昔話『河童の雨ごい』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『河童かっぱあまごい』は、非情ひじょうさや理不尽りふじんさを象徴しょうちょうするおはなしです。すくいがないというつら内容ないようですが、ぎゃくかんがえれば、それだけ身近みじかにあるということでものであり、死を“けがれ”の対象たいしょうとはとらえず、しっかりとい、きていくためにかすという仏教ぶっきょうおしえにつうじるお話です。

 今回こんかいは、『河童の雨ごい』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『河童かっぱあまごい』にあるような、雨乞あまごいをはじめとした、河童かっぱ人間にんげん手伝てつだいをする河童伝承かっぱでんしょう民話みんわは、関東かんとう地方ちほう位置いちする栃木県とちぎけん群馬県ぐんまけん神奈川県かながわけん中部ちゅうぶ地方ちほうに位置する静岡県しずおかけんなど、日本にっぽん各地かくち類話るいわ存在そんざいします。

 そのなかでもとく有名ゆうめいなものが、栃木県とちぎけん芳賀郡はがぐん益子町ましこまちにある妙伝寺みょうでんじつたわる河童伝説かっぱでんせつです。妙伝寺には雨乞いの河童が供養くようされ、現在げんざいも河童のミイラが安置あんちされているとつたわります。

 さて、日本にっぽんにはおおくの妖怪ようかい存在そんざいしますが、河童はその中でも特に知名度ちめいどたかい妖怪です。

 日本の妖怪の中ではまれなことではありませんが、河童はおそれられている反面はんめん不思議ふしぎなほど親近感しんきんかんってかたられてきました。

 親近感が持たれるということは、河童がなんらかのかたちで人間と交渉こうしょうを持ってきたことと無関係むかんけいではありません。『河童の雨ごい』もそんな人間との交渉を題材だいざいにしたおはなしです。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』の絵本えほん二見書房ふたみしょぼうより出版しゅっぱんされています。『河童かっぱあまごい』のおはなしは『まんが日本昔ばなし 15かん』のなか収録しゅうろくされています。

 『栃木とちぎ民話みんわ だい1しゅう ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 32)』は未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。肥沃ひよく関東平野かんとうへいやきたはし位置いちし、那須火山帯なすかざんたいようする下野国しもつけのくに現在げんざい栃木県とちぎけんです。かみなりかんするおはなしきつねのお話など、「河童かっぱ雨乞あまごい」をはじめ素朴そぼく農村のうそん生活感情せいかつかんじょう雄弁ゆうべん物語ものがた民話みんわを66ぺんとわらべうたが収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、もりかこまれたちいさなむらがありました。その森にふるぬまがあって、一匹いっぴき河童かっぱんでいて、村人むらびとたちにわるさばかりしていました。

 あるたびのおぼうさんが河童の住む沼をおとずれ、なぜ悪さをするのかいてみると、
 「自分じぶんがこの姿すがたまれてきたことかなしんであばれまわっているのです」
と河童はこたえました。
 それを聞いたお坊さんは、
 「そんなことをせずに、きているうちにひとやくつことをしなさい」
と河童にさとしてお坊さんはそのりました。

 そのとしなつ、村では日照ひでりがつづき、村人たちは毎日まいにちのように雨乞あまごいをしましたが、いっこうに効果こうかがありませんでした。

 すると、そこへ河童があらわれました。

 村人たちは、日頃ひごろうらみをたしてやろうと、くるったように河童におそいかかり、なぐったりったりと河童をちのめしました。

 しかし、河童はまった抵抗ていこうしませんでした。

 しばらくして、河童は、荒縄あらなわでぐるぐるきにしばられて、村人たちのまえほうされました。

 半死半生はんしはんしょうわされた河童がやっとかおげて、
 「一緒いっしょ雨乞あまごいをさせてしい」
と村人たちに河童はたのみました。

 村人たちは、わらにもすがるおもいで河童にも雨乞いをおねがいしました。

 河童はてんかって雨乞いをはじめました。
 「神様かみさま、おねがいです。オラのいのちえに、むらあめらせてください」

 河童の雨乞いは何日なんにちつづき、そのあいだみずものくちにすることはありませんでした。

 数日すうじつったある日、そらにゴロゴロとかみなりり、大粒おおつぶあめがポツポツとってきて、雨はみるみるはげしさをし、やがてたちのように降りはじめました。

 しかし、そのとき、河童は雨にたれながらすげんでいました。

 なつわり、旅のお坊さんがまた村を訪れ、村人たちから河童の雨乞いのはなしきました。そして、お坊さんから人間にんげんになりたかった河童の話を聞いた村人たちは、沼のそばにちいさな河童のおはかてて、後々あとあとまでかたつたえたのでした。

解説

 奈良時代ならじだい成立せいりつした日本にっぽん歴史書れきししょ日本書紀にほんしょき』のなかに「雨乞あまごい」の記述きじゅつであるので、日本でもかなりふる時代じだいから雨乞いはおこなわれていたとかんがえられます。

