やく二万にまん年ねん前まえの氷河期ひょうがきには、海水面かいすいめんが氷結ひょうけつしたことで、130~140mほど海水面かいすいめんが下さがり、本州ほんしゅうと北海道ほっかいどうは陸りく続つづきになっていたとの説せつがあるそうです。

 ところが、縄文じょうもん時代じだいには、本州ほんしゅうと北海道ほっかいどうとの間あいだには、すでに現在げんざいのような津軽つがる海峡かいきょうが形成けいせいされ、日本海にほんかいを北上ほくじょうする対馬つしま海流かいりゅうが分わかれ、津軽つがる海峡かいきょうをとおり黒潮くろしおと合流ごうりゅうしていたそうです。

 『赤神あかがみと黒神くろがみ』の中なかにあるように、黒神くろがみが青森県あおもりけんにある津軽つがる半島はんとうの竜飛たっぴ岬みさきへ帰かえり、北きたへ向むかってついた“ため息いき”が、氷河期ひょうがきの氷こおりを溶とかす暖あたたかな風かぜであったように、古代こだいの日本人にっぽんじんの真まっ直すぐな心こころが温あたたかく伝つたわってくる物語ものがたりです。

まんが日本昔ばなし

『赤神あかがみと黒神くろがみ』
放送日: 昭和51年(1976年)09月18日
放送回: 第0082話(第0050回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 杉田実
文芸: 杉田実
美術: 馬郡美保子
作画: 馬郡美保子
典型: 神話しんわ・由来譚ゆらいたん
地域: 東北地方(秋田県)

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最後に

 今回こんかいは、『赤神あかがみと黒神くろがみ』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ、感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『赤神あかがみと黒神くろがみ』は、秋田県あきたけんから青森県あおもりけんの歴史れきしと民話みんわに親したしめることと同時どうじに、女神めがみをめぐる赤神あかがみと黒神くろがみとの争あらそいの中なかで、「真しんの勇気ゆうき」とは何なにかについて考かんがえさられる物語ものがたりです。ぜひ触ふれてみてください!

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