 平安時代へいあんじだい末期まっきに成立したとされる『今昔物語集こんじゃくものがたりしゅう』には、かんばつがつづいていた天長てんちょう2ねん(824年)に弘法大師こうぼうだいし(空海くうかい)が神泉苑しんせんえん(京都府京都市中京区きょうとふきょうとしなかぎょうく)で「請雨経法しょううきょうのほう」とばれる雨乞いを七日間なのかかんおこなったところ、凡人ぼんじんにはえない霊験れいげんあらたかなりゅうあらわれ、無事ぶじあめったとしるされています。

 ところで、河童かっぱおに天狗てんぐならんで日本の妖怪ようかいなかもっと有名ゆうめいなもののひとつとされます。かわぬまなかみ、体格たいかくどものようで、全身ぜんしん緑色みどりいろまたは赤色あかいろとされ、頭頂部とうちょうぶさらがあるとされます。いつもみずれており、あたまさらかわいたりれたりするとちからうしなったりんだりするといわれています。
 河童の好物こうぶつはキュウリです。これにちなみキュウリをいたお寿司すしのことを「カッパき」と呼ぶようになりました。
 ちなみに、なぜ河童がキュウリをこのむかというと、キュウリははつなりの野菜やさいとして水神信仰すいじんしんこうおそなものかせないものの一つとされます。みずの中に住む河童のキュウリ好きは、それに由来ゆらいするといわれています。

 さて、『河童かっぱあまごい』は、日本において江戸時代えどじだい確立かつりつされた「穢多えた」という身分制度みぶんせいどふか関係かんけいしているようにかんじます。
 穢多は、江戸時代の政治せいじ支配しはい体制たいせいである幕藩体制ばくはんたいせい維持いじするため、封建的ほうけんてき身分みぶん制度せいど最下層さいかそう位置いちづけられてきました。そして、非人道的ひじんどうてき身分みぶん職業しょくぎょう住居じゅうきょ固定こていされ、皮革ひかく死刑しけい執行しっこう斃牛馬たおれぎゅうば処理しょりにあたらされました。
 主人公しゅじんこうの河童は、そのような賤民せんみん階級かいきゅう家系かけいまれたもの象徴しょうちょうとしてえがかれているように感じてなりません。

 『今昔物語集こんじゃくものがたりしゅう (角川書店かどかわしょてんへんビギナーズ・クラシックス)』は、現代語訳げんだいごやく古文こぶんきとしたリズムによってだれもが古典こてん世界せかいたのしむことができます。

感想

 ひと何度なんど生死せいしかえし、あたらしい生命せいめいまれわるという思想しそうがあります。これは仏教ぶっきょうにおける死生観しせいかんで、「輪廻転生りんねてんしょう」や「六道輪廻ろくどうりんね」と表現ひょうげんされます。

 人の運命うんめいは、自分じぶんの“ごう”が原因げんいんとなって、「因果いんが道理どうりにしたがってみだしている」と仏教ではおしえています。

 おこないは善い運命を生みだし、わるい行いは悪い運命を生みだします。

 しかし、ひとたび業をつくってしまうと、そこから生みされる運命はけることができません。

 造り出されてしまった業はかならえるということです。

 つまり、善い行いも悪い行いも、寸分すんぶんくるいもなく強烈きょうれつちから因果応報いんがおうほうむくいをこすということです。

 また、仏教では“自業自得じごうじとく”という教えがあります。これは、「みずから」という漢字かんじ使つかわれているように、「原因はすべて自分にある」というかんがえです。

 ところで、家庭環境かていかんきょう裕福ゆうふくひともいればまずしい人もいます。あたまい人もいればわるい人もいます。人はまれながらにしてがあり不平等ふびょうどうであるとかんじることがあります。

 では、そのような差がしょうじてしまう原因は何でしょうか。

 仏教では、それを「自分の“業”が原因」と教えているのです。

 このような仏教の教えにしたがうと、輪廻転生が本当ほんとうおこなわれているのではないかとおもえてなりません。

 つまり、前世ぜんせ結果けっか現世げんせなのであれば、河童かっぱ来世らいせしあわせということです。

 そして、『河童かっぱあまごい』は、いま精一杯せいいっぱいきることが幸せにつながると教えているのでしょう。

まんが日本昔ばなし

河童かっぱあまごい
放送日: 昭和51年(1976年)06月12日
放送回: 第0061話(第0036回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 杉田実
文芸: 沖島勲
美術: まるふしろう
作画: 高橋信也
典型: 因果応報譚いんがおうほうたん河童譚かっぱたん
地域: -


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最後に

 今回こんかいは、『河童かっぱあまごい』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『河童の雨ごい』は、いま精一杯せいいっぱいきることの大切たいせつさをかんがえさせられる物語ものがたりです。ぜひれてみてください!

